静寂の夜に

    

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風も波もない穏やかな海の底に佇む、小さな海中洞窟。
「ふぅ・・・」
その最奥にある薄暗い住み処の中で、1匹の大きな海竜が落胆気味に小さな溜息をついていた。
透き通った紫色と純白の2色に塗り分けられた体をまるで大蛇のように艶かしくくねらせながら真っ赤な長髪を靡かせるその海竜は、仲間達の間でナギと呼ばれている。
長年この暗い洞窟の中で勇猛な雄龍の出現を待ち続け、そしてついに数年前、ようやく深い山間の洞窟から移住してきた雄龍と結ばれて可愛い2匹の子を授かったあの海竜である。
だが常に勝気で夫であるアンクルにすら滅多なことでは弱みを見せない彼女にも、ここにきて初めてある葛藤と決断に苦しむ時期が訪れていた。

ザバッ
「うっ・・・な、何だ・・・お前か・・・」
洞窟の中に広がる水面から食料となる魚を大勢咥えたまま顔を出した途端、ナギが一瞬ビクッと身を強張らせてはワシの顔を見て安堵の息を漏らした。
仮にも夫に向かって何だとは失礼な話だが、どうも今の彼女にはワシにも言えぬような深い悩みがあるらしい。
「一体どうしてしまったというのだ、ナギ?ここ数日、ずっと何か悩み事を抱えているようではないか」
水から上がって口の中で盛大に暴れる魚達を大量の水とともにゴツゴツした岩床の上へと吐き出すと、ワシは明らかにいつもと様子の違う妻を心配してそう声を掛けてみた。
「ああ・・・実は、あの子供達のことなのだが・・・彼らももうすぐ3歳になるだろう?」
「む・・・そう言えば、ワシとそなたが出会ってからもうそんなに経つのだな・・・早いものだ」
「3歳ともなれば、海竜の子は巣立ちを迎える時期なのだ。それで・・・少々悩んでいてな・・・」

それだけ言うと、ナギがワシから視線を外すようにして再び顔を俯かせる。
「子供達が巣立つのならよいことではないか。一体何を悩む必要があるというのだ?」
「わ、私にとっては産まれて初めて授かった念願の子供達なのだぞ!?そう簡単に手放すことなどっ・・・!」
成る程・・・彼女の子供達に対する思い入れは並大抵のものではないと思っていたが、ここにきて子供達の巣立ちにも頭を悩ませているとは考えもしなかった。
まあ、その気持ちはわからなくもない。
暗く冷たい深海の底で命懸けのまぐわりを敢行した末、ようやく産むことのできた2匹の子供達。
リドもマリンも、月並みな表現だが目の中に入れても痛くないほどに可愛いことは認めよう。
だがそれでも・・・いやだからこそ、彼らを無事に巣立たせてやることが親であるワシらの使命ではないのか?

「しかし、そうは言ってもいつまでもここで子供達と一緒に暮らすわけにはいかぬだろう?」
「わかっている・・・だがあの子達も、突然私達から引き離されては困惑するだろうと・・・」
どうやら、またしてもナギの心配性が顔を覗かせ始めたらしい。
いやもちろん、これも何とか子供達をそばに置いておきたいという彼女の願いから出た言葉なのはわかっている。
しかし裏を返せば、これはもしかしたら彼女を説得する格好の材料になるかもしれなかった。
「わかったわかった・・・それなら、1度あの子達を近くにある他の洞窟に住まわせてみてはどうだ?」
「な、何・・・?」
ワシがそう言うと、ナギが一体何をといった様子で怪訝そうな眼差しをこちらに振り向ける。
「両親と離れて暮らすことに慣れさせるのだ。子供達さえそれで問題が無ければ、そなたも納得するのだろう?」
「あ、ああ・・・そ、そうだな・・・」
その返事の様子からすれば明らかに納得はしていなかったものの、ナギはその直後に遅まきながらワシに言い包められたことを悟ってキッとこちらを睨みつけていた。

