既に身体は悲鳴を上げていて、動力部はマグマの如く熱暴走している。脚もそこら中からオイルが吹き出し、思う様に動いちゃくれない。
だが、私は立ち止まる訳にはいかないのだ。今、私の両腕で抱かれて丸まっている、この華奢で繊細で--私を救ってくれた、少女の為に。
だが、私は立ち止まる訳にはいかないのだ。今、私の両腕で抱かれて丸まっている、この華奢で繊細で--私を救ってくれた、少女の為に。
全ては半年前だった。あの頃の私は、奴の命令によって慈悲も感情も知らぬ、殺人機械だった。
皆、私を恐れ、そして私の手が積み上げていく屍の山が奴の力の誇示となる。永遠に続くかと思われた、奴の支配。
しかし神の堪忍袋の緒が切れたのか、支配されていた者どもが武器を手に取り、遂に決起を起こした。
虐げられた者どもの怒りは凄まじく、奴の手下達はみるみる間に滅されていく。それは私も例外では無かった。
命を投げ捨て決死の戦いを挑む者どもの猛攻に、私は圧倒されてしまった。破壊される部位と共に私は自らの存在ごと、者どもに潰された。
皆、私を恐れ、そして私の手が積み上げていく屍の山が奴の力の誇示となる。永遠に続くかと思われた、奴の支配。
しかし神の堪忍袋の緒が切れたのか、支配されていた者どもが武器を手に取り、遂に決起を起こした。
虐げられた者どもの怒りは凄まじく、奴の手下達はみるみる間に滅されていく。それは私も例外では無かった。
命を投げ捨て決死の戦いを挑む者どもの猛攻に、私は圧倒されてしまった。破壊される部位と共に私は自らの存在ごと、者どもに潰された。
私はからがら逃げ出し、バランスを崩しビルの狭間へと落下した。放棄された廃棄物の小山の中で昨日を停止する--矢先。
私に近寄ってくる、ボロ布の様な服を着た、幼い少女。少女は薄汚れた大気によって灰色に汚れた花を、私にかざした。
私に近寄ってくる、ボロ布の様な服を着た、幼い少女。少女は薄汚れた大気によって灰色に汚れた花を、私にかざした。
私は少女に問いた。
「私が怖くないのですか?」
彼女は私に言った。
「怪我、してるんでしょ?なら人もロボットも、関係無いよ」
そう言いながら、少女は私の頭部をさすりながら目を閉じ、何度も、何度も、言った。
「いたいのいたいのとんでいけー、いたいの、いたいの、とんでいけー」
「私が怖くないのですか?」
彼女は私に言った。
「怪我、してるんでしょ?なら人もロボットも、関係無いよ」
そう言いながら、少女は私の頭部をさすりながら目を閉じ、何度も、何度も、言った。
「いたいのいたいのとんでいけー、いたいの、いたいの、とんでいけー」
瞬間、雷撃。今まで経験した事の無い衝撃を、私は感じた。しかしその衝撃は破壊や損傷ではない。説明できない、<異常>バグだ。
この日以来、頭部に搭載された人口知能が少女に対して防衛する事を指示する。初めて私は、奴の命令以外の行動をする事になる。
奴を吊し上げ惨殺した者どもによる、私の様に奴の配下に付いていた者を狩る、通称「正義証明」が始まった。
私は少女が住む、ゴミ溜めの中で作られた住家に住む様になった。少女はここなら皆に見つからないと、言った。
この日以来、頭部に搭載された人口知能が少女に対して防衛する事を指示する。初めて私は、奴の命令以外の行動をする事になる。
奴を吊し上げ惨殺した者どもによる、私の様に奴の配下に付いていた者を狩る、通称「正義証明」が始まった。
私は少女が住む、ゴミ溜めの中で作られた住家に住む様になった。少女はここなら皆に見つからないと、言った。
少女が言うには、このゴミ溜めは殆ど、奴の廃棄したゴミの山らしい。奴が支配し始めたせいで仕事を失った大人達が増え、街は一瞬で、ゴミに染まった、と。
私は自らがなぜ、奴に忠誠を誓ったのかが理解出来ないと共に激しく恥じた。
もし私が奴を殺していれば、この少女--アゲハがこんな悲惨な運命に会わずに済んだのに。
私は自らがなぜ、奴に忠誠を誓ったのかが理解出来ないと共に激しく恥じた。
もし私が奴を殺していれば、この少女--アゲハがこんな悲惨な運命に会わずに済んだのに。
しかし私がそう思うのと反対に、アゲハは私に切なさを秘めた表情で、言った。
