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紅き大老2

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rogan064

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「グフフフフ・・・流石は大婆様だ・・・我々に2匹も獲物を寄越してくれるとは・・・」
「確かにそうだな・・・あの馬どもは大層食いでがあったが、やはり獲物は人間でなくては面白くないわ・・・」
突如どこからともなく聞こえてきた、空気を震わせるような野太い声。
しかもその正体不明の声の主は1つや2つなどではなく、ガサガサと茂みを揺らす音からすると既に俺とクインの周囲を複数でグルリと取り囲んでいるらしかった。
「だ、誰だ!?」
仲間と一緒にいることで心に余裕が持てたのか、或いは暗闇のせいで相手の姿が見えないことが幸いしたのか、俺とクインは反射的に腰に差した剣を抜くとお互いに背中を合わせて辺りを見回した。
だがそんな俺達の必死な様子を嘲笑うかのように、何者かの愉快そうな声があちこちから聞こえてくる。
「ククク・・・見ろ・・・こやつら、我らと戦うつもりのようだぞ」
「人間の目ではこの闇の中、一寸先も見えてはおらぬだろうになぁ・・・グフフ・・・こいつは面白い・・・」
そう聞こえた次の瞬間、俺は何かザラザラとした固い感触の長い物を顔へと巻きつけられた。
そして一瞬にして口を塞がれ、抵抗する間も唸り声を上げる間もなくクインのもとから無理矢理に引き離される。

「ア、アレフ・・・?」
今までぴったりと背中をつけていたはずの仲間が突然無言で消え去り、私は途端に恐怖を膨れ上がらせていた。
何も見えぬというのに引け腰で剣を構えたままキョロキョロと辺りを見回し、荒くなった呼吸を抑えることすらままならない。
「ど、どこにいったんだ?アレフ!」
「ククク・・・心配せずとも、お前の仲間にはすぐに会わせてやる・・・冥府の闇の中でな・・・」
「な、何だって・・・?」
だがそう呟いた瞬間、これまで黒一色に染め上げられていた視界の中に6つの恐ろしい赤眼が見開かれた。
「あ・・・ああ・・・ま、まさか・・・」
あの広場で出遭ったドラゴンと同じ、切れ長の鋭い双眸・・・しかもそれが、3対も私の周りを取り囲んでいる。
「ひっ・・・ひぐっ・・・」
そしてようやく絶望的な状況を察して悲鳴を上げかけた私の口に、ドラゴンの尻尾がグルリと巻きつけられた。

「う、うぐ、うむぅ~!」
やがて口を塞いだ尻尾を引き剥がすこともできずに成す術もなく土の地面の上へと引き倒されると、1匹のドラゴンが私の上にガバッと覆い被さってくる。
両肩に少しずつ預けられるドラゴンの体重や唯一見ることができる瞳の動きを見ていると、それがあの紅いドラゴン程ではないにしろ相当な巨躯を誇っているであろうことは容易に想像がついた。
「ククク・・・馬どもに比べればどうにも見劣りする獲物だが、存分に楽しませてもらうとしようか・・・」
その言葉とともに鋭く尖ったドラゴンの爪の先が鎧の継ぎ目に当てられ、無理矢理に鎧を剥ぎ取られてしまう。
ミリッ・・・バリッビリリッ
「う、うわあああ・・・!」
何とか声は出せるようになったものの、私は数匹のドラゴン達に地面の上へと押さえつけられたままものの十数秒で身に着けていた物を全て奪い去られてしまっていた。
全裸にされた体に冷たい夜風が吹きつけ、全身にじっとりとかいた冷や汗が更に冷たく冷やされていく。
「た、頼む・・・助けてくれぇ・・・」
「クク・・・ククククク・・・」
私は心の内ではもう無駄だとわかっている命乞いの言葉を漏らしながら涙を零したものの、それはこの残忍なドラゴン達の嗜虐心を余計に煽り立ててしまっただけだった。