「む・・・ここにもあるのか・・・」
無言で詰るような妻の視線から逃げるようにして住み処を飛び出してから数時間、ワシは早くも子供達を住まわせられそうな他の海中洞窟を3つほど見つけ出すことに成功していた。
3年もこの海で暮らしていたにもかかわらずこれまで気が付かなかったが、その気になって探せば海竜の巣というものは意外とそこら中にあるものらしい。
そう言えば、以前ナギにも聞いたことがあるような気がする。
これらの洞窟は全て強靭な牙を持つ雄の海竜が岩盤を掘って作ったもので、彼らは数年おきに自分の作った洞窟へと戻ってくる習性があるというのだ。
そしてナギを初めとした雌の海竜達がそれらの洞窟の中に住み付くと、いずれ雌雄の海竜が出会うことになる。
つまり、本来海竜達はそうやって番いとなる相手を見つけているのだろう。
まあ・・・あの勝気なナギのことだ。
今の住み処に戻って来た雄の海竜が、一体どんな目に遭わされて追い返されたのかは想像に難くないのだが・・・

ワシは新たに見つけた洞窟の中に誰も住んでいないことを確かめると、空の夕焼けを映して徐々に薄い朱に染まっていく海面を見上げた。
そろそろ、子供達が帰ってくる頃だろう。
しっかりと事情を説明すれば、彼らを新たな洞窟に住まわせることはそう難しいことではないはずだ。
しかしナギの話を考えると、子供達を別の洞窟に住まわせた場合にそこへ雄の海竜が戻ってくる可能性がある。
まあそれはそれで楽天的に考えればマリンにとっては新たな出会いになるのかも知れないが、雄龍であるリドの場合はそうもいかぬに違いない。
自分の掘った巣にいるところを見つかれば、恐らく雄の海竜に戦いを挑まれることになるだろう。
もしそんなことになったら、まだようやく魚の獲り方を覚えたばかりの幼いあの子がこんな大きな洞窟を掘り出すような雄海竜に勝てるわけがない。
特に水の中では、このワシでさえ妻のナギには何1つ勝てるものがないのだから。

「ふぅむ・・・妻に子供達の移住を持ち掛けたのはいいものの・・・なかなか簡単にはいかぬものだな・・・」
妻の待つ住み処へと泳ぎながら、ワシは正直途方に暮れていたと言ってもいいだろう。
最後の手段としてワシとナギが他の洞窟に移り住むという手もあるが、元々子供達の巣立ちにあまり積極的でない妻のこと、素直に協力してくれるとは思えない。
だが精々数日、長くても数週間だけほんの少し住み処を借りるだけならば、特に問題も無いような気がする。
仕方が無い・・・もうここまできたら乗りかかった船というものだ。
最後に見つけた洞窟は少し小さめだが、構造はワシらが住んでいる洞窟とほとんど似たようなものだった。
マリンとリドには、しばらくあの洞窟で暮らしてもらうことにしよう。

恐る恐る住み処に戻ってみると、陸の隅で不機嫌そうに佇んでいたナギがゆっくりとこちらを振り向いた。
「子供達を住まわせる場所は・・・見つかったのか?」
「うむ・・・ここから少し南に行った所に、子供達には丁度よさそうな洞窟がある」
「そうか・・・」
ワシの返事を聞くと、ナギはいよいよ暗く落ち込んでしまっていた。
思えば1年程前に子供達が外洋であの巨大なサメに襲われてからというもの、彼女は余計にその心配性を強めてしまったのか、そばに子供達のいない夜を過ごすことなど考えられないのだ。
「ナギ・・・」
だが妻を気遣って声を掛けようとしたその時、背後の水溜りからザバザバッという2つの水音が聞こえてくる。
「ただいまー」
咄嗟に後ろを振り向いてみると、正に今妻の頭を悩ませている可愛い子供達が住み処に帰ってきたところだった。

「どうかしたの?パパもママも」
両親の間に流れている重々しい空気を読み取ったのか、ワシに似て薄い緑色の鱗に身を包んだ小柄なリドが少しだけ不安げな面持ちでそう尋ねてくる。
「いや・・・何でもないのだ。ただ明日の朝、少しお前達に話がある」
「何?話って?」
そう言うと、まだ水に浸かりながらワシと弟のやり取りをじっと聞いていたマリンが唐突に声を上げた。
「それは今は気にしなくともよい。それより、今日は何処へ行ってきたのだ?」
「今日はリドが海岸の方に行きたいって言うから、あたしも一緒についていったの」
「海岸・・・?」
その娘の言葉を聞いて、ワシはふと首を傾げていた。
ワシの記憶が確かならばこの住み処がある辺りは高い崖が延々と聳え立っていて、砂浜のあるような海岸に出るとしたらかなり遠くまで泳いで行かなければならないはずだ。

