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REVELLION 第二章 日常篇

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ParaBellum

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「……ゼノス。ご飯」
「もう少し待て」
学生が暮らすにはいささか豪華なマンションの一室で料理を作る音が響いていた。
料理を作るゼノスとテーブルに突っ伏して朝食を待つリム。どう見てもゼノスは奉公に出ている使用人状態だが、当の本人たちにとってはこれが日常なので気にはとめていないようだ。
「ほれ、出来たぞ……待て!机に並べてからだ!」
 今にも飛び付きそうな勢いでこちらを見つめるリムにゼノスが制すると、机に料理を並べていった。

「……ゼノス、美味しかった」
「リム、食べ終わったら御馳走さまだ。変な誤解を招く発言をするな」
 リムの口元をハンカチで拭いてやりながら諌めるが、当のリムはどこ吹く風で気持ちよさそうな顔をして目を細めた。
「じゃあ、俺は学校に行くから良い子で留守番を―――」
 椅子に置いた鞄を手に取り立ち上がると、突然リムが通せんぼした。嫌な予感がして振り切ろうかと考えるがリムに勝てる気がしないので諦めることにした。
「……ゼノス。お願いがある」
 リムのお願いは、お願いではなくいつも命令に近い。
「……あたしも学校というところに行きたい」
「ああ、そうか……それならパルムに頼んで中等部に編入を……」
「……ゼノスの行っている学校でないと嫌だ」
「……」
このニュアンスは同じクラス、というのも含まれているのだろうか。
編入位は出来るだろうが、見た目が問題だ。顔立ちは大人っぽいが身長が低すぎる。
 このまま編入し、リムがいつも通りに接してくる(甘えてくる)さまを級友が見れば、ゼノスが小学生の愛人を囲っているという噂が立つのは明白。
別段人の評価を気にするたちではないが、犯罪者扱いを受けるのはご免蒙りたい。
「……嫌?」
 これはゼノスが嫌がっているのかを聞いているのだろうか?ゼノスが苦笑するとリムはポケットに手を突っ込んでなにかを取りだした。
「な……」
ゼノスの素っ頓狂な声。猫耳型カチューシャを頭に装着する、リム。
「…これ、ダメ?」
いまいちな反応をするゼノスにリムは小首を傾げると、またポケットに手を突っ込んだ。今度はウサ耳型カチューシャだ。
「リム。一つ尋ねる……何がしたいんだ?」
突然の意味不明な行動にゼムスが心配げに聞くがリムはまたも小首を傾げ。
「……こうすれば、ゼノスはお願いを何でも聞いてくれるって、パルムが……」
(あの女。いつか殺してやる)
想像の中でまで見下したような笑みを浮かべるパルムに精一杯の呪いを送りながら、ゼノスはリムの肩を掴んだ。
「いいか、リム。金輪際あの女に関わるな、いいな」
 どうかお前だけは汚れないでくれと願いを込めるが―――。
「……仕方ない。これは使いたくなかったんだけど」
 またポケットに手を突っ込んで何かを取り出そうとするリム。
(お前のそれは四次元○ケットなのか?)
 そんな不思議道具与えたつもりはないが、またもポケットから何かを取りだした。
「……ゼノスがあたしの言うことを何でも聞くようになーれ」
 ものすごい棒読みで言うと、その手にステッキ(なんか色々な装飾が付いてる)を持ち、くるくる回って見せるリム。
「これもパルムの仕業か?」
「……違う、テレビで見たアニメ、魔女っ子クルルンが魔法のステッキで世の男共を虜にして世界最大の逆ハーレム王国を作る話」
 くるくるしながら言うリムにゼノスはその場で項垂れた。
 ゼノスは切に願う、この世の汚れよ……せめてリムの前にだけは出てこないでくれと。

