クリフトとアリーナの想いは @ wiki

2012.01.21

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kuriari

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クリフトのアリーナの想いはPart12.5
94 名前: 1/6  Mail: sage 投稿日: 2012/01/21(土) 02:06:32.41  ID: qaQC8ELG0
>>81ですがGJありがとうございました!
また書いたので投下します。

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「好みじゃないわ」
そういって書類から目を逸らす。目の前ではブライが怒ってる。
「姫様。いい加減にしてください」
「だってヒョロヒョロして、全然強そうじゃないじゃない。
なあに、これ。趣味はチェスだって。つまんない」
私はうんざりしていた。
毎日毎日、ブライはお見合いのことばかり。
求婚されるってのは正直悪い気はしないけど、私はまだ結婚なんてする気はないし、
何よりどの男も弱そうなこと!
「姫様、あなたより強い男などこの世におりません」
「別に、私より強くなきゃダメなんて言ってないわ。
でも、勉強しか出来ないようなタイプは絶対嫌」
「…夫婦揃って脳みそまで筋肉じゃ、サントハイムの将来は暗いですな」
「どういう意味よ」
「姫様。強いのはあなた一人で十分です。夫となる者には、姫様に無い部分を
補える、聡明なものを選ばないと」
「…じゃあそういう人を連れてきなさいよ」
「…いればとっくに紹介しています」
ブライの言いたいことも分かる。だって、私はあまり勉強が得意じゃないし、
お父様の仕事を毎日横で見ているけれど、難しくてよく分からないことも多い。
「強くて頭も良い人かあ…」誰かいたっけ。

「うわぁ!」
「わっ!驚かさないでください姫様」
「ご、ごめん」
「姫様?顔が赤いようですが…?熱でもありましたかな?」
「そ、そうかも。悪いけど今日はもう出てって」

ブライは私の部屋を後にした。
ああびっくりした。だって。
いきなりクリフトの顔が思い浮かんだんだもの。
「…」
確かに、クリフトは、けっこう強くなったし、頭もすごくいい。
神官学校は首席で卒業したとか聞いたことあるし、魔法だって一杯知ってるし
私の知らないことを沢山知ってる…けど。
「でも私別にクリフトのことなんて」
ああどうしよう。顔が熱い。

参った。
あれから。クリフトのことばかり考えてしまっている。
難しい書類。クリフトに聞けば分かるかな?
クリフトなら、組み手の相手もしてくれるかな?
特訓で怪我してもすぐに治してくれるよね。
ああもう。なんでこんな。
「クリフトのバカ。いきなり頭の中に出てくるから」
「…お呼びですか?」
「ひゃあ!」
急に廊下の角からクリフトが出てきたものだから、私は大声を出してしまった。
「な、何よいきなり!バカ!」
「え、あ、驚かせてしまってすみません…」
うなだれるクリフト。ああもう、そんなつもりじゃ。
「ご、ごめん。違うの。それよりどうしたの、こんなところで」
「ああはい、今朝バザーに用事がありまして出かけたのですが、
異国の焼き菓子を売っているのを見つけまして。
姫様のお好みに合うかと思いまして、いくつか買ってきたのですが」
「お菓子!?」
なにそれ、外国のお菓子?ちょっと気になる。
「もしお時間がありましたら、いらっしゃいませんか?お茶をご用意いたしますので」
「うん!じゃあおやつの時間になったら行く!」
うれしい。どんなお菓子だろう!