「どうやらかなり遠出をしてきたようだが、海岸などに行って何か面白いものでもあるのか?」
「気温の高いこの時期は、人間達が大勢海岸に集まっていることが多いのだ。私も、昔は見物したことがある」
突如として背後から聞こえてきた妻の声に驚いてそちらを振り向くと、彼女はさっきまでの暗い表情を胸の内に押し隠して無理に平静さを装っているようだった。
いつもならしっかりと地面を踏み締めているはずの彼女の大きな胸ビレは白い腹にピタリと押しつけられていて、明日になれば子供達が目の届かぬ所へ行ってしまうという不安を必死に堪えている様子が窺える。

「ふむ・・・そうか・・・」
それにしても、リドもマリンも何時の間にか彼らだけで随分と遠くまで出掛けて行くようになったものだ。
これだけ毎日朝から晩まで住み処を離れて過ごせるのであれば、もうすぐにでも独り立ちできそうなものなのだが・・・
やはり、先に妻の子離れを促してやるべきなのだろう。
だがそんなワシの考えを読み取ろうとしてかじっとこちらを見つめていたナギと思わず目が合ってしまい、そそくさと彼女から目を切って子供達へと言葉をかける。
「お前達、遠出して大分疲れたのだろう?今日は早く寝るといい」
「う、うん」
「は~い」
そして彼らからいつもと変わらぬ明るい返事が返ってくると、ワシは一先ずホッと胸を撫で下ろしていた。

「んむ・・・んぐ・・・」
「うむぅ・・・ぬ・・・」
子供達が寝静まった住み処の中に静かに響く、老龍と海龍の息遣い。
緑と紫と白の3色に塗り分けられた2つの蛇体が艶かしく絡み合い、ぬめった胸ビレと鋭い爪を生やした厳つい手がお互いの体を慈しむように這い回っている。
グチュッ・・・クチュッ・・・ズリュッ・・・
老龍の下腹から顔を出した雄槍はプックリと潤み膨らんだ海竜の割れ目の中へと根元まで突き入れられ、螺旋状に巻き付き合った2匹の体が岩床の上を転がる度に卑猥な水音を立てながら激しく扱き上げられていた。
そしてやがて体内に込み上げてきた熱い奔流の予感に、雄龍が一足先に屈服の喘ぎを上げる。
「ぐ、うぅ・・・ナ、ナギ・・・ぬあ・・・あぁっ・・・!」
ドプッ・・・ドク・・・ドクドク・・・
そばで眠るマリンを起こさぬようにと気遣ってか必死に声を噛み殺してはいたものの、あまりの射精の快感に雄々しい龍の体がビクビクと跳ね回る。
だがナギはそんな夫を逃さぬように長い尾でギュッと締め上げると、両の胸ビレで彼を力一杯に抱き締めていた。


「う、うあっ・・・うああっ・・・」
グッチュ・・・グジュッ・・・ヌリュリュッ・・・
まだ射精したばかりで張り詰めているワシの肉棒を、妻の蕩けた肉襞がなおも容赦なく舐め回してくる。
つい1分程前まではお互いにお互いの体を愛撫し合っていたというのに、今の彼女は無力になった雄をしゃぶり尽くそうと内に秘めた嗜虐心を剥き出しにしていた。
ギュッ・・・グブッ・・・ピュピュ・・・
やがて抵抗する気力も失って成すがままにあるだけの精を搾り取られると、ようやく妻がいつもの満足げな笑みを浮かべながらワシの"拘束"を解いていく。

