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「・・・い、おいってば。キール、聞いてるのか?」
ゼロの顔がいきなり目の前に出てきた。
キールは驚いて後ろのガラスに頭をぶつけてしまった。
目から涙を流して痛がっている。
「・・・・大丈夫か?」
ゼロは心配そうに見ている。
「だ、大丈夫ですけど、びっくりさせる様なことはあまりしないで下さい。心臓に悪いです。」
キールは仰け反りかけている体制から姿勢を整え、いつものぴしっとした体制になった。
ゼロも自分が座っていた後部座席へと戻る。
「・・・で、何の話ですか?」
キールが暫くしてゼロに聞いた。
「あ、そうだった。イヴシリウムってある物質にだけ変換するんだろ?なら『氷』って物質は『水』から出来ているんだから、シロタカの能力はのかしくないか?」
「そうですね。」
「そうですね、ってアンタ・・・・。」
キールは少し間を置いた後、静かに言う。
「私だって知りませんよ。」
「・・・・・へ?」
「知りませんよ?」
ゼロは露骨に驚いている。
「因みに、これは科学者に聞いた結果です。」
「で、何でそんな分かっていない物を普通に使えるんだ?」
「だから、保護するんですよ。」
「どゆこと?」
キールがまたちょっと間を置いて話し始めた。
「・・・鈍いですね。」
「うるせぇ。」
「人間とゆうのは自分と違う物は排除、又は支配下に置こうとします。」
「まぁ、そうだな。」
「だから、国家が保護するんです。有能な存在ですから。」
「じゃあ俺達は利用されているのか?」
「・・・・どうゆう事ですか?」
「有能じゃなければ切り捨てるだろ、国家も。」
「総理はそんなことしません!」
いきなりキールが怒鳴った。
ゼロは驚いて硬直してしまっている。
いつもは冷静なキールがいきなり怒鳴ったのだから、誰でも驚くとは思うが。
「あ・・・・・、すみません。」
キールは俯いてしまった。
「あやまらなくてもいいだろ。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
二人は何だか黙り込んでしまい、気まずい空気が車の中に漂った。
そして。
「おーおー、青春だなオイ。」
運転手が意地悪っぽく言った。
どこかで聞いた事のある声。
「・・・・ジャック?」
「お、やっと思い出したか。」
ジャックは運転席であきれた声を出す。
「・・・・あまり茶化さないで下さい、ジャック。」
「イヤですよ、こんなに面白いのに。」
キールは深く溜め息をついた。
そんな三人を、
「面白いなー。」
発言通り面白そうに「見る」ゼロの所有物、ラジオ。
ゼロはやっと、ラジオも連れてきてしまったことに気付いた。
「お前、いたのか。」
「アンタが持ってきたんでしょ。あー始めて見るよ、あの家以外の世界。」
「とりあえず黙ってろ!」
ゼロはラジオに向かって小さく叫んだ。
「ふげっ」
その小さなラジオはポケットにしまわれてしまった。
「・・・・・ふげ?」
キールが不振な目でゼロを見る。
「な、ななななんででもないいいよ!」
「あれー?どうしたのかなゼロ君?」
ジャックは凄く楽しそう。
「何でもないって、それで今日の用事は?まだ聞いてないんだけど。」
丁度ゼロの携帯にメールが来たらしく、ポケットから携帯を取り出す。
「話をそらさないで下さい。・・・・総長が貴方に会いたいので、早急に来て欲しいらしいですよ。」
「こんな夜にご苦労な事で。」
ゼロは携帯をいじりながら皮肉った。
キールはそれを見て、深く溜め息をつく。
「そう言わないで下さい、貴方の様なタイプは今まで居なかったんです。」
「そういや、そんな事言ってたっけな。」
「それぐらい覚えて下さい。」
「学校で手一杯なんでね。」
「・・・・まったく。」
また沈黙が流れると思いきや、
「いやー、青春だねぇ。」
おっさん臭い発言でその場の空気を吹き飛ばす。
「茶化すのはやめろ」「茶化すのはやめで下さい。」
二人は同時に大きい声で言う。
見事にハモっていた。
それでジャックはもう大爆笑。
二人は顔をリンゴやイチゴや赤いパプリカや(以下略)みたいに赤くして、恥ずかしがっている。
「いい雰囲気のところ悪いけど、もう施設に着くよ。お二人さん。」
まだ少し笑いながらジャックが言う。
「いい雰囲気じゃねぇだろ。」「いい雰囲気じゃありません。」



夜、一台の車の中。
三人の人間が喋っていた。
一人は少女で、一人は少年。
二人は不機嫌な顔をしている。
もう一人は男で、顔からして30代だろうか。
結構賑やかで、楽しそうだった。


苦しくて、悲しくて、残酷な悲劇が訪れる事も知らずに。


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