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未来系!魔法少女 ヴィ・ヴィっと!メルちゃん 転

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ParaBellum

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                                    今までのあらすじ!

         ちょっぴりドジっ娘で何処にでもいる平凡な女子高生、メルフィー・ストレインは通学中、謎の落下物を受け止める。
     落下物は自らの名をヴィル・フェアリスと名乗りメルフィーに事の次第を説明しようとしたが、遅刻間近と知ったメルフィーはそのまま学校へと向かってしまう。

      学校には鈴木隆昭という名の転校生が現われ、メルフィーはどこかで会った様な覚えがありながらも気のせいだと思い、隆昭と顔見知りとなる。
        その後、友人であるルナと町子と共に体育の授業へと出席したメルフィーだったが、予想だにしないトラブルに立て続けに巻き込まれていく。
       何者かの気配を察知していながらも、その何者かの姿を捉えらないメルフィー。と、同じく気配に気づいた町子が突拍子もない行動を起こす。
                その行動は驚くべき事に的中。三人の前に、不思議な少年、オルトロック・ベイスンが現われた。               

                姿がバレたオルトロックは逆上し、三人はおろか、体育の授業に出ている生徒や先生さえも毒牙に掛ける。
            オルトロックによって命の危機が迫るメルフィー。もう駄目かと思われた矢先、メルフィーは姿を変えた隆昭によって、間一髪救出された。
      メルフィーを屋上まで運んだ隆昭は、メルフィーにヴィルを使って変身するよう提言する。メルフィーは事情が全く呑み込めないものの……。

         果たしてメルフィーは決意し、変身することが出来るのか、そして最凶最悪な闖入者、オルトロックを倒す事は出来るのだろうか!?


                                    未来系!
                                    魔法少女


                               ヴィ・ヴィっと!メルちゃん 転

「よく決断してくれた、メルフィー。ヴィル」
『了解しました、ご主人様』                               

私の返事に鈴木君は深く頷くと、ヴィルは鈴木君の左肩にちょこんと乗っかり……変形、し始めた?
ヴィルが自分の腕や足を畳んだり縮ませたりしながら、ロボットから別の何かへと変形し始めたのだ。私はその光景にただただ驚いて、呆然と眺めている事しか出来ない。
数秒程すると、ヴィルがロボットから……拳銃? 所々が角ばっていて、殴られでもしたら凄く痛そうな、大きな拳銃へと姿を変えた。
けど、拳銃と言うには何と言えば良いのだろうか、綺麗すぎる。半透明な白色に、銃身とかに入った蒼いラインがカッコ良くて、見てて惚れ惚れする。

……って何冷静に品評してるんだ、私。変形したヴィルの銃身を持つと、鈴木君は私にヴィルを向けて、言った。

「受け取ってくれ、メルフィー」

……素直にはいそうですか、と受け取れる程、私の性根は強くない。さっきは何となく雰囲気に流されて言っちゃったけど……。
鈴木君とヴィルを交互に見る。鈴木君の目はまっすぐ私の事を見据えていて、私の事を心の底から信じている様な、そんな気がする。
……ごめん、鈴木君。やっぱり……やっぱり怖い。もしこれを受け取ったら、私……もう元の生活に、戻れなくなりそうで。

「メルフィー?」

私が怯えているのを察知したのか、鈴木君が若干、険しい顔つきでそう言った。
分かるよ? 分かるけど……どうしても怖い。どうしても手が伸ばせない。怖い。……怖いよ。

「鈴木君、私……」

「私、やっぱり怖いよ。凄く……怖い。もう……もう、昔に戻れなくなる気がして」
「メルフィー……」

正直に心境を話した私に、鈴木君が心配そうな表情を浮かべた。けど、鈴木君はすぐに険しい顔つきに戻って、厳しい口調で言った。

「メルフィー、君の怯えは分かる。確かに君の考えている様に、ヴィルを受け取ったら、もう昔の様な学園生活を送れなくなるかもしれない。

 だけど、大切な皆を、愛している学校を守れるのは君しかいないんだよ。オルトロックを倒して、平和を取り戻す事が出来るのは君にしか出来ないんだ。メルフィー」

「だけど……怖い物は怖いよ! 嫌ったら嫌!」

だって……だってそうじゃない! 今日は朝から訳の分からない事ばかりが起きてて、しかも何の説明も無しで、関係の無いルナや町子や皆が危険な目に合わされて……。
それだけでも頭がどうにかなっちゃいそうなのに、いきなり変身しろ? 幾らなんでも無茶苦茶すぎるよ! 私まだ何も……何も分かってないのに!
お願いだから夢なら覚めてよ! 私……私、もう嫌だよ。こんな何も分からないまま……闘えだなんて。私は耳を塞いで、その場にしゃがもうと――――。

