創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

「robotBusters!」前編

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irisjoker

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                           ロボスレ学園 PRESENTS




                        ※パラレルです     





……眩しい。窓から入り込む無遠慮な太陽の光が、静かに忍び寄ってきては、まだ眠っていたい俺を起こそうとする。

だけど俺はそう易々と、太陽には屈しない。さっきよりも目を強く閉じて、光が忍びこんでくるのを防ぎながら心地の良い闇の中に身を委ねる。
と、ギラついていく太陽と同時にドカドカと元気良く、階段を昇って来る音が遠く聞こえてくる。奴だ……。俺が起きないから起こしに来たな……。
俺は更に耳を塞いで辛い現実を遮断する様に心地の良い闇――――その名もベッドに丸まって、なるたけ無心になって眠り続ける。

階段を昇ってきた奴はノックもせず豪快に、俺の部屋のドアをばぁ―ん! と口で効果音を言いながら開けた。

「あーたーらーしーい朝が来たよ―! 起きて―お兄ちゃん!」

実に活発な、そして煩いほどの大声で奴は、床を蹴り上げて俺のベッドに飛び乗ると、はしゃぐ子犬の様にベッドをトランポリンみたいに飛び跳ねる。
毎朝、いや、先に部活で出かけるとき以外、奴は何時も俺より先に起きて、俺をこんな方法で起こしに来る。本人にとっては朝の日課らしい。
朝の日課というにはあまりにもハードな気がするがな。俺にとっては。何故なら奴は俺が1分以上経っても起きない場合は何処で習ったのか、打撃技を加えてくるのだ。

こうやって半覚醒状態の時は寸でで防げるが、ガチで眠っている時には命の危険を感じる。
ずっと前に腰にムーンサルトプレスを食らった時は呼吸が止まりかけた。

「むむむ……起きないなー。ようし」

飛び跳ねてる感覚が無い。と、言う事はだ……。毛布から少し顔を出すと、奴が天井ギリギリまで高く跳んでいるのが見えた。
何時もスカートの下は体操着だから……いや、合間から見えるぞ。白か。
って、そんな事どうでも良い。俺は急いでガバっと起き上がり、寸前で降りかかって来る右足を両手で防いだ。
そのまま腰を掴んで動かない様に押さえつける。体重は40kg以下なのにドスンと、ベッドが軋む音がした。毎度思うがコイツの体はどうなってるんだ。

「莉侘……起こすのは構わん。だが起きないからって打撃技は駄目だっつったろ?」
「だってお兄ちゃん中々起きないんだもん。ちょっとくらい強烈な方が良いかなって」

                                      リ タ 
俺に動きを封じられて、頬をフグみたいにぷくーと膨らましている奴――――の名は莉侘。俺の2個下で、今年中学3年生となる15歳だ。
中学生とはいったがそれはあくまで年齢。外見だけを見るとどう考えても小学生にしか見えない。しかも顔つきはロリコンにはドストライクの超童顔だ。
しかしそんな外見で男の事というか性的(ロリコン)な意味で心配になるかと言われれば、笑顔でNOと言える。
何故ならコイツはロリの皮を被った何かに他ならないからである。今の肉体的目覚ましのみならず、予想だにしない突拍子の無い行動を我が物顔で起こしまくるからだ。

そんな莉侘だが持ち前の明るさと笑顔で沢山の友達が居ると聞く。それに少なからず、その容姿に惚れる男子生徒もいるとか居ないとか。
兄としてはそんな奴らに対して一応警戒しつつもアワレにも感じる。人は見かけによらずという言葉を知っていれば、コイツと付き合いたいだなんて思わ

