ドラネ・コンティ

    

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「85年物の赤ワインとチーズケーキをお持ち致しました」
高級な雰囲気を醸し出す三ツ星レストラン。
リボンのような大きな赤い耳を持った黄色のドラゴンは、運ばれてきた美味しそうなチーズケーキを見て微笑んだ。
レストランでバイトをする若いウェイターが、透き通ったワイングラスに真紅の美酒を注ぎ込んでいく。
ムシャ、ムシャ・・・
一言も発せずに黙々とチーズケーキを頬張るドラゴン。
その様子を横目に、ウェイターのドラゴンはかしこまった様子でグラスいっぱいまで注がれたワインのボトルを戻そうとした。ところがその時・・・
ムシャ、ムシャ、パキッ、バリッ、ボリッ、ビキッ・・・
聞き慣れない音に驚いて黄色いドラゴンの方を見ると、彼女はなんとチーズケーキばかりか皿の方まで美味しそうに食べている。
「あ、あの・・・お客様・・・?」
その信じられない光景にウェイターはボトルを傾けたまま石のように固まっていた。
グラスから溢れた真っ赤なワインが純白のテーブルクロスに幾筋もの跡を残して滴り落ちていく。
「あ、ごめんなさい。チーズよりお皿の方が美味しくてつい・・・」
恥ずかしそうに笑いながら、黄色いドラゴンは半分食べ残した皿を見つめながら言った。

「は・・・はぁ」
私は半分呆れながら曖昧な返事をした。
だが、その彼女は次の瞬間さらに信じられない行動に出た。
長い首をニュッと伸ばすと、限界までワインが注がれていたワイングラスに向かって大きく口を開ける。
「あ・・・」
私はその段になって初めてワインがこぼれていることに気付いたが、彼女はそれも全く意に介さずにワイングラスをパクリと口に咥えた。
「あ・・・あの・・・」
困惑しながらの制止もむなしく、皿に続いて高級なワイングラスまでもが彼女の口に飲み込まれていく。
んぐっとグラスを飲み下すと、彼女は満足そうな様子で呟いた。
「あーおいしかったわ。やっぱり85年物にはエルメスのグラスね」
どうしよう・・・皿どころかグラスまで・・・会計に入れるしかないだろうか・・・。
「もうお腹いっぱい。チーズケーキのお皿は下げてくださいな」
「は・・・はい」
そう言いながら伝票に彼女が食べたものを書き込んでいく。
チーズケーキ、600円。皿は・・・確か9800円だったっけ。グラスワインが1000円。
でもこのグラスは高級な・・・。

散々悩んだ末に、ウェイターはスッと伝票を黄色いドラゴンの前に差し出した。
総額113200円と書かれたそれを見て、彼女が首を傾げる。
「コレ・・・600円でしょ?」
「その・・・お皿とグラスは別料金でして・・・」
前例がないことだけにウェイターも不安そうな顔で応じる。
黄色いドラゴンは持ち合わせがないのかしばし迷った後、自分を指差してぽつりと呟いた。

「私・・・12万円でどうかしら?」
「え?」
予想だにしていなかった一言に思わず聞き返してしまう。
だが、私は彼女が何を言わんとしているかはなんとなく理解できた。
「し、しかし・・・」
私はゴクリと唾を飲み込んで口篭もった。その様子に、彼女の放った一言が突き刺さる。
「あら貴方、ひょっとしてさくらんぼね?」
「なっ!?」
図星なだけに反論できない。すると彼女はさらにテーブルの上に上り、私の顔を覗き込んで挑発的に煽った。
「うふふ・・・興味あるんでしょ?」
そう言いながらくねくねと腰を動かす。
「あ・・・あぅ・・・」
美しいドラゴンの強烈な誘惑に、思わず理性を失いそうになる。
さらに彼女は私に背を向けると尻尾をグッと上に持ち上げて股を開き、足の指をひらひらさせて誘ってきた。
「く・・・ぅ・・・」
だ、だめだ・・・あの誘惑に負けたらクビに・・・ああ、でも大人に・・・あぅ・・・
私は手にした控えの伝票をグシャッと握り締めて葛藤していたが、やがてそのせめぎ合いにも決着がついた。
「クソー!こんな店やめてやるー!もう―――で―――だぁー!」
ついに耐え切れなくなり、私はテーブルの上で待ち構えている彼女に飛びかかりそうになった。
そして淫らな野望をぶちまけかけたその時・・・
「お客さん!」
突然チーフが彼女に向かって叫んだ。
「あ!」
その声に驚き、彼女はガターン!と椅子もろともテーブルの下に落下する。
だが、痛そうに起き上がった彼女は次の瞬間、チーフに向かってさらに驚くべきことを言った。
「あ、あの店員さんが誘ってきたんですよぉ」
ナニーーー!ちょ、ちょっとまてぇぇ!
その突然の責任転嫁に抗議しようとした時には、チーフの怒気に満ちた目がこちらをギッと睨んでいた。
「あぅ・・・そ、そんな・・・」
彼女はこちらを一瞥すると、ゴメンネとばかりにパチッとウィンクして何事もなかったように店を出て行った。
「おい、お前ちょっとこっちこい!」
彼女がいなくなったあと、チーフが大声で怒鳴った。
「いや、あの・・・チーフ・・・その・・・」

憐れなウェイターの悲痛な叫びが聞こえる中、タダ食いに成功した黄色いドラゴンは満足そうな面持ちで悠々と帰路についた。



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