ドラゴンの恩返し

    

※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「いいか、今日こそは絶対に仕留めるぞ」
「ああ、今まで散々俺達の村を荒らしてくれた礼をしてやる」
武器を手に殺気立った数十人の男達が、深い闇に沈む森を睨みつけていた。

ここ数年、森から突然大きな赤いドラゴンが現れ、村の家畜をさらったり若い男を連れ去ったりするという事件が頻発していた。
これまではドラゴンの恐ろしさに手を拱いていた村人達も度重なる襲撃についに業を煮やし、一致団結して森に棲むドラゴンを退治することにしたのだ。
「あ~あ、嫌だなぁ・・・ドラゴンに戦いを挑むなんて、みんなどうかしてる」
ドラゴンへの怒りを燃やす村人達に混じって、溜息をつく1人の若者がいた。
村人総出の狩りだということで、彼はその気もないのにドラゴン退治に無理矢理駆り出されたのだ。
「よし、行くぞ!」
村人の1人が大きく声を上げる。ドラゴンが村を襲うのは、決まって夜になってからだった。
きっと昼の間はどこかの住み処で眠っているのだろう。
村人達はその隙を狙って憎きドラゴンを殺してしまおうと考えていた。
昼間とはいえほとんど太陽の光が届かない薄暗い森の中を、数十人の男達がそろそろと進んでいく。
森は山の崖下に面していて、岩壁に沿って所々に洞窟があった。
きっとその中にドラゴンの住み処があるに違いない。

「やだなぁ・・・もしドラゴンに遭ったらどうしよう・・・殺されちゃうよ・・・」
森の奥深くに行くにつれ、視界に入る男達の数が減っていく。
だんだん仲間が少なくなっていくその心細さに、僕はもう泣き出したいような気持ちで一杯だった。
だいたい、ドラゴンは家畜ばかりか若い男までさらっていくっていうじゃないか。
僕だってドラゴンに見つかったらどうなるか・・・ああ、嫌だ、考えたくもない。
そんなことを考えながら先に進んでいくと、何時の間にか周りには誰もいなくなっていた。
広い森だから所詮数十人じゃ全部に手が回るわけがない。
大声を上げれば誰かは来てくれるかもしれないけど、多分それじゃ手遅れだろう。
その時、ふと正面の茂みの陰からガサッという音が聞こえた。それに驚き、一瞬ビクッと身を固める。
「だ、大丈夫だ・・・音の大きさからしてドラゴンじゃない。きっと兎か何かさ・・・」
そう思いながら、僕は茂みの陰を覗き込んだ。何やら赤い色が見える。そして、僕はその正体に驚いた。

そこにいたのは、紛れもなくドラゴンだった。体長80cmほどの小さな赤いドラゴンが、落ち葉でできた自然の布団の上に寝転がり、むにゃむにゃと惰眠を貪っている。
「ひっ!」
僕はそれがドラゴンだとわかった瞬間に、思わず小さな悲鳴を上げていた。
自分では小さな悲鳴だと思ったが、神経を研ぎ澄ましていた他の村人には聞こえたようだ。
「どうしたー?何かいたかー?」
遠く背後から声が返ってくる。僕は一瞬の安堵の後、目の前で無防備な姿をさらす子供のドラゴンをまじまじと見つめた。さっきは驚いて悲鳴など上げてしまったが、よくよく見ればかなり可愛らしい。
赤い短毛が全身を覆っていて、柔らかそうな腹の辺りだけ真っ白な毛が生えている。
小さな手の先には爪がついているが、先の丸まった円錐型はとても鋭いようには見えない。
だが、このドラゴンがこれからどうなるかを想像して、僕はしまったと思った。
きっと背後から駆け付けてくる仲間は眠っている子供のドラゴンだろうと容赦はしないだろう。
外見がいかに可愛らしくても、怒りと憎悪に突き動かされている彼らには関係ない。
「起きて!早く!早く起きるんだよ!」
気がつくと、僕は小声で叫びながらそのドラゴンの体を揺すっていた。