「お兄ちゃん……さっきから誰と喋ってるの? 太陽に脳味噌焼かれちゃった?」
「そういう所は突っ込んじゃ駄目だよ、莉侘。それにそういう突っ込みも良くないよ、莉侘」

こういう、どうにも突っ込みにしてはキツすぎて笑えない発言も莉侘の恐るべき所だ。
本人はあくまで軽口のつもりだろうが、俺以外にこういう事を言っていないことを祈る。
にしても自分自身がどれだけ恵まれた容姿を持っているのか自覚すればすぐに男友達でも、むしろ恋人だってできるだろうに。
ホントに容姿だけなら天使みたいに可愛らしいんだよなぁ。中身は制御出来ない核爆弾みたいな奴だけど。

「てか何時まで掴んでるの、お兄ちゃん」
「おっと悪い。今着替えるから先に降りててくれ」

そう言いながらベッドから莉侘を下ろす。瞬間、漫画みたいに莉侘はピューと音も出さず高速で一階へと降りていった。やれやれ。
朝から疲れるな……と溜息を吐きながら制服に着替え、莉侘と父さんが居る一階、もといリビングへと降りる。
リビングに差しかかると、トントンと小気味良くネギを切る音と素晴らしい日本の朝的な、味噌汁の香りが俺の鼻をくすぐる。

「お兄ちゃん来たよ、父さん」
「何時も呼んでくれてありがとね、莉侘」

呼ぶにしてももう少しお淑やかに呼んでほしいものだがな……。心の中でそう父さんの発言に軽く突っ込みながら椅子に座る。
顔を上げるとキッチンで朝食を作っている父さんが、アジの開きの乗った皿を持って振り向……。

「今日も彫刻みたいに素晴らしい筋肉だね、父さん!」
「何時もの鍛錬の賜物だよ」

……ギリギリ肌が透けない位に薄い素材で出来た、ピッチピチのタンクトップの上に、可愛らしいひよ子さんが描かれたエプロンを付けた父さんが、テーブルの上に皿を置いた。
                ルガ 
この人の名は、俺の父さんである流我。掃除洗濯料理その他、家事と呼ばれる全ての面において、完璧すぎる専業主夫だ。
常時もろにボディラインがハッキリしているタンクトップを着用しているという、唯一の欠点を覗いて。後、エプロンのセンス。
父さんは俺が7歳、莉侘が5歳だった頃に、俺達からすると母さん、父さんからすると妻だった人と別れた。理由はうん、その……言わせんな恥ずかしい。
けど父さんはそれから男手一つで、俺達をここまで育ててくれた。莉侘は立派っつうか元気に成長しすぎてるけど。

何となく悪い様に言ってるけど、いつか俺は社会人として父さんに恩返しをしたいと思う。ここまで育ててくれた事を、心から感謝するとともに。
取りあえずタンクトップは正直止めては欲しい。止めては欲しいけど、それ以外の点が完璧だし口を出す必要は無い、とは思う。

「お兄ちゃんご飯は静かに食べてよ」
「だから独白を聞くなっつうの、莉侘」
「隆昭……さっきからタンクトップを止めて欲しいとか……父さんちょっとショック。タンクトップが駄目なら何着たらいい?」
「いやだから父さんも……タンクトップで良いよ」

「それじゃあ行ってくるよ、父さん」
「遅くなる時は電話するんだよ。気を付けてね」

「わふー! と言ってみたけど別に意味は無い。じゃあ行ってきます」
「わふぅ……? 莉侘、お前それどこで」

俺が突っ込む間もなくコンクリの道路なのに謎の土煙を巻き上げながら、莉侘は中学へと走っていった。既に莉侘の姿は見えなくなってしまった。
父さんを見ると苦笑いしながら手を振る。俺は軽く一息吐いて、学校へと向かう事にした。にしても莉侘がどんな学校生活を送っているのか興味が湧いて困る。
腕時計を見ると余裕で間に合うな。朝がドタバタして(あいつのせいでほぼ毎日ドタバタしてるけど)軽く疲れたし悠々と歩いていく事にしよう。

