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エリザ

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匿名ユーザー

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世にドラゴンという種族が発見されてから100年。
現在では小さな子供のドラゴンは犬や猫同様に愛玩動物の仲間入りをし、多くの家庭でドラゴンの子供が飼われていた。
その上、10年もすればドラゴンは人語を操り体も人間に比べて非常に大きくなるため、そのままドラゴンと結ばれるという飼い主が少なくなかった。
ドラゴンと結ばれた一部の飼い主達はドララーと呼ばれ、正しい飼い方の浸透していないドラゴンを世に広める役目を担っていた。
いわゆる犬で言うところのブリーダーであり、彼らはドラゴンの子供達によるコンテストを開いたり、全国で講習を行ったりしてドラゴンの飼い主を増やしていたのだ。
もっとも、ドララーの多くはドラゴンとの主従関係が逆転していたのだけれども。

俺は突然降り出した雨に、朝に傘を持って家を出なかったことを激しく後悔した。
カバンを頭上に掲げて大学からの帰り道を急いでいると、電柱の下に段ボールに入ったドラゴンの子供が捨てられているのを見つけた。降りしきる雨に真っ赤な体毛がペタッと体にくっついたその様は、朝にやっている子供向け番組のマスコットキャラクターを彷彿とさせた。
ドラゴンの子供が捨てられている・・・俺は思わずカバンを掲げるのも忘れ、そのドラゴンに駆け寄った。
まだ産まれて日の浅い小さなドラゴンだ。
理由はどうあれ、この雨の中に放置されていた以上ドラゴンといえども体が心配だった。
俺は蹲っているドラゴンをそっと抱き上げると、びしょ濡れになりながら家に帰った。

風呂場でドラゴンに温かいお湯をかけてやり、その後すぐに体をタオルで拭いてやった。
ドラゴンはようやく落ちついた様子で、乾いた体毛をフサフサとなびかせて床にちょこんと座っていた。
「かわいいな・・・飼ってやるか」
俺は1人暮らしだった。大学に行っている間、プライバシーを守りたかったためにアパートやマンションではなく借家を借りていた。そのため、ペットを飼うことは不可能ではなかった。
勢いとはいえ家に連れてきてやった以上、このドラゴンは俺が責任を持って飼ってやらなければならないだろう。それに、俺は前からドラゴンを飼ってみたいと思っていたのだった。
「よし、じゃあ名前をつけてやるか」
まだ言葉がよくわからないドラゴンは、俺が話し掛けても首をちょっと傾けてキュウ?と鳴くだけだった。
その仕草がまたかわいくて、俺は思わずドラゴンを抱き寄せた。
「そうだな、お前は女の子みたいだから・・・エリザなんてのはどうだ?」
こうして、俺はエリザと一緒に生活することになった。

次の日の夜、俺はエリザの長い赤髪を梳かしながらテレビを見ていた。
そこではドラゴンのコンテストと称して、名だたるドララーとその妻となったドラゴン達が審査員となり、出場者の中から最も可愛らしいドラゴンの子供を選ぶという内容の週間番組が放映されていた。
応募者は毎回100匹以上にものぼり、出場するドラゴンも0歳から10歳くらいまでで、大きさ、色、体格などは実に様々だ。
その中から立ち居振舞いや体の特徴、鳴き声などを採点されてトップになったドラゴンが優勝の名誉を授けられるのだ。
先々週などは9歳の大きなピンク色のドラゴンが見事優勝し、先週、今週と連覇を続けていた。
エリザはその様子を興味深げな目で見つめている。自分と同じ種族だということが分かるのだろう。

