クリフトとアリーナの想いは @ wiki

2006.02.08_2

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kuriari

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クリフトとアリーナの想いは Part4.2
139 :1/3:2006/02/08(水) 21:36:40 ID:/9aPCCpz0

「ねえクリフト。チョコの作り方、教えてくれない?」

姫様がニコニコとして、私の顔を覗きこむ。
「……はっ?」
思ってもみなかった言葉に、思わず気の抜けた返事を返してしまった。
姫様と、手作りチョコという全く結びつかない内容と……誰のために、
という不安と。

「もうすぐバレンタインでしょ? どうしても手作りあげたい人がいるんだ!」

……。

はあ。その幸せな方は……誰なのでしょうか?
聞けない、そんなこと。

「判りました。では、城の台所で……」
「あっダメ! お城で作ってたらみんなにバレちゃうもん。クリフトの部屋
貸して!」

姫様は顔を真っ赤にして、両手をぶんぶんと振る。
姫様が愛する人に渡す物を、私の部屋で私が手伝って作るのか。
はあ……。

「直接火にはかけずに……あ、お湯の温度に気を付けてください」
姫様は必死な表情で溶けかかるチョコをかき回す。ときどき跳ねたチョコを
指で掬っては、
「おいしー」
と、笑顔を見せる。

今回作るのは、トリュフチョコ。一度溶かしたチョコを少し冷やして、姫様が
丸めていく。
大きなものや小さなもの、形がいびつなもの……。
思わず手が出そうになると、
「ダメッ!」
と、力強く拒否される。

はあ……。


「できたー」
「お疲れ様でした、姫様」
姫様がチョコを丸めている間に、私は紅茶を用意しておいた。
……いつもより、少し、苦くなってしまったけれど。
「ありがと、クリフト」
「……粉、ついてますよ」

姫様の顔中に、ココアの粉がついていた。
思わず、くすっと笑ってしまった。
「もう、なによー! 笑わないでよー!」
「……い、いえ……あはは」
姫様に手拭きを差し出しながら、つい笑ってしまう。

「そうだ、ねえクリフト」
「はい?」
「はいっ」
「……っ!?」

私の口に、一番大きなチョコが押し込まれた。
唇に、姫様の柔らかい指の感触があった。

その指についたココアの粉を、姫様が小さく舌を出して舐める。

「おいしい?」

……。
…………。
………………。

「お、おいしい……です」
「そう、よかった。お父様、喜んでくれるかな?」

そう言うと姫様は椅子に腰掛けて、紅茶に口をつけた。
「……お……お父様、って、王様に、ですか?」
「そうよー。去年はほら……渡せなかったでしょ」

あ……そうか。去年の今頃は、サントハイムの人々は……。

「やだあクリフト、ちょっと紅茶苦ーい」
「……姫様が、チョコを舐めすぎたんですよ」

一番大きなチョコを食べた私の口にも、紅茶はちょっと苦く感じた。
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