しばらく歩いていると、後ろから軽く肩を叩かれた。振り向くとちょっとだけ息を上げながら、メルフィーが挨拶してきた。

「おはようございます、隆昭」

メルフィー・ストレイン。小さい頃から……幼稚園から今の高校まで妙な縁がある、俺の同級生であり言うなれば幼馴染だ。
銀髪に蒼眼、スッと通った目鼻立ちという名が表す通り日本人離れした顔と、出る所がボンっと出て引っ込む所がキュッとしてる異様なスタイルの良さ。
そして思いやりに富んでるお嬢様らしい清楚(と言うのか?)で優しい性格に俺のクラスのみならず、同学年の男子から高い人気を誇っている。
だがメルフィー自身は男に対して人見知りする様な所があって(ここだけの話、父さんがかなり変わった人なのが原因で)、俺と俺の友達であるライ以外には気軽に話しかけられない様だ。

一応もう一人、俺の友人と言える存在が居るのだがそいつの事をメルフィーは若干怖がっているので、ここでは外しておく。

「莉侘さんの調子はどうですか? 最近会わないからちょっと知りたいなって」
「何時も通り鬱陶しい程に元気だよ。今日も寸でであいつの攻撃を防いだ。危うく頭にひびが入る所だったぜ」
「そうですか……。元気そうで何よりです」

メルフィーがそう言って朗らかな笑顔を見せる。そう言えば最近莉侘とメルフィーは会ってないなぁ。まぁ互いに忙しいから仕方ないけど。
そういや昔は莉侘を入れて三人で良く遊んだよなぁとしみじみ思い返す。莉侘に取って、メルフィーはお姉ちゃん代わりみたいな感じだったなと。
気付けば季節は6月、もうすぐ初夏に入る。もう少し落ち着いたら莉侘と一緒に夏祭りにでも誘ってみるか。そんな事をぼんやりと思っていると、メルフィーが話しかけてきた。
無意識だろうがちょっとだけ上目遣いで恥ずかしそうに……あぁ、いつものか。

「あの……隆昭って今日のお昼は」
「適当にパン買って食うよ」

「えっと……もし隆昭が良かったら一緒に」
「良いのか? じゃあ食べたい」

俺がそう答えると、メルフィーの顔がパッと明るくなった。もしやというか待ってたんだろうな、俺の答えを。
一応メルフィーが俺を誘いだした理由を先に言ってみる。

「それで……」
「言うな、分かってるよ。一人分よりも多く作り過ぎて一人じゃ食べきれない、だろ」

俺がそう言うと、メルフィーはキョトンとした顔となった。天然というかなんというか。
正直何時もワザとだと思ってたぞ。口には出さないが。

「何で分かったんですか?」
「そりゃあお前……1週間の内に5日も誘われりゃ分かるだろ、普通」

あっと、メルフィーが照れ臭そうに頬を染めて俯く。狙ったとかでなくマジで作り過ぎちゃうのか。こういうドジっ子な所も人気なんだよなぁ、コイツって。
にしても前は1週間に2日3日だったけど、最近やけに頻度が多い気がする。まーパンだけじゃ腹が溜まらないからありがたいけど。
てか何時も友達から誘われてると思うが、如何して俺を誘うんだろうなぁ。流石に何時もいつも食べさせて貰って悪いし、何時かこの分のお返しをしないとな。

と、後ろから俺とメルフィーの背中を叩く両手。その手の持ち主が俺達の間を抜けると共に振り返り、声を掛けてきた。

「おっはよー、二人とも」

「おはようございます、遥さん」
「おーざーす、一条先輩」

特徴的な三つ編みをふわふわと風に揺らしながら俺達に声を掛けてきたその人は、一条遥先輩。ちっちゃな……いや、幼い容姿に反してとてもしっかりしてて頼れる先輩だ。
一条先輩は学校では模範的生徒として、学業でも運動でも尚且つ風紀的な面でも全生徒のお手本となっている、凄い人なのだ。ちなみに高3で俺達の1つ上。
だけどその事を鼻に掛けず、下級生でも上級生でも同級生でも分け隔てなく優しく人懐こく、時に厳しく接するその様に親近感を覚える故に、生徒間関係無く非常に人気が高い。
また、三つ編みにロリでコケティッシュな外見に惹かれる男子生徒も多いと聞く。俺はそっちに好みが無いから良く分からないけど。