「ん・・・んにゃ?」
寝ぼけた声を出しながらドラゴンが目を開ける。
「早く逃げるんだ!ここにいたら殺されちゃう!」
ドラゴンは安眠を妨害した上にわけのわからないことを喚き散らす人間をぼーっと見つめていたが、その人間の背後から数人の殺気立った気配が近づいてくるのを感じて事態を悟った。
「あ、ありがとう!」
ドラゴンはそう言い残すと、急いで茂みの奥に逃げ込んで行った。

「どうした、何かいたのか?」
ドラゴンが逃げて行ったのに少し遅れて、2人の仲間が僕のもとへ駆けつけてきた。
「あ、ううん、なんでもなかったよ」
慌てて取り繕う。ドラゴンを逃がしたなんて言ったら僕まで酷い目に遭わされそうだ。
「そうか、何かあったらすぐに呼べよ。きっと誰かには聞こえるからな」
「うん、わかったよ」

男達が再び視界から消えると、僕はドラゴンがいた辺りを見やって溜息をついた。
これでよかったんだろうか?
だが、何の罪もない小さなドラゴンが虐殺される現場など見たくはない。これでよかったはずだ。
気を取りなおしてさらに先へ進むと、崖の岩肌が見えてきた。
高さ数十メートルの切り立った断崖が、森をすっぱりと寸断している。
「この壁沿いに洞窟があるのか・・・」
僕は辺りを見回してみた。一見したところ近くに洞窟はない。少し歩いて探す必要があるだろう。
「僕は一体何をやってるんだ?ドラゴンの巣かもしれないんだぞ?そんな洞窟を探して歩くなんて・・・」
だが先程の小さなドラゴンを思い出すと、不思議とドラゴンに対する恐怖が薄れていくような感じだった。
ドラゴンを起こそうとして体を揺すった時の感触がまだ手に残っている。
フサフサでフワフワの柔らかい体。いつも村を襲うあの大きな赤いドラゴンも、こんな体なんだろうか。
暗闇の中でチラッとしか見たことがなかったからそれはわからない。でも・・・
そんなことを考えながら歩いていると、ふと目の前に巨大な洞窟が口を開けていた。
中は曲がりくねっていて奥まで見ることはできなかったが、かなり深い洞窟のようだ。
ドラゴンが棲むには格好の場所のような気がした。
誰か呼ぼうか・・・?いや、まだドラゴンがいると決まったわけじゃない。少し中を覗いてみよう。
僕は吸い込まれるように、その洞窟へと足を踏み入れていった。

グネグネと曲がった洞窟は、奥へ行くほど外の光が届かず暗くなっていった。
まだドラゴンの気配は感じないが、闇は人の心を弱くする。
僕は辺りが暗くなるにつれてだんだんと不安になってきた。
さらに少し行くと、広い空洞のようなところに出た。崖の上にぽっかり穴が開いているのか、天井がくりぬかれたように丸く開いていて、そこから太陽の光が差し込んでいる。
その光の筋にキラキラと舞う砂埃のようなものが反射して、辺りに光の粒を振り撒いていた。
「すごい・・・」
僕はこれまで、こんなに幻想的な景色を見たことがなかった。
その光景に見とれ、僕は何時の間にか背後に立っていた巨大な影の存在には全く気付いていなかった。