「……分かった」

ほぼ、一瞬だった。鈴木君が、私の体を強引に引き寄せて、私の顔と鈴木君の顔が至近距離まで近づく。頭が真っ白になって、何も考えられない。
そのまま間髪いれず、鈴木君は私の唇を――――――塞い、だ? 何が起きたか自分でも理解できず、私は間抜けな表情で、鈴木君をポカンと見つめた。

次第に何が起きたかが、頭の中で整理されていく。
鈴木君が私を抱き寄せて、顔を近づけてそのまま……キ、キス……された? キス……キスされたの? 私?
急激に頭の中が沸騰した様に熱くなって、顔が真っ赤になるくらい恥ずかしくなって、それでいて、凄く……悔しくなって―――――。

「……馬鹿っ!」

私は渾身の力を込めて。鈴木君の右頬を平手打ちしていた。鈴木君の顔がオーバーなくらい右側へと振り切れる。けど、全く可哀相だとは思わない。

まだ……まだ、好きな男の子だって見つかってないのに。手を繋ぐ事さえしてないのに……こんなの……こんなのってないよ!
好きでも嫌いでもない、ただの顔見知り程度の子にいきなり初めてのキスを奪われるなんて……もう……最悪! 最悪で最低!
思いっきり泣いてやろうと思っても、あまりにも急な事で全く泣けない。代わりに頭の中が恥ずかしさとか悔しさとかで一杯になって、どうすればいいのかが分からない。

ふと気付くと、私の右手に何時の間にかヴィルが握られていた。
一体何時の間に……と思っていると、腫れている右頬を押えながら、鈴木君……いや、鈴木がしてやったりみたいな顔をしながら、言い放った。

「強引で済まない……けど、君はそれを受け取った。後は分かるね?」

もしかしていきなり鈴木がキスしてきたのは……私に、ヴィルを受け取らせる為だったの? そんな事をする為にわざわざ……。
私は心の中で思いっきり地団太を踏んだ。何から何まで手玉に取られているように感じて。けど受け取ってしまったのは曲げようの無い事実だ。
……あぁぁぁぁぁ! もうこうなったら自棄になってやる! この訳分かんないぐちゃぐちゃした感情、全部オルトロックにぶつけてやるんだから!

「分かったわよ! やればいいんでしょやれば! で、どう変身するの!」

私は今まで生きてきた人生の中では、一番凄んだ表情と声で鈴木に聞いた。よっぽど痛かったのか、鈴木は右頬を押えたまま、左人さし指を空へと向けた。
私がその動作に不思議がっていると、鈴木は右頬を押えながらな為、微妙に聞き取りにくい声で変身する際のプロセスとやらを話し始めた。

「まず、ヴィルを空中へと向けてくれ。そして引き金を引くとセーフティーロックが解除されて、変身する際の第一段階となる。
 第二段階は、ヴィルに向かって変身コード、チェンジング・フェアリスと叫びながら、もう一度引き金を引く。
 すると最終段階としてヴィルが変形・分離し、バトルスーツとして君の体を守る為に瞬時に装着される。分かったかな?」

つまりヴィルを上に向けて二回引き金を引いて、その間にその……ちょっと恥ずかしいけど、チェンジング・フェアリスと叫べばいいのね?
迷ってる暇は無さそう……! 私はすぐさま、ヴィルを握っている手を上へと上げて、ヴィルを空中へと向ける。そして思いっきり、引き金を引いた。

凄い……! 引き金を引いた途端、ヴィルの銃身が音を立てて左右に割れると、間から瞬く様な蒼い光が溢れだしてきた。
その光に続く様に、蒼いラインも鮮やかに発光しだす。変身するのを待ちかねているのか、ヴィルがモーター音の様な音を出し始めた。
鈴木が大声で、私に次の段階へと進むように声を上げる。そうだ、ボーっとしちゃいられない。

「良し! 早く変身コードを叫ぶんだ、メルフィー!」
「う、うん!」

ふと、私の脳裏に一瞬、思っちゃいけない事が浮かんでくる。それは昔、私が小さい頃に見た、魔法少女とかが出てくる、そんなアニメ。

主人公である女の子達は皆、何故だか知らないけど変身を遂げる前に裸になっていた。……って事は。
……やだ、やだやだやだ! 只でさえキスを奪われたのに、裸まで見られるなんて私……どこまで鈴木に辱めを受ければいいの!?
猛烈にヴィルを投げたい気分に駆られる。けどそんなことすれば裸を見られるどころじゃない、大変な事になる事も理解できる。だ、だけど……!

「何してるんだ、メルフィー! 早く叫ぶんだ!」
「で、でも……」

「安心しろ! 全裸になるのはほんの一瞬だ! だから早く!」

……今、何と? 今確かに全裸に……全裸になるって言ったよね! ちょっ……ちょっとぉ! どこまで私を辱しめたいのよ!?
というか誰が作ったか知らないけどそこら辺考慮しなさいよバカバカバカ! 真面目にヴィルぶん投げるわよ!
だけどこのままうだうだしてたらオルトロックが襲ってくる。……ええい、もう成すがままに!


「み――――つっけた!」


来……来ちゃった!? 一番聞きたくなかった声が聞こえて視線を空に向けると、そいつが残虐でかつ無邪気な笑顔を浮かべながら、私と鈴木を見下ろしていた。

足や腕に、見るからに強固そうな鎧を思わせるパーツを身につけ、頭にはカブトムシの触角を思わせる角を付けた、顔が隠れるほど大きなヘルメットを被ったオルトロックが、飛んでいる。
そのパーツ全てが真っ黒で、なおかつオルトロックの背後から、おびただしい量の光で成形されてる……翼? が見える。あれで恐らく飛んでいるのだろう。
しかし私が目を引かれたのはそれだけじゃない。身の丈の数倍大きな、両方が刃になっている剣を、オルトロックは軽々と右肩に担いでいる。

「私から隠れて二人でにゃんにゃんなんて……絶対に許さないからね」

オルトロックはそう言いながら、担いでいる大剣をゆっくりと振り下ろし、舌舐めずりした。心の奥底でゾクリとして、私は自分の体が震えている事に気付く。
勿論寒さからではない。私は本気で、オルトロックを怖いと思っている。その怯えからか、体が思った様に動かない。逃げなきゃ、と幾ら思っていても、動いてくれない。
すると大剣に細かい亀裂が入り始めた。いや、亀裂じゃない。あの大剣……分離しているんだ! 
見る見るうちに大剣は、異常なほどに研ぎ澄まされた刃が百足の足の様にくっ付いた鞭へと変化した。

「ばいば~い、私の恋路を邪魔する、憎たらしい雌豚さん!」

次の瞬間、オルトロックがその鞭を八の字に回し始めた。次第に凄まじい早さになり始め、鞭の姿が見えなくなる。
あんなにやられたら一巻の終わり……でも、体が動かない! オルトロックが迫ってくる。お願い……動いて、動いてよ……!

「死んじゃえ!」

「メルフィー!」

地面に、体が叩きつけられる。……私、生き……てる? 鈴……鈴木君が、私を……庇って、くれたの?
視線を横に向けると、あの鞭によって抉られたコンクリートの地面が見えた。さっきまで私達の居た場所は、鞭によって荒々しく削られ、更地へと変わっていた。
もし……もし鈴木君が助けてくれなかったら、私は今頃……って鈴木君!? 鈴木君の背中に……傷が……。

「……無事か?」
「う、うん。けど、鈴木君が……」

鈴木君が立ちあがって、私に心配ないと言った感じで微笑みかける。けど、鈴木君は頭を押えてふらつきながら、その場にしゃがんだ。
鈴木君の背中から一滴、二滴と血が落ちてきて……やがて、鈴木君の背中から、目を背けたくなるくらいボトボトと血が流れては、地面に水たまりを作っている。
考えるよりも早く、私はヴィルを置いて体操服を脱ぎ、鈴木君の背中へと回り込んで止血する。けど……幾ら押えても……。
あの鞭によって、鈴木君の背中には大きく肌を抉った、深い傷が出来ていた。私の体操服では止められないくらい、鈴木君は血を流し続ける。
私が……私が迷ってるから、鈴木君が……。お願い、止まって……止まってよ……。けれど幾ら押えても、血は、止まらない……。

「ごめん……ごめんね、鈴木君……私が……」
「……気にすんな、メルフィー。これくらい……かすり傷だよ」
「かすり傷って……鈴木君!」

朦朧としたのか、鈴木君は倒れそうになった。支えると、やけに……鈴木君の体が軽く……感じる。
鈴木君は私を不安にさせない様に、笑顔を見せながら話して……くる。駄目……駄目だよ、鈴木君……。

「さっきは……いきなりキスして、ごめんな。けど……あぁでも、しないと……メルフィー……戦えなかった……からさ」
「もう……もう喋らないで! これ以上喋ると、傷が……」

「変身……するんだ、メルフィー……。君の守りたい……モノの……為に……」


「あー! またイチャイチャしてる! もーオルちゃん怒ったからね! 今回ばかりはダーリンも、痛い目見て貰うよ!」
「オルトロック!」

はっとして見上げると、移動していたオルトロックが大剣をこちらに構えていた。考えるまでも無く……私達を殺すつもりだろう。
最悪……いえ、最悪なんてもんじゃない。私の頭の中には、もはや絶望しかなかった。鈴木君は息絶えそうになっており、私はこの期に及んで、決心がつかない。
ヴィルを置いた場所へと移動した所で、私は殺される。私の体は、石の様に固まって動かない。恐怖が……私自身の体を支配してしまった。もう……動けない……。


「私とダーリンの汚れなき愛を邪魔する、汚らわしい雌豚を……断罪しまーす!」


オルトロックが翼を大きく羽ばたかせて、急降下してくる。あんなスピードじゃ、絶対に避けられない……!


「メルフィー! 受け取れぇぇぇぇ!」

「鈴木君!?」

受け身をしながら鈴木君がヴェルを持つと、私へと放り投げた。宙を舞う、ヴィル。
途端、私の頭の中が白くなる。けど、放心状態って訳じゃない。私が今、何をすべきか――――――――ごちゃごちゃと絡んでいたモノが、一気にクリアになった。
ヴィルを受け取り、私は立ち上がり、こっちに向かってくるオルトロックを睨みつけながら、ヴィルを空中へと向ける。そして―――――叫ぶ。喉が枯れる程の、大きな声で。



                           「チェンジング……フェアリス!」


「な……何ぃ!?」

メルフィーが変身コードを叫んだ瞬間、メルフィーと隆昭を、光り輝く蒼いオーラが、ドーム状になってオルトロックの攻撃を打ち塞いだ。
歯を食いしばりながら、オルトロックは貫通させようと大剣―――――グラン・ファードを突き立てるが、そのオーラは異様な強度を保っており、傷一つ付かない。

やがてそのオーラが一か所に収束し―――――屋上へと上がる出入り口を消滅させながら、極太の蒼く巨大なビームとなって、オルトロックを直撃する。
そのビームはオルトロックを巻き込んだまま一直線に伸びていき、直線上に立つ高層ビル群に巨大な穴を開けながら貫通していく。逃げまどう、会社員達。
やがてメルフィー達が居た場所から数千㎞も離れた山々へとビームはぶつかった。
地面を激しく揺らす程の衝撃に、鳥や動物達が慌てて移動し始める。直撃地点にあった木々は消滅し、綺麗にクレーター上の凸凹が出来た、が。

直撃地点にオルトロックの姿は―――――――――無い。

――――――――――――私は、無意識に閉じていた目を静かに開く。いやに頭の中がすっきりとしていて、余計な事が何も浮かばない。

自分の両手を見ると、全ての指に変な機械みたいなのが付いている事に気付く。これ……手袋じゃない、よね?
……そうだ、鈴木君! 鈴木君を今すぐ運ばないと! そう思って振り向いたけど……何故か鈴木君の姿は影も形も無く消えていた。
まさかオルトロックに……いや、それだったらオルトロックが何かしら私に……あ、そうだ。

オルトロック……何処に行ったの?


