創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

エピローグ・0

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                           ヴィルティック・シャッフル

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―――――A.D,2060。人類は異星により採掘した新機軸のエネルギー、アイルニトルにより格段の進歩を遂げていた。
長期に渡るアイルニトルの研究により、開発された巨大ロボット、アストライル・ギア。非常に強度と汎用性に優れたそれにより、人々は自らの生活圏を地球から宇宙へと広げる。
その内、人々はブレイブグレイブなる、アストライル・ギアを使った大衆娯楽を生み出した。目覚ましい科学の発展による、素晴らしき未来……ここまでなら。

ブレイブグレイブは世界中を巻き込む程のムーブメントとなる―――――が、その裏で少しつづ、破滅の足音へと忍び寄っている事に、誰も気付かなかった。

何時頃だっただろうか、さる世界大会で、スポンサーを名乗っていた謎の組織、イルミナスが突如として参加選手、もとい全てのアストライル・ギアを完膚なきまでに破壊した。
イルミナスの首領――――ネクサスと自らを称する男は、電波ジャックによって、世界中の人々へ向けて告げた。これは、戦争だと。
ネクサスの宣戦布告と同時に世界を覆い尽くす今まで見た事の無い兵器、マリオネット。各国が主力とする既存の軍事兵器では、マリオネットに対して抵抗すら出来ない。
今まであくまで重機として扱われていたアストライル・ギアが本格的に兵器として導入され――――世界はイルミナスとの戦争へとシフトした。

だが、イルミナスは既に世界を掌握していると言っても過言では無い。
イルミナスの科学力と技術力は、各国の科学力と技術力を遥かに凌駕しており、各国が今更開発した軍用アストライル・ギアなど相手にもならない。
次々と燃やされ、蹂躙される国々。イルミナスは敗北した国家を支配下に置き、自らの領地とした。国の名と誇りは剥奪され、その国は「イルミナス」その物となる。

脅威はそれだけではない。大気圏上に君臨する巨大なアストライル・ギア、ゴルディバ。
ゴルディバに内蔵された大型加粒子砲、ヴェルストリームはネクサスの命令により、如何なる場所であろうと容易に焼き払う事が出来る。
実質、抵抗を試みた国家が複数、ヴェルストリームによって焦土へと変えられている。地上と宇宙、どちらも―――――。

しかし、全ての人々がイルミナスに屈した訳では無い。

イルミナスの魔の手から脱し、抵抗を続ける、国境も人種も超えたイルミナスに仇す人々によるレジスタンス組織――――ERT。
ERTは国を亡くし、行き場を無くした人々を保護しながら、独自に開発したアストライル・ギアと、パイロット達によりこの絶望的な状況下でイルミナスと戦い続ける。
そしてその中には、凄ましい身体能力と、マリオネットを一撃で葬る程の戦闘能力を保持するアストライル・ギアにより、イルミナスを討伐する正体不明の一人の男がいた。

電子機器が搭載された特徴的なヘルメットと、蒼きラインが駆け巡る、白きパイロットスーツに身を包んだ、その男の名は――――。


また街が一つ、イルミナスの手に落ちる。否、手に落ちるというより踏みにじられると言った方が正しいか。

生々しい死体の匂いと、無慈悲な死を思わせる煙硝の匂いが立ちこめる街を、指先に備われたビーム砲で破壊しながら巨大な何かが数機、闊歩している。
何かの特徴と言うべき部位と言える、目玉の様な無機質なカメラアイが、上下左右とギョロギョロと絶え間なく動きながら赤く発光し続ける。

今、街を闊歩しているのは、マリオネットなるイルミナスの無人型量産アストライル・ギアだ。この機体の活躍によって、世界が掌握されたと言っても良いだろう。
マリオネットという名が示す通り、この機体は生気を感じさせない不気味な姿をしている。量産される事を前提に置かれている為、必要最低限の構造に抑えられているのだ。
アイルニトルが搭載された腹部から生えているか如く、伸びている骨の様な脚部と腕部、そしてアンバランスな程に巨大なカメラアイ。
その一切の無駄を省いた構造により高い機動性を誇り、またアイルニトルから直接接続されている両手は砲口は高い出力を誇るビーム砲であり、手刀にする事により、ビームソードとなる。
この機体の恐るべき所は、量産型な故に一機倒しても次々と攻撃してくる事だ。少しでも疲弊すれば、その隙を突かれ―――――そうやって各国の軍隊は成す術なく滅んでいった。