「はぁ・・・はぁ・・・お、おのれナギ・・・突然裏切るとは卑怯だぞ・・・」
「フン・・・この程度で音を上げるとは情けない奴だな・・・もう毎度のことだが・・・」
「うぐぐ・・・言わせておけば・・・」
嘲るように投げかけられたナギの言葉に胸の内に何とも言えぬ悔しさが込み上げてきたが、すっかり精気を抜かれてしまった体にはしばらく力が入りそうにない。
それに表面上は自尊心を傷つけられて怒った雄龍を演じてはいるものの、それも妻の言う通り毎度のこと、今ではこれがワシとナギの間で交わされるある種の愛情表現になっていた。

「それはそうと・・・やはり、子供達は明日ここを出ていくのか・・・?」
やがて交尾の余韻に息も落ち着かぬ内に、唐突に妻がボソリとか細い声を漏らす。
「・・・・不安なのか?」
「あの子達には独り立ちはまだ早いのではないかと言っているのだ」
「そんなことなどあるものか・・・そなたも、もっと子供達を注意深く見てみるがいい」
ワシは妻を諭すようにそう言うと、彼女の顔を水辺の方へと向けさせた。
その水と岩床の境目の辺りで、マリンがクルンと丸まって蹲ったままスースーと静かな寝息を立てている。
一方リドの方はと言えば、暗い水の底に横たわりながらゴソゴソと時折寝返りを打っていた。
今はナギとともに暮らしているが故にワシもこうして陸に上がって眠ることにしているが、かつてあの山奥に住んでいたときのように、本来龍は水底で静かに身を伏しているものなのだ。
海竜との間にできた子供とはいえ、そういう意味ではリドにも立派にワシの習性が受け継がれているのだろう。
「あの子達はもうワシらに依存などしていないのだ。リドもマリンも、随分と大きく成長したではないか」
「・・・・・・全く・・・お前は酷い夫だな・・・」
実際に子供達の様子を見て少しは納得してしまったのか、ナギはまるで枕にするかのように仰向けになったワシの首筋へグリグリと顎を擦りつけると小さな声でそう呟いたまま眠りについてしまっていた。

次の日の朝、ワシは妻を住み処に残すとリドとマリンを連れて明るい海の中へと出て行った。
「ねぇパパ、今日はどこへ行くの?」
「ここから陸沿いに南へ下った所に、小さいが住みよい洞窟がある。お前達は、今日からそこで暮らすのだ」
「ええっ!?ど、どうして・・・?」
ワシがそう言うと、流石に突然の別居を言い渡されて驚いたのかリドが素っ頓狂な声を上げる。
「お前達ももう3歳になるのだぞ?いつまでも子供のままというわけにはいかぬし、いずれは巣立たねばならん」
「じゃあ・・・もうパパにもママにも会えないの・・・?」
「う・・・そ、それくらいは構わぬが・・・これからは食料も自分達で獲って、夜もお前達だけで過ごすのだ」
不覚にも不安げな表情でそう聞き返すマリンの様子に動揺して、ワシは思わず次の言葉に詰まってしまっていた。
だがやはり賢い子供達のこと、素直にワシの意図を汲み取ってくれたのか、引き返そうとするような素振りなど全く見せずに後をついてきてくれている。
そうしてしばらく無言のまま暖かい海の中を泳いでいる内に、やがて件の海中洞窟が澄んだ水の向こうにその姿を浮かび上がらせていた。

「さあ、ここだ」
「ここって・・・」
パパに連れて来られた南にある小さな海中洞窟・・・そこは1年程前に、僕が最初に見つけた洞窟だった。
かつて外洋で大きなサメに襲われた後、姉とともにここへ遊びにこようとしてずっと忘れていた場所だ。
「そのうちワシがお前達を迎えにこよう。それまでは、決してワシらの住み処に戻ってきてはならぬぞ」
「・・・わかった」
僕が返事をすると、パパはサッと踵を返してママの待つ洞窟へと帰っていった。

「あたし達、本当に置いていかれちゃったね・・・リド」
「う、うん・・・でもさ、たまにはパパもママも気にせずに好きなことができるっていうのもいいんじゃない?」
「う~ん・・・それもそうね。夜遅くまで遊んでても誰にも怒られないわけだし」
そう言いながら、ついさっきまでどことなく落ち込んでいた姉の顔に元の可愛らしい笑みが戻ってくる。
「じゃあさ・・・お腹も空いたし、取り敢えず魚でも獲りに行こうか?」
「賛成~!」
しばらくパパにもママにも会えないという寂しさとは裏腹に、僕達は何だか自由になった気分で朝食の魚を探しに出掛けることにした。