混乱しているメルフィーには悪いが、少し時間を戻そう。

メルフィーが変身コードを叫んだ瞬間、メルフィーと隆昭を、広範囲に及ぶ青いドーム状の光が覆った。
その光は収束しながら、攻撃を加えるオルトロックを外敵と判断し、防護機能の一環としてビームによる攻撃を加える。少しばかり、やり過ぎた感があるが。

その間にヴィル・フェアリスを成型するパーツが全て分離すると、メルフィーの体の各部へと移動し、拡大・伸縮・変形を繰り返しながらバトルスーツへと形を変えていく。
メルフィーの膝・ひじ・両手・両足等の部分へとそのパーツは装着されていき、最も重要な頭部を覆いながら、ヘルメットが装着される。
最終的にCASなるサポートシステムとなったヴィルと通信する為に設計された、狐の耳を模した通信機が転送され、変身完了となる。

近未来的な美しさと機能性。兵器的な逞しさと重圧さ。その対照的な二つを兼ね備えており、尚且つ。       バ ト ル ス ー ツ
古来の神話に置ける、ワルキューレやヴァルキリ―の様な誇り高く、気高き女神を彷彿とさせる―――――その汎用型装着戦闘服の名はヴィル。


                              ヴィル・フェアリス。


                          ちなみに、変身を遂げるこの一瞬、0.05秒。


「は、ははっ……やっぱり、俺の見込ん……通……り……だ」

隆昭は目の前で変身を遂げたメルフィーに、吐血しながら嬉しそうに笑うと、パチンと指を鳴らした。

「少……し……遊びすぎ……たな」

次第に、隆昭の体が薄く透けていく。隆昭は朦朧としながらも、背中を向けているメルフィーに人さし指と中指を揃えると、ニヤリとしながら、言った。

「後は……頼んだぜ……ヴィル……それに……メルフィー」

次の瞬間、隆昭の姿はそこから煙の様に消えた。しかし確かに存在していた証拠として、点々とした血痕と、血だまり。
変身を終えたメルフィーが、ゆっくりと目を開ける。



ここで時間を先程まで戻そう。


まぁ、鈴木君の事は置いといて……何だか良く分からないけど……どうやら私は変身、したようだ。
変身できたは良いけど……何だか凄く恥ずかしいんだけど、この格好……。ていうか何でレオタードっぽい衣装なの?
風が吹いてきて凄く寒いんだけど。それにこう……これってなんて言うか……完全にコスプレじゃない、これ!
バトルスーツだって鈴木君は言ったけど、スーツとは思えないくらい露出度高いんだけど! もうやだホント……これ作った人、恨むわ。

『変身出来て良かったです……』

ヴィル? どこにいるの? 周囲を探してみるけど、鈴木君と一緒にヴィルの姿も何処かに消えてしまった様だ。
けど、何故か声がする。ヴィル……? いるなら出てきて?

『ここです。通信機……というか頭に付いてるこの耳の辺りです』

耳? ……あぁ、何かこの妙にとんがった変なのか。何だか妙に安心した。全く安心できる状況じゃないけど

『変身時の防護機能によって、オルトロックはしばらく襲ってこないと思います。ので、簡潔にですがメルフィーさん、貴方に何が起こっているかを説明致します』

説明って……こんな時にしている暇があるの? いや、むしろ良く分かんないけどオルトロックがいない今だからこそか。
私が頷くと、ヴィルは私に今何が起きているのかを話し始めた。

『まず、驚かれるとは思いますが……メルフィーさん、貴方と鈴木隆昭は将来、結婚いたします』

……う、うん。何となくそんな気はしてたよ。何だか今までいろんな事が起こり過ぎてその程度の事は驚く気にもならない。

『それで……』
「待って!」

耳元に飛び込んでくる、凄い勢いで風を切る、何かの音。考えるまでも無い。オルトロックだ。
遥か遠くへと目を向けると、黒い翼を肥大化させ、こちらに向かって高速に飛んでくる。あの様子だと、かなり頭にきてるみたい。
丁度良かった。色んな意味で溜まりに溜まった怒りを、本気でぶつけたかった所だし。私はヴィルの話を中断させる。

「ヴィル、話は後! オルトロックを倒すのが先よ!」
『は、はい! ではこのスーツの説明を致します!』

ヴィルがそう言った瞬間、腰元に付けられた厚い板みたいなのがガチャリと音を立てて扇形に開いた。
その間には……カード? カードらしき物が一杯入っている。これは一体……?そう首を捻っていると、ヴィルが説明し始めた。

『このスーツにはシャッフル・システムというシステムが搭載されていて、カードを引き出し、カード名を唱える事により、そのカードが持つ効果を発動する事が出来るんです』
「よく分からないけど、魔法を使えるみたいな事?」
『だいたいあってます! 一先ずカードを抜いて下さい!』
「流石ダーリンを奪っただけの事はあるわね、雌豚! でも私の愛の炎は、これぐらいじゃ収まらないんだから! それにこの程度で死ぬオルちゃんじゃないもん!」

