「2012.02.17_2」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

2012.02.17_2」(2012/03/04 (日) 00:22:37) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

クリフトのアリーナの想いはPart12.5 199 名前: 調理実習 1 Mail: sage 投稿日: 2012/02/17(金) 09:12:44.64 ID: axrZkRco0 「あ、あの、あたしたち…さ…」  トレイに並べられた可愛らしいクッキーと、明らかにクッキーの残骸とおぼしきものを見比べながらあたしは呟く。 「何か?」  隣でクリフトが微笑む。 「厨房借り切って何遊んでるんだと思われるだろうね…」 「よろしいのでは」 「だけどさ…」 「あなたも料理のひとつぐらいおできにならなくては…」 「そうなんだろうけど…」  クリフトと、可愛いクッキーを見比べる。  人づてに、クリフトはさりげなくお料理が上手だと聞いてはいた。でもまさかここまで差があるとは思ってなかったな…。 「あたしたちさ、同じ材料使ったはずだよね…」 「そのはずです」 「配分も間違ってなかったよね」 「そうですよ」 「なのに何で、こんなにしたたかに差が出るかな…」  あたしが焼いたほうは、チョコレートが入っているわけでもないのに真っ黒け。明らかに焦げている。 「焼き過ぎたでしょう」  クリフトが焦げたクッキーとあたしを見比べて微笑む…というよりこの表情は、笑いをこらえている顔だ。 「だって時間通りに焼いたのを出して触ったら、ふにゃっとしてたから…」 「それでいいのですよ」 「え?」 「焼きたてはしっとりしててもね、冷めると固くなるのです」 「へえ」  あたしは彼を見上げた…当の彼は、おかしくてたまらないとでも言うようにくすくすと笑っている。 「わ…笑うことないじゃない…」  一応強がりを言ってはみる…けれど、ああもう、こればっかりは笑われても仕方ないな…。 「私も同じ失敗をしましたのでね…」 「あなたでも失敗するんだ…」 「この手のことに失敗はつきものですよ…」  なおもクリフトはくすくす笑いをやめてくれない。 「ひどいなあ…」  笑うのをやめてくれないクリフトに対してか、自分の料理の腕に対してかわからないひとことを、あたしは呟く。  何かさすがに落ち込んできちゃう…。  と、クリフトがトレイに手を伸ばして…なぜか、あたしが焼いた、したたかに焦げたほうのクッキーを手に取る。 「あ、それ駄目!」  まずいって初めからわかっているはずなのに、なぜか彼はあたしの制止を振り切って、無造作に真っ黒なクッキーをかじる。  うわ、がりり、と、いかにもまずそうな音。 「ひ、ひどいでしょ…」  さすがに恥ずかしくなって、あたしはうつむく。  そんなあたしをよそに、なぜかクリフトが微笑んだ。そして 「あなたにしてはなかなか…」 「そりゃ…材料は間違いないもん…」  その間違いない材料で、何でこんなことになるかな…。  あたしはクリフトの焼いたクッキーを手に取ってかじった。う、評判どおりおいしいから腹が立つ。  神学校って料理まで教えるもんなの…。 「悔しいけどおいしい…」 「お口に合ったようで…」 「ん…」  …ますます恥ずかしいじゃない…やだよ、あたし今間違いなくゆだってる…。  あ、不意に何かに気づいたように、小さくクリフトが声をあげる。 「…どうかした?」 「火傷されているようですね…」  あ、そういえば、右手の指先が少しひりひりする。 「焼いたばっかりのクッキーに触っちゃったからそのせいじゃないかな、大丈夫よ、これぐらい大したこと…」 「お待ちを…」  クリフトがあたしの右手を取って、ひりひりする所に軽く唇を押しつけて息を吹きかけてくる。  あ、ホイミ…か。みるみる痛みが軽くなってくる。 「あ…ありがと…」  お料理教わった上に手当てまで…ああ、あたしって何者…。 「ね、ねえ、あなたが焼いたのはとにかく、あたしのはどうしよ…」 「私がいただきます」  平然と怖いこと言ってんじゃないのよ…自分で作っておいてこんなこと言うのも何だけど、あたしだってこんな クッキーだか何だかわからないもの口に入れるの嫌よ…。 「お、お腹壊したって知らないから…」  か、片づけなくちゃ。  恥ずかしいのをごまかすためにあたしは流しに駆け寄った…はずみに食器棚にぶつかって、お皿とカップを落としてしまう。  …お皿とカップの割れる、派手な音。ううっ、何でこんな時に、しないでもいい派手な失敗するかな…。  クリフトがくすくす笑いながら寄ってきて、割ってしまったお皿のかけらを拾い上げた。そして 「もう厨房はお借りできないかもしれませんね…」 「うん…」 //

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
目安箱バナー