ここで視点を街の方に向ける。マリオネットと、そのマリオネットの派生である、こちらもイルミナス開発の対人型兵器――――キルラットが跋扈する中。
端麗な黒髪のショートカットが煙硝によって茶色く汚れ、服がボロボロに擦り切れ、手足が切り傷や擦り傷で見るも痛ましい姿になりながらも、一人の少女が疾走する。
どうにか自分を叱咤しようと零れてくる涙を腕で拭う。傷口に涙手が染み込んで酷く痛むが、必死に堪えて少女は走る。

少女を追って、四肢をスプリングにより伸縮させながら、4機のキルラットが追う。得物をしつこく追いつめる、猛禽類の如く。

キルラット―――――イルミナスがレジスタンスやゲリラに対する抑止力として開発した、対人兵器だ。
ネズミをモデルとしており、不快感を催す曲線型のフォルムと、スプリング機構によって動作する脚部は目標を素早く追いつめる。
何よりの脅威は、背中に収納され、目標を補足した場合に作動する機銃と、脚部に収納され、目標の足を切断する高周波ブレード。
そして赤外線や夜間での透視機能等を兼ね備えた目、ことマリオネットと同じく、アンバランスな程に大きなカメラアイだ。何処に逃げようと、キルラットから逃れる術は無い。

今から30分ほど前、イルミナスへの抵抗分子と認定され、逃亡していた少女とその家族の住処が特定された。
そしてキルラットとマリオネットによって、少女の家族は勿論、少女の家族と親しい付き合いを送っていた人々が、戦闘員として洗脳するに値する人間以外全員殺された。
少女の目の前で、4機のキルラットは、容赦無く少女の父親も、母親も、弟も死体へと変えた。父親が早く逃げろと叫んでいなければ、恐らく少女も―――――。

少女は逃げながら、今までの日々を思い出す。イルミナスによって戦場と化した世界で、家族や友人と過ごした日々。とても苦しかったが、それでも生きる事に希望を持てた日々に。
だが、その日々は一瞬で破壊されてしまった。イルミナスは少女の希望を蹂躙し、凌辱し、全てを奪っていった。
目の前で家族が、友人が、ズタボロの布切れの様に軽々しく死んでいく。さっきまで親しく話していた人々が、気付けばただの骸となっている。

正直、少女の精神も肉体も既に限界を達していた。少女の息は激しく乱れており、足元は歩くのが背一杯という程にふらついている
後方からはキルラットが追ってきている事は分かっている。逃げなきゃ。けど、もう――――。その時、少女はその場で大きく転倒してしまった。
意識が朦朧としていた為か、目の前に転がった瓦礫の破片に気付かなかったのだ。少女の足には一文字の大きな傷が出来ており、血が飛び散っている。

「……もう」
少女は体を起して、体育座りをすると深くうずくまった。キルラットがこっちに向かってくるのが見えるが、もう体力が底を尽きた為、動けない。

「もう……無理だよ……」
顔を両手で覆い、少女は泣きじゃくる。冬の寒さが、少女の傷だらけの肌を一層傷つける。立ちあがる気力も、体力も無い。
目元が涙で滲む。悔しい。こんな不条理に、かつ簡単に何もかも奪われても、自分には何も出来ない、その現実が何よりも悔しい。

「お父さん……お母さん……シュウ……」
もう、私には誰もいない。何時も厳しいけど、時折優しかった父親も、どんな事があっても包みこんでくれた母親も、やんちゃだけど元気に励ましてくれた弟も。
誰も……。何時の間にか涙が乾いていて、キルラット達が囲んでいる事に気付く。少女は意を決する。ごめん、ごめんね、皆―――――。


