創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

TONTO;Aerodynamic

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匿名ユーザー

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 君は考えすぎるクセがあるな、とエストラゴンに言われた事がある。余計なお世話だ。とはいえ、それはおおむね正しい。認めざるを得ない。大して性能の良くない脳味噌に、ひねくれた思考回路が組み込まれている。考えている最中に、何を考えていたか忘れてしまう。隠蔽された逃避。どうしようもない無能さ。無意味な回り道。考える事に逃避し、たったいま受ける苦痛を忘れようとする。
 そう、まさに今がその時だ。鼻から小粒な空気が漏れる。喰い縛った歯が軋む。身体中に満遍なく、均等に重みが加わる。
《減圧を開始します》
 アトラスの声。跳躍の頂点に達したらしい。私は下半身を締め上げる膜からようやく解放され、喉元までせり上がっていた胃液を呑み込んだ。頭が痛い。何度やっても慣れない。
《補助翼展開 ブースター点火》
 アトラスの声はなおも続き、ぐっ、とシートに押し付けられる。背中から磁石に吸い寄せられたみたいに。先ほどの上から押し潰されるような重みに比べたら、これはむしろ心地よい。
 私の血流をコントロールするために折れ、こちらの体を折り畳むようだったシートが元の形状に戻る。最初から最後まで、モニターに写るものは変わらない。澄みきった空。雲ひとつない。
 アポリアは跳ぶ。跳び方には三種類ある。近距離と中距離と遠距離。操縦士が操作するのは前の二つ。着地は別として、遠距離だけは基本的にオペレータ任せだ。対G処理のせいで操縦士は身動きがとれないし、着地地点の大まかな計測は、オペレータ側の持つ戦況についての情報に依存している。
《血圧 正常値に戻りました》
「……次の着地はいつに?」
《五分後ですね》
 メインモニターに着地予定地点を記した地図が浮かび上がる。南に約五キロ。山の麓。
「森の中」
《夏に山火事があったでしょう 地図にはまだ描いてありませんが そのあたりは裸山なんです》
「斜面」
《橋に近いと言うことで あなた方IPFが 兵站基地を作ろうと工事をしています つまり今は平坦な土地です 表沙汰にはしていませんが 既に着陸の許可も取ってあります》
「優秀ですね」
《仕事ですから 当然です》
 彼女はどうも嫌味を言いたくて仕方ないらしい。もしかしたら負けず嫌いなのかもしれない。どちらにせよ、彼女が思ったよりも優秀なのは間違い無いし、それについては再評価せざるを得ない。後ろ楯の大きさのおかげとも言えるが、ここではそれすらも実力の内だ。
 運が向いてきたのかもしれない。ダイアモンドには悪いが、情報収集や手回しなら、IPFの管制塔よりNATOの方が断然優秀で力があった。信用はできないし、気さくさでは劣るけれど。
 ともあれ、今日中に橋の所まで進めそうだ。私は思った。橋を越えて、遊軍から補給を受け、本格的に装備を整えてからが勝負だ。何度か戦線をまたぐ予定だが、基本的に敵陣地内で中距離の跳躍を繰り返し、目標地点を目指す事になる。正直なところ、アポリアでこれほどまでに深く敵陣地内に侵入することは、たぶん前例がない。それもこんな理由のために駆り出されるなんて。
 少しずつ、高度が下がってゆく。蒼一色のモニターに濃い緑が混じり始める。補助翼を広げているとはいえ、アポリアが行うのはトビウオのような滑空であり、飛行ではない。機動性に優れているが故に輸送機を必要としないアポリアは、この内戦を泥沼化させた。アポリアによって自陣内の兵站基地は簡単に破壊され、橋も容易に落とされ、補給路は寸断される。優秀であるが故に人をあまり殺さず、優秀であるが故に戦争を長引かせる機械。
五分が長い。
 電気的な振動音が絶えず周囲を満たして、耳鳴りと区別がつかない。それでも注意深く耳を澄ませば、ブースターの破壊的な爆音の隙間に、鋭く尖った風の音を見出だすことができる。私は両手にガントレットを着けたまま、そっと右手の甲を撫ぜた。ガントレットの手のひらはつるつるとしていて、右手のガントレットの甲にある感知器の凹凸を細かく認識できる。手持ちぶさたで、何となく感知器に彫られた溝をなぞり、時間を潰す。雑談でもすればすぐに埋まる時間だ。しかし、アトラスは何も喋らない。私はそもそも語る話題がない。時間はまどろみながら停滞する。
《着地準備を》
「了解」
 フットペダルに爪先を触れさせ、一度軽く踏み込んで、ロックを外す。フラップを上げ、機体を上に向かせる。重い沈黙。彼女は強いて機械的に動いているように思われる。けれど、私はそれを指摘できるほどの立場に無い。少なくとも今は。



