クリフトとアリーナの想いは @ wiki

2006.03.26

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kuriari

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クリフトとアリーナの想いは Part4.2
703 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/26(日) 00:53:13 ID:3iglfyP60

それは昔のお話。まだ二人が今よりも小さな頃でした。

「うわぁ~キレイだねーーー!!」
今日もブライ様の授業を抜け出したアリーナ姫様がやって来ていたのは、お城の裏庭。
そう、今は春。
そこは視界がピンク色。桜に染められた場所でした。
間近で見る桜にはしゃいで走り回っているアリーナ姫様の傍らにいるのは、大人しそうな少年。
無理やりひっぱって連れてこられたのか、神官学校の教科書を持ったままです。
桜の花を眩しそうに見上げながらも、周囲に絶えず気を配っています。
きっと、アリーナ姫様を連れ戻しに来る大人が来ないか見張っているのでしょう。
「クリフト、わたしね、お花がこんなにそばで見られてすっごくうれしい!!」
アリーナ姫様に呼びかけられて、少年ははにかみながら頷きました。


花びらがちらちら、ちらちら舞う中に二人はどのくらい立ち尽くしていたでしょうか。
「どうして桜さんはあっという間に散っちゃうんだろうねぇ」
ご機嫌だったアリーナ姫様ですが、ちょっとだけ不満顔です。
「そうですね、しかし花が散って緑が茂るのもそれはそれで美しいものですよ」
花びらをそっと一枚手に取ったクリフトが言いました。
「そうね、夏が来るのも好きよ!だって私の誕生日も夏だし!」
そこでアリーナ姫様は気がつきました。
「…ねぇ、クリフトの誕生日っていつ?」

少しだけ苦しそうな顔をしたクリフト。
「…わからないんです。ただ、春頃らしいということですが」
幼い頃からずっと教会にいるクリフト。それには何やら大きな事情を抱えていそうです。
「そっかぁ…」
アリーナ姫様はとっても悲しくなりました。
自分はこんなに誕生日が大好きなのに、クリフトはもしかして祝ってもらったことが…!
「神父様が日付を決めてしまってのもいいのですが、
本当と違う日を祝うのかと思うと少し悲しいですからね。このままにしてあります」
クリフトは散っている花びらのような微笑を浮かべました。

「あ、そうだ!!」
突然大声をあげたアリーナ姫様に驚いたクリフト。
一際美しい桜の元にアリーナ姫様は駆け寄っていきました。そして振り向いて、
「春なんでしょ?じゃあこの桜が咲いた日をクリフトの誕生日にすればいいのよ!
それなら毎年ちょっとずつ違っちゃうけど、絶対本当の誕生日もその中にあるわ!
ね、そうしましょ?」
満面の笑顔でそう言いました。


あっけにとられていたクリフトですが、やがて笑い出しました。
そのまま笑いが止まらなくなりました。そんなクリフトを見て、
「な、何よう、いいアイデアだと思ったのに・・・」
アリーナ姫様はふくれっつらです。
「……いいえ、本当にいいアイデアです。ありがとうございます」
笑いをこらえこらえ、クリフトが言いました。
アリーナにしかできない突拍子もないアイデア。
「あまりにも姫様らしすぎて。思わず。すみません」


「ふうん、まぁいいわ。じゃ、来年はこの桜が咲いたらお祝いしましょうね。
毎年ずーっと、この桜を見に来ようね!!」
毎年ずっと、あなたと桜を見に来れる。
「はい。ありがとうございます」

桜を前にした、二人の約束。
アリーナ姫様とクリフトは微笑みあいました。


「姫様~~~!?どこにおられるのじゃ~~?」
遠くから、ブライ様の声がします。
「あ、そろそろ帰らなきゃだね。」
ハッとしたアリーナ姫様。
「じゃあね、クリフト。授業中なのにつれてきちゃってごめんねー!!」
走っていくアリーナ姫様の背中を見送りながら、
いつもよりもしばしの別れが寂しくないことに気づいていたクリフトでした。


クリフトはもう一度桜を見上げてみました。
「また来年も、よろしくお願いします」
深々と頭を下げて、教会へと踵を返したクリフトでした。    

(終)
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