「相変わらず二人は仲が良いねー。まるで恋」
「は、遥さん! だ、駄目、駄目ですよ!」
「ごめんごめん、遂、ね」

一条先輩が何か言おうとしたのを、メルフィーが慌てて止める。ニヤニヤしてる一条先輩が何を言おうとして、何でメルフィーが恥ずかしがってるのか、俺には良く分からん。

「てか二人でのんびり歩いてても良いけど、時間大丈夫?」

「あれ、もうそんな時間でしたっけ?」
と思って腕時計を覗くと気付けば後5分で始業時間だ。それほど時間が経っている様には感じていなかったが、これはまずい。

「それじゃあ先行ってるね―」

と言い残し一条先輩が学校へと走っていた。早い早い、もう見えなくなった。
体が小さいからか風の抵抗を受けにくいからだろうな。……死んでもこんな事、口には出せないな。
一条先輩に比べて横を目を向けると、メルフィーが汗を掻きながら走っている。走ってはいるがその頑張りに反して、ぶっちゃけ遅い。俺の早歩きくらいのスピードだ。
まぁ小さい頃から運動が苦手だったのと下世話だが、胸がデカイ……からな。っと、メルフィー足元にベタな大きさの石が転がってるから気を付けないと……。

「って……きゃっ!」

ほーら……やった。倒れかけた所を右手を掴んで支える。危なく顔から道路に突っ伏す所だったぞ。

「あ、ありがとう……隆昭」
「いや、俺が声を掛けなかったのが悪いんだ。ごめんな、メルフィー」

相当ヒヤっとしたのか、メルフィーが掴んでいる俺の手をギュッとする。顔を見ると、コケそうになったのが恥ずかしいのか、頬を染めて俺の方をちらちらと見える。
ふと、こんなにメルフィーの手って白かったっけと思う。何かこう、良い冷たさというか綺麗な手だなぁと思う。こうやって事故とは言え手を繋ぐのは小学校以来だな。
手を離して腕時計を見ると、後1分しかない。メルフィーに合わせて走ると確実に遅刻だ。そういやメルフィー、遅刻した事無いんだよなぁ……。

「行ってください、隆昭。隆昭なら今から走っても間に合います。私は……もう間に合わないから」
「良いよ別に。俺は遅刻なんざ何回もしてるから今更なー。それより走ろうぜ、メルフィー。ダラダラ歩いてるより、一生懸命走ったらもしかしたらもしかするかもよ?」

俺がそう言うとメルフィーは数秒くらいポカンとして、俺の目を真っ直ぐ見ながら力強く頷いた。

「は……はい!」

どうせだ。俺はメルフィーの手を掴んで、学校へと走り出す。メルフィーが一瞬驚いた顔をしたが、納得したのか一緒に走り出してくれる。
にしてもさっきから何か変だぞ、メルフィー。ずっと俺から目を逸らす様に俯いちゃって。別にコケた事も遅刻する事も恥じる様な事じゃないのに。
そろそろ校門が見えてきた。後1分。すると校門と共に校門の前に立つ、三人の姿が見えた。……三人? 何時も二人なのに。

「あ、鈴木君だ。おっはよー!」

と俺に挨拶してきたのは、最近実習生としてウチの学校に赴任してきたまどか・ブラウニング先生。
柔らかな物腰と家庭的なイメージを思わせる柔和でいて癒し系な表情、そしてザ・目の保養な豊かな胸で一役男子生徒から絶大な人気を得ている。