私の腕を地面に押しつけたまま手指の間をペロペロと舐め回す2匹のドラゴン達が、別のドラゴンにのしかかられた私の両足を大きく左右へと開いていく。
そして無防備にも大の字に広げられた私の尻の辺りへ、何やら固くしこった物の丸い先端が押し当てられる。
「な、何をするんだ・・・」
「グフフ・・・なぁに、食事の前のお楽しみよ・・・貴様が年若い娘なら、なおよかったのだがな・・・」
その言葉に、私は初め尻尾の先だと思っていたその謎の先端の正体にようやく気がついた。
私を地面に組み敷いた巨大なドラゴンの股間の辺りから伸びる、醜悪な雄の肉棒・・・
それが、今正に私の体を貫こうと漲っていたのだ。
「なっ・・・よ、よせっ・・・やめっうぐ・・・」
そう叫んだ途端大きな手で口を塞ぐようにして顔をがっしりと掴まれ、そのままミシミシと頭を締めつけられる。

「グフフフ・・・覚悟はいいようだな・・・」
「ん~!んぐぅ~!」
私は必死で首を振ろうとしたものの、ドラゴンに頭を掴まれてはピクリとも動くことができなかった。
ズズ・・・ズブブ・・・
そして無慈悲に自らの腰を突き出すドラゴンの太い肉棒が、半ば無理矢理に私の肛門へとめり込み始めた。
「むぅ~~!むぐぐ~~~!!」
2匹のドラゴン達にペロペロと舐め回される手の先からは絶えずくすぐったい刺激が送り込まれ、徐々に体内に侵入してくる熱い怒張がグリグリと腸壁を擦り上げていく。
苦痛に混じった認め難い快楽に漏れる悲鳴がくぐもった唸り声へと変えられる度に、私はだんだんと何も考えられなくなっていくのが自分でもわかっていた。

「うぐ・・・く・・・」
既に唸り声も上げられないほどに弛緩した私の股間はドラゴンの肉棒にドスッドスッと乱暴に突き上げられ、激しく揺れるその赤い瞳が快楽の愉悦に歪んでいくのが見て取れる。
「おおっ・・・おおおっ・・・」
そしてドラゴンの方も限界が近いのか、私を追い詰める抽送がだんだんと早くなっていった。
「グフ・・・グフフ・・・さあ、我が精を味わうがいいわ・・・!」
そしてギチギチに張り詰めた肉棒から精を放つ瞬間、ドラゴンが塞いでいた私の口を解放する。

ブシャッ!ブバババッ・・・
「がっあっ・・・ぐあああああああ~~~~~!!」
グツグツと煮え滾る大量の熱いドラゴンの精が体内に注ぎ込まれ、私は全身がカッと燃え上がったかのような苦しい熱さに襲われた。
バタバタと動かぬ体を捩ってみたものの、その動きが更なる刺激になったのか熱い迸りはまだ止む気配がない。
やがて私の腹をパンパンに満たしたドラゴンの精が結合部から漏れ始めると、私はついに絶え切れず意識を繋ぎ止めていた最後の鎖を断ち切ってしまっていた。

「ウフフ・・・聞こえたかしら?お仲間の断末魔よ・・・」
俺を尻尾で絡め取った雌のドラゴンが、クインの悲痛な叫び声を聞いて楽しげに声を弾ませる。
次は自分の番だという死刑宣告をドラゴンから暗に言い渡されたような気がしたものの、俺はこの強靭な尻尾の牢獄の中でただただ顔に恐怖の表情を浮かべることしかできなかった。
とそこへ、別の雌ドラゴンが妖艶な瞳を輝かせながらひょいと顔を出してくる。
「でも安心しなさい・・・あたし達は、雄みたいにあんな苦しそうなとどめを刺したりはしないわ・・・」
だがそうは言うものの、抵抗すらできないこの状態ではドラゴン達に一体何をされるか分かったものではない。
それに仮に途中経過がどうであれ、最終的に俺の行き先はドラゴン達の腹の中と既に決められているようだった。
「うむぅ~・・・むぐぅ・・・」
全身を隈なくグルグル巻きにされているわけではないのだが、口と両手足だけは完全に封じられてしまっている。
そして尻尾の隙間から覗く股間や胸といった場所に身に着けていた鎧や服の類は早くもドラゴン達の牙で食い破られてしまい、今は小さな乳首やペニスといった敏感な弱点を露出させてしまっていた。