姉と別れて魚群を追い回し、お腹一杯になるまで魚を捕まえて新しい住み処に戻って来たときには、既に空に夕焼けの手がゆっくりと伸びてきていたところだった。
結局のところ、一旦外に出てしまえば住み処がどこだろうとそれはさして大きな問題ではない。
これまでの暮らしとの1番大きな違いは、真っ暗な夜にパパもママも僕達のそばにはいないということだ。
僕は夜に食べる分の魚達も少し口に含んだまま住み処の中に入っていくと、それを乾いた岩床の上に吐き出して姉の帰りを待つことにした。
水と陸に半分ずつ切り分けられた、小さな明り取りの窓がある薄暗い洞窟。
大きさは今までの住み処より一回り小さいくらいだが、構造は正に瓜二つだ。
こういう洞窟は全部雄の海竜が掘っているっていう話をママに聞いたことがあるけれど、僕もいずれは妻になる雌海竜と出会うためにこんな大仕事をやってのけなくてはならないのだろうか?

ザバッ
そんなことを考えていると、随分と大漁だったのか口を大きく膨らませた姉のマリンが水から顔を出していた。
そして僕と同じように床の上に活きのいい魚達の山を築き上げると、初めての新しい住み処をグルリと見回し始める。
「へぇ~・・・ちょっぴり狭い気もするけど、あたし達には丁度いい住み処じゃない」
「実はさ、ずっと前に丁度いい洞窟を見つけたから今度行ってみようって言っただろ?あれ、ここのことなんだ」
僕がそう言うと、姉がまるで昔のことを思い出すかのように朱色を映す洞窟の天井を見上げる。
「あら、そう言えばそんなこともあったわね・・・どうしてここに来ようなんて話になったんだっけ?」
そう言った姉の顔に、何だかちょっぴり意地悪な笑みが浮かんでいた。
あれは明らかにわかっていて僕をからかっている顔だ。
「そ、それはほら、あの外洋にあった沈没船でやったことの続きを・・・その・・・」
「うふふ・・・リドったら、赤くなっちゃって可愛いわね・・・もちろん、わかってるわよ・・・」
そう小声で呟きながら僕を横目で見下ろした姉が、ママに似た妖しい艶っぽさを醸し出している。
僕はその様子に思わずゴクリと唾を呑み込むと、そっと岩床の上に仰向けに横たわっていた。

「うふふふ・・・リドとこんないけないことするのも、もう1年振りなのね」
そう言いながら、楽しげな笑みを浮かべた姉がゆっくりと僕の上へと覆い被さってくる。
その焦らすような緩慢な動きが待ち切れず、僕は早く早くと急かすような視線を姉に注ぎ続けていた。
やがて短いながらもお互いの尻尾の先はクルンと絡み合い、姉の小振りだが力強い胸ビレが僕の両腕をギュッと固い岩床の上へと押しつける。
「ほぉらリド、今度はどんなに暴れたって、絶対に逃がしてあげないんだからね」
「う、うん・・・わかってるよ」


僕がそう答えると、暖かい弾力に静かに波打っている雪のように真っ白な姉の体が、ほんの少しだけそっと持ち上げられていた。
そして開けた視界の中に広がる黄みがかった僕の蛇腹と白い皮膜との間に、興奮にそそり立った僕の肉棒と微かにぷっくりと膨らみを持ち始めた姉の秘裂が遠慮がちに顔を覗かせる。

だがすぐに中に入れさせてくれるという僕の期待を裏切り、姉は秘裂とは程遠い下腹でボフッと僕の肉棒を押し潰すとそのままグリグリと左右に揺すり始めた。
固い自分の蛇腹と柔らかな姉のお腹で肉棒を容赦なく摩り下ろされ、当初の予想とは異なる強烈な気持ちよさが全身を駆け巡っていく。
ズリッ・・・ズリズリッ・・・
「あぁん・・・ね、姉ちゃん・・・は、早くぅ・・・」
「あらだめよ、いきなりなんて。リドだって、もっと長く楽しみたいんでしょう?」
「そ、それはそうだけど・・・あっ・・・」
やがて言葉の途中に訪れた鋭い快感にビクッと身を強張らせた瞬間、姉の顔に満足げな表情が浮かんでいた。
「ふふ・・・ママにこうされるとね、パパだってとっても情けない顔をして今のリドみたいな声を上げてたのよ」
パ、パパが・・・?
不意に姉の口から漏れた言葉に、僕は軽いショックのようなものを覚えてしまっていた。
だが時々パパとママの交尾の様子を隠れて覗き見しているような姉なのだ・・・きっと、本当のことなのだろう。