俺はそれを見て、ふとエリザをそのコンテストに出してみたくなった。
艶のある真っ赤な体毛を揺らすエリザは、体こそまだとても小さいものの、可愛らしさという点ではどこのドラゴンと比べても負けていないような気がした。
だが、何も知らないエリザをいきなりコンテストの会場に放り出したところでどうにもならないだろう。
これは少し特訓をする必要がありそうだ。
とりあえず、2本足で立ち上がれるようにするところから始めるべきだろうか。
俺は懐で甘えるエリザの両手を取ると、大きくバンザイをさせるような格好で床に立たせてみた。
だが、手を離すとバランスがうまく取れず、また四つん這いに戻ってしまう。
「ほらエリザ、立ってみろよ」
もう一度エリザを立たせてみるが、やはり手を離すと立っていられなくなるようだ。
その上エリザはゴロゴロしていたところにいきなりストレッチ体操をさせられてえらく不機嫌そうだ。
「きゅぅぅん・・・」
「うーん、しかたのない奴だな」
これに関しては毎日少しずつ試してみるしかないだろう。
俺はエリザにご飯をやり、一緒にベッドに入った。
愛情を注いで育てればドラゴンは成長が早くなるそうだ。
根気よく1週間ほどかけてエリザを立たせてみようと思う。
フサフサなエリザの頭を撫でながら、俺はいつしか眠りについていた。

翌日、俺は久々の休みに午後近くまで寝ていた。
朝方にエリザがベッドから出て行く気配がしたが、トイレにでも行くのだろうと思い別段気にしなかった。
「ふあぁあ・・・」
昼頃になってようやく眠い目を擦りながら起きると、俺の目に信じられないものが飛び込んできた。
エリザが、ヨタヨタとふらつきながらも2本足でバランスを取っていた。
時折転びそうになってベッドの縁を掴んだり尻尾をピンと伸ばしたりして、必死で立つ練習をしている。
「エリザ、お前・・・」
エリザは俺が起きたことに気がついたのか、それとも疲れきったのか、ふっと力が抜けて仰向けにコロンと転がった。少し荒い息をしているところを見ると、かなり大変だったのだろう。
「朝からずっと立つ練習してたのか?」
「きゅぅんきゅぅん・・・」
お腹が空いたというように、エリザは仰向けになったままご飯を要求した。
「よし、待ってろ」
俺は台所に急ぐと、エリザ用のご飯を作り始めた。
飼い主に必死で応えようとしている様子を見て、俺はますますエリザが好きになった。

エリザに昼ご飯を食べさせると、再び立つ練習をさせる。
まだ足元がおぼつかないが、本来四つん這いの動物が丸い背を無理矢理伸ばして立とうというのだから、辛いのも無理はない。
何度かドテッと転びながらも、健気に立ち上がるエリザを見ていると、少し可哀想にも思えてくる。
それでも辛抱強く2時間程じっと様子を見ていると、次第にエリザの足の震えが収まってきた。
全くドラゴンの適応能力というのは凄いものだ。
やがてエリザは、夕方には立って歩けるまでに2足歩行が上達した。
「よーし、よくやったぞエリザ」
褒められたのがよほど嬉しかったのか、エリザは立ったまま尻尾を振ってきゅぅんと鳴いた。
夕飯を貪るようにして平らげると、エリザが俺の胡座の中に潜りこんできた。
何度も床に転がったせいでクシャクシャになった毛を梳かしてやる。
しかし、今度は何をすればいいんだろう?
芸の1つでも覚えさせるべきか・・・でもそれじゃ犬と変わらないしな・・・。
そんなことを考えていると、エリザは何時の間にか俺の足の上で眠っていた。
相当疲れたのだろう。流石に一日中立たせたのは酷だったようだ。
俺はありのままのエリザをコンテストに出してみようと思った。
その結果いろいろ考えてみればいい。チャンスはいくらでもあるのだ。

翌日、俺は毎週金曜日に開催されるドラゴンコンテストに応募するべく、エリザの写真を持ってとある事務所を訪れた。
書類で簡単な申請をするだけで、特に問題がなければコンテストへの出場が許される。
エリザの生年月日だけはわからなかったので書かなかったが、まあ問題はないだろう。
10分ほどして「出場許可」の大判が書類に押されると、俺はほっと胸を撫で下ろして事務所を後にした。
エリザの体長は約40cmといったところだろう。他に出場しているドラゴン達はみな1mから2mくらいはありそうな大きな体をしているため、エリザはきっとあまり目立たないに違いない。
だがそれでも、2足歩行のできるドラゴンなどほとんどいないため、昨日の練習はきっとアピールに役立つことだろう。俺は淡い期待を胸に、エリザの待つ家へと帰った。