 着地の瞬間、乾いた砂ぼこりが舞い、私のアポリアは前のめりになって停止した。メインモニター全体に映った、赤茶けた大地。それをゆっくり眺める暇はない。こめかみのスイッチを全て引き上げ、仮想スクリーンと全サブカメラを繋ぐ。脳に直接印象として叩き込まれた映像はぶれ、右手にある崖下の森と、左手にある勾配、背後の盛り土が緑のぼやけたノイズと共にちらつく。頭の側面と背中に目が増えたような気持ち悪さに食道がひきつる。
「アームのセーフティを解除」
 普段より甲高い自分の声が、赤の他人のもののように思われて、でもそんな悠長な思索はすぐに途切れた。
《見ました?》
「見た、三機。たぶんアポリアだ」

complete

 メインスクリーンの画面端に文字が浮く。手首を回して、ガントレットとアポリアの腕が同期した事を確認し、腰のギアカバー周りのスリットから基本装備のアサルトライフルを引き抜く。トントに三点バーストでは何の効果も期待できない、大人しくフルオートに切り替える。弾は九ミリのFMJ。予備弾倉は二つ。脚のミサイルポッドは二つとも空。本格的な武装は次の基地で受けとるハズだった。運が悪い。しかし立ち位置はこちらが上。チャンスだ。地面を蹴りにくいから、アポリアは斜面に弱い。基本方針は高位置を維持しながらの各個撃破。
 しゃがみこみ、中空に向けて銃を構える。敵がいたのは崖下の森の中だ。山火事を生き延びた森の。森の中は、アポリアが操作し辛い。向こうに逃げる気がないのなら、数の優位を武器にここに飛び込んで来る可能性は高い。一秒、二秒、三秒。何も起こらない、何の音もしない。何もかもが停止している。少しでも動けば、太陽に殺されるから。息を潜めて、機会をうかがっている。
《気付かれていない……?》
「まさか」
 崖の縁、ギリギリ下から狙われない位置まで細かく跳ねて進む。音がそのまま死に直結しているような、そんな錯覚に恐怖する。自らの臆病さを笑おうとして、失敗する。息を吸う振れ幅が大きくなったような気がして、それは気のせいだと言い聞かせる。目蓋の裏に残る、着地する最後の瞬間に見えたコバルトブルーの敵影を思い浮かべる。そういえば、奇妙な事に、彼らはこの機体と同じ方を向いていた。つまり彼らは私と同じ方向に向かおうとする所だった。何のために。帰るために。兵站基地の設置を妨害して?いや、それでは辻褄が合わない。だって、今ここには更地しか無いのだ。破壊する物など何もない。いいや、むしろ何もなかったら帰るのか。そんな不確実な情報をアテにして三人も回した?やはり、考えにくい。
 それか、ここよりももっと北の方から下ってきたのか。
 北。どこか、引っ掛かる。どうでもいい事のような気がする、後からゆっくりとコーヒーでも飲みながら考えればいいような。それとも、何か酷い見落としがあるのだろうか。焦りが肌の表面にまとわりつく。時間はますます粘着性を増し、停滞する。
《機体解析来ました》
 アトラスがどこか遠くで何かを言っている。私はひたすらに集中力を保とうとする。空が高い。空は蒼い。大地は赤い。そして森は濃い緑だ。現実に見える光景と、そこに含まれる生き延びるための手がかりがまぜこぜになる。集中力を気にしすぎて、意識の別の箇所が裏返ろうとする気配を感じる。そうならないように、目を細めて今の状態を維持する。どうしようもない破綻の足音が少しづつ聞こえてくる。ゆっくりと。でもこれは敵にも聞こえる足音だ。
 先に動いた方が負ける。それは迷信ではない。世の中の真理のひとつだ。時間の重みに絡め取られて、その不快さに辛抱できず、多くの人たちが命を落とした。
《 ベケット社がソ連に受注されて作った寒冷地用のアポリアを 廃棄前にJDS会社が買い取って独自に改造したもののようです 最大の特徴は》
 膝が前に曲がるようにして、OSをいじって歩行を可能にさせたこと。機動性を犠牲にして運動性を増加させた。それは、当時はアポリアのパイロットが稀少で、仕方なく強化骨格のパイロットを流用した結果だった。
 “コネチカットのひょこひょこおじさん”だ。民間軍事委託会社が良く運用するタイプのアポリア。傭兵用のアポリア。