「あ~、突然だが転校生を紹介する」
 不機嫌そうな声で担任が言うと、教室のドアが開き、案の定リムが無表情のまま入って来た。
 ゼノスは机に突っ伏して寝た振りを決め込む。無関心だ、無関心。リムが何を言おうと無視を決め込む。それだけを心に決める。
「きゃ~、かわいい!」
 ユン(百合な女子)の声が木霊す。ちぃ、女好きめ……煽るんじゃないとゼノスは心の中で舌打ちした。
 どよめき、歓喜、嫉妬。突然の美少女の登場にクラスがざわめく。
「あ~、自己紹介!しなさい……いいね?」
 またもや担任の不機嫌な声。どうやらリムの突然の編入に色々苦労させられ、当人と逢ってその常識のなさにさらに苦労させられたようだ。
「……名前はリム。好きなモノはゼノス。興味があるのはゼノス。趣味はゼノス。嫌いなモノは電車の中で化粧する人とキノコ(形が気持ち悪い)。ゼノスの一番で、嫁……以上」
 ああ、やはりか。無関心を決め込んでいたがリムの策略により無理やり舞台に上げられてしまったようだ。
 ユンを筆頭に向けられる理不尽な怨み。後ろの席から発せられるシホのヤキモチという名の妬み。
 世界は……ゼノスに優しくはなかった。

 放課後の帰り道にてシホはゼノスを質問攻めにし、リムの事を聞きだした。
 わかったことは、親戚の子で現在預かっているということ、嫁だなんだ発言の真相だがリムは何でも一番にこだわる性格らしく男にとって嫁=一番大事な存在と思っているらしく事あるごとに私はゼノスの嫁発言をしているらしい。
 ゼノス曰く、リムにとってゼノスは家族であり、友人であり、父であり、兄であり、恋人である、という万能な役割らしい。
 ゼノス自身、恋愛ごとに無頓着(恋愛という概念を絶対に知らない)な性格なので手を出しているということはないだろうが……。
 突然の恋のライバルの出現はシホを不安にさせるが、
(学校一の美女が何言ってやがりますか!)
 というイリアの叱咤激励に完全復活……は出来ないが少しだけ復活していた。


「とりあえず、気持ちを切り替えましょう」
 そうだ。ぐちぐち悩んでも仕方ない。今は頭を切り替えよう。
 シホは現在、ある場所に居た。この都市の国主パルム直轄の資料保管所だ。
 昼間、調べて場所は知っていたが、ここまで大きな建物だと思っていなかった。
やはり国主管轄の施設なだけはある。ここまで大きな建物前にすると改めて実感する、自分の知り合いのパルムが国主なのだと。
パルムはシホにとって国主というより足長おじさん(パルム曰く足長の綺麗なお姉さん)という存在だ。今まで実感がわかなかったのも当然かもしれない。
人物像についてはよく知らない、ゼノスの話では嘘が得意(現に歳を32だと言っているが5,6歳はサバ読んでいるらしい)ようだが、時々様子を見に来てお金の支援をしてくれる良い人だとシホは思っている。
話は変わるが先日、パルムが様子を見に来た時だ。あるカードキーを忘れていった。表には資料保管所カードキーと印刷されており、後ろめたさはあるがそれを大きな扉の右端に設置されている端末に差し込んだ。
(開いた)
 ここに来るまで半信半疑だったが、開く扉を目の当たりしてカードキーが本物だったのだと実感する。

