創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

転移戦線異常有り!? 大海上都市群「兵庫」重歩兵中隊がワームと戦うようです 最終話B

最終更新:

irisjoker

- view
だれでも歓迎! 編集
リミッター解除の影響で頭の中が痛い。脳が痛い、と表現した方が正しいだろうか。尋常ではない激痛と不快感が全身を苛む。
並の人間なら戦闘は不可能な状態だろうが、俺は「この程度」で戦闘不能になる柔な鍛え方はしちゃいない。廃人になっても構わないならもう一度リミッター解除も可能だ。だが、残念な事に意味が無い。
間接防御兵器以外の弾薬が尽きた今の状態でリミッターを解除しても、撃つ弾薬が無ければ話にならない。振動熱斬刀を主力の格闘戦でも大きな威力を発揮はするが、「まだ」そこまでオルトロスは到達していない。近接部隊の射撃で塹壕に到達するまでに殲滅しているからだ。
しかし、現在の状態が保たれるのは残り数分。最長でも残り数分で間接防御兵器以外の全ての弾薬が尽き果てる。
そして、時は来た。近接部隊の攻撃が止む。全弾薬を使い果たしたのだ。もう、オルトロスの侵攻を阻む方法は無い。
「ところがどっこい、そう簡単にはいかないのが世の中ってものなんだよ」
確かに間接防御兵器以外の全弾薬を使い果たした。「普通に射撃」する分の弾薬は、だ。俺達からのプレゼント、有り難く受け取れ。
「もってけ重手榴弾!」
<曖昧3cm!>
生身の歩兵が使う物と比べて数倍の大きさと重量の重歩兵用手榴弾、重手榴弾を一人数発ずつ、計数百発を投擲。
重装甲強化服自体の性能と小型浮遊監視装置「V3ホッパー」から得られた質と量共に優れた情報。
後方支援担当重歩兵の背負う各種大型バックパックの支援に加え、十年以上掛けて鍛えに鍛えた技量で投擲された全ての重手榴弾は、計算上、進攻中のオルトロスに最大の損害を与えられる絶好の位置にわずかな狂いも無く投げ込まれ、爆発。
高性能炸薬の威力が損なわないよう軟化、「周囲の敵に最大の損害を与えられるよう飛び散った」後に再硬化した大量の振動熱破片はオルトロスの体に突き刺さり、波紋法を食らった吸血鬼のように細胞を分解し、蒸発し、消滅させる。
大量の水蒸気を発する半固形のオルトロス「だった」物はかなりの数になった。重手榴弾だからです←結論。
しかし、それは全体の一部でしかない。他の大多数のオルトロスが一心不乱に突き進んで来る。
中隊百人全員が大腿部両外側に取り付けられている鞘から重歩兵の基本装備である60cm振動熱斬刀二本を引き抜き、柄に伸縮可変鋼線を絡めて全力で投擲。計200本の60cm振動熱斬刀は吸い込まれるような正確さでオルトロスの急所に突き刺さり、確実に命を奪う。
両腕を振るい、弧を描くように宙を舞う60cm振動熱斬刀がオルトロスを斬り裂く。互いの伸縮可変鋼線を絡ませ合うド素人丸出しの愚劣な行為は決して行わない。鋼線を収縮させ60cm振動熱斬刀を手元に戻して再び投擲、突き刺した後に遠心力を利用した斬撃を振舞う。
頭部両側面に装備している迎撃針弾発射機から放つ迎撃針弾、6.25mm迎撃機関銃から放たれる6.25mm振動熱徹甲弾を牽制として、特に一番厄介なオルトロス二型の針弾発射口に集中して浴びせる。殺せる程の威力は無いが、足止め、攻撃の中断には十分だった。
間接防御兵器の足止めとオルトロスの死体が後続を阻み、停滞した敵に60cm振動熱斬刀の投擲、斬撃を繰り返し叩き込む。今は何とか拮抗しているが、長くは続かない。間接防御兵器の弾薬が残り少ない。これが尽きたら俺達は完全に「素空缶」だ。電力も後わずか。
そして、遂に一匹のオルトロス一型が鉄壁だった迎撃を潜り抜けて塹壕にまで到達した。俺はオルトロス一型に伸縮可変鋼線をブチ込みフルパワーで牽引、塹壕の中へ引きずり込んだ。
オルトロス一型は触手を振るい、俺の重装甲強化服を打ち据える、が。この世のモノとは思えない絶叫を発して触手を引っ込めた。重装甲強化服に触れた部分から水蒸気が発し、火に炙られた飴のように溶けていく。
膨大な熱量を宿す破壊された細胞。灼熱の水滴と水蒸気を撒き散らしながら、多数ある触手の内一本は完全に消滅した。
防御用振動熱発生機能はお気に召して頂いたかな。だが、こんな程度で中隊ハウスのサービスは終わらないぞ。初めてのお客様だ、全身全霊で歓迎しなければな。
「何処へ行こうというのかね?」