オルトロックが大剣を両手持ちして、激しく上下左右、自在に動きながら飛んできた。何かこっちに飛び道具は無いの?
私は反射的に間からカードを取りだした。カードには、油絵風に白い翼の絵が書かれている。何々……ウイング。
ウイングって事はつまり……私はヴィルに、このカードの効用を聞いた。

「ヴィル! このカードはどんなカード?」
『そのカードはウイングと言って、空を飛ぶ事が出来る様になるカードです! どうしますか、メルフィーさん!』
「勿論飛ぶに決まってるじゃない!」

「ウイング!」

勢い良く、私はカードをかざしてそう声を上げた。ヴィルが私に続けて、そのカードの名を暗唱した。

『トランスインポート・ウイング』

う、うわ! うわわわわわわわ! な、なに!? 背中から何か凄い音を出しながら変なのが出てきたんだけど!
後ろに目を向けると、背中から蒼い光が凄い勢いで出てきた。けど、眩しくは無い。むしろ、落ちつく感じ。
その光は束となって集まっていくと、大きな翼となった。……何か私、凄く慣れちゃってるんだけど、今の状況に。

『これで空を飛ぶ事が出来ます! ではメルフィーさん、次は武器を!』

「いらないわ」

『え?』

私は翼を生やし、飛び立つ為にクラウチングスタートを取り、一気に走りだす。助走を付けたまま―――――私は屋上から、飛び降りた。
さっきまで感じてた恐怖や怯えの感情が、今は全く感じない。むしろ、こう言ったら変だけど、すっごくワクワクしてて―――――それでいて、すっごいムカついてる。

「生身で来るとかばっかじゃないの!? そのまま団子になっちゃえー!」

大剣を構えたまま、オルトロックが突っ込んでくる。何だか頭も目も、やけに冴えていて、私はその場で立ち止まった。

『メルフィーさん!』

ヴィルが慌てた様に呼びかける。大丈夫だよ、ヴィル。私は――――――死なないから。

「さーよ――なー―――ら―――――!」

両目を見開いて、しっかりとオルトロックの姿を、真正面から捉える。右腕を構えて、胸の前まで持ってきて……。今だ!



                  鉄と、鉄が弾ける音。右腕がそのままもがれそうなほどの衝撃に、私の視界が暗くなる。
                 けど……これで、隙が出来た。目の前には、大剣を弾かれて、驚いている、オルトロックが見える。


                            「そ……え? 弾い……たの? 右……腕で?」

                   理屈は簡単。ただ単に逃げようとせず、右腕で大剣の剣先を防ぎながら弾いた、だけ。   
              もしも少しでも外れてたら今頃私は串刺しになってたけど、上手い具合に大剣が考えた場所へと突っ込んでくれた。
               それに、このパワースーツが思ったより頑丈なのも助かった。少しばかり傷が付いてるけど……構わない。さて……


                                 「覚悟、出来てる?」



                  瞬間、メルフィーの全力を込めた拳が、オルトロックの右頬を正確な角度でぶん殴る。
       オルトロックの端正な顔立ちが、破竹した様に歪んでいく。その威力・パワーは凄まじく、オルトロックはそのままの勢いで、地上へと落ちていく。


「ヴィル! 次は武器を召喚するわよ!」
『はい! メルフィーさん!』


オルトロック……貴方だけは、絶対に許さない! 絶対に!




                                 続 く!!!



                                 次回予告!      


           遂に未来系魔法少女として覚醒したメルフィー! しかーし! シャッフル・システムを持っているのはヴィルだけでは無かった!
           圧倒的な力でメルフィーを追いつめるオルトロック! ロボット物スレ史上もっともギリギリなサービス&ハードなシーン!(になる予定)
          果たして果たしてメルフィーはこの圧倒的な力の差を退けて、オルトロックを倒せるのか!?そしてぇ!鈴木隆昭の本当の目的とは!?


                  明らかに結で終わりそうが無いけど次回、未来系魔法少女!ヴィヴィっと!メルちゃん

                          最終回「結」にご期待あれぇぇぇぇぇ!!



                    「悪魔でも……死神でも……皆を守れるなら、私はなるわ。喜んでね」


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