そうして一頻り僕の肉棒に生殺しの責め苦を味わわせると、ようやく姉が待ちに待った下腹に咲いた花びらを押し広げ始めた。
1年前に見た時よりも更に大きく発達した雌の性器が、僕の肉棒を呑み込もうと妖しい律動に震えている。
「ほら、お待ちかねよ、リド」
やがてギンギンに張り詰めた肉棒の真上で真っ赤な大花が口を開けている様子に、今度こそ間違いないという期待と興奮が否応なく膨れ上がっていった。
「早く・・・早く入れてよ・・・姉ちゃん・・・」
「いいわ・・・じゃあ、いくわよ・・・?」

ズブッ・・・ズプッ・・・グブ・・・ブ・・・
自分の雄槍が姉の体内を貫いていく感触・・・それは産まれてから2度目に味わう、雄としての至福の瞬間。
まだ発展途上の歪な肉襞がねっとりと愛液を塗りつけながら僕の肉棒を駆け上がり、1年前には感じ得なかった精を搾り取られるような感覚が躍動する姉の秘所から流れ込んでくる。
「うあっあ・・・お、お姉ちゃんの中・・・す、凄いぃ・・・」
「リ、リドのだって・・・大分大きくなったじゃないの・・・」
地面に組敷かれているお陰でほとんど一方的に姉に責め立てられているというのに、姉は姉で膣の中を掻き回される快感に身をまかせているらしかった。
だがやがて体の奥底からグルグルと渦巻く滾りが競り上がってきたのを感じ取ると、僕は大声で姉に告げていた。
「姉ちゃん・・・い、いくよ?いいんだよね?」
「も、もちろんよ・・・あ、あたしも・・・もう限界・・・!」
そう聞こえた次の瞬間、僕と姉は奇しくも同時に絶頂を迎えていた。

ビュピュッ・・・ピュゥ~
「あ・・・は・・・ぁ・・・ね、姉ちゃぁん・・・」
「うっ・・・うう~~・・・」
まだ幼いリドには到底受け止め切れぬほどの快感が小さな蛇体を駆け巡り、姉の体を抱えた手が小さく痙攣する。
だが同じくリドの怒張に突き上げられて果ててしまったマリンは必死で湧き上がる快楽に耐えるように弟の体をきつく抱き締めると、固く目を瞑って固いリドの胸板に頬を押し付けていた。
「ふぅ・・・ふぅ・・・ど、どうだった・・・?」
「こ、この前よりずっと気持ちよかったよ・・・もう、全然体に力が入らないもん・・・」
「うふふ・・・よかったぁ・・・」
そう呟きながらマリンがゴロンとリドの上から転げ落ちるようにしてどけると、深々と結合していたお互いの性器がグボッという音を立てて決別する。
そして地面に横たわったマリンの淫らに濡れ光る秘部からは、彼女自身の薄く桃色がかった愛液とリドの放った白濁の入り混じった粘液がトロトロと零れ落ちていた。

「ナギ・・・いい加減もう寝ようではないか」
ワシは陽が落ちてもなお住み処の入口に当たる水辺を見つめたまま動こうとしない妻を穏やかな声で諌めると、ツルツルとぬめる透明な粘膜に覆われた彼女の体へ遠慮がちに手を触れた。
だがそのワシの手をそっと胸ビレで拭いながら、彼女がつい数分前と全く同じ返事を口にする。
「もう少し、そっとしておいてくれ・・・」
ナギは、決してワシに対して腹を立てているわけではなかった。
彼女とて子供達をここから巣立たせてやらなければならないことはよくわかっているし、だからこそ彼らを手放すことに躊躇いと葛藤を感じているのだ。
しかしその一方でまだ子供達の成長を素直に認め切れていない部分があるのか、今もこうしてリドやマリンがひょっこりとここへ戻ってくるのを微かな期待とともにじっと待ち続けている。
だがやがていくら待っても時間の無駄だということを悟ったのか、ナギがようやく諦めにも似た表情を浮かべながらワシの方を振り返っていた。