「フフフ・・・これはまた活きのよさそうな人間がいるな」
「ひっ!」
突然背後から聞こえた空気を震わす声に、僕は飛び上がった。
しまった・・・ドラゴンがいたんだ・・・ああ・・・もうおしまいだ・・・
恐る恐る背後を振り向くと、体長3メートルはありそうな巨大な赤いドラゴンが僕を見下ろしていた。
全身フサフサの赤い毛に覆われ、腹の辺りだけ真っ白なのはさっき見た子供のドラゴンにそっくりだ。
「私を退治するために1人でこの洞窟に侵入してくるとはいい度胸だ」
「い、いや・・・僕はあの・・・」
「何だ?武器を持ってここにいるというのに違うとでもいうのか?」
そう言われて、僕は手に持っていた鉄の棒を慌てて投げ捨てた。
「愚か者め、もう言い訳は通用せんぞ・・・たっぷり嬲りものにしてから食ってやる」
ドラゴンはそう言うと、巨体を躍らせて僕にのしかかってきた。
「いやっ、違うんです!僕はその・・・あああ~~!」
バフッという音とともに、僕は柔らかい砂の地面に押しつけられた。大きな砂埃が辺りに舞う。
ドラゴンにその巨体の全体重を預けられ、僕は押し潰されそうになった。
「う・・・あ・・・助けて・・・」
大きなフワフワの腹の中に埋もれて窒息する寸前で、ドラゴンは地面に両手をついて少しだけ体を支えた。
強烈な圧迫感で体が動かせない。ドラゴンの腹の下から飛び出した両手足をばたつかせて見るが、その程度ではささやかな抵抗にもなりはしなかった。
「さて・・・それでは頂くとしよう」
ドラゴンはそう言うとヒュルリと伸びた尻尾を僕のズボンに引っ掛けて、器用にスルスルと降ろしていった。パンツも同時に脱がされ、萎んだペニスが露わになる。
「フフフ・・・これはどうだ?」
その声と同時に、ドラゴンの柔らかい腹の一部がペニスに擦りつけられた。
シャリシャリ・・・シャリシャリシャリ・・・
「む、むぐぅ~、うむぐ~~!」
短い毛が、温かいドラゴンの腹がペニスの上を滑る度に強烈な心地よさが全身を駆け巡る。
巨大な腹の下敷きにされながら、僕はその気持ちよさに悶え狂った。
足を暴れさせると、その振動と動きでさらにペニスが腹に擦りつけられる。
「うあ~~~!た、助け・・・ひぃぃぃ・・・」
快感を与えられているだけなのに、僕は恐怖と凶悪な圧迫感にパニックになっていた。
徐々に固く屹立し始めるペニスに、ドラゴンはなおも容赦なく腹を擦りつける。
その激しい快感に、僕は熱いものが自分の股間から競り上がっていくのを感じた。

「そろそろ限界であろう・・・?フフフ・・・人間如きが耐えられるものか」
腹の下でバタバタと暴れる人間を見下ろしながら、ドラゴンは股間に入った長い割れ目をグイッと左右に開いた。
そしてピンと聳え立った人間のペニスに狙いをつけ、それを割れ目の中に一気に飲み込む。
ズブズブズブ・・・
「あ、ああっ、あ~~~~~~~!」
温かい膣の肉壁にペニスが擦れる度に、人間の悲痛な叫び声がドラゴンの腹の下から響いた。
「フフフ・・・私に戦いを挑もうとしたことを後悔させてくれる・・・」
グギュッ・・・ゴキュゴキュゴキュッ
ドラゴンはニヤニヤと笑いながら、腹の下に組み敷いた人間のペニスを思い切り搾った。
そして、流れるように下から上へとしごき上げる。
「あひゃああぁぁぁ・・・」
ブシュッという音がして、ドラゴンの膣内に大量の精が放出された。

グシュッグシュッグシュッグシュッグシュッ
「う・・・あは・・・ぅ・・・」
勢いよく射精を続ける僕のペニスを、ドラゴンは分厚い肉襞を翻して激しく弄んだ。
初めて味わう異常な快感に体が弛緩し、ドラゴンの体に押し潰されそうになる。
「気を失った時がお前の最期だ・・・フフフ・・・どこまでもつかな?」
そう言いながら肉襞の動きをさらに加速させた。
まるで僕をすり潰すかのように、ドラゴンが腰と腹を左右に振り始める。
「ひっ・・・いや・・・助け・・・ああ・・・」
精を根こそぎ奪い取られる恐怖と快感に、次第に意識が遠のいていくのがわかる。
いやだ・・・こんなところでドラゴンに食われるなんて・・・誰か助けてくれぇぇ・・・
ジョリジョリッ
とどめとばかりに、ペニスの裏筋が肉襞に思い切り擦り上げられた。
「はぅっ・・・」
ピュッという最後の雫とともに、精が全て吸い上げられる。
意識の糸がプツンと音を立てて切れる瞬間、僕は聞き覚えのある声を聞いた気がした。