「ウフフフ・・・」
ペロッペロペロ・・・
「ぐっ・・・うっ・・・」
やがてガクガクと恐怖に震える俺の様子を存分に堪能したのか、胸に顔を出した小さな紅い蕾を2匹のドラゴンが両側から舌先で弄び始めた。
クリックリュッ・・・レロッ・・・
「うあっ・・・ぐむ・・・」
乳首に塗り込められる電撃にも似た鋭い快感に背筋を仰け反らせる度、体に巻きつけられた尻尾がギュッと俺の体を押さえつけるように締め上げる。
「ほらほら暴れないの・・・下手に動いたりすると噛み千切っちゃうかも知れないわよ・・・?」
そしてそう言いながら、俺に尻尾を巻きつけたドラゴンが快感に勃ち上がったペニスをそっと口に咥え込んだ。

ズリュゥッ・・・ジョリリッ・・・クリックリクリリッ
「ぐぶっ・・・あっ・・・がぁっ・・・」
暖かい唾液を纏うザラザラの舌がペニスの裏スジを駆け上がり、敏感な亀頭をグリグリと力強く舐め回していく。
だがそんな凄まじい快感を味わっているというのに、俺はロクに声を上げることも許されずに悶え狂っていた。
な、何が"苦しそうなとどめは刺さない"だ・・・く、くそっ・・・やめ・・・ああっ・・・!
一体これまで、幾人の憐れな人間達が彼女の舌技の餌食になったのだろうか?
体中が甘い痺れにビリビリと浸され、白濁の奔流が成す術もなく股間へと向けて競り上がっていく。
「ウフフ・・・ほぉら、とどめよ」
ペニスを咥えたドラゴンはそう言うと、膨れ上がった肉棒に巻きつけた舌をシュルリと引き絞った。

ビュビュッビュルルルルッ!
「がっ・・・はぁ・・・ああああっ・・・!」
射精と同時に乳首とペニスへの責めがさらに激しくなり、吹き上がる命の雫を残らず搾り取ろうと3匹のドラゴン達が舌を躍らせる。
「た、助けて・・・うああああああ~~!」
容赦のない責めがもたらす限界を超えた快感が頭の中を真っ白に燃やし尽くし、俺はドラゴン達の激しい陵辱の中でクインと同じく2度と目覚めぬ昏い深淵の底へと落ちていった。

森の静寂が2人の仲間の命を闇の中へと呑み込んだ頃、僕は相変わらずドラゴンの尻尾に包まれて喘いでいた。
媚薬によって敏感にされた体は尻尾で揉み上げられる度に総毛立つような甘い刺激を送り込んではくるものの、肝心のペニスには未だに触れられないせいで僕は先程からずっと残酷なお預けを食らっているのだ。
「はぁ・・・はあぁ・・・も、もうだめ・・・だ・・・は、早くぅ・・・」
やがていつまで経っても終わりの見えてこない生殺しの快感に屈して、僕はとどめを刺してくれるようドラゴンに懇願していた。
そんな僕の切なげな様子をじっくりと観察しながら、ドラゴンが愉快そうに僕の頬を指先で擦り上げる。
「クフフ・・・雄のくせに情けないねぇ・・・もう我慢できなくなっちまったのかい・・・?」
そしてその屈辱的な問にコクコクと必死で頷くと、ドラゴンがようやく僕の体を地面の上へと降ろしてくれた。

だが耐え切れずに自分で溜まりに溜まった精を出してしまおうとペニスに手を伸ばした瞬間、ドラゴンがすかさず僕の両手を捕まえて地面の上へと押し付ける。
「おやおや駄目だねぇ・・・妾の前で勝手な真似は許さないよ・・・」
「そ、そんなぁ・・・」
やっと抜け出せると思った快楽の泥沼に再び引きずり込まれてしまい、僕はグネグネと身を捩っていた。
王子としてのプライドなどは最早跡形もなく打ち砕かれ、今ではすっかりドラゴンの玩具に成り下がっている。
「た・・・頼むから・・・早く何とかしてぇ・・・」
「フフフ・・・いいとも・・・お前が気力尽き果てるまで、妾の火所でたっぷりと搾ってやるほどにのぉ・・・」