「これでわかっただろう?あの子達は、もうワシらがいなくとも立派に生きていけるのだ」
「・・・・・・」
「子供達が逞しく成長しているというのに、そなたがそんなことで一体どうするのだ!?」
だが語気を強めてもなお無言のまま地面の上に蹲って目を閉じてしまった妻の様子に、ワシは深い溜息をついた。
今は、彼女をそっとしておくのが得策なのかも知れぬ。
彼女自身の心の問題に、ワシがいくら口を出したところで何も変わりはせぬのだろう。
まるでワシの存在など無視するかのように向こうを向いたまま眠りについてしまった妻を横目に、ワシはまたしばらくの間干されることになるであろう自らの肉棒を切なげに一瞥してから身を横たえていた。

「・・・アンクル・・・?」
住み処の中に響く息遣いが平坦な寝息のそれに変わってしばらく経った頃、私は背後で眠っているであろう夫の名を小声で呼んでみた。
だが、反応はない。
どうやら私があまりに頑固だったせいで、逆に彼の方が不貞腐れて深い眠りについてしまっているらしい。
更にはゆっくりと夫の方を覗き込んで彼が確かに寝ていることを確かめると、私は極力音を立てないようにそっと地面の上から起き上がっていた。
そしてヒタヒタと静かに彼の横を回り込みながらチャプンと暗い水の中へと体を滑り込ませ、真っ暗な闇に包まれた不気味な海へと向かって住み処を飛び出していく。
彼は、南の洞窟に子供達を置いてきたと言っていた。
陸沿いに泳いでいけば、その内きっと見つかることだろう。
私はあの外洋での出来事から実に1年振りとなる夜の海に早まった鼓動を抑えると、大きな胸ビレをはためかせながら漆黒の世界の中へと泳ぎ出していた。
どうしても、私は子供達の様子をこの目で確かめておきたかったのだ。

静かに揺れる海面を通して降り注ぐ薄っすらとした月明かりだけを頼りに、私は子供達がいるであろう海中洞窟を探しながら胸ビレをはためかせていた。
やがて遠く闇の中に小さな洞窟の入口らしきものが見えてくると、期待と不安の入り混じったような感情が胸の内に湧き上がってくる。
そして静かに気配を殺しながらその洞窟の中へと入って行くと、私はそっとその先にある水面から顔を出した。
そこでは今の住み処と同じように天井に空けられた小さな明り取りの穴から銀色の月光が入り込み、その下で身を寄せ合うようにして眠っている2つの影を照らし出している。

「リド・・・マリン・・・」
私は思わず小声で子供達の名を呼んでしまって慌てたものの、彼らが起きる気配がないことにホッと胸を撫で下ろした。
更に水から上がって近くからリド達の様子を窺ってみると、ふんわりとした雄の匂いが鼻を突く。
お互いに満足げな彼らの様子から察するに、随分とそちらの方面にも興味を示してしまったらしい。
「フフフ・・・やはり、血は争えぬものなのだな・・・」
微笑ましいような、それでいてなんだか寂しくなってしまうような彼らの成長の証を確かに認めると、私は子供達が目を覚まさぬ内に静かに洞窟を後にした。

次の日もその次の日も私は夫の獲ってきてくれる魚を頬張りながら子供達の帰りを待ち続けてみたものの、やはりリドもマリンも自らこの住み処へと戻ってくる様子はなかった。
「ナギ・・・」
「わかっている・・・お前が正しかったのだ。あの子達は、もう私達の元を離れても十分に生きていけるのだな」
夕暮れの薄明かりの中で、心配そうに背後からかけられた夫の声。
私はそれまでモヤモヤしていた心の葛藤に無理矢理に決着をつけると、ようやく素直に彼の方を振り向いていた。
「そなたがわかってくれたのならそれでよいのだ。子供達は、明日にでもワシが迎えにいくことにしよう」
「そうか・・・」
夫が子供達を迎えに行くのは、今の住み処が他の雄の作った物だからなのだろう。
つまりこれからまた彼らを何処か別の場所で住まわせるのであれば、今度はリドが自分で住み処を掘るという大仕事をしなくてはならないのだ。
まあ、今はおとなしく明日を待つことにしよう。