 逃げたのかもしれない。“ひょこひょこおじさん”なら、歩いて森を下ることも可能だ。
 その楽観的な思考が、じわりと喉の奥に、さらに深くに染み込もうとした時、視界の縁を蒼い影が通った。三つの影。私は火に触れた時みたいに、反射的にフットペダルを踏み込み、アポリアを真上に飛び上がらせた。青空の中、見えにくい曳光弾が、たった今立っていた地面を抉る。空中での交錯。私はとっさに機体を左に倒して“3”と左肩にマーキングされたコバルトブルーのアポリアを避けた。ちくり、と右の二の腕に痛みが走る。急激な加速に、薬剤が自動的に注入される。ひっくり返りかけた胃が定位置に戻る。違う、薬で誤魔化されただけだ。けれど、今はその問題について考える時ではない。視界はクリアになる。思考は整理させる。
 姿勢制御。左肩から地面に落ちていた機体を、右の補助翼を限定的に開くことで整える。左肩に“3”と書かれたアポリアが先に着地し、こちらを仰ぎ見た。私は真下にライフルを構え、丁寧に、間違いの無いように引き金を引いた。
 ヒット。三十発ほどの弾を防ぎきった相手のトントが、処理能力を超えてダウンする。“3”のアポリアは項垂れ、止まる。胸から腹にかけて穴だらけになったそれを踏み潰すようにして着地する。せざるを得ない。衝撃、聞きなれない音。背筋がこわばる。
「アトラス、脚は」
《右足の軟骨ユニットが損傷しました》
「次の跳躍に耐えられるように調整してくれ」
《それは そんなことは 明らかにオペレーターの職務を超えています》
「知らない。やれ、さっさと」
 私は彼女の返事を聞く前に、左足を軸に機体を時計回りに回転させた。カン、と外壁に何かが当たる。何が?わかりきった事だ。計器をチラと見ると。こちらのトントがダウンしかけている。とっさに、フットペダルを踏み込み、左足のみで地面を蹴る。ほとんど倒れ込むようにして、崖の下に身を投げる。慣性に振り回されて、右の肘掛けに膝をぶつける。森の中に落ちる。
 賭けだ。機体に木の枝が当たる音を聴きながら、私は体を捻らせて、いつものように両足で着地させた。再び二の腕に痛み、二度目の薬剤投与。ライフルの弾倉を交換しながら、メインモニターに機体の状態を表示させる。状態はグリーン。安寧の緩みが、緊張の中でほんの僅かに瞬く。
《すみません バラストの操作に手間取って》
「言い訳はいい、貴女の事に興味はない。戦闘の放棄を視野に入れる。ブースターの状態と、さっき広げた右の補助翼の状態のチェック。跳躍先の計測を頼む」
 叩きつけるように言って、すぐに、悪い選択をしたように思った。アトラスに当たっても仕方がない。しかし、こちらは命懸けなんだ。それで、言い訳としては十分なハズだ。そうだろう?
 とりあえず、一人削った。
 崖を背にしつつ、考える。向こうも既に消耗しているらしい。やつらが何をやって来たのかは知らないが、運がいい。立ち位置が変わった。これは酷い、最低だ。まあいい、何とかなるだろう。何とかならなかったら、死ぬだけだ。だけ、と言うのも奇妙な話で、それが一番重要な事なのに。
 パントマイムをしているように、ライフルを抱えた形で固まったガントレットが軋む。自分の腕の話だ。まるで他人事だな。自分の事なのに。これは、余計な考え事かな?余計さは大事なものだ。だって、放っておくと、一つの方にしか考えられなくなるのだ。固執してしまう。
 死にたくない。
 殺し合いをしている最中に、そう思わない事なんて一度もなかった。