「エクステッド」


その瞬間、少女の耳に人工的な男の声が聞こえ、少女の前方にいたキルラット達が全て、音も無く切断された。長く伸びる、蒼い刃によって。
死を覚悟した少女は、自分が死んでいない事に気付き、恐る恐る顔を上げる。その瞳に映るは――――一奇妙なヘルメットを被った、これまた奇妙な出で立ちの男だった。

男は細身の体ではあるが、それを感じさせない屈強な雰囲気を醸しており、恐らくパイロットスーツであろう白き衣装には、所々に血管を感じさせる蒼きラインが走っている。
頭部を覆うヘルメットには通信機だろうか、触角の様な物が伸びており、二つの大きな目――――だろうか。カメラアイが緑色に発光している。
少女は男の姿に、弟が自分に良く見せていた……特撮のヒーローを思い出していた。名前は思い出せないが。

「立てるか?」
男は呆然と見上げている少女にそう聞いた。少女は数秒ほど呆然と見上げていたが、ハッとすると慌てて立ち上がった。
男は頷き、左手に持った、蒼い刃を発する、柄が異様に太い、銃の様な形の不思議な剣を右手に移すと、少女を足元から抱え、自らの左腕に乗せた。
少女は落ちない様に、男の首に自分の腕を絡ませる。


「君の命、私に預けてほしい」


低く、しかし優しい声で、男は少女に言った。少女は男をじっと見つめ――――大きく頷いた。
異常を感知したのか、他で偵察していたキルラット達が男の元へと寄って来た。何時の間にか囲まれているようだ。
その内の一機が、脚部を伸縮させて、飛びかかる。瞬間、カメラアイが蒼く光り――――無機質な女性の声。

『重力制御起動』
「怖かったなら目を閉じていてくれ」

男の言葉に、少女はじっと目を閉じた。キルラットが飛びかかった先に――――男と少女の姿は、無い。
カメラアイを上に向けた途端、一瞬でキルラットのモニターがモザイクとなり、プツリとブラックアウトした

男は両足で、キルラットの胴体部を叩き潰していた。反応した他のキルラット達が背中から機銃を引き出すが、既に男の姿はそこにはない。
右足、左足と、男は跳躍しながら、次々とキルラットの胴体部を叩き潰す。男の攻撃は少女を庇っているとは思えないほど実に軽快だ。まるでそこだけ重力が消えている様に。
キルラット達は男の攻撃に成す術も無く、男が着地した瞬間、一斉に膨張し、爆発した。

マリオネットから隠れて、男はどこからか持ちだした包帯を、少女の足に巻き付けるとこう聞いた。
「もう少しだけ、頑張れるか?」
少女は無言で頷く。男はもう一度少女を抱く。

「少しばかり揺れるが、心配しなくて良い」
男が囁くように少女にそう声を掛ける。少女は男に言われたとおり、目を閉じた。

キルラットが全て沈んだものの、未だにマリオネット達が、生存者がいないか何度も首を上下左右に振っている。
その視界は広い。このままでいれば、少女も男も何れ見つかってしまう。と、男が何を考えているのか、あろう事にマリオネットに向かって走り出した。
次第にマリオネットの姿が近くなり、マリオネットのカメラアイが男の姿を捉える。その瞬間、男が剣の柄を変形させた。

男の手に握られているのは、剣では無く銃だ。銃身が漆黒で染められ、また角ばっていてエッジが利いており、大きい。
男は銃口をマリオネットのカメラアイに向けると、引き金を幾度か引いた。すると銃口から、蒼く光る弾丸が放たれた。
凄ましい威力なのか、その弾丸により、カメラアイに複数の穴を開く。カメラアイの機能が潰された為、マリオネットの動きが止まる。

男は続けて、右腕をマリオネットの頭上に向ける。すると左手の甲に楔が実体化し、射出された。楔の後には、太いワイヤーが繋がっている。
楔がカメラアイの上部に引っ掛かる。男が見上げると、ワイヤーが一気に男を引き上げた。怖いのだろう、少女が自らの体を男にぎゅっと寄せた。
装甲を蹴りあげながら、男がマリオネットの頭部に飛び乗る。そして立ちあがり、銃を天空へと向けた。