「お母さん!」
その時、ドラゴンの背後から甲高い声が上がった。
小さな赤いドラゴンが、巨大な母親に敷き潰された人間を凝視しながら荒い息をついている。
「ん?そんなに慌ててどうしたというのだ?」
「だめだよその人は!離してあげて!」
「なぜだ?」
母親のドラゴンは、子供の不思議な訴えに怪訝そうな顔をした。
「僕達を狩り出そうとして、森にたくさん人間がきてるんだ」
一息ついて、子供のドラゴンが後を続ける。
「その人は外で昼寝してて人間にみつかりそうになった僕を助けてくれたんだよ」
「何だと?」
突然聞かされた話に、母親のドラゴンが慌てて人間を解放する。
だが、ドラゴンに味わわされた限界を超える快楽に、人間はすでに気を失っていた。
大の字に手足を広げたまま、横を向いた顔がドラゴンの腹に押しつけられて砂の地面にめり込んでいる。
「・・・私は少し外の様子を見てくる。お前はその人間をみてやるがよい」
母親のドラゴンはそう言うと、子供と気絶した人間を残して洞窟から出ていった。

突然、暗い意識の底から目が覚めた。僕は気を失った時と同じ格好のまま、大の字で砂の地面に横たわっていたようだ。僕を襲った大きなドラゴンの姿は、何時の間にか消えている。
「あ、よかった、気がついた!」
その時、どこかで聞いたことのある声が起き上がった僕の背後から聞こえた。
後ろを振り向こうとするが、体中がギシギシと軋むように痛い。
ドラゴンに半分押し潰されたまま気絶するまで嬲られたのだから、当然と言えば当然だけど。
うつ伏せに転がるようにしてなんとか後ろを見ると、あの茂みで眠っていた小さなドラゴンが地面にちょこんと座っていた。優しそうな目で笑う小さなドラゴンの様子に、僕は彼に助けられたことを知った。
「また会ったね、人間さん」
「あ・・・う、うん」
なんと言っていいかわからず曖昧な返事をしてしまう。
「もう、僕があとちょっと来るのが遅かったら今頃はお母さんの腹の中だったよ!」
小さなドラゴンは怒っているのか冗談なのか判断のつかない口ぶりでそう言った。
お母さん・・・じゃあ、この子はあの大きなドラゴンの子供なのか。
「助けてくれたんだね」
「僕も人間さんに助けてもらったからね」

そんな話をしている所へ、母親のドラゴンが帰って来た。
ドスッドスッと大きな足音が洞窟の入り口のほうから近づいてくる。
そして、恐ろしい巨大な赤いドラゴンが再び姿を現した。
「なぜあんなに人間どもが森へ入ってきたのだ?」
ドラゴンは僕の姿を見るなりグッと大きな顔を近づけ、怒りを含んだ声で問い詰めてきた。
「そ、それはその・・・夜になるとあなたが家畜や若い男をさらったりするからって・・・」
すぐにでもまた襲いかかってきそうな剣幕のドラゴンに、僕は早鐘のようにドクドクと跳ねる鼓動を押さえながら小さな声を絞り出した。
「森にはもう動物はほとんどおらぬからな。私も食うためには人間の所から奪ってくる他にあるまい?」
「そ、それならなんで若い人間まで・・・」
「お前も危うく、私にさらわれた人間と同じ運命を辿るところだったのだぞ」
ドラゴンがいたずらっぽい口調で言い放った。それはつまり、さらわれた人間はこのドラゴンに精を搾り尽くされた後に食われていたということだった。まさに僕がそうなりかけたように。
「月に1度くらいは楽しみがあってもよかろう?」
全く悪びれずに妖しい笑いを浮かべて話すドラゴンに、僕は背筋が寒くなった。
「まあいい・・・私が子を救ってくれた礼だ、命は取るまい。だが外の人間たちはどうしたものか・・・」
「僕が言っても聞くわけないし・・・こうなったらここから逃げるしかないよ」
「逃げるだと?私に人間から逃げ出せと言うのか!?そんなことは断じてできぬ」
ドラゴンは逃げるという言葉にいたくプライドを傷つけられたようだった。
だが、なんとかドラゴンを逃がさなければ、ドラゴンだけでなく人間の側にも相当な被害が出るだろう。
こうなったら奥の手を使うしかない。
「あなたは人間に襲われても平気かもしれないけど、この子は捕まったら絶対にタダじゃ済まないよ」
そう言ってじっと会話に耳を傾けていた小さなドラゴンを指差す。
「みんな気が立ってるんだ。ドラゴンとなれば子供だって容赦しない・・・と、思うよ」
その言葉に、ドラゴンはサッと顔色を変えた。
「ぬ・・・ぬぅぅ・・・」

