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「隊長、こっちには居ません。」
「そうか、まったく。何故私が遭難者の捜索などせにゃならんのだ。」
「つべこべ言わず早くやって下さい、ただでも今は人材不足なんです。」
「へーへー。」
「でも凄いですね、この傷。」
「そうだな、強力なIMの持ち主か。あるいは強力な武器か。」
「道路がここまで抉れるんです、しかも焼け跡も無い。」
「火薬では無い・・・・・か。」
「そうゆう事です。」
「にしても何で本部も私達にこんな仕事を頼んだんでしょうね。警察にでもやらせれば良いのに。」
「阿呆、警察なんぞにやらせて感付かれてみろ。政府に見放されてしまうだろ。」
「ああ、なるほど。資金の半分は政府からですしね。」
「変な事言ってないで早く探してください、『この頃入ってきた少年の行方を探せ』との本部の命令です。」
「少年一人居なくなっても苦労しねぇだろ。」
「本部長の優しさですよ。」
「そうです。」
「そうゆうもんかねぇ。」
「さぁそうと分かったら働いて下さい、今日は見つかるまで帰れませんよ。」
「どうせすぐ帰るクセに。」
「何か言いましたか?」
「いえ、何も。」




木の匂いがする。
心地よい香りだ、何の木だろう。
それに周りはふかふか、多分ベッドに寝ている。

それより、俺は何をしてたんだっけ。
携帯でジャックを呼んで、森に行って、本を読んで、それで・・・・。

少女に飛ばされ、落ちた。

そうだ、俺は死んだハズだ。
死んでも、意識ってあるんだな。
幽霊にでもなったか。
でも四肢の、そして肌の感覚まで残ってる・・・・?

      生きてる?

ゼロは目を開いて跳ね起きた。
ぼやけた視界が徐々にハッキリして、やっと周りが見えるようになった。
木で出来た棚や箪笥があって、床も天井も壁も全て木。
視界に見える約9割が木。
どこだよ、ここ。
ゼロは動こうとしたが、腹部に激痛が走る。
触って見ると、包帯で保護されていた。
どうやら誰かが怪我したのを手当てしてくれたらしい。
横の小さな机にも、救急箱と包帯などがある。
誰が手当てをしたんだ?それにここは何所だ?
疑問がゼロの頭を埋め尽くした。
「あ、起きたです。」
いきなり隣のドアから鈴の様な、透き通った声がした。
しかしその少女は見覚えが無く、誰か分からない。
恐らく、ゼロを助けた人物。
歳は14ぐらいだろうか、背も小さければ顔も小さい。
顔が小さいせいか、目は子供の様に大きく輝いている。
ブラウンの髪の毛の前髪を、ヘアバンドでとめている。
ゼロはびっくりして咄嗟にベッドから降りようとした。
「大丈夫ですよ、私は貴方に危害を加えないです。」
少女はすこし慌てた様子で、でも落ち着いて誤解を解く。
ゼロは少しの間眉間にシワを寄せていたが、理解したらしく普通の顔に戻った。
「ありがとうございますです。あの、怪我は痛まないですか?」
ゼロは首を横に振って答えた。
少女は良かったです、と一安心した様子。
「私の名前、メルフィーって言うです。メルフィー・フォートレです。」
「俺はゼロ・クラシスだ。」
メルフィーはコップにお茶を注ぎながら
「びっくりしたですよ、いきなり森の中を歩いてたら貴方が落ちてくるものですから。」
と言った。
少し間が開いた後、
「・・助けてくれて、ありがとう。」
ゼロはちょっと照れくさそうにお礼をした。
「どういたしまして、です。それより、歩けるですか?すみません、病院に連れて行くよりここの方が早かったですから。」
「ああ、大丈夫そうだよ。それより病院から遠いって、ここは何所なんだ?」
「え?ああ、ちょっと待って欲しいです。」
メルフィーは棚までちょこちょこと歩いていき、一番下の引き出しに身体を半分突っ込んで何かを探した。
「あったです。」
手に持っていたのは、ゼロの家がある地方の地図である。
メルフィーはそれを開くと、都市とはかけ離れた山脈の中を指差した。
一様ゼロが居た道路には近い。
「ここなのです。」
ゼロは注いでもらったお茶を吹きそうになった。
こんな所に何で少女が住んでいるんだ?
おおよそ少女が住む様な所では無い。
ゼロは疑問に思ったが、後で聞くことにした。
「今日はもう日も暮れてるですから、泊まって行くと良いです。よくオオカミとか出るですよ。」
ゼロは再度呆然。
だから何でそんな所に少女一人で住んでるんだよ。
とりあえずゼロは聞いてみた。
「ちょっといいか。」
「なんですか?」
「何でこんな都市から離れた所に住んでいるんだ?」
メルフィーはピクリと、動きを止めた。
「ここには、叔父上と暮らしてたですよ。」
少し間が開いて、そう答えた。
「そうなのか。」
「ええ。その叔父上も、2年前に死んでしまいましたです・・・。」
メルフィーは少し顔を下げてそう言った。
「酷い事聞いて、済まない。」
「いいですよ、もう随分前から吹っ切れてたですから。」
「それより、食料とかはどうしてるんだ?都市より遠いから不便だろう。」
「あ、それなら・・・・。」
メルフィーが言おうとすると、いきなり窓がガタガタと鳴り始めた。
「あ、来たです。」
「え?」
メルフィーはちょこちょこと部屋を出て行き、玄関まで歩いていった。
ゼロも起き上がり後に続く。
「やっほー!届け物ですヨー!」
良く通る声が部屋中に鳴り響いた。
どこかで聞いた声である。
「いつもありがとうです。」
「いんやー、どうって事ないヨ。」
メルフィーはそう言いながら届け物を貰っていた。
ドアの向こうにはヘリが一台。
今来た人物は、中国人服の様な制服を着ている。
「・・・・シャオス!?」
「ん?あれ、ゼロクンじゃない、どうシタの?」
二人ともびっくり。
「・・あれ、知り合いですか?」
「知り合いも何もコイツはモゴモゴ・・・・・」
ゼロはいきなりシャオスに口を押さえられた。
ちょっとメルフィーから遠ざかり、そこでゼロの口にあてられた手をどかす。
「っぷはー!シャオス何すんの!」
「ゼロクンこそ何てコト言い出すノ!バレたらマズいデショ!」
「え?あの子施設とかそのへん知らないの?」
「そうダヨ!まったく、危なかったヨ!」
小声でゼロとシャオスが喋っていると、
「あのー。」
メルフィーがいきなり声をかけてきた。
「何を喋ってるですか?」
「ななななんでもないよなぁゼロ!?」
「うん。」
メルフィーは顔を傾けている。
「とりあえず、ゼロさんは今日中に戻れるです。」
メルフィーはちょっと嬉しそうにそう言った。
「そっか、ヘリで来てるんだもんな。」
「そういえばゼロクン、どうシてココに?」
「あ、そういえば言ってないな・・・・。」
ゼロは少女に崖から落とされた所から説明し始めた。