「あの人がいなくても、この国は狂うのが運命だったんだよ。遅いか、早いか、だけ」
続けて、アゲハは言った。
「貴方があの人のロボットなのは知ってた。けど、私は貴方を見捨てるたくなかった」
「何でか分からない。だけどね、助けたいと思う気持ちに、人もロボットも関係無いでしょ?」
私は、いや、私の身体はアゲハを、抱きしめていた。
こんな行動はプログラミングされてはいない。いないが、私の身体はその行動を、知っていた。まるで、最初から。
こんな行動はプログラミングされてはいない。いないが、私の身体はその行動を、知っていた。まるで、最初から。
「正義証明」を推参していた者どもの行動が、目に見えて異常化してきた。少しでも奴、いや、ロボットに言及した仲間--否。
人間を、殺していく。刃向かう人間は全てを奪われ、尊厳を侵され、無惨に殺されていった。
次第に「正義証明」の魔の手が、私達に迫ってきた。私はアゲハに私を差し出して逃げる様に告げた。
だがアゲハは私のそれに頭を横に降る。何故だ?と私は問う。
だがアゲハは私のそれに頭を横に降る。何故だ?と私は問う。
「貴方がいてもいなくても、あの人達は私を殺すよ」
「だから私は逃げない。逃げたら、私はあの人達に負けた事になる。それに」
「だから私は逃げない。逃げたら、私はあの人達に負けた事になる。それに」
「私は貴方が好きだから。貴方を置いて逃げるなんて出来ない」
「アゲハ……」
アゲハはそう言い、私の胸元に身体を寄せた。アゲハの温かな体温を、しっかりと感じる。
「アゲハ」
「何?」
「何?」
「逃げましょう」
私はアゲハの有無を聞かず、即座に両腕でアゲハを抱き抱え、住家から飛び出した。
瞬間、背後で凄まじい爆発音と共にこの世の光景とは思えない業火の火柱が巻き上がり、火の粉が振りそそぐ。
遠方で銃火器を持ちゲスな笑いを浮かべる「正義証明」が、諸々の乗り物に乗って走ってくる
遠方で銃火器を持ちゲスな笑いを浮かべる「正義証明」が、諸々の乗り物に乗って走ってくる
私はアゲハを抱え、逃げる、逃げる、逃げる。
奴らが銃火器で私の脚を、背中を蜂の巣にせんと撃ち抜いてくる。
だが、私は止まらない。アゲハを……アゲハをこの国から脱出させるまで、朽ちる訳にはいかない。
奴らが銃火器で私の脚を、背中を蜂の巣にせんと撃ち抜いてくる。
だが、私は止まらない。アゲハを……アゲハをこの国から脱出させるまで、朽ちる訳にはいかない。
「もう良い!もう……もう止めて!このままじゃ、貴方が……」
「アゲハ、貴方の……貴方のお陰で、私は私である意味を知る事が出来た」
「ただのロボットである私が、プログラミングされていない、何かに触れる事が出来た」
そろそろ境界線に着く。
この境界線を越えれば、「正義証明」の奴らは協定により手が出せなくなる。
この境界線を越えれば、「正義証明」の奴らは協定により手が出せなくなる。
私はアゲハを、境界線の先のあの国へと下ろした。
そして、奴に命令されてやっていた、お辞儀なるプログラムを、アゲハにする。
そして、奴に命令されてやっていた、お辞儀なるプログラムを、アゲハにする。
「一緒に行こうよ!あの国ならロボットも認められるから、貴方も……」
私は首を振る。
そして胸元の装甲を剥ぎ取る。そこには真っ赤になって融解しそうな程に暑くなっている、動力部。
そして胸元の装甲を剥ぎ取る。そこには真っ赤になって融解しそうな程に暑くなっている、動力部。
「見ての通り、私はもう限界です。だから私は、ここで朽ちます」
「今まで有難う。アゲハ。貴方の事は、わすれない」
アゲハが私に叫ぶ声が聞こえる。私はアゲハの絶唱を振り切り、「正義証明」へと走り出す。
有難う、アゲハ。
愛、してる。
「無惨に死ねえええええ!!!」
「その宣告」
「お断りします」
それから、この国を支配していた「正義証明」は実質、末端を残し全滅する。
あれから人間とロボットは互いに共存し、この国は平和となる。
あれから人間とロボットは互いに共存し、この国は平和となる。
しかしなぜ、「正義証明」が全滅したのか、その真実は明らかになってはいない
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