しばしの葛藤と沈黙の後、ドラゴンはようやく口を開いた。
「わかった・・・ここから逃げるとしよう」
ドラゴンはそういうと、やり場のない怒りと口惜しさに鋭く剥き出した歯をギシギシと擦り合わせた。

洞窟を出て辺りを見回すが、幸いにして人の姿は見えなかった。
ドラゴンを伴って森の中を歩き続け、どんどん僕の村から遠ざかる。
ドラゴンはというと周囲に睨みをきかせ、後ろをついて来る子供のドラゴンを常に気にかけていた。
あの脅しがよっぽど効いたのだろうが、今他の人間がドラゴンの視界に入りでもしたらすぐにでも襲いかかっていきそうなほどに気が立っている。
時刻はすでに夕方になっていた。真っ赤な夕焼けが薄暗い森の中を朱に染めていて、ドラゴンの赤い体がその光の中に溶け込んでいる。しばらくして森を抜けると、目の前に大きな川が流れていた。
「こんな川があるなんて・・・」
今までドラゴンを恐れて森に入ることなどほとんどなかったから、森の奥に川があることなどまるで知らなかった。
「流れに乗って川を下れば人間どもからは逃れられよう。お前はどうするのだ?」
ドラゴンは僕に向かって決断を迫った。僕まで一緒に逃げる必要はないのだ。
平和な生活が送れるならば、僕は村に戻る方を選ぶ。

だが、その時森の方から人の声が聞こえてきた。
「ドラゴンがいたぞ!」
森を抜けたことで、大きなドラゴンの体はかえって目立ってしまっていたようだ。
たちまち手に武器を持った数人の男達が森から飛び出してきて、僕達は川岸へと追い詰められた。
「おいお前、何でドラゴンと一緒にいるんだ!」
男達がドラゴンと一緒にいる僕に向けて次々に怒りと困惑の混じった罵声をぶつける。
彼らに見つかってしまったら、僕はもう戻れない。僕は咄嗟にドラゴンの方に向き直って叫んだ。
「僕も一緒に行く!」
その声が終わるか終わらないかのうちに、大きなドラゴンは僕の体をガシッと抱き抱えたかと思うと、ドボーンという大きな音を立てて川に飛び込んだ。遅れて、小さなドラゴンがボチャッとその後に続く。

「川から逃げたぞ!」
「追うんだ!」
必死でそう叫ぶ村人達の目的は、いつしか村を守ることからドラゴンを殺すことにすりかわっていた。
川の流れに乗って逃げるドラゴンと人間を追うために、数人の男達が川へ飛び込む。
先程の川岸には、すでに何十人という村人達が大勢集まってきていた。
「逃げられるの?」
「いざとなれば人間など川底の藻屑に変えてやる」
ドラゴンはそう言ったが、その視線は後を追ってくる子供のドラゴンとその背後に迫る人間を心配そうに見つめていた。

殺気を孕んだ村人達に追われる小さなドラゴンを、母親が目を細めて見守っていた。
後少しで追いつく。そうすれば、男達も容易には手出しできなくなるだろう。
両手足に尻尾までを総動員して、仔竜は水を掻き続けた。
どんなに必死で泳いでも男達との差は変わらなかったが、母親との差は確実に縮まっている。