家に着くと、エリザは立ったまま俺を迎えてくれた。両手を思い切り上にあげてバンザイをしながら、抱っこを要求している。俺はエリザを玄関口で抱き上げ、そのまま風呂場へ向かった。
これからコンテストの日までは毎日体を洗ってきれいにしてやる必要があるだろう。
エリザを先に風呂場へ入れると、俺は汗でじっとりと湿った下着を脱いでエリザの後に続いた。

エリザを濡れたタイルの上にペタンと座らせると、俺は洗面器いっぱいに汲んだお湯をエリザに勢いよくかけた。
ザバッという音とともにお湯が流れ落ちると、柔らかくなびいていた赤い毛が一気に体に貼り付き、途端に体が小さくなったように見える。
何回かお湯をかけて十分に湿らせた後、シャンプーで体を洗ってやる。
体中のいたる所から白く膨れた泡が溢れてきて、エリザはあっという間にモコモコの白い泡の塊になった。
さらに全身をくまなくゴシゴシと擦ってやる。とその時、エリザの股間の辺りにあった小さな穴の中に図らずも指が少し滑りこんだ。
その瞬間、泡に埋もれたエリザがビクッと身を縮めるのがわかった。
「ん?なんだ?」
訳がわからず股間の辺りをまさぐってみると、またしても体毛に隠された秘部へ手が潜り込んだ。
「きゅっ!」
突然背筋を駆け抜けた快感に、エリザが思わず甲高い声を上げた。
「お前・・・もしかして気持ちいいのか?」
そう言いながら秘部に突っ込んだ指をクリクリと動かしてみる。
「きゅっ、きゅぅぅ!」
泡の塊になったエリザが短い手足と尻尾をバタバタさせて暴れた。俺の手をなんとかどけようと両手で掴んで引っ張ってみるが、まだまだ非力な子供のエリザにはなす術がなかったようだ。
俺の手を両手で掴んだまま、エリザはぐっと縮こまって快感に震えていた。
少し可哀想になってきたので、俺はいたずらをやめてお湯をかけてやった。
泡が洗い流されたエリザの体は、まるで怒りの炎が燃えているかの如く輝く赤色に染まっていた。
エリザの顔を覗き込むと、恥ずかしいような怒っているような微妙な表情でワナワナと震えながら俺をキッと睨みつけていた。
「ご、ごめんエリザ・・・」
その剣幕に圧倒されて俺は思わず口篭もった。

エリザは風呂からあがった後、俺と距離を置くようになった。
ご飯を食べるときも少し警戒しているような様子でそろりそろりと近づいてくるし、名前を呼んでも今1つ反応が薄い。
夜寝る段階になっても床に転がって動こうとしなかったので、俺はしかたなく1人でベッドに潜り込んだ。
しばらくはエリザのことを考えながらウトウトしていたが、やがて本格的に眠くなってきた。

その時、ごそっというくぐもった音とともに何かが―――エリザに決まっているが―――足のほうからベッドに侵入してきた。そのままもぞもぞと俺の足の上を這い上がってくる。
ようやく一緒に寝る気になってくれたのだろうか?
そんなことを考えながらエリザが頭を出すのを待っていたが、エリザは俺の股間の辺りでピタリと動きを止めた。そして・・・
突然パンツの両足の部分からモサモサの小さな手を突っ込まれ、両手でペニスをわしゃっと握られた。
「ひゃあっ!」
いきなり味わわされた快感に俺は思わずベッドの中で仰け反りながら嬌声を上げた。
慌てて布団を剥ぎ取ってみると、俺の股間の上でパンツの中に手を突っ込んだエリザが勝ち誇ったような笑いを浮かべて俺の顔を見つめていた。