そう言うと、ドラゴンは僕を押さえつけたままゆっくりと巨大な体を反り返らせていった。
そして股間に走った桃色の愛液を滴らせる一筋の淫靡な横割れが、まるでもう1つの口であるかのようにパックリとその秘肉を上下に押し分けていく。
そこでは種族を問わず数多の獲物の雄を呑み込んでは捻じ伏せてきた大老の竜膣が、今度は僕の肉棒をしゃぶり尽くそうと不気味に蠢いていた。
見る者全てに無条件の恐怖を与えるような、雌老竜の禍々しい肉洞。
ジュクジュクと沸騰した愛液はトロリと糸を引くような粘り気を保ちながらも後から後から止めど無く溢れ出し、幾重にも織り重ねられた分厚い肉襞や肉壁を覆い尽くした無数の柔突起が、早く獲物を寄越せと騒いでいる。

「あっ・・・あぁっ・・・うああっ・・・」
ドラゴンと比べ余りにも小さな人間の僕にとって、それは正に肉棒という頭を切り落とす断頭台そのものだった。
雄であるシンボルを丸ごと呑み込まれるという、全ての生物の雄が持つ雌に対する潜在的かつ本能的な恐怖。
その恐怖が極限にまで増幅され、僕の全身から力を残らず奪い取っていく。
「や、やっぱり待って・・・あぁ・・・待ってぇぇ・・・」
「クフフフフ・・・今更怖気づいたのかい・・・?だがいくら足掻いたところで、もう逃げられぬよぉ・・・」
そのドラゴンの言葉通り、必死の抵抗にもかかわらず恐ろしい蜜壷は少しずつ確実にペニスへと迫ってくる。
そして妖しく輝く肉厚の陰唇がググッと更に大きく広げられると、いよいよその巨口の中へ僕の雄が丸呑みにされていった。

グチュウ・・・
「ひあぁっ・・・!」
淫靡な水音が辺りに響き渡った次の瞬間、余りにも柔らかく、それでいて余りにも力強い肉襞の束が熱く燃え上がる膣内に捕らえられた卑小な人間の肉棒を容赦なく締め潰す。
そしてそのドラゴンによる手荒い歓迎に、僕は自分の意思とは無関係に精を搾り取られることになった。
ドブッ・・・ドクッドクッ・・・
初めに味わわされた舌責めによる射精などとは比べ物にならない程大量の熱い滾りが全身を駆け巡り、激しく脈動するペニスの先からまるで噴火のようにドラゴンの膣内へと白濁の供物を捧げ続けている。

「う・・・がは・・・ぁ・・・」
「クフフフ・・・地獄の快楽に悶え狂う人間は何度眺めても飽きないねぇ・・・ほぁら、もっとお出し・・・!」
ズチュ・・・ゴキュッ・・・グシュシュッ・・・
「あああ~~~・・・!も、もう許し・・・あ・・・ふ・・・ふあああっ!」
とめどなく精を漏らし続ける肉棒を可愛がるように、無数の肉襞がねっとりとした愛液とともに身を躍らせる。
その苛烈極まるドラゴンの熱い愛撫に嬲り尽くされて、僕はいつしか快楽と苦痛の区別すらもを失っていた。
今この身に感じることができるのは、ただただ濃厚な刺激と徐々に形を失っていく自我への恐れ。
僕の物であるはずのペニスはドラゴンの求めるままに何時までも精の迸りを止めようとはせず、不規則に収縮を繰り返す肉壷のもたらす刺激にすっかりと身を委ねてしまっている。
だが、ドラゴンの媚薬というのも流石に万能ではないだろう。
10秒後か1分後か、或いは僕が命尽きるその時になるかはわからないが、絶え間なく白炎を吹き上げる活火山にもいずれは休息の時がやってくるはずだ。
霞む視界の中にドラゴンの満足げな笑みを映しながら、僕はいつか訪れる狂宴の終わりをじっと待ち続けていた。

