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SRWOG out runner

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sousakurobo

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SRWOG out runner

ここは、虚空の彼方。極寒と深淵だけが支配し、人の阻む黒き世界、すなわち宇宙。
本来どこまでも黒く冷える無間の空間が、青き星を背に何百という閃光に照らされている。

「これが……この世の終わりなのか?」

宇宙を翔ける――真紅の流れ星。人型機動兵器。
コクピットブロックを守るため張り出した胸。白い猛禽類によく似た展開式の翼。細身の体に似合わぬ長大で無骨なライフル。
宇宙を疾る赤い色のマシン――PTX-016L ビルドファルケン。 ヒュッケバインシリーズのHフレームを使った完全砲撃戦型で
ありながら高速戦闘を可能とした高性能パーソナル・トルーパー。のちに、『修羅戦争』でヒリュウ・ハガネ隊に引き渡されるそれである。
だが今は『修羅戦争』ではない。時は今……インスペクターとの決戦の最中。

赤い体が深緑色のスラスターに押され、ぐんぐん加速していく。
地上に比べればGの軽い宇宙でありながら、シートベルトが体に酷く食い込む。ビルドファルケンの機動性の高さの証明だが、
つい最近まで、量産型ヒュッケバインシリーズに乗っていた人間にこれは堪えた。

目の前に現れた虫型偵察機――インスペクターのメガロードの群。
即座に反応し、トリガーキーに指をかける。我彼距離がAIで自動測定され、最低の距離を表示/ターゲットロック/トリガーを引くタイミングの指示。
3つが同時に表示される。脳が処理するより速く、咄嗟に引き金を引く。偶然だが最適なタイミング。
ビルドファルケンが設定されている射撃用のモーション・パターンに従い迅速に銃を構え/発射。メギロード4機に正確に着弾し、無重力空間に砕けたデブリを撒き散らす。

しかし、次の瞬間には目の前に現れる敵(てき)、的(てき)、敵(てき)、的(てき)……
インスペクターのメギロード、鹵獲されたヒュッケバイン、戦闘機ランゼン。謎の未確認生態兵器群、アインストのボーン、グラス、アーマー。
無限に無限に現れ、お互い食い合うように滅ぼしあう。

連邦軍最後の意地をかけた、残存部隊によるヒリュウ・ハガネ隊のホワイトスター特攻作戦の支援。
本部消滅や世界規模の攻撃の前に事実上総崩れであった連邦主導ではなく、月でも意地を見せたノイエDC側から持ちかけられたこの作戦。
ノイエDC残党軍+ここに判断し協力を決めた連邦軍残存部隊+最後の最後で月を取り戻し、兵器をロールアウトしたマオ・インダストリーの意地。

ヒリュウ・ハガネ隊も、自分たちの存在に気付かないだろう。表向き、連邦は自分たちの行動を握り潰すだろう。
それでも、戦うために集った戦士たち。


それが――また少し、また少し宇宙へと消えていく。
戦いは、ホワイトスター外周部。内部に侵入したヒリュウ・ハガネ隊に攻撃を集中させぬため、そして脱出のため、突入口を塞ぎひたすら周辺宙域を死守する。
退路などもとよりない。知っていたはずだが、それでも目の前まで圧倒的な恐怖が押し寄せる。

異形の化け物と、ココロなき殺人人形を、延々と破壊し続ける。

「行け! S・BS!」

腰のハンガーにオクスタン・ライフルをかけ、左右腰部から2本の高出力ビーム・ソード〈ロシュセイヴァー〉を抜き放つ。
改修されたBMセレクトで追加されたプログラム、シングルバードストライクモード起動。翼4つの翼が上下に展開し、まるで8本翼の天使にシルエットが変わる。

「うおおおおおおああああああああッッ!」

コーティングされたウィングと両手に持った長剣、そのどちらもが明緑色に輝き敵を切り裂く刃となる。
先ほどを超える超高速で飛行。翼に触れた骨の化け物が、量産型ヒュッケバインが、植物の塊が両断された。
手に持つロシュセイバーに触れた戦闘機が、メギロードが、外見だけの鎧が横薙ぎに切り飛ばされた。

足を止めることが恐ろしかった。
見方の減りと共に、自分へ迫る敵は増えていく。一度足を止めれば、その物量という名の濁流に飲み込まれる気がした。

骨がきしむ。筋が突っ張りすぎて痛い。脳が沸騰する。けど、足を止められない。
後ろに何かいるのに、振り向けない感覚によく似ていた。

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