そんなブラウニング先生の近くにいる――――誰、だ? 制服を着てるからウチの生徒何だろうけど……。
その子が俺の方を見る。ジトっとしてるけど良い意味で冷やかでその実、神秘性を感じさせるその目に、俺は一瞬見惚れる。
っていかんいかん。俺はメルフィーの手を引っ張りながら勢い良くメルフィーを、学校内へと押しだした。

俺に無理やり学校内に入れられたメルフィーが申し訳なさそうな表情を見せる。俺は心配すんなといった感じに笑って親指を立てた。

と、同時にチャイムが鳴り響いた。一応学校内に入れば始業時間内に入るから遅刻にはならないんだよな。あぁ、良かった。
これでメルフィーが遅刻にならずに済む。ほっと胸を撫で下ろすとズイッと、俺の目の前で威圧的な影が現われた。……オワタ。

「自分を犠牲にしてメルフィー・ストレインを遅刻にさせなかったか……良い覚悟だ、感動的だな。だが」

「遅刻は遅刻だ! 貴様、今月で何回遅刻をしている!」
「4……5回です」
「8回だ! どこまで弛るんどるんだ、全く……」

今、俺の目の前で竹刀片手に説教をしているこの方は、玉藻・ヴァルパイン顧問。体育科の担当にして、風紀委員の顧問をしている人だ。
まるで狐みたいに鋭くクールな目つきに結んだポニーテール、そして男女関係無くズバッと痛い所を切りこんでくる痛烈な毒舌で学校で一番怖い人として知られている。
しかし怖いだけでなく言葉は悪いながらも、生徒の事を第一に考えて大事にするヴァルパイン顧問を、皆信頼している。

大学の同期という事で、ブラウニング先生はヴァルパイン顧問の元ワンツーマンで実習に取り組んでいる。
にしては何か距離が先輩後輩にしてはやけに近くね? ともしかしてあの花の名前みたいな関係なんじゃないかと生徒同士の中で噂にはなっている。
もし口に出したら確実に恐ろしい目にあうから、絶対にバレるわけにはいかない。

「ほう……それでその花の名前は何だ?」
「先生? ……何で、聞こえて……るんです?」

竹刀が空気を切る。その音は明らかに竹刀のそれでは無く、日本刀みたいな音だった。

「覚悟はいいな!」
「す……すみませんでしたぁ―!」




物理的にも精神的にもボロボロになりながらようやく、ヴァルパイン顧問から解放された。全く、散々だよ……。
とは言え莉侘から痛撃を食らわなかっただけマシだな。腰にムーンサルトプレスを食らった時の痛みで遅刻は色んな意味で死ぬかと思ったぜ。今思い出してゾッとする。
どうにか教室まで辿りつき、一息吐いて戸を開ける。途端、ガタンとあの馬鹿が席を立つ音がした。

「遅れました―……と」

「出たな! 超絶鈍感男!」

あの馬鹿こと、草川が教室に入ってきた俺に指を突き付けながら開口一番そう叫んだ。草川の叫びと共に激しい敵意を感じる視線視線視線。
だからお前らが思う様な関係じゃないっつうの。と言っても草川もとい草川の舎弟ども(草川曰く喪盟というらしい)は全然信じないけど。

説明するまでも無い気がするが一応説明しとくと、俺に話しかけてきたコイツは草川大輔。
小学校の頃からの友人で、高校になるまでずぅーっと、女の子にモテたいという欲望のままに生きてきた、ある意味凄い奴だ。
お世辞じゃないが顔は悪くない。顔は悪くないがハイエナみたいに女の子に求愛しまくるのに未だに成功した試しが無く、今年で100人くらいに振られたらしい。

そんな訳かどうかはしらんが、そんな草川に惹かれた男どもがモテたいけどモテないという事で同盟を組んだらしいが、別にどうでも良い。
高校に入ってからそんな草川と喪盟の連中が俺をやけに敵視してきやがる。
何か信じられない鈍感さだとか、フラグがあるのに気付かない無感野郎とかボロクソ言ってくるが、全てスル―してる。あいつらモテなさすぎておかしくなってんじゃないか。