 それは、奇妙な間だったと思う。戦闘中だというのに、私もアトラスも何も語らない、喋らない。
わずかに緩められた緊張の糸が、私の前に垂れ下がって、ゆれている。
 語るべき対象は崖の上で待ち構えていたし、彼女は跳躍の計算をしていた。何より私自身、先ほどの事でバツが悪かった。
さて、どうしようか。私は沈黙から逃れるように思考した。これでは動きようがない。さっきは離脱も視野に入れるとアトラスに言ったが、今ここを飛び出しても、十分な高度をとる前に撃ち落されるだけだろう。
 だからそれはあくまで最後の方法だ。といって、何かほかにいい方法があるのかといえば、そういうわけでもない。
 崖の上に登ろうにも、敵は二人だ。どうせ片方が崖の縁で待ち構えて、少しでもこちらが顔を覗かせれば殺しにかかるだろう。
 だからといって、いつまでもここでウジウジしているわけにもいかない。
《戦闘の時には》
 そろそろ状況を打開しようと口を開いたら、ちょうど彼女の方から話しかけてきた。私は口をつぐんだ。
《対象の気持ちを想像しろといいますが まさに今が最適な時間ですね》
 一瞬、彼女が何を言っているのかわからなくて戸惑い、意図を測りかねる。少し考えて、ようやく理解した。
 彼女は今の私のおかれているこの状況が、先ほどまでの彼らに似ていると言いたいのだ。私は首を振った。そして少し落胆した。アトラスはアテにならないかもしれない。彼女は優秀だったが、戦闘に関しては無知過ぎた。
「そうでもない。彼らは三人だったし、歩いて逃げることもできた。私は沢山の選択肢を見せられた。だから私は混乱した」
 今、私が彼らに提示できるのはたった二つの選択肢だ。つまり向かうか、背中を見せて逃げるか。その二つだけ。そして残念なことに、それらの選択肢のために彼らのとりうる行動は、大した違いがない。
 崖の下に注意して、銃を構えたまま待つ。それだけだ。
《チェックという事ですか? とてもそのようには見えませんが》
「まあ」
 こんな風に悪く説明しておいてなんだけれど、実は希望はなくはない。というか、おおいにある。それは戦いにおいてもっともシンプルな希望だ。笑えてしまうくらいの。
「彼らはあんまり腕が良くない、というか、撃ってこないんだ」
 先ほど、私は彼ら二人に向けて完全に背を向けていた。だというのに、私のトントを剥がしきれなかった。
 仮想モニターに写った光景を思い出す。銃を構えて撃つまで、明らかに間があった。まるで躊躇したみたいに。そしてもちろんそんなわけはない。
「残り弾が、ひょっとしたら燃料もだが、少ないんだ。それもかなり致命的なレベルで」
 アトラスが戦闘について素人であるように、あの傭兵たちもトントについて詳しくない。トントの狂ったような排他性を理解していれば、照準などに気を取られず、そのまま撃ってくるはずだ。
 だから勝機はある。しかし、それは確実じゃない。高位置や斜面などの条件の差を埋めるほどのチャンスではない。
《だいたい理解しました つまりあなたは無謀さを許容してもらいたいのですね》
「少し違う。お目こぼししてもらいたいんだ」
 お目こぼし?彼女が不思議そうに尋ねる。私はボイスコマンドで薬剤についてのパラメータを開く。メインモニターに、各種薬剤のバランスがグラフとして表示される。私の二の腕と機体を繋ぐ、いくつもの細い管を管理しているソフトだ。
 重力に耐える時、手の震えを押さえる時、戦闘中の尿意を和らげる時。アポリアが私を管理し、正確で最適な部品であり続けるよう保つための部分。
《ザーィツ あなたは 何をやっているのですか》
 私はボイスコマンドでの入力を終わらせ、どこか焦りを含んだような彼女の声にこう答えた。
「アトラス、『時計仕掛けのオレンジ』って映画、知ってる?」



