クリフトとアリーナの想いは @ wiki

2006.11.04

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kuriari

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クリフトのアリーナへの想いはPart6
444 :【育む者】1/4 ◆gYNTG9FGL2 :2006/11/04(土) 03:51:24 ID:isBEDW100

私の名はクリフト。
サントハイムの王宮神官長の位を持つ傍ら、
城下町サランで神学学校の教師を務めています。

「クリフトぉー」
がつーんがつぅーん

姫様が私の部屋のドアを叩く。
さすが魔王討伐を果たし世界を平和へと導いた私の主君。
ノックの音もひと味違う。

「アリーナ姫様。
平和さに力を持て余しているとはいえ、
それを私の部屋の扉へぶつけることは控えていただかないと…。」

「そう?鉄扉にアストロンを施した特製品だもの。
ちょっとくらいの力じゃビクともしないわよぉーーーー?」
「ああ、もう…。
新調したばかりなんです。
それに、この扉を作っていただく際に勇者様に
わざわざブランカの山奥からご足労頂いてですね…。」

「ソロも今は木こりのお祖父さんと一緒に暮らして平穏な毎日よね。
暫く会っていなかったあいつを顔見せに呼びだす、丁度いい口実にもなったし。」

少し賑わいがあるくらいが楽しいわ、と姫様が結ぶ。
正直、若くて魅力的な男性であるソロ様には今後姫様のお側に出てきて欲しくない。

「手合わせができるのもソロくらいだもの。」

(グサ)
「姫様は本当に…。」
脳筋なのだから。
力不足、と言われている私の気持ちにも気づかずに。
ただ佇んでいられるならば、見目麗しゅう深窓の姫君でいらっしゃるのに。

「…ところで、わざわざご足労頂いて本日のご用件はなんでしょう。
お部屋に呼びつけてくださればお伺い致しますが。」

「サランの子供たちに武術の稽古をつけていたのよ。」
「!!!」
「やぁーね。血相変えちゃって。」
幼子が怪我でもしたら!!
子供たちを預かる教師という立場を考えてください!!!

「……ところで。最近の子ってクリフトみたいなモヤシっ子が多いと思うの。」
(グサ)
「サランには立派な教会が、クリフトが卒業した神学学校があるわ。」
「ええ。サントハイムは信仰に厚い国。
神の加護があってこそ、我々は毎日のーーーー」

私の話を遮り、姫様は熱弁を続ける。

「先の王宮失踪事件。
神様のご加護にすがるばかりでは私たちの力は頼りないと思うの。」

「そこでね。私!国民ひとりひとりが有事に備えるべきだと思うの!」
有事とはまた物騒なことを仰る。

「私が子供たちを鍛えてあげる!
お父様にお願いすることにしたの。
黙ってお城を抜けだして武者修行の旅に出発するのと、
私がサランの神学学校の武術教師になるのと、どちらがいいかしら?って。」

それ、なかば王様に対する脅迫ですよ、姫様…。
………?!姫様、今、教師とか聞こえましたけれど?

「お父様は頭を縦に振ってくださったわ。」
それはそうでしょうねぇ………。
「体育の時間を従来の倍に設定するわ。これは我が国の定めた義務よ!
サントハイムは心身ともに強靱な若者を育成すべきよ!!!」
ねえ、先生?いいでしょう?

単に、ご自分との手合わせに耐えうる人材の、確保をしたいだけに見受けられますが。

「一国の姫君であらせられるアリーナ姫様が教育者などとは。
ゆくゆくはサントハイムを一身に受けられる身…」

「あら、ソレッタ国王は鍬を用いて、国民と一緒に畑に赴いているわ。」
私にできないことはない!!


あぁ、もはや私の言葉など耳にとどかないでしょう。

以後、サントハイム領土の学校では
文武両道を掲げた理念のもとに教育が行われています。

女王戴冠の日が間近に迫った今日も、
軽装を纏った全身を泥だらけにし、子供たちと太陽のように笑っているアリーナ姫様。
有事などあるわけでもなく、サントハイムは平和です。

そして今日も、私はお側で姫様を見守っています。

                        (終)

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