「お、おいエリザ・・・ちょっとま・・・はぅっ!」
慌ててエリザに手を伸ばそうとした瞬間、エリザが俺のペニスを再び力一杯握った。
ペニスを握り潰されるような、それでいて柔らかいフサフサの毛で愛撫されるような不思議な快感が脊髄を突き抜けた。まだ頭のどこかに燻っていた眠気が跡形もなく消し飛ぶ。
「うぁ・・・」
脳からの指令を快楽という大波で全てかき消された俺は、半分起こしかけていた体をドサッとベッドの上に落とした。
エリザは快感に悶える俺の様子をうっとりと眺めながら、俺が少しでも体を動かそうとする度にペニスをその手で弄んだ。
「あ・・・は・・・エ、リザ・・・」
何度も何度も抵抗を試みては電流のような快感を流し込まれ、次第に体が言うことを聞かなくなってくる。
断続的な刺激にとどめを刺されることもなく、俺は長時間エリザの手の中で躍らされていた。
だが、エリザにしてみてもそれは初めての経験らしく、ペニスを擦り上げたり握ったりしごいたりすれば俺がビクンと体を震わせて悶えるという以上のことを学習してはいなかった。
風呂場で経験した予想外の快感と、それを無理矢理何度も味わわされたという屈辱感だけが今のエリザを支配していた。目の前の人間が必死で許しを請うまで、エリザはその生殺しのような快感責めをやめる気はなかった。
「く・・・うっ・・・」
俺はなんとか右手を上げようと力を入れてみたが、プルプルと震えるばかりでまるで他人の手のように動きが鈍い。その上、エリザはそれを抵抗の兆しと受け取ってさらにペニスをしごき上げた。
「きゅっ!」
肉球にも似た柔らかいエリザの指がねっとりと裏筋を擦り上げ、さらに先端を2本の指ですり潰した。
「はぐあぁぁっ!」
その強烈な一撃に、俺は一瞬で射精の直前まで上り詰めさせられた。あと一押しされるだけであえなくエリザの責めに屈服してしまうに違いない。だが、そんなときに限って体はピクリとも動かず、射精の脅威が去るまでエリザがペニスを攻撃することはなかった。

「ああ・・・エリザ・・・やめ・・・て・・・」
人間の必死で助けを求める声に、エリザはピクリと反応した。そろそろやめるべきだろうか?
だが人間はというと、その間にわずかながら回復した様子で再び身体を起こそうとしている。
エリザは思わず、力一杯ペニスを両手で擦り上げた。固くそそり立ったペニスのありとあらゆる弱点にエリザの小さな指が這い回り、今までで一番激しい刺激をペニスに叩き込んだ。
「あがぁぁぁっ・・・」
その容赦のない攻撃に、俺はついに限界を迎えた。エリザの暖かい両手にペニスを包まれたまま、パンツの中に激しく射精する。
エリザは突然人間に起こった異常事態に驚き、暴れる人間を鎮めるべく白い液体を吐き出すペニスをさらにめちゃくちゃに弄くり回した。
「あ~~~~~~~~~~~~!」
射精中の敏感なペニスにさらに追撃を食らい、俺はベッドの上で激しく悶え狂った。
そしてあまりに大きすぎる快楽に力尽き、ふっと意識を失った。
「きゅぅ?」
エリザは、突然動かなくなった人間のパンツの中に手を突っ込んだまま、生暖かい粘液の感触に不思議そうな表情を浮かべて首を傾げていた。