 着地。
 背後から、アポリアの首の根元に、残った弾をすべて叩き込んだ。弾倉は空になる。彼のトントは、弾の勢いを殺しきれない。蒼い装甲は飴のように歪んで、捲れた。
 ヒット。彼の首はもげる。彼のトントは破壊された。もう彼は無力だ。私は最後の弾倉を取り出して、三点バーストに切り替えて、カメラを失って戸惑う彼に向けて、引き金を引いた。地面に杭を打ち込むような気分で。
 ヒット。腰のカバーが歪み、穴だらけになる。彼は死んだ。私は生き延びた。
 飽和した沈黙。耳元で自分の心臓が喚く。その音がする。
 こめかみに手をやって、仮想モニターを切る。直前に、周りを見渡せば。そこには赤茶けた大地と、蒼い空と、汚れた三つの塊があった。
 膝を折るように崩れ落ちた“3”、崖の縁で落ちかけている“2”、そして目の前の“1”。真っ白な煙を吐き出すそれらは、なんらかのしるしのように、象徴的な意味合いを持って転がっていた。そんな気がした。
 たぶん、気のせいだ。
 私は宗教を信じていなかったし、信じる予定もなかった。
 目を刺すような鋭い金属の反射。痙攣するように、風に吹かれて揺れる装甲の切れはし。
 死は含まれていなかった。あるにしても、炎とか、煙とか、鉄屑とか。でも血は無かったし、その匂いも無かった。私が彼らを殺したのだが。私は戸惑った。それがどうでもいい事のように思えた。現実味のない、今はそれどころではない。

 気のせいだ。考えすぎだ。薬を摂取しすぎて、頭がおかしくなりかけている。

 混乱している。私はどこか混乱している。

 彼らは全滅した。任務から帰る途中に私と遭遇して、やむなく戦い、全滅した。彼らは運が悪くて、私は運が良かった。それだけの事だ。
頭と背中に増えた目が消える。じっとりと、身体中が湿っていることに気づく。
 汗だ。私は目をしばたいた。
 疲れた、と私は思った。バイザーを押し上げて、目を擦る。機体が少し揺らぐ。ガントレットを外し忘れていた。きっと端から見たら、私のアポリアは妙な仕草をしたことだろう。
 私は少し笑った。
 急に吐く息が重くなった。
 私は疲れていた。頭が痛かったし、ここは暗くて、狭くて、空気が薄かった。
《この区域からの離脱を提案します》
 アトラスが何か言った、私は何か答えた。たぶん、妥当な回答だったと思う。ライフルを腰のスリットへ。アームをロック。下半身が締め上げられ、体は固定された。 ふっ、と支えを失ったみたいに垂直に機体が下がり、次にまばたきした時には、見えない重りが身体中にのしかかっていた。
 跳躍したのだ。本日二回目の跳躍。
 疲れた。気持ちが悪い。吐き気がする。何度やっても慣れない。でも、仕事は終わらない。
《安心してください IPFには今回の戦闘の詳細をすべて伝えてあります ですから》



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