奴らが振りかけてくるバリゾーゴンと視線を潜り抜けながら自席に座る。左斜めに座るメルフィーを見ると、友人達と談話している。
と、俺の方をちらりと見ると、済まなそうに微笑して小さく頭を下げた。良いって事よ、気にすんな。
例によって草川がまたフラグ立ておってこいつ! と喚いたががスル―しておく。

「朝から災難だね―、隆昭」
「まぁ色々あってな。遅刻は慣れっこだから良いけど、メルフィーが遅刻しそうになったから危なかったぜ」
「さっきメルフィーちゃんから聞いたよ。またフラグ立てたね」
「だからフラグって何だよ」

俺に微笑を浮かべるコイツはライディース、ライディ―ス・グリセリティ。以下ライと呼ぶ、
高校時代から友達になった眼鏡が知的でシャープなイケメンだ。イケメンだが未だに恋人が居ないという、勿体無い男である。
冷静かつ理知的なツッコミと語り口で話していて落ち着く。落ち着くというか、安心するというか。草川もライみたいになりゃあ少しはモテるかもな。
つってもコイツはコイツで草川みたくフラグが立っただの何でチャンスがあるのに気付かないんだだの少々鬱陶しい所があるけど。

「だからフラグはフラグ、分岐点さ。君、自分が無意識にどれだけフラグを立てまくっているのか、分かっているのかい?」
「そのお前が言うフラグってのが良く分からないんだが。俺が何時そんなのを立てたんだよ」

俺がそう言うと、ライはワザとらしく大きなため息を吐いた。

「自分で考えなよ。ホント鈍いよね、君」
「鈍っ……鈍いだと? はぁ……お前にしろ草川にしろフラグだの何だの訳分かんねえよ」

俺が純粋に疑問を口にしても、ライは爽やかな笑顔を浮かべるだけで何も言ってくれない。
草川にもよく言われるけど、何に対して気付けって言うんだ。さっぱり分からんぜよ。目に見えるものなら良いんだが。
何時も聞こうとすると自分で考えろって感じで華麗にはぐらかれるし。

「ホントホント、国宝級の鈍さだよね~。ある意味才能だよ」

と、軽く俺をなじるのはライの隣に座るシュレ―・エイプリル。俺の数少ない女友達だ。
あっけらかんとした口調と細かい事を気にしない、けどどこか真意の読めないミステリ……多分ミステリアスだけど明るい性格でクラスのムードメーカーとなっている。
ミステリアスというか、時折発言が明後日の方向へと飛んでいくのでたまに話していて戸惑う事がある。まぁそれもひっくるめて一緒にいて楽しいけど。

「ここまで鈍いと実はわざとやってるんじゃないかと思うよ、僕」
「いやーワザとならもっとこう、演技っぽくなるでしょ。隆昭君嘘が下手だからそういうのすぐ顔に出るよ」
「逆にこれだけフラグ立てて全く気付かないのも相当重症な気がするけどね。そのフラグを分けて欲しいくらいだよ」
「ライ君が貰っても発動しないけどね」

本人を目の前にして何好き勝手言ってやがんだコイツら……。だが二人とも弁が立つから反論しようとしてもこっぴどく反撃されるから止めておく。

「まぁ僕は主人公じゃないからな……って凹む様な事言わせないでくれ」
「でもここまで気付かないと彼女が可哀相だよね。これだけ長期間思ってるのにね」

そうだ、フラグの他にこの二人はよく彼女という言葉を使う。その彼女が誰を指してるのか、それも良く分からん。

「ギャルゲーとかエロゲーなら選択肢みたいなのが出るんだけどね。そういう親切なのは現実には無いからな―」
「選択肢があっても隆昭君は総て無効化するよ。フラグをクラッシュする以前に見えて無いんだもん。ステルスだよ」
「何というバグゲー。いや……メインヒロインを攻略できないとかゲームの名を借りた何かだな」
「真面目に何で気付かないんだろうね、見ててちょっぴりイラッとするよ。ね、アルはどう思う?」

「え?」

シュレ―が後ろの席、俺の隣に座っているアルに声を掛ける。突然話題を振られてキョトンとなるが、至極当然の反応だろう。
アルメリア=シーゼンコード=ファルシオン、通称アル。シュレ―と同じく俺の数少ない女友達で、茶色がかった髪の毛とくりっとした目が印象的な女の子だ。
あんまり自己主張をするようなタイプでは無いけど、真面目で協調性があってこう……いつでも一生懸命って感じで親近感が沸く。話してて気が楽になるというか。

「だから隆昭君の鈍感っぷりにだよ。流石にここまで気付かないのは酷いというか、どうにかしてやりたいと思わない?」
「もう僕達から言ってやってもいいんだけどね。やっぱ本人が気付かないと、何の意味も無いし」

「私は……隆昭君の自由で良いと思う。別に私達がどうこうする必要も、無いんじゃないかな」

何が自由なのかは分からないが、良くいってくれた、アル。俺に関する事は俺が一番分かるんだから、外野がやいやい言う必要ないんだよな。
つってもその俺に関する云々が全くさっぱりなんだが。

「でもさーアル。そんな気長に待ってたらメルフィーちゃんが」
「ちょ、シュレ―駄目だって」

「何だよメルフィーって。メルフィーが何で出てくるんだ」

「何でも無いよ」
「何でも無いですー」

何で声が合うんだ……てか何で唐突にメルフィーが会話に出てきたんだ? 全く持って訳ワカメですよ。

「おっはよう鈍男さん! 今日も相変わらず鈍いわね!」

盛大な音を立てて俺の頭を何者かが出席簿で叩いた。あまりの痛さに頭を擦りながら振り返ると、腰に両手を当てて般若みたいに笑う、委員長が居た。

「いきなり頭はねーだろ、委員長」
「鈍い頭を起こすにはこれくらいしないとね。それよりアンタのせいでメルフィーが遅れかけたんだって?」
「アレはその……トラブルだよ。……良いじゃんか、メルフィーは遅刻しなかったんだから」
「メルフィーについては感謝するけどそれとアンタの遅刻は話が別よ! 今月で8回と何やってんのよ!」

今俺に突っかかってきてるのは氷室ルナ。このクラスの委員長にして、風紀委員の委員長でもある。
学業のみならず色んな面で学年の頂点に立つ人なんだが、自分にも厳しく他人にも更に厳しいその性格で通称鉄の女、アイアンメイデンと陰で呼ばれ恐れられている。
だがその外見と性格から男子、特にドMの男子から踏まれたい踏まれたいと斜め上の人気を博していて、女子からは凛とした姿から、憧れとして人気が高い。

そんな委員長がどうして俺みたいな全てにおいて中の中で平凡な男に対してちょっかいを出してくるのかが分からない。
まぁ今回は遅刻した事を反省するが何故か毎朝、それも遅刻してない日でも何かしら難癖付けてきて突っかかって来るのだ。
そりゃあ委員長でかつ風紀委員長って役職があるからどうけどさ……。

「とにかく! 学業でも風紀の方でももっとしっかりしなさい! 分かったわね!」
「分かりました分かりました……反省します」

そう言い残して委員長はぷいっと踵を返して帰っていく。たくっ、朝から何怒ってるんだか……。

「参っちゃうよな、アル」
「ん? う、うん」

「これ立ってますか、シュレ―さん」
「微妙な所ですね」
「だからお前ら何の話をしてんだ」

瞬間、ガラッと戸を開ける音がした。何時もの妙にスタイルがハッキリしたスーツに黒ぶち眼鏡がチャームポイントな、我がクラスの担任が入ってきた。
号令と共に立ち上がり、挨拶をして座る。掛けていたメガネを外し、担任――――スネイル先生が笑顔で、第一声を発した。

「皆おっはー。昨日は良い夢見れたかしら?」

町子・スネイル先生。間に凄く長いミドルネームがあったけど、先生自身が覚える必要は無いと言ったので覚えてない。
一見地味な様でいてメガネを取った時のエロさには定評がある。後、メガネを取ると大胆である意味ブレーキの利かない性格にチェンジする事にも、定評がある。
真面目は真面目な先生なんだが、変な所で適当というか無茶をかまして来る為油断ならない。といっても結構決める所は決めてくる人なので信頼してる。

「今日はなんと! 転校生が来てくれたのよ。入ってきて―」

先生がそう言ってその転校生の名前を書き始める。転校生が先生が名前を書き始めると合わせる様に教室に……。

「あ……」

驚く。今朝校門の前でブラウニング先生と話していた、あの子だ。
覗きこまれる様で吸い込まれる様な目が頭を離れない内に出会うとは……。てか何で目が合ってんだろう、俺。

「それじゃあク―ちゃんの席は、草川君の隣でどうかな」

指名された草川が両手拳を握って派手に歓喜のリアクションを取る。本人は知られないようにやってる気だろうがバレバレだぞバーロー。
つかあの子、ク―って言うのか。変わった名前だなぁ。と、ク―は何故か草川の隣の空いている席を見ずに、俺の方をじっと見続けながら何故かゆっくりと腕を上げた。
そして何処かを指差した。えーっと……確か俺の後ろってどっちも空席……だったなぁ。

「出来ればあそこが良いです。駄目ですか?」
「鈴木君の後ろ? そういやどっちも空いてるわね―。うん、良いわよ。好きな方に座りなさい」
「有難うございます」

「そんな馬鹿な……そんな馬鹿な……」
「マスター、いつか必ずチャンスが巡って来ますよ、気を落とさないでください!」
「もうこの際男で良い気がしてきたよ俺」
「ま、マスターそれだけは……それだけはいけませんぞ」

「あらあら……これは読めなくなってきましたよー、どう思いますライさん」
「長年彼のフラグ作業を見てきた僕でも、こんなゲームみたいな唐突な展開は初めてですよ。いやはやどうなる事やら」

どいつもこいつも人をほっといて好き勝手……。後ろから指でトントンと肩を小突く。振り向く。

「私、ク―。宜しく」
「あぁ、俺鈴木隆昭。宜しくな」

何だろう、ホント綺麗な目だなーって言うか、何時までも見てていたくなる様な……。
途端、凄くキツイ視線を三つ、突き刺さるのを感じた。ゾッとして振り向くけど、喪盟の奴らでは無い様だ。草川は生ける屍化してるし。一体誰なんだ……。

「はーい皆お静かに。今日の1時間目は体育でしょ? それでヴァルパイン先生からお話がありまーす。ではでは先生、どうぞ」

ゲッ……。今朝のせいで何か怖い。とはいえ寝てたりというか突っ伏してると容赦なく突っ込まれるからな。ので体をガチガチにしながらも、正面を見る。

「ヴァルパインだ。今日の二時間目は体育だというのは承知の通りだろうが、今日ちょっとした事情があって三年生のスケジュールがずれ込んでな」


「そこでだ、お前達の体力面が如何に鍛えられているかを見る為にも、三年生との合同授業を行うぞ! 
 風邪及び健康面に不調がある者その他事情がある者を覗いて、全員原則参加だ!」

「先生、競技は何ですか?」

「先週プール開きという事で水着を持ってきてるな? ならば話は早い」


「学年対抗の、水球大会だ!」









                        robotBusters!







                            後編に、続く   気力が続けば。




                        後タイトルと中身に関連性は全く無いです


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