次の日、俺は早朝に目が覚めた。寝たのではなく気絶したのだから、早い時間に目覚めたのは運がよかったとしかいいようがない。
エリザはあの後どうしていいか散々迷ったらしく、結局パンツの中に手を突っ込んだままの姿勢で疲れきった顔をして眠っていた。パンツもエリザの手もガビガビに固まってしまっていたので、俺は眠ったままのエリザを抱えてそのまま風呂場へと向かった。
汚れた下着を洗い、エリザを起こして朝風呂に入る。
エリザは目を覚ますと俺が無事だったことを知って心底ホッとしたような表情を見せた。
その安心しきった顔にいきなりお湯をバシャッとかけてやる。
お湯が目に入ったのかエリザはブンブンと首を振って俺を睨みつけたが、構わずもう一杯くれてやる。
さらにシャンプーをかけてエリザをまん丸の泡の塊に仕立て上げてから、俺は自分の体を洗い始めた。
もうすぐ大学に行かなければならない。あまりゆっくりしている時間はなかった。
特にトラブルもなく風呂からあがり、俺は大学へ行く準備をした。
エリザは俺の外出を既に知っているようで、居間の畳の上で丸まって早くも昼寝の準備にかかっている。
「エリザ、行ってくるよ」
出がけに居間にいるエリザにそう声をかけると、小さくきゅっという鳴き声が返ってきた。
その返事に安心し、俺は大学へと向かった。

ドラゴンのコンテストを楽しみに待つ日々はあっという間に過ぎていった。
木曜日の夕方、家に帰るとエリザがいつものように玄関先でお出迎えをしてくれた。
たった1週間の間だというのにエリザはずいぶん大きくなったように見える。
両足で立ったときの身長は60cm近くあるだろう。
体重もかなり重くなり、日を追う毎にお出迎えエリザを抱き上げるのが大変になっていく。
それでもぎっくり腰を覚悟で真っ赤な子ドラゴンを抱き上げてやると、エリザはキャッキャと嬉しそうに甲高い声で鳴くのだった。

俺が風呂から上がってくつろいでいると、体を拭き終わったエリザがそばにやってきた。
「いよいよ明日だなぁ、エリザ」
「きゅぅ?」
分かっているのかいないのか、エリザは俺の言葉に曖昧な声で返事をしたかと思うといそいそとベッドによじ登り始めた。
「もう寝るのか?」
寝る時間には少し早かったが、エリザはもう寝るつもりのようだ。
エリザはまだ言葉は話せないが、俺の言っていることは理解しているらしい。
体の半分近くを枕の上にドサッと乗せると、エリザは俺をベッドに誘った。
「しかたないやつだな」
俺は半分溜息をつきながらも、エリザの待つベッドへと潜り込んだ。
体を半身にして片手でエリザを抱くようにして腕を回す。
その時、エリザの体が少し震えているのがわかった。
「エリザ?」
「・・・きゅ?」
エリザが不安そうな面持ちで俺の顔を見上げる。声にも態度にも表さないが、エリザは緊張していた。
それがコンテストの結果に対するものなのか、初めての外出に対するものなのか、それとも他のドラゴンと遭うことに対してのものなのかは俺には分からなかったが、いずれにせよエリザを落ちつかせてやる必要があるだろう。
「エリザ、大丈夫だよ。何も心配しなくても大丈夫」
なおも高まる緊張に震えが止まらないエリザを落ちつかせようと声をかけたり体をさすってやったりしているうちに、いつしか俺もエリザも深い眠りについていた。

いよいよ待ちに待った金曜日。今日はドラゴンのコンテストが開催される。
単位はやばいが大学なんぞに行っている場合ではない。
ベッドから飛び起きると、まずはエリザを風呂に入れる。
これまでにもしつこいくらいエリザの体を洗ってやったが、今日は特に念入りに毛の1本1本まで輝くように洗ってやる。
なにしろ毛が長いエリザは毎日起きる度にホコリやら細かなゴミやら汚れやらがついていて、1日でも風呂を欠かせばたちまち自慢の赤い体毛が霞んでしまうのだ。
自分の体を洗うのは夜にして、エリザを素早く風呂から上がらせると、今度はブラッシングしてやる。
毛がまだ湿っているうちに絡まったところを梳いてやり、5分後にはさらさらと毛先のなびく美しいエリザが完成した。
「よし、いくぞ!」
まだ少し緊張の残るエリザを伴って、俺は近くの公民館に向かった。