「おいしそう」
色とりどりのかわいらしいお菓子を前に、私は目を輝かせた。
「紅茶でよろしいですか?」
「うん」
「マカロン、と言うらしいです。アーモンドで出来たお菓子だそうですよ」
「へえ」
「サランの子どもたちをバザーに連れて行く約束をしたもので。
久しぶりでしたね、姫様たちと行って以来ですので」
「いいなー。私も行きたい」
「では、そのうち行きましょうか」
ドキっとする。それってデートのお誘い?
「2人で行くの?」
「誰か誘っても構いませんよ?」
「…」
そうじゃなくて。何聞いてんだろう私。
「どうぞ」
急に黙った私に疑問を抱く様子もなく、クリフトがお茶を出してくれた。
「ありがとう。じゃ、いただきまーす!」
わ、甘い。美味しい。お茶を一口。
「おいしい!」
「それは良かったです」
クリフトはニコニコしている。
「その赤いのは、フランボワーズで、茶色いのはチョコ、緑はピスタチオ…だそうです」
「わーどれもおいしそう。全部食べていい?」
「どうぞ」
美味しい。嬉しい。お茶もおいしい。しあわせ。
「あ、そういえばさ」
「なんでしょう」
「この間ね、若い女の子たちが集まって、アフタヌーンティ?だかをしたんだけど」
「はい」空のコップにおかわりを注ぎながらクリフトが答える。
「肝心のお茶があんまり好みじゃなかった」
今日のお茶はおいしい、そんなことを思いながら。
「甘いお菓子だと伺っていたので。少し濃い目に淹れてあります。
茶葉も、姫様が確か前に好きだと仰っていた物を」
「あ、そうなんだ。さすが」
感心して答える。
「今までどれだけ姫様にお茶を淹れてきたと思ってるんですか」
クリフトが微笑んで言う。
うわ。なんか。
「…」
私のことよく分かってるみたいな。いや、分かってるんだけど。
「あ、濃すぎました?」
「ううん、ちょうどいいよ」
赤くなった顔を見られたくなくて、下を向いたまま答えた。

それ以来、私は一層クリフトのことが頭から離れなくなってしまった。
幸か不幸か、クリフトは忙しいらしくお城の方に来ることも無い。
私もブライのもってくるお見合い写真を眺めるのに忙しかった。
クリフトのほうがかっこいいとか、
クリフトの方が強そうとか。
クリフトのほうが優しそうとか。
頭に浮かぶのはそんな言葉ばかり。
もうなんでこんなにクリフトのことばっかり!
「もういい加減にして!」
「いい加減にして欲しいのはこっちです」目の前のブライが言った。
ああ忘れてた、ブライ居たんだった。
「そろそろ一人くらいお会いしても良いのではないですかな!」
「…」
だって。そんな時間あるならクリフトに会いに行けるのに。
「ブライ…私やっぱりお見合いなんてしたくないわ」
「そうは言いましても姫様。もうそろそろ結婚していただかないと」
そうだけど。だって。今はこんなに
「クリフトのことばっかり考えちゃうんだもん」
「はっ!?」
「クリフトといるほうが楽しいに決まってるのに、お見合い相手なんかと会いたくない」
「姫様…クリフトと何かあったんですかな」
怒るかと思ったけど、ブライは優しい目をして聞いてきた。
「何も無いよ、別に。ただ私が、勝手にクリフトのことばっかり考えてるだけ」
ブライに何言ってるんだろう私。でもお見合いとかもう真っ平。
「…私どうしちゃったんだろう…」
ほんと、どうしちゃったんだか。
「…それは、クリフトに聞くのが一番ではありませんか?」
「クリフトに?」
「本人にそのまま伝えて来なされ」
ブライは呆れたような、笑ってるような…複雑な顔をして言うと、ブライは部屋を出て行ってしまった。
クリフトに…直接聞く?