その時、突然グンと水面が下がったかと思うと、川の流れが急激に早くなった。
「わっ、な、なんだ?」
後に続く小さなドラゴンも、そして男達までもがその急流に飲み込まれ一瞬水の中に沈み込む。
徐々に幅を増しながら喧騒の色合いを濃くする川の様子に、僕は不穏な気配を感じてドラゴンに聞いてみた。
「こ、この川・・・一体どこに通じてるの?」
何も言わぬドラゴンの代わりに、その背後から聞こえる水音が問に答える。

ドドドドドドドドドドドッ
そこには、目もくらむような大瀑布がぽっかりと口を開けて僕達を待ち構えていた。
「うわあああああ!」
「死にたくなければ口は閉じておれ」
ドラゴンはそう言って僕の口を大きな手で塞ぐと、巨大な滝壷に向かって落ちるに身を任せた。
真っ白な水飛沫のカーテンの中を、大小2つの赤い点がゆっくりと落ちていく。
それに続いて、早まって死の道を選んでしまった数人の男達が悲鳴とともに自然の暴挙に飲み込まれていった。

ドラゴンに抱えられた若者は、自分がいつ滝のカーテンの中から水の中へ落ちたのかわからなかった。
白い飛沫に覆われた世界が、一瞬の内に白い泡に覆われたそれへと変わる。
口を塞がれたためだけではない息苦しさに、彼は死を予感した。
その若者を抱えたまま、ドラゴンが必死で滝壷の底から這い上がる。
2匹のドラゴンが再び水面にザバッと顔を出したとき、若者は滝壷に落ちた衝撃と息苦しさで気を失っていた。
「その人大丈夫?」
小さなドラゴンは、母の手の中でぐったりと横たわった人間を心配そうに見つめながらそう言った。
「気を失っただけだ。陸に上がってどこかに落ちつくとしよう」
親子のドラゴンは川べりに向かって泳ぐと、若者を抱いたまま鬱蒼と茂る森の中へ姿を消した。

「う・・・げほっ、ごほごほっ・・・」
薄暗い洞窟の中で、僕は激しく咳き込みながら意識を取り戻した。
目を開けると、小さなドラゴンがそばに座って僕の顔を覗き込んでいる。
「大丈夫?」
「う、うん・・・ここはどこ?」
滝壷に飲み込まれた所から記憶が途絶えている。その問に、背後から母親のドラゴンが答えた。
「森の中の洞窟だ」
僕が振り返ると、ドラゴンは平らな洞窟の地面に蹲って目を閉じ、疲れた体を休めていた。
「これからどうするのだ?」
薄っすらと目を開けて僕を見つめながら、ドラゴンが尋ねる。
成り行きと勢いでここまでついてきてしまったが、村を飛び出した僕にはもう行くあてなどあるはずもない。
僕が答えに窮していると、小さなドラゴンが思いがけないことを言った。
「ねえ、どこにも行くあてがないなら、僕達と一緒に暮らさない?」
小さなドラゴンのその一言に、僕だけでなく母親のドラゴンまでが一瞬驚く。
「い、いいの?」
「いいでしょ、お母さん?」
困惑する僕の言葉に、小さなドラゴンは母親を振り返って聞いた。
「まあ・・・よかろう」
しばらく何かを考えているような間があった後、ドラゴンが一言静かに呟く。
「やった!これで僕達も兄弟だね」
母親の了解を取り付け、小さなドラゴンが嬉しそうに声を上げる。
大きなドラゴンは再び目を閉じると、フンと小さく鼻息をついた。
その口元が怪しく緩んでいたことに、僕は全く気がつかなかった。

その日から、若者とドラゴンの生活が始まった。
主食は家畜や人間といった肉類から川を泳ぐ魚や森の木の実になり、育ち盛りの小さなドラゴンにとって若者はよい遊び相手となった。
そして夜になると、母親のドラゴンは毎日のように若者の体を求めるのだ。
一方的な陵辱とは違う愛の行為に、若者も快く応えた。
朝まで続く快楽の宴を堪能しながら、若者は2匹のドラゴンと末永く幸せな生活を送ったという。



感想

名前:
コメント:
|新しいページ|検索|ページ一覧|RSS|@ウィキご利用ガイド | 管理者にお問合せ
|ログイン|