ドラゴンに関するイベントや行事は、テレビ局の主催ではなく名のあるドララーが個人で開催している。
そのため、コンテストの会場は各地区毎に分かれ、開催場所も体育館や公民館などを主催者が借り切ることで用意されている。そこに最寄のテレビ局からの取材がくるため、ドラゴンコンテストは週間番組でありながらその会場はいつも違っていた。
エリザの参加登録を済ませると、俺は他の参加するドラゴン達の飼い主とともに簡素に並べられた椅子に腰を落ちつけた。

「えー、それではこれより、第103回ドラゴンコンテストを開催致します!」
主催者のドララーがマイクに向かって高らかにコンテストの開会を宣言した。
会場にいる飼い主達から拍手が上がる。
「今回のエントリー数は48匹です。いつもよりちょっと少なめですが、張り切って行ってみましょう!」
いつもは100匹に迫るエントリー者数を数えるコンテストだというのに、今回の登録はその半分以下だった。
きっとあの連覇を成し遂げているピンクのドラゴンの影響があるのだろう。
「それでは早速行きましょう。エントリーナンバー1番、マリンちゃん!」
司会者の声が上がると、舞台の左右に垂らされた赤い幕の陰から、可愛らしい青い色をしたドラゴンが歩いてきた。
その様子に、審査員である5人のドララーとその妻である5匹の大きなドラゴンの視線が集まる。
取材に来ていたテレビカメラも、緊張の面持ちで舞台に姿を現した青いドラゴンをズームで撮影した。

参加ドラゴンの採点方法は、舞台の中心に進み出て一声大きく鳴くドラゴンを観察し、毛並み、声の質、歩き方などを審査して各審査員が10点満点の得点をつけ、合計100点満点で争うという方式を取っていた。当然参加資格は人語を話せない若いドラゴンのみである。
そうこうしているうちに、マリンちゃんと呼ばれたドラゴンが舞台の中央に出て大きく鳴き声を上げた。
「きゅぅ~~~~~~~~~~~~~~~ん!」
場内に甲高いドラゴンの声が響き渡る。その声に、様子を見守っていたドラゴンの飼い主達はほぉ~という長い息をついた。
声が止むと、場内は一転して水を打ったように静まり返った。即座に採点結果が出る。
8点、6点、7点、7点、8点、6点、7点、6点、6点、8点。
「69点です!」
司会者が即座に点数を読み上げた。そして、マリンちゃんは出て来た方とは反対側に静かに消えた。

「次、エントリーナンバー2番、モーリーちゃん!」
予想以上の緊張感が辺りを支配していた。
俺は、エリザがこの雰囲気に耐えられるのか少し心配になってきた。

「83点です!」
それまでの出場ドラゴン達の中で最高得点を叩き出したのは、エントリーナンバー43番のエメールというドラゴンだった。7歳で体も1.5m程とそこそこ大きく、しかも透き通るようなエメラルド色の体毛と優しく空気を震わせる声の持ち主だった。
名前も体毛の色からつけられているのだろう。
会場内は突然のダークホースの出現にしばらくざわめいていた。
「素晴らしいドラゴンでした。では次に行ってみましょう!」
会場内のざわつきを抑えつけるように、司会者が叫んだ。
「エントリーナンバー44番、アリスさん!」
アリス。その名前に俺は聞き覚えがあった。
舞台の右端から、大きなピンク色のドラゴンがゆっくりと姿を現した。
過去3回のコンテストで連覇を達成し、この界隈では最も美しいドラゴンの名をほしいままにしているあのドラゴンだった。
司会者が余計な前置きをしなかったのは審査員達に贔屓目を起こさせないためだろう。
俺はエリザが家にくるまでほとんどドラゴンコンテストという番組を見ていなかったため、このアリスというのがどのようなドラゴンなのか全く知らなかった。
アリスは堂々とした様子で舞台の中央に進み出ると、鳴き声を上げた。
「キャオ~~~~~~~~~~~~~~ン!」
大きな体に似合わぬ甲高い鳴き声が、シンと静まり返った会場内に反響する。
それまではドラゴンが鳴く度になにかしらの反応を起こしていた飼い主達も、この時ばかりは衣擦れの音1つさせることはなかった。