「すまない。少しばかり騒がしくなるが、我慢してくれ」
男の言葉に、少女は小さく頷いて一層目を強く閉じる。
少女に頷き返し、男は銃を下に向けると、勢い良く突き出した。すると銃身がスライドし、中には蒼く、メカニカルな構造が覗くもう一つの銃身が出てきた。
男の足元を青い魔方陣が広がる。その魔方陣は緩やかな回転から、次第に速くなっていく。

「行くぞ、オウガ」
男がそう呟き、再び銃を天空に向けて引き金を引く。瞬間、マリオネットの周辺を蒼い光が包む。その光は、地上から天空へと伸びている。
突然の閃光に、囲っていたマリオネット達が瞬時に後方に下がる。光が次第に収束していき――――そこに居るのは、マリオネットではなく、全く別の機体が居た。
黒き機体色を彩る、聡明な蒼いライン。騎士を彷彿とさせる精悍なスタイルにそぐわぬ、右腕を重装甲の拘束具。

そこにいたのは――――色や形は違えど、紛れもなく、ヴィルティックだった。否、今の名は―――――ヴィルテイック・オウガ。

何が起こったか分からず、少女はぼんやりと目を開く。どうやら自分は膝元に座らせて貰っているようだ。
状況はよく分からないが、多分……ロボットに乗っている事だけは分かる。体力が限界を逸した為か、少女の目は自然に閉じていた。その中で、少女は思う。

―――――この人が、私を助けてくれた。私も……この人の様にイルミナスに……。

オウガの左手に、巨大な杖―――――インペリアルロッドが召喚された。オウガは静かな佇まいで、マリオネットに向ける。
一機が手刀を作り、ビームソードを成型して斬りかかる。が、オウガは微動だにせず、ロッドを伸縮させてカメラアイへと突貫させた。
突貫させたまま、オウガは機体を宙返りさせて、背後から斬りかかってくるマリオネットに向けてロッドを叩き落とす。鈍い衝撃音の後、爆発。

残りのマリオネット達がビームキャノンを乱射してくる。しかしそれらの攻撃を全て、オウガはロッドを高速で回転する事により防いでいる。
高速回転させたまま、オウガはマリオネット達に向かって勢いよくロッドを放り投げた。ロッドは伸縮し、マリオネット達を殴打しながら巻きこんで上昇する。
回転が止まった瞬間、巻き込まれたマリオネット達が爆発し、曇った空を照らした。クルクルとブーメランの様にロッドが戻ってくる。
増援だろう、何時の間にか大勢のマリオネットが、オウガを囲んでいる。

「使いたくは無かったが……仕方ないか」
男がそう言いながら、握っている球体を押し込んだ。瞬間、オウガの目が青から紅へと変化する。

「エクステッド……ヴァースト」

右腕を覆っている重装甲が外部へとパージされ―――――その姿を現した。ヴィルティックの右腕全体が、蒼き光によって成形されている。
左手のロッドを右手に持ちかえる。するとロッドの両端の部分が蒼く光る長刀となった。
オウガの各部装甲が展開し、男は前を見据えると、静かに呟いた。

「貴様達を――――断罪する」

「ん……」
少女が少しずつ、閉じていた目を開ける。……温かい。自分はベッドに寝かされているようだ。
次第に少女の中で、あの記憶が蘇ってくる。と、おぼつかない視線を窓に向けると、あの男が軍服を着た大柄な男と何か喋っているのが見えた。
話が終わったのか、男は軍服の男に踵を向けて歩き出す。少女はベッドから飛び上がり、急いで外に出た。状況を把握してる場合じゃない。伝えなきゃ―――――あの人に。

「待って!」
少女の叫びに、男は立ち止まった。

「私には……私にはもう、何も無い。家族も……友達も……」
男は少女の言葉を黙って聞いている。少女は荒くなっている息を落ちつかせながら、男の方へと歩いていく。そして――――息を飲んで心を落ち着かせると、言った。

