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転移戦線異常有り!? 大海上都市群「兵庫」重歩兵中隊がワームと戦うようです 第3話

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irisjoker

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だれでも歓迎! 編集
「おー、絶景かな絶景かな」
小型浮遊監視装置「V3ホッパー(通称)」から送られてきた情報は中々素晴らしかった。今後一生掛かっても見れないかもしれない貴重な映像だ。
地面を埋め尽くして行進するオルトロスの大軍勢はさながら津波のようであった。てか、ナウシカ終盤で王蟲の大群がわんさかやってくる場面、と言った方が分かりやすいだろうか。
<隊長、オルトロスの数が二十万を突破したっスよ>
「ああ、もうそんなになるのか」
久し振りにあった親戚の子供に「大きくなったねー」と言うような感じで呟く。
<一人辺り最低でも二千匹以上っスよ。時間無制限で食べ放題ッス>
「中隊百人で無料食い放題のスペシャルバイキングだ、食べ残しはするんじぇねえぞ。ガキの頃に米粒一つ残しちゃいけません、って親から躾けられただろう? そうじゃない奴はゆとり決定な」
さぁ、やってきたぞ。地面を埋め尽くすオルトロスの大軍勢が全周囲から進軍してくる。
ようこそ。当中隊は誰でもウェルカム! お客様を誠心誠意、全力全壊スターライトブレーカー精神で歓迎させて頂きます。当中隊のサービスは万全、嫌だと申されても問答無用でキャンセル不可能ですので悪しからず御了承願います。
心往くまで我々重歩兵中隊との戦闘をお楽しみ下さい。遠慮する必要は一切御座いません、こちらも情け容赦致しませんので。
「さぁ、攻撃開始だ。やれ」
<了解>
狙撃部隊が37.5mm狙撃砲から37.5mm長射程誘導砲弾、50mm狙撃砲から50mm長射程誘導砲弾。砲撃部隊が50mm榴弾砲から50mm振動熱誘導榴弾、75mm連装迫撃砲から75mm誘導迫撃砲弾、その他ミサイル各種を一斉にブッ放す。
アニメとか二世紀ぐらい昔の軍隊なら派手に飛んでく砲弾の雨でウキウキ祭り気分になれるが、砲、砲弾、ミサイル全てに能動、受動双方の高い遮蔽能力を持つ現代式の兵器は、目で見えず、音も無く、光も無く、匂いすら無く、「何事も無い」かのように空を飛んでいく。
長射程、大火力の狙撃、砲撃部隊がバンバン撃ちまくっているのに景色に何の変化も無いなんて、アニメだったら視聴者が怒り狂うだろう。このアニメを作ったのは誰だあっ、とか言いながら。悲しいけどこれ、現実なのよね。という事で我慢してもらいたい。
誘導砲弾とミサイルの標的はオルトロスの中で最も大型である四型だ。一番でかくて一番数が少ないこいつを一番先に一番ブッ殺す。
体内に生成したロケット弾っぽい物をブッ放すっぽい砲兵っぽい脅威のこいつを真っ先に「潰す」。なんせ相手は団体さんだ、間接防御兵器の弾丸一発消費するのも惜しい。だから、心置きなく消えてくれたまえ。
オルトロス四型。聞こえていたら君の生まれの不幸を呪うがいい。君は良い友人であったが、君の父上がいけないのだよ。
敵は能動遮蔽も受動遮蔽も使わず、戦場に広域妨害は無く、空中で待機している400基のV3ホッパーに全く攻撃を仕掛けてこない。仮想戦闘の最高難易度「実戦」とは比べ物にならない「ヌルゲー」。
故に、全ての砲弾、ミサイルが1mmの狂いすら無く命中率100%で直撃したのは必然だった。
各種砲弾、ミサイルは表面に発生する凄まじい振動熱によって、熱したナイフでバターを切るが如く強固な皮膚、強靭な筋肉を呆気無く融解しながら体内深くに潜り込む。
砲弾自体が瞬時に計算し、最大の被害を与えられるよう弾殻に最適な細かい亀裂が走る。内部の高性能炸薬の威力が損なわないよう瞬間的に弾殻が軟化、高性能炸薬が爆発、再硬化する。
全包囲へ拡散する数千の振動熱破片、高性能炸薬から発生した爆風と振動熱衝撃波は、オルトロス四型を、全高5mもの巨大生物の全身の細胞を破壊し、水分を蒸発し、炎に焼かれた紙のような黒い屑の塊に変えた。