その頃、遠く外洋の海面に揺られながら沈みゆく太陽を眺めていた1匹の雄海竜がいた。
ナギのようなひょろ長い水蛇に似た姿とは異なり、半球型の大きな体に4枚のヒレを生やしたその姿はまるで甲羅を背負わぬ巨大なウミガメのよう。
海竜の特徴である長い尾はその体色と同じく赤みがかったオレンジ色に輝いていて、すらりと伸びた顎からは勇猛な雄であることを象徴するかのように鋭い牙が伸びている。
彼は、今正にリドとマリンが仮の住み処にしている海中洞窟の主だった。
「もうあれから9年にもなるのか・・・明日は、久し振りに巣へ帰ってみるとしよう・・・」
そして橙色の夕日に溶け込むように佇みながら静かにそう呟くと、彼は長い遠泳に向けてチャポンという音とともに薄暗い海の中へと潜っていった。

「ねえリド・・・パパ、いつ私達を迎えにきてくれると思う?」
「え?」
真っ暗な洞窟の中で姉とともに並んで寝ていると、突然そんな質問が僕の耳へと聞こえてきた。
表面上はパパやママがいなくても全然平気といった様子を装ってはいるけれど、彼女は僕達だけのこの生活にどこか寂しさのようなものを感じているのだろう。
そしてそれは、この僕にも全く同じことが言えた。
自分で魚を獲って誰にも頼らずに暮らすこと自体は全く問題がないのだが、今までパパやママと仲良く暮らしてきたという記憶だけはいつまで経っても頭の片隅から離れてくれそうにない。
誰にも束縛されずに自由に過ごせることを楽しんでいる反面、僕も姉も密かにパパが迎えにきてくれるのを心待ちにしていたのだった。

「わからないよ・・・それにもしかしたら、もう迎えになんて来てくれないのかもしれないし・・・」
「どうして?」
「だって、パパが僕達をここに連れてきたのは巣立ちの準備をするためなんだろ?だったらもう・・・」
僕の言わんとしていることを読み取ったのか、姉が暗闇の中でうな垂れる気配があった。
「そうね・・・でもリド、そういうことなら、明日はあなたがあたしの分の魚も獲ってきてくれない?」
「う、うん、それはいいけど・・・姉ちゃんはどうするの?」
突然の要求に思わずそう聞いてみると、姉がゴロンと地面の上を転がって僕の鼻先に顔を近づける。
「あたしはここで休んでるわ。パパとママだって普段はそうしてるし、本来夫婦ってそういうものでしょ?」
「ふ、夫婦って・・・?」
「あら、決まってるでしょ?お互い、結ばれる相手が見つかった時のための練習よ」
ああ、そういうことか・・・
何だか上手く言い包められて食料の調達を押しつけられてしまったような気もするけれど、確かにこれがこれから独りで生きていくための準備だというのならわからない話でもない。
「わかったよ姉ちゃん。でもそれなら、夜はもちろん僕と・・・」
「ウフフ・・・あたしの弟なのに、あなたももうすっかりあたしの虜なのね。もちろん、そのつもりよ」

翌朝、僕はまだ眠っている姉を洞窟に残したまま早くから朝食の魚を探しに出かけることにした。
いつもの倍くらいの量を捕まえられなければ、あの姉のことだ、自分だけお腹一杯に食べて僕には食べ切れなかった残り物しかくれないかもしれない。
それを考えると必然的に魚群を追うのにもいつも以上に力が入るし、不思議と何だか真剣に狩りをしているという実感が湧いてくる。
きっとこれが、妻や子供を養っていこうとする家族を持つ雄としての本能なのだろう。
そうして捕えた魚を次々と口の中へ放り込みながら、僕はいつしか姉の待つ住み処から遠く離れてしまっていた。

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