「お願い……」

「……お願い、します。私に……私に、イルミナスと……イルミナスと戦う方法を教えてください。このままじゃ私……」
「駄目だ」

冷徹な声で少女の言葉に即答し、男は再び歩み出す。少女はまだ痛みが残る足を必死で走らせ――――男の背中に抱き付いた。

「お願い……私を……私を連れてって……。あいつらに復讐しないと、私……」

「生きる目的が、何も……無い」


「憎しみと怒りだけで、敵は討てない。復讐心だけで輪廻を断ち切る事は出来ない」

「君に咎を背負わせる訳にいかない。咎を背負うのは――――俺だけで十分だ」


そう振り返った男の気迫に、少女は気圧され、ゾッとする。今の男の雰囲気は、自分を助けてくれた時とは全く違う。言うなれば、修羅の様だ。
少女は如何すれば良いか分からず、その場にペタンと腰を下ろし――――大粒の涙をハラハラと零した。

「分かんない……分かんないよ……私、私は……」

「だから、私……」

温かな手が、少女の頭を撫でる。男はしゃがみ、少女に語る。

「生きてくれ。死んでいった人達の分まで。それが、君の成すべき事だ。頼む。この先がどれだけ辛い事があっても―――――生き延びるんだ」

少女は泣きながら、頬に触れる男の手を両手で握る。男は軍服の男が背を向けて簡易病院に戻るのを見計らい、ヘルメットを解除した。
そして少女の目を見ながら、優しく、包み込む声で言葉を紡ぐ。

「私が素顔を晒すのは、君で三人目だ。良いかい? 私は何時でも君を見ている。だから――――生きるんだ。
 生き続けて、次の世代に語り継いでくれ。この時代について――――私の代わりに。それが、私の君への願いだ」

そして男は、少女を強く抱き寄せた。少女が男の介抱に、泣くのを堪える。
男は少女の体を優して離し、再びヘルメットを被ると立ちあがって、歩み出す。と、少女が慌てて叫んだ。

「待って! 名前……名前を……教えて」

銃をスライドさせて天空に撃つ。廻る魔法陣の中で――――男が少女に、自らの名前を教えた。


「私の名は――――ハクタカ。この世界に光を灯す、一筋の流星」


ハクタカと名乗る男の姿が、蒼き光の中へと消える。少女はハクタカが消えるのを見守りながら、目を閉じ、呟いた。

「ハクタカ……必ず……また、どこかで」


少女の体に毛布が羽織られる。立ちあがり、少女は歩きだす。
この後、少女は懸命にこの世界を生きていく事となる。それが苦しい物だとしても、幸せに生きていくはず――――だった。

この物語の、もう一人の主人公でなければ。


――――――――――――――――――――――――1年後――――――――――――――――――――――――――――


生気の無い瞳が、鈍く標的を映す。少女は手元の拳銃の安全装置を解く。
そして銃口を、目の前の男に向けた。男は口を極太のロープで縛られており、顔中を痣が覆っている。
男は必死の形相で抵抗しようとしているが、椅子に縛られており待ったく身動きできない。少女の仲間であろうか、もう一人の少女がロープを切って、男を喋らせる。

「お、お前ら……こんな事して……」
「聞きたい事は一つだ。アジトは何処にある」

男は何も答えず、少女に向かって挑発的な視線を返す。少女は無表情のまま、男を見つめていた。
瞬間、少女は男の足に向けて引き金を引いた。男の足から大量の血が噴出し、叫び声を上げた。

「舐めるな。貴様一人殺す事に、何の抵抗もない。もう一度聞く。アジトは何処だ」
「ぜ……」

「絶対に……教えな……」
「そうか」

少女が男のこめかみに向けて引き金を引いた。不愉快な音が部屋に響いて、男の背後に血だまりが出来る。
懐からカードを取り出し、通信機に実体化させると、少女は感情も起伏も無い声で、通信機に伝えた。


「こちらナナ。アジトの特定に失敗。次の指示を仰ぐ」





                             Beyond The Progress

                           ヴィルティック・シャッフル2

                                 へ続く

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