「急にどうしたんですか?」
夜、クリフトの部屋を訪れた。随分驚いているようだった。
「ちょっと、聞きたいことがあって」
どうしよう。緊張してきた。
「…どうぞ。」
もうクリフトは寝巻きを着ていて、「こんな格好ですみません」とガウンを羽織った。
「何かありましたか」
何かっていうか。なんて言うか。
「…」
そのまま伝えろと、ブライは言ったけど。
なんていえばいいんだろう。
朝から晩までクリフトのことばかり考えてしまうんだけどなんだろう?って言えばいいの?
ダメダメそんなの恥ずかしすぎる!
「…よっぽど深刻なのですね?」
「いや、深刻ってわけじゃ…えと…」
どうしよう…あ、そうだ!
「あ、あのね。ある人のことをね」
「はい」
「あ、ある人ってのはよく知ってる人なんだけど…なんだかその人のことばかり
朝から晩まで考えてしまって!ドキドキして、顔が熱くなっちゃって…」
クリフトの顔が見れない。
「わたし、ど、どうすればいいのかな…?」
そうっと、顔を上げてみる。クリフトが一瞬目を見開いた気がした。
次の瞬間、優しく微笑むと、「そうですか」と答えた。
「その方は幸せですね」
そ、そうなの?ていうかクリフトなんだけど。
「姫様は、その方のことが好きなんですね」
…え?
「きっとそれは恋ですよ、姫様。」
恋…恋!?これが恋!?
顔が赤くなるのがわかる。
クリフトのことばかり考えて、会いたくて、お見合いなんてどうでもよくなっちゃって。
恋。そっか、言われてみれば。
「ク、クリフトは!」
「はい」
「クリフトは恋、してるの…?」
言ってしまって後悔した。どうしよう。怖い。
「私は…そうですね。ずっとお慕いしてる方がいらっしゃいました」
…え。
「ですが、私は神官ですから。そういった感情はもう持たないと決めたのです」
…それは。どういう。
「今後また恋をすることは無いでしょうね」
「そ、そうなんだ」
どうしよう、声が震える。
「あああ、あの、ありがとう、その、教えてくれて。
じゃあ私、もう行くね!」
言い終わると部屋を飛び出した。
そっか、私恋してたんだ。でも、クリフトは。
自分の部屋に飛び込むと、ベッドに突っ伏した。涙があふれてきた。
「クリフト…」

朝が来てるのはわかったけど、気にせず寝ていたら、ブライの怒鳴り声が聞こえた。
「姫様!!!公務をサボる気ですか!!!」
ドアの開く音がして、ドンドン、と大きな足音を鳴らしてブライが入ってきた。
「いい加減にしてください。何時だとお思いで…」
「なによう」
むくりと起きた私の顔を見てブライが絶句した。
「なんですかその顔は」
一晩泣きはらしていたから、きっと目がはれて酷い顔なんだろう。
「ああもう、お客様が見えるというのに…」
「今日は何もしたくない…」
「何を仰いますか!姫様、一体どうしたって言うんです」
どうしたって。
「クリフトが…」
また思い出して、涙があふれてきた。
「クリフトは私のこと好きじゃないの」
「はい?」
「クリフトは私じゃない人が好きで…でも神官だから一生恋もしないの」
最後の方は涙声でグズグズだった。
「そんなアホな」らしくない口調でブライが言う。
「だって、言ってたもん~~~」
涙が止まらなくて大声で泣き続けた。
顔をあげるとブライがいなくなっていた。
「…」
考えてみたら、私、ブライにクリフトが好きだって打ち明けたようなもんだよね。恥ずかしい。
「はあ」
私はこんなおてんばで、クリフトに今までいっぱい迷惑かけてきて。
そうだよね。クリフトが私のこと好きなわけない。
その瞬間、ドアが勢い良く開いて、ブライに蹴飛ばされてクリフトが転がり込んできた。
「もう一度ちゃんと話をしなされ!」
ブライはそう言うとドアを閉めて出て行ってしまった。
え?なに?え?

「ひ、姫様…」
クリフトが起き上がって、真っ赤な顔でこっちを見てる。クリフトの目は腫れあがっていた。
「…な、何?」
クリフトに会えたのは嬉しいけどつらい。
「あ、あのですね…姫様…」

「まったく、世話の焼ける」
扉の向こうから、ブライの声が小さく聞こえた。


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