被害はそれだけに留まらず、オルトロス四型の内部から飛び出した無数の弾殻は、「砲弾自体が瞬時に計算し、『最大の被害を』与えられるよう弾殻に最適な細かい亀裂を走らせ」飛び散った振動熱破片は、護衛として随伴させていたオルトロス一型、二型に降り注いだ。
いくら耐振動熱防御能力が無いとはいえ破片では威力は低く、殺せたのは少数に過ぎなかった。だが、「生きている」一型と二型の多くは「死んでいないだけ」の状態になっていた。
元々タコみたいな外見で醜い全身が更に醜く崩れ、大量の水蒸気を発しながら地面をのたうち回り、やがて横たわり静かになる。時折全身をビクビクと断続的に痙攣させながら。
即死出来たオルトロスは幸福だろう。「死んでいないだけ」の彼らは今も地獄の苦しみを、「生き地獄」を味わい続けている。
ギロチンは見た目こそ恐ろしいが一瞬で首を切り落としてくれる「慈悲深い」処刑道具だ。切れ味が最悪の死神の鎌で、首が落ちるまでノコギリのように削られ続けるのとどちらが楽か言うまでもない。
砲撃部隊は弾数に余裕があるので継続的に攻撃しているが、狙撃部隊は長射程誘導砲弾を撃ち尽くしたので攻撃を一旦中止。残っているのは通常の徹甲弾、徹甲榴弾と、虎の子の超振動極熱狙撃砲弾だ。
本来なら長距離から一方的に狙撃するのが正しい戦法だが、諸般の事情でそれは却下。オルトロスが中距離以内に接近してから再び頑張ってもらおう。何、直ぐだ。
今の所オルトロス四型と+αに大打撃を与えたものの、残念ながら全滅はしていない。だが構わんよ、既に仕掛けは整えてある。全部で25両ある牽引式輸送車の内3両に満載されていた「荷物」はもうとっくに解き放っている。後は待つだけだ。
オルトロス四型は進軍を停止し、胴体上面にある発射腔を開く。砲撃するつもりのようだ、自殺行為とも知らずに。オルトロス四型は爆発した。砲撃しようとしたオルトロス四型は内部から爆裂し、消し飛んだ。一匹残らず。
俺達重歩兵中隊は、直接には何もしていない。やったのは、輸送車に積まれていた荷物だ。
子供の玩具にしか見えない大きさの、小型ミサイルを積んだプロペラ飛行機、試製小型偵察機。1kgの高性能爆薬を内蔵した蜘蛛形の試製小型自走爆弾。100gの高性能爆薬を内蔵した蜻蛉型の試製小型飛行爆弾。
これら合わせて千数百機が、試製小型偵察機は発射腔に小型ミサイルを発射、試製小型自走爆弾と試製小型飛行爆弾は自ら飛び込んで自爆した。
1kgもの高性能爆薬を内蔵した試製小型自走爆弾以外はオルトロス四型を殺すには威力が低かったが、体内の化学反応ロケットを誘爆させるには十分だった。
「爆撃」を終えた試製小型偵察機が、再び小型ミサイルを補給して再攻撃する為にこちらへ戻ってくる。オルトロスもこちらへ向かってくる。

--オルトロス…

--オルトロス……

--戦いはまだ序盤…

--仕掛けも整えてある…

--…宴は、これからだ。


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