審査員が点数を掲げる。
「8点、8点、9点、9点、8点、9点、9点、8点、8点、9点」
会場内にどよめきが走る。
「85点です!」
続けざまに飛び出した高得点に、会場内から拍手が沸き上がった。
アリスは想像以上の美しさだった。俺も思わずつられて拍手をしてしまったくらいだ。
「エリザ・・・」
俺はコンテストも終盤になるというのにまだ名前を呼ばれないエリザのことが気がかりだった。
ドラゴンのエントリーナンバーは飼い主達には知らされないようになっている。
平等な審査を行うのための配慮なのだろうが、俺にとってはあまりありがたくないシステムだった。
「それでは次に行ってみましょう!エントリーナンバー45番、エリザ・・・」
ついにエリザの出番か!?俺は期待に胸が高鳴った。
「エリザベスさん!」
「へ?」
俺はまたしても違う名前を呼ばれて思わず困惑した。
舞台に姿を現したのは、エリザとは似ても似つかぬ真っ白な体の大きなドラゴンだった。
「違ったのか・・・」
残りのドラゴンは後3匹。俺はここまでくると、結果がどうなるかよりエリザが無事に出てきてくれればそれで十分だと思うようになっていた。

白い体が十分な華やかさをアピールできなかったのか、俺に無駄な期待をさせたエリザベスは56点という得点で舞台から去って行った。
まあ、直前のアリスと比べられたのが一番の敗因なんだろうけれども。
「さあ、残る出場者は後3匹となりました!現在最高得点の85点を破るドラゴンは現れるのでしょうか!?」
司会者の右肩上がりのテンションとは裏腹に、俺は次こそエリザの出番だと息を止めて待っていた。
「エントリーナンバー46番!ピッキーちゃん!」
また違った。エリザは本当に無事に出場登録ができたのだろうか?
だが、よく考えれば俺がここに来た時、もうほとんど飼い主達が揃っていて席は満席に近かった。
それならエリザの番号は一番最後の方なのだろうか?
「キャ~~~~~~~~~~ン!」
真っ黒な色の小さなドラゴンが鳴き声を上げた。
審査員達が採点を始めるが、俺はエリザのことで頭がいっぱいでそれどころではなかった。
「69点です!」
司会者の点数を告げる声が小さく聞こえた。次は・・・次こそは・・・
「それでは次に行ってみましょう!エントリーナンバー47番、エリザちゃん!」
来た!来た来た来た来た来た来た!エリザが来た!
俺は司会者の声に引き込まれるように椅子からぐっと体を乗り出して舞台を見つめた。
鮮やかな真紅の毛をなびかせて、エリザがなんと両足で立ったまま舞台に出てきた。
その瞬間、会場内でおおっという声が上がる。審査員のドララーもドラゴンでさえも、2足歩行で歩くドラゴンを初めて見たという感じで、エリザを食い入るように見つめた。
ゆっくりと、だが危なげなくエリザが舞台の中央まで進む。
そして、固唾を飲んで見守る50人以上の観客の方へ向き直った。

だが、エリザはなかなか鳴き声を上げようとしない。
エリザの足がカタカタと震えているのが観客席の後ろの方からでも見て取れた。
立っているからではない。
エリザは生まれてから今までで最も強烈な緊張と、不安と、ストレスの真っ只中に突き落とされていた。
視界に入る何かに心の拠り所を見つけようにも、いるのは5匹の大きなドラゴンと数十人の見知らぬ人間。
その100個以上もの視線に見つめられ、エリザは喉元をぐっと押さえ付けられたかのように声が出せなくなった。

エリザ!