建物を守護する大きな扉が開くと見えるのは長い廊下。その突き当りに小さな扉が見える。
その扉もカードキーを端末に差し込んで中に入ると、白を基調にした質素な部屋だった。
部屋の中央に年代物のパソコンが起これている。
(すごく、古い)
 パソコンの起動が異様に長い。
情報を保存している機械などは最新式を使用しているイメージが強いが、最新の物の方が外部からの侵入も容易いらしく、既にネットワークの死んでいる年代物が重宝されているという話をどこかで聞いた気がする。
「……」
 ようやく起動したパソコンのディスプレーに【検索ワードを入力してください】の文字が現れた。シホがキーボードを打つ……『リベリオン』と。
 先日シホが邂逅した黒い機体の名。シホの知りたいのはそのパイロットのこと。
 単なる勘だが、あのパイロットの正体を知ることが自分の失われた記憶を紐解くヒントになるのではなかとシホは考えていた。
 瞬時に検索された関連ワードが羅列されていく、その中にリベリオンという単語はないが、一番上に来た、ハンブルクのクーデターをクリックする。
 ざっとした内容が刻まれている。一年前、常闇都市ハンブルクにてあるクーデター事件が発生したこと、その首謀者は当時16歳の少年としか記述されていない。
 他の部隊の遠征中を狙って当時の国主代行を殺害し、すぐに次期国主をもその手に掛けたようだ。
 首謀者の目的は不明。なぜならその首謀者がまんまと逃げおおせたかららしい。
 文字を読みながらスクロールしていくとある画像が表示される、銀髪の青年だ。この画像の主が当時の国主代行らしい。
 さらに下にスクロールさせ、
「え……」
 一瞬、時が止まったように思えた。次に映し出されたのは自分にそっくりな容姿をした女性。
 画像元が一年前の人物のものなのでシホより少し幼く見える。画像の下に小さく次期国主と刻まれている。
「……」
 震える指でさらにスクロールすると、パルムの見解が書かれていた。
 どうやら事件の核心が書かれているようだ。
【私が掴んだ情報では国主代行イリッシュの妹君で次期国主だったナチには双子の妹がいたらしい】
「妹……」
 次期国主のナチと似た、自分の顔を指でなぞる。
【首謀者はその妹を擁立しようとしてクーデターを起こしたのでないか、その結果失敗した。追記、上辺はそう見えるがまだ別の見方も出来る。政治の道具にされかねないその妹を護るためのクーデター】
 まさか、とシホの中である結論が生まれる。
【まだはっきりとは分からないが私は首謀者の少年をゼノス君と考えている。そして件の妹を彼が連れてきたシホちゃんだと考えている】
「結論から言うと、どれが真実で偽りか……判断するには材料が少ない」
 後ろからの声にシホが振り返るとそこにはパルムの姿。驚いているシホを余所にパルムは続けた。
「それを調べているといことは、記憶喪失は本当のようね……」
記憶があるのなら当事者のシホが知らない訳がないからだ。
「見解の補足をするなら、ゼノス君はイリッシュ様とナチ様の両方と親しかった、それが原因で妬む人間も少なくなかったって話よ、それとゼノス君の友人のガイ君が国主を務める移動都市シュトゥットガルトがクーデターと同日に謎の軍による奇襲を受け弱体化、その数日前にハンブルクと同盟していた天空都市ケルンがミュンヘン軍から攻撃を受けてクーデター当日に降伏している。これってただの偶然かしら?」
「では……ゼノスは」
「事実を知るゼノス君が黙っている以上、真実は未だ闇の中……だから、貴女に聞きたいの」
 普段はおどけた口調で話すパルムだが今、シホの瞳に映る彼女は真剣そのものだ。
「貴女はゼノス君を信じている?」
「ええ、彼は私を護ってくれます。とても優しい人です」
 間髪いれずの答えにパルムは穏やかに笑んだ。
「なら、信じなさい。今の……ゼノス君を」
 その眼には罪悪感と母のような優しさが滲んでいた。
「なぜ貴女は……私やゼノスを匿うのですか?」
 シホは感じた疑問を素直にぶつけてみた。いま聞いたことが真実ならパルムがゼノス達二人を匿う理由が解らない。厄介事にしかならないかだから。
「ゼノス君への罪滅ぼしと……単純な知識欲よ」
 最後の言葉はいつものおどけた口調だった。
「……」
 最後に映し出される、首謀者の乗機OFとして映るリベリオンの画像を見てシホは確信した。やはりあのパイロットはゼノスだったのだと。


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