ビュビュッ・・・ピュゥッ・・・
朝日の到来を間近に控えて空が白み始めた頃、僕は1滴残らず精を搾り取られたにもかかわらず辛うじて意識を保っていられたことに安堵の息をついた。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・お、終わりか?」
「フフフフ・・・よぉく耐えたねぇ・・・なかなか楽しかったよ・・・」
「じゃ、じゃあ・・・助けてくれるのか?」
僕の問に答えるようにチュポッという音を響かせながらペニスを膣から引き抜くと、ドラゴンの顔に先程までよりも多少は穏やかな笑みが浮かぶ。
「もちろんさね・・・陽が昇ったら、妾が森の外まで連れていってやるとも」
よかった・・・これできっと、僕は無事に城へ戻ることができることだろう。
だが不幸にも命を落としてしまった2人の部下達のことを思うと、流石に手放しで喜ぶことはできそうにない。

「あの仲間達のことを考えているのかい・・・?」
とその時、ドラゴンがまるで僕の胸中を見透かしたかのような質問を投げかけてきた。
「あ、ああ・・・2人とも、僕には大事な友人だったんだ・・・」
「フン・・・あんな夜中に、妾の森へ足を踏み入れるからそういうことになるのさね・・・」
「な、なんだって・・・?」
そんなクインとアレフの死をもあっさりと正当化しようとするドラゴンに、僕は敵わぬことを知りながらも精一杯の怒りの視線を向けていた。
だが案の定ドラゴンから切れ長の白眼でジロリと睨み返され、思わず慌てて視線を逸らしてしまう。
「うっ・・・ち、父が毒竜の退治に赴いた後から体調を崩して・・・一刻も早く城に戻りたかったんだ・・・」
「クフフ・・・なるほど・・・そいつは瘴気に当てられたんだろうねぇ・・・」
ドラゴンは独り言のようにそう呟くと空を見つめながら何やら考え事をしていたものの、やがて何かを考え付いたのか不意に僕の方へと顔を振り向けていた。

燦々と天から降り注ぐ、明るい太陽の光。
巨大な雌老竜は僕を背に乗せたまま森の上空を一気に飛び越えると、そのまま父の待つ城へと直行してくれた。
なるべく城下の人々には見つからぬようにそっと城の裏側から近づき、衛兵たちが驚くのも構わずに中庭の真ん中へと着地してもらう。
そして僕は無事に地面の上へと降り立つと、手の内にある小さな紅い色をした円錐型の塊を見つめた。
「本当に、父は助かるんだな?」
「今もまだ生きていればの話だよ。その角の欠片を砕いて飲ませれば、毒族の瘴気などすぐによくなるさね」
「そうか・・・ありがとう」

そう素直に礼を言うと、ドラゴンは数人の衛兵達が見守る中で再び大きく翼を羽ばたき始めた。
中庭に植えられた草木がその翼の巻き起こす風にザワザワと音を立てて揺られていたが、朝日を受けて深紅に輝くその老竜の巨体が空へ舞い上がった途端、辺りに元の静寂が戻ってくる。
「お、王子様・・・今のは一体・・・?それに、その姿は・・・」
無残に下半身の召し物を破り取られた僕の姿を不思議そうに見つめながらも、脅威が去ったことを確認した衛兵達が一斉に僕のもとへと集まってきた。
「ああ、心配しないでくれ・・・それより、父はまだ無事かい?」
「はい。昨日より、あなたの帰りを首を長くして待っておいでです」
「そうか、よかった・・・説明は後でするから、すぐにこの薬を砕いて父に飲ませてやってくれ」

僕はそう言うと、近くにいた衛兵の1人に手にしていた竜の角の欠片を慎重に手渡した。
「はっ、かしこまりました!」
よし、これでいい・・・
薬を手にした兵士が中庭から去っていくと、僕は先に自分の部屋に戻って服を着替えることにした。
血と汗と草の匂い・・・更にそれとは別のどこか鼻をくすぐる甘い香りの染み付いた鎧を脱ぎ捨て、その代わりに王族用の華やかな晩餐服を身に着けていく。
そして着替えが終わると、僕はようやく父の寝室へと入っていった。

部屋の中に入ると、丁度先程の衛兵が用意した薬を父に飲ませているところだった。
「う・・・む・・・帰ったか・・・息子よ・・・」
やがてゴクリという紅い粉末を飲み下す水の音が聞こえ、父が苦しげに声を絞り出す。
「ただ今戻りました。父上、具合の方はどうですか・・・?」
「どうもこうもあるものか。ワシと共に戦った者達は皆死んだ・・・そしてワシも今、死の床に・・・ぐっ!?」
だがそこまで言ったとき、父が突然自分の胸を両手で押さえていた。
その年老いた父の顔に、見る見る内に激しい苦痛の色が浮かび上がってくる。

「うあっ・・・ぐ・・・ぅ・・・あ、熱い・・・ワ、ワシに何を飲ませたのだ・・・?」
「か、帰らずの森に住むドラゴンが、瘴気の病に対する特効薬だと言って僕にくれた角の欠片です・・・父上?」
「ぐっあっ・・・ぐああああああ~~!」
だが次の瞬間、父が悲痛な叫び声を上げながら巨大なベッドの上でゴロゴロとのた打ち回り始めていた。
一体何が・・・?
あの薬を飲めば、父を苦しめていた毒竜の瘴気はすぐに消え去るのではなかったのか?
突然の出来事に何が起こったのかまるで理解できぬまま、僕は既におぼろげになりつつあったドラゴンとの会話を必死に思い出し始めていた。

あの帰らずの森の中、ドラゴンは何を考え付いたのかこちらに顔を振り向けると、それまで敢えて考えまいとしていた僕のある不安を見事に言い当てた。
「それで、城へ戻ってどうするのさ?父親が成す術もなく弱って死んでいくのを、指を咥えて見ているのかえ?」
「そ、それは・・・」
そうだ・・・僕は、父を助けるために城へ戻るわけじゃない。
僕はただ父の死に目を看取るためだけに、2人の部下を失ってまでこんな危険な森の奥にまで踏み入ったのだ。
「クフフフ・・・妾なら、お前の父親の命を救ってやることもできるのだよ・・・」
「ほ、本当に・・・!?」

僕を見下ろすドラゴンの眼にはどこか怪しげな光が宿っていたものの、父が助かるかもしれないという希望がそんな狡猾な雌老竜の言葉を鵜呑みにしてしまう。
「お、お願いだ、どうすれば父を助けられるのか教えてくれ!」
「なぁに、簡単なことだよ・・・この妾の角は、どんな病をもたちどころに治すことのできる秘薬になるのさ」
そう言いながら、ドラゴンが後頭部から生えている立派な紅角を愛でるように撫で摩る。
そして細く尖った角の先端を2本の指で摘むと、ポキッという音と共に小さな角の欠片を折り取った。
「クフフ・・・これが欲しいかえ・・・?」
「あ、ああ・・・一体、何が望みなんだ・・・?」

ドラゴンの大きな掌に載せられた、小さな小さな紅い塊。
それでももし本当に父が助かるというのなら、たとえドラゴンからどんな無茶な要求を出されたとしても僕は喜んでそれを呑んだに違いない。
だが肝心のドラゴンはというと、意外にもその顔にニヤッという薄ら笑いを浮かべただけで手にしていた角の欠片をあっさりと僕の方へ放って寄越した。
「何も望んでやしないよ。ただ・・・仲間が助けられなかったお前を哀れに思って恵んでやるというだけさね」
それはいかにも人間を見下したような歯に衣着せぬ物言いではあったものの、僕はそれこそが彼女なりの気遣いなのだと勝手に解釈したものだった。

それなのに、現実はどうだ?
父は薬を飲ませた衛兵や顔を蒼褪めさせる執事達の目の前で、激しい苦痛に暴れ悶えている。
「うがああ・・・がっ・・・ぬああああっ・・・!」
喉の奥から迸る声はますます大きくなり、騒ぎを聞きつけた数人の衛兵がドタドタと寝室の中に駆け込んできた。
「お、王様!こ、これは・・・一体何が・・・?」
バリッ!
とその時、何か布が裂けるような音が寝室内に響き渡った。
見れば父の体がさっきまでの数倍にまで膨れ上がり、弾け飛んだ衣服がベッドの下へと落ちている。
その皮膚の色は徐々にくすんだ緑色へと変化していき、腕や足などは老体とは思えない程に太く逞しい筋肉を盛り上げていった。
やがて腰の辺りからは艶かしく波打つ1本の太い尻尾がズルリと顔を出し、短かった首がビシビシと細かな鱗に覆われながら長く伸びていく。
更には流線型に尖った頭の後ろに2本の真っ直ぐな角が突き出したかと思うと、大きく丸められた背中からは巨大な1対の翼がバサァッという音と共に勢いよく競り出していた。

「こ、これは・・・ドラゴン・・・?」
「グオアアアアーーッ!!」
ガシャーーン!
僕の漏らした声に反応したのか、元は父であった巨大な緑色のドラゴンは耳を劈くような咆哮を上げたかと思うとあっという間に翼を広げて部屋の大窓から外へと飛び出した。
そしてしばらくの間バサッ、バサッと翼をはためかせて昼下がりの町の上空を飛び回った後、不意に何かを思いついたかのように西の方角へ向かって颯爽と飛び去っていく。
そのあまりに突然の出来事に、父の寝室に残っていた僕達は皆一様にあんぐりと口を開けたまま王が消えていった西の空を壊れた窓辺から呆然と眺め続けていた。

「馬を出してくれ!すぐにだ!」
なかなか混乱の収まりきらぬ寝室の中でも逸早く冷静さを取り戻すと、僕は周囲にいた衛兵達にそう告げていた。
「ど、どこへいかれるおつもりなのですか?」
「決まってるだろう?父上の後を追うんだ。行き先に見当はついてる」
「はっ、すぐに用意致します!」
反応の早かった1人の衛兵がそう応えて部屋の外へと飛び出していくと、執事がなおも不安げに尋ねてくる。
「お、王様は一体何処へ向かわれたと・・・?」
「多分、帰らずの森へと向かったんだろう。だが、供の者は必要ない。僕が1人で行く」
そう言ってドラゴンが飛び出した際に無残に破壊されてしまった窓枠の縁から下を覗くと、手際のいいことに先程部屋を出て行った衛兵がもう馬の用意を終えていた。
「よし、行ってくる・・・もし僕が戻らなかったらその時は・・・いや、何でもない」
「あ・・・お、王子様、お待ちを・・・!」

寝室を出ると背後から引き止めようとする執事の声が聞こえてきたものの、僕はもう立ち止まるつもりなどなかった。
あのドラゴンは、僕を騙したのだ。
父が瘴気に苦しんでいると聞いたときから、それに乗じて仲間を増やすのが目的だったのに違いない。
そしてそれはつまり、帰らずの森に棲むドラゴンを増やすということに他ならない。
衛兵が用意してくれた白馬に跨って城を飛び出すと、僕は遠く地平線の近くに見えている帰らずの森を目指して鞭を振るっていた。

視界に占める割合を徐々に増していく巨大な森のシルエット。
昨日も目にしたその暗く重く禍々しい存在感は、見る者の胸を不安と恐怖で締め付けずにはおかないことだろう。
だがそれ以上に、僕は今激しい怒りに燃えていた。
微塵の躊躇いも見せることなく森の中へと突入し、あの紅竜の棲む泉を目指して狭い道を疾走する。
そして数十分後、僕はようやく目的の泉の隣で呑気に昼寝をしていたあの老竜を見つけ出していた。
「おやおや、随分と早かったねぇ・・・待っていたよ・・・」
「この悪竜め!何が瘴気に効く薬だ・・・僕を騙したんだな!?」
「クフフ・・・騙したとは人聞きが悪いことを言う子だねぇ・・・父親の命は助かったんだろう?」
まるでそれ以外のことは知らないとでもいうように、ドラゴンが悪びれる様子もなくあっさりと言い放つ。

「くそっ・・・お前なんかを信じた僕が馬鹿だったんだ・・・許さないぞ!」
僕は怒りに任せて腰に差していた剣を引き抜くと、依然として無防備に地面の上へ蹲っていたドラゴンへと一気に斬りかかっていった。
ガッ
「ぐあっ!」
だがあと少しでドラゴンに剣が届くというところで、僕は突如空から飛び掛ってきた巨大な緑色の影に突き飛ばされてしまっていた。
そしてあっという間に柔らかい地面の上へと仰向けに組み敷かれ、背筋の凍るような鋭い視線が僕を睨み付ける。
その僕の目の前には、城の窓から飛び出していった父がすっかり変わり果てた姿で僕をギラリと睨み付けていた。