俺はスッと音も立てずに椅子から立ち上がった。
観客席の一番後ろの方だったが、不安げに辺りをキョロキョロと見回していたエリザは群衆の中に見覚えのある人間が立っているのを見つけた。
「きゅぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!」
次の瞬間、会場内にエリザの鳴き声がキーンと反響した。
今までに聞いたどのドラゴンの鳴き声よりも、エリザのそれは鋭く、そして大きかった。
その声はもしかしたら、自分をこんな窮地に追いやった俺への罵倒の声だったのかもしれない。
審査員達の採点が始まった。
「9点、8点、9点、10点、9点、8点、8点、9点、7点、8点」
個人の最高得点である10点が飛び出したことに、会場内がどよめいた。
「85点!最高得点タイです!」
小さなエリザが叩き出した高得点に、司会者が叫ぶ。
「エリザ・・・」
エリザは少しホッとしたのか、落ちつきを取り戻した様子で舞台の陰に消えて行った。
その足取りに、さっきまでの震えは微塵も見られなかった。

最後に登場した黄色の大きなドラゴンが81点というそこそこの得点で舞台を去ると、いよいよ表彰式が始まった。
85点を獲得して4連覇を成し遂げたアリスの横に、誇らしげに胸を張ったエリザが並び、飼い主達やテレビ局からの熱い視線を浴びていた。
優勝の賞状と金一封がアリスの飼い主と俺の手に渡される。
10万円の優勝賞金がアリスの飼い主と折半されたために封筒に入っていたのは5万円だったが、俺はお金よりもエリザが精一杯頑張ってくれたことを嬉しく思った。
そのエリザはというと俺のそばに寄り添いながら、早く帰りたいとでも言うふうにしきりに裾を引っ張っていた。
「エリザ、よく頑張ったな」
そういって頭を撫でてやると、俺は大きくなったエリザを抱き抱えて
興奮冷めやらぬコンテスト会場から抜け出した。
家に帰り、エリザに褒美のご飯をたらふく食べさせてから、また2人で風呂に入った。

風呂から上がると、俺はエリザの頭をタオルでくしゃくしゃに拭きながら聞いてみた。
「またコンテストに出たいかい?」
すると、エリザは少し考えた挙句に首を左右に振った。
流石にあの緊張感を味わうのはもう懲り懲りなのだろうか。
「出たくないのか?お前嬉しそうだったぞ?」
それでもエリザはイヤイヤするように首を振り続けた。
「でもほら、優勝したんだから次もきっと・・・」
なおもしつこく聞く俺に、エリザは半分怒ったような顔をして飛びかかってきた。
「きゅぅっ!」
「わっ!」
顔に思い切り飛びつかれ、俺は座った体勢から後ろに転んでエリザの柔らかいお腹に顔を押し潰された。
「う、うぶっ・・・エリザ・・・」
だがエリザはまだ許してくれないようで、小さな両腕で俺の頭を掴むと、自分の腹にさらに顔をグリグリと押しつけた。
「きゅっ、きゅきゅぅ!」
「む、ぐ・・・わ、わかっぶ・・・わかっ、た・・・エリザ・・・うっ」
何度も柔らかい弾力のあるお腹を擦り付けられて、俺は息苦しさに手足をばたつかせた。
その様子を心配に思ったのか、エリザがようやくフェイスハッグから解放してくれた。
「きゅぅ・・・」
「大丈夫だよ。もうどこにもやらないよ、エリザ」
心配そうな顔で俺を見つめるエリザを見て、俺はエリザをこれ以上大変な目には遭わせたくないと思った。

俺はベッドに入ると、布団を半分上げてエリザを誘った。
「ほら、こいよエリザ」
エリザはちょっと首を傾げたが、すぐにベッドによじ登り、布団の中に潜り込んで来た。
「ずっと一緒だよ、エリザ・・・」
布団から顔を出したエリザに優しく話しかけると、エリザはホッと気の抜けたような顔でスヤスヤと寝息を立て始めた。そして、その幸せそうなエリザの寝顔を見ながら、俺もスーと引いて行く意識の波に体をまかせていた。
俺もエリザも、そう遠くない2人の未来を夢に見てクスッと笑った。



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