「ナルホド、分かりまシタ。」
シャオスは理解した様子である。
何か考え込んだ後シャオスは、
「その子ニ空気の弾みたいな力で吹っ飛ばサレたんデスね?」
と聞いてきた。
ゼロは顔を縦に振って答えた。
「フム・・・・・。」
「シャオスさん、思い当たる節でもあるですか?」
「ん?まぁアルことにゃありマスが・・・。」
「?」
シャオスは困り眉毛になっていた。
「とりアエず本部と連絡を・・・・ってココからは無線は通じないんでシタ。」
「通じないのか。え、それって世界各国どこでも通じるんじゃなかった?」
ゼロは昨日のヘリの中での説明を思い出し、質問した。
「まぁ、そのハズなんデスが・・・・。」
シャオスは携帯電話の画面を見ながら困った顔をしている。
画面の電波の棒は立っていない。
「この辺は何か変な電波が発生してるらしいです。だから私、通信手段が無いのです。」
「そうか、この辺だと電話線も通ってないし。」
「ですから週に一回、シャオスさんに宅配で色々買ってきてもらってるですよ。」
「なるほど、それじゃあ服とかは?シャオスが買うワケにはいかないだろ。」
「私が都市まで行くんですよ。」
メルフィーは普通に答えた。
「えっと、それは車か何かで?」
「いいえ、歩きなのです。」
「ここから都市まで大体何キロ?」
「えっと、大体三桁にはなるのです。」
ゼロは仰天、そりゃこんな少女が三桁にはなる距離の山道を歩いていくのですから。
体はどう見ても華奢で、突っついただけで折れそうなぐらい細い。
これが山道を歩いていたら、まず遭難したと思うだろう。
「それで歩きで一日で帰るのは無理ですから、一泊して帰ってきてるです。大体週1回ぐらいなのです。」
「疲れないの?」
「はい、全然。」
平然とした顔でメルフィーは答えた。
「・・・・・凄いな。」
「そうですか?普通だと思うのです。」
ゼロは「自分には絶対無理。」と思った。
「それで、帰るなら早くした方が良いですよ。もう日が暮れかけてるです。」
窓の外を見ると、確かにもう太陽は殆ど隠れている。
「そうダネ。じゃあ行こうかゼロクン。」
「え、ああ。」
ゼロが自分の荷物は何所だとメルフィーに聞くと、またちょこちょことさっきの部屋へと入っていった。
メルフィーが部屋から出て来ると、手にはゼロの荷物がぶら下がっていた。
「これ、一緒に落ちてた物です。」
ゼロはその荷物を貰って、「ありがとう。」と小さい声で言った。
メルフィーは何も言わなかったが、微笑んでいた。
「オーイ、早くしないと行っちゃうヨー。」
シャオスはもう小型のヘリの操縦席に座っていた。
ゼロは早足でヘリへと向かう。

ヘリのプロペラが少しずつ回り始め、次第に風が出てくる。
段々と音も大きくなってきた。
「ジャアネー、メルちゃんー!」
ヘリの大きい音にも負けないぐらい大きい声でシャオスは叫んだ。
「さよならですー。」
メルフィーも力一杯声を出して叫ぶ。
それでも辛うじて聞こえるぐらいである。
「治療ありがとなー。」
「どういたしましてですよー。」
その内ヘリはふわりと浮かび、夜空へと消えていった。
「・・・・・さて、と。」
メルフィーはヘリを見送ると家へと帰っていくが、変な気配を感じて振り向く。
しかしそこには誰も居ない。
「・・・・・気のせい、ですか。」
メルフィーは家の中へと入っていった。

それを見つめる二つの目が。
「・・・・・・・。」
それは、今日ゼロを崖へと落とした少女だった。
「・・・・ここに居たか。」
物凄く重い、低い声が静かに響いた。
しかしその声も風ですぐにかき消される。
「・・・・報告せねばな。」
少女はそう言ってクスリと笑うと、森の中へと溶けるように消えていった。
誰にも見られず、ただゆっくりと、消えていった。


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