父が苦しみ出した時にはよく見えなかったが、今やその手足の先からは鋭く伸びた鉤爪が、屈強な顎の周りからは恐ろしい牙がびっしりと隙間なく生え揃っている。
真っ赤に輝く切れ長の双眸には元の父にあった穏やかさなど影も形も見受けられず、ドラゴンへと姿を変える瞬間を目の当たりにした者でなければ、それが元々人間であったことなど夢にも思わないことだろう。
「ち、父上・・・」
「ふぅん・・・こいつがお前の父親かい?さすがに王族だっただけあって、なかなか立派な姿じゃないか」
そして新たに加わった仲間が己に歯向かった人間を捕らえたのを確認すると、老竜がゆっくりと身を起こしてこちらへとやってくる。
「グルルルル・・・グルルゥ・・・」
「フフ・・・竜になったばかりで、まだ気が立っているようだねぇ・・・まぁ、今に慣れるさ」
やがてこれっぽっちも身動きできないままに雌雄の巨大なドラゴンに睨み付けられて、僕は深い絶望にも似た黒い恐怖にガクガクと震えていた。

「さぁて・・・もう絶体絶命さね・・・どうするつもりだい?」
まるでその老竜の言葉を汲み取ったかのように、元は父だった雄竜が僕の喉元に尖った爪の切っ先を押し当てる。
そして刃物のように研ぎ澄まされたその爪の先を、ゆっくりと遠慮なく皮膚の上に走らせていった。
ツツツッ・・・
「う・・・うぅ・・・」
皮膚を切られる鋭い痛み・・・傷口から滲み出した真っ赤な血が、首筋を伝ってポタリと地面に滴り落ちる。
「クフフフ・・・実の父親に引き裂かれて死ぬなんて、哀れな子だねぇ・・・」
「た・・・ひっ・・・助けて・・・」

初めてこの老竜に会った時、僕は既に潔い死の覚悟を決めていたはずなのに・・・
巨大なドラゴンと化した実の父に殺されかけた今になって、僕はついに誇り高い王子として持ち続けていた矜持が粉々に砕けてしまったのを実感していた。
「フフフ・・・そんなに助かりたいのなら、親子仲良く妾とともに未来永劫この森で暮らすかえ?」
「なっ・・・そ、そんなこと・・・」
そんな条件など、到底呑めるわけがない。
だが老竜は僕のその返事を聞くと、もう興味を失ったとばかりにクルリとこちらに背を向けてぼそりと呟いた。

「ふぅん、嫌なのかい・・・?それじゃあ仕方がないねぇ・・・ほら、さっさとやっておしまい」
「グルッ・・・グオアアッ!」
「ああっ・・・ま、待って・・・う、うあああっ・・・!」
老竜の言葉が終わるや否や、父が僕の眼前で大きく口を開ける。
その牙に埋め尽くされた圧倒的な凶器の前に、僕は慌てて大声で叫んでいた。
「おや、気が変わったのかい?クフフ・・・もう1度だけ聞くよ・・・妾とここで暮らすつもりはあるかえ?」
「く、暮らす・・・!暮らすから・・・助けてくれぇ・・・」
「ほっ、そうかいそうかい・・・それなら、今すぐこれをお飲み・・・」
そう満足そうに笑いながら、老竜が父をドラゴンへと変えたあの紅い角の欠片を僕の前へと差し出す。
父には砕いて飲ませろと言ったのも、結局は僕に薬だということを信じ込ませるためだったのだろう。
そして逆らうこともできずにその紅い秘薬をゴクリと飲み干した数分後、僕の人間としての人生はそこで終わりを迎えることになったのだった・・・
「ぐがっ・・・あっ・・・熱っ・・・うがあああああ~~~・・・・・・!」


数年後、一挙に王と王子を失った彼の大国は一転して政治を民主主義へと切り替えていた。
ドラゴンと化した王とそれを追って森に姿を消した王子の話は国民達に大きなショックを与えはしたものの、いずれは伝説として、或いは幼い子供を楽しませるための童話として語り継がれていくことになるに違いない。
だが、彼らは決して知ることはないだろう。
最早誰もが恐れて寄り付かなくなった広大な帰らずの森の中で、失踪した王と息子が1匹のドラゴンとして紅き大老のもとに平和に暮らしているという、その真実を。



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