こちらへ背を向け塹壕から這い出ようとするオルトロス一型の脚部……触手に6.25mm弾の雨を叩き込み、潰す。
いけないお客様だ。そっちから来ておきながら勝手に出て行くなんて、そんな我侭は通用しないよ。当店は一度入ったら最後、二度と生きて出られないのを「ウリ」にしているんだから。絶対生かして帰さないんだからねっ(はぁと)
「跪け、命乞いをしろ、小僧から石を取り戻せ!」
触手を全て失ったオルトロス一型は胴体だけで動こうともがくが、無駄な努力でしかなかった。動けない芋虫のように無様な姿である。だが、当店のサービスを最大限に味わってもらうには丁度いい。
「振動熱パワー・オン!」
防御用振動熱発生機能の出力を最大にして全速で接近、倒れたオルトロス一型を掴んで持ち上げ、両腕で抱くように抱える。
重装甲強化服に触れた部分が分解し、蒸発し、消滅していく。沸騰した血液が全身を駆け巡るオルトロス一型は断末魔の悲鳴を上げながら激しく暴れ回るが、抵抗すればする程力を増して両腕を締める。
そんなにも喜んでくれるなんて嬉しいじゃないの。しっかり腕を締めとかないとな。彼?もきっと「脳味噌フットーしちゃいそうだよぉっ」とか思っているに違いない。じゃあフィニッシュだ!
「この野郎っ! ジーグブリーカー! 死ねぇっ!!」
右の拳が左肩に、左の拳が右肩に触れる程に「抱き締め」、オルトロス一型は真っ二つになった。地面に落ちた死体はぐちゃりと泥のように崩れ、ボコボコと泡立ちながら土に染み込んでいく。さて、次のお客様を迎える準備をしないとな。
「はぁぁぁぁぁーーーーーッ」
重装甲強化服が黄金に輝く。遮蔽機能の応用で機体色を変化させているだけでスーパーモードになったり明鏡止水に目覚めていたりする訳ではないが、気分の盛り上がり的な意味で欠かせない。
「俺の心が真っ赤に萌える! 嫁を愛でろと轟き叫ぶ!! ばぁぁぁぁぁくねぇつ! ゴォォォォォッド、フィンガァァァァァーーーーーッ」
塹壕に飛び込んで来たオルトロス一型に、究極まで振動熱の出力を高めた右手をブチ込む。皮膚が裂けて沸騰した血液が噴出するオルトロス一型をそのまま右手に掲げる。
「ヒィィィィィット、エンドォッ」
オルトロス一型は弾け散り、周囲に半液状と化した肉片と血液がばら撒かれる。黄金に輝いていた機体色を元に戻す。
残存電力1%。もう防御用振動熱を発生させられない。後は間接防御用の弾丸が少し残っているだけだ。
両手に持った60cm振動熱斬刀を全力で振るい、刀身のみをオルトロス一型二匹に飛ばす。0の中心に縦線一本書かれたような形状の鞘に60cm振動熱斬刀の柄を戻し、予備刀身を装着。刀身だけではなくそのまま別のオルトロス一型二匹に投げつける。
残存電力が0%になり、機体の動作が一瞬停止した。複合自然発電によって完全に電力が尽きる事は無いが、もうまともに戦闘する事は出来ない。残った間接防御兵器の弾丸を放つ程度は可能だが、その後はもう何も出来ない。
続々と塹壕に到着したオルトロスを主力の突撃部隊が時代劇の主役のように次から次へ斬り捨てていく。間接防御兵器で足止め、牽制し、敵が攻撃する前に仕留めて「来た」。だが、遂に均衡が崩れ去った。
「ぐわぁぁぁぁぁーーーーーっ」
オルトロス二型の発射した多数の針弾が一人の重装甲強化服を剣山のように貫く。攻撃したオルトロス二型を数人掛かりの伸縮可変鋼線で塹壕の中に引きずり込み、振動熱斬刀の滅多斬りで細胞一つ残らず消滅させる。
「か……」
オルトロス二型の針弾を受けた重歩兵が、ゆっくりと倒れていく。距離は離れていて届く筈もないのに、無意識に手を伸ばしていた。
地面に倒れた仲間が、十年以上連れ添った戦友がぴくりとも動かない姿を見て、俺は叫んだ。
「柿崎ィィィィィーーーーーッ」
治療用バックパックと修理用バックパックを背負った後方支援重歩兵二人が駆け寄る。しかし俺は、他の皆は理解していた。情報共有で互いの状態は完璧に分かる。柿崎の心臓は針弾によって潰されていると、治療の施しようがない程身体はズタズタだと。無事なのは頭部だけ。
後方支援の二人は、柿崎の首から下の胴体を重装甲強化服から取り出し、そっと地面に横たえた。

 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます)
+ ...

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー