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夜、高町家。
ここは道場の一室。
高町家にお世話になってからは、キラがこの一室を宛がわれている。
室内にはキラとなのはとユーノがおり、
三人で囲むように傷ついたレイジングハートを見つめる。
その光はいつもの輝きではなく弱弱しい光を放っていた。
「レイジングハートはかなりの高出力にも耐えるデバイスなのに……それも一撃でここまで破損させるなんて……」
「やっぱりあの時の事が原因……かな」
心配そうに見つめるなのは。
キラがアスランとの交戦中に見た大きな魔力光。
後に聞くと、レイジングハートとバルディッシュが同時にジュエルシードに触れた瞬間に起きたものだという。
最初はあの子のデバイスとの交戦で傷ついたものと考えていたが、それを聞いて考えを一変する。
破損した原因はきっと、ジュエルシードによるものだろうと確信した。
「それで、レイジングハートは……?」
視線をユーノへと向け、なのはも同じように向ける。
「大丈夫、かなり破損は大きいけど……きっと大丈夫」
ユーノは視線を二人からレイジングハートへと向け、二人も同じ様に見つめる。
「今、自動修復機能をフル稼働させてるから……数日で回復すると思う」
「そう、なんだ……」
不安な表情を浮かべるなのは。
「なのはちゃんは、大丈夫?」
「うん……レイジングハートが護ってくれたから……」
「そっか……」
「ごめんね……レイジングハート……」
いつもならここで返答が返ってくるのだが、今はその返事も返ってくることはなかった。

同刻。マンションの一室。
「……ッ!!」
右手に痛みが走る。
「あ、ごめんなさい!痛かったですか?」
「いや、大丈夫だ……」
「でも……」
ジュエルシードの確保し帰宅後、フェイトはすぐにアスランの両手を見た。
見るとひどい火傷をしたように両手はボロボロになっていた。
「これぐらい何でもない」と言ったアスランだったが、
ぎゅっ。と手を握られると。
「…………………………」表情は変わらなかったが、無言で涙目になっていた。
そして簡単ではあるが応急処置を施す。
最後にきゅっと包帯を縛り、テーピングが完成する。
「はい、できました」
「ああ、ありがとう」
包帯で巻かれた両手を見つめるアスラン。
「……フェイト」
「何?」
「……今まであまり気にしていなかったのだが、ジュエルシードって一体何なんだ?」
この手に持ってみて初めてわかった。
あれは、人の手に扱えるようなシロモノではない。
アスランは直感的に悟っていた。
「……すいません、私も詳しくは知らないんです」
「あれを使って、プレシアは何をするつもりなんだ?」
「それもわかりません、ただ集めてくるようにと言われただけですので……」
「そうか……」
「明日一度報告に戻るのでその時に聞いてみましょう」
「……そうだな」
明日プレシアに会うのなら聞いてみよう。そう決めたアスランは考えるのをやめた。
これ以上考えても答えが出ることはないと思ったからだ。
そして何か違和感を感じたアスランは俯いていた顔を上げる。
その視線はアルフへと向けられ、止まった。
先程から何か表情が曇っているままである。
「アルフ?」
「……え?」
こっちの声への反応も鈍い。
「どうした?何かあったのか?」
「あ、いや、何でもないよ……」
「……」
何でもないことはないとわかったが、本人が話さない以上は追求しても無駄だと思い、話題を終わらせることにした。
「それじゃ俺はもう寝るよ、今日は少しばかり疲れたからな」
「うん、おやすみなさい」
「おやすみ」
そしてアスランは自室へと戻っていった。
部屋に戻ってからリビングで何か話し声が聞こえていたが、それを考える前にアスランは眠りについた。

翌朝。
なのははいつもより早く目が覚めてしまった。
布団から出て机の上のユーノへと視線を向けても彼はまだ眠っていた。
(起こすのも可哀想だし……)
いつもならもう少し後で魔法の訓練をするところなのだが、生憎レイジングハートは昨日の戦闘で使用できる状態ではない。
よって、本日の魔法訓練は中止なのだが……。
なのはは普段着に着替え、部屋を出て行く。そして向かった先は……道場であった。
姉達はまだ早朝訓練から帰ってきてないので誰もいないと思い、扉を開く。
だが、そこにはすでに先客がいた。
そしてその正面を見ている背中を声を掛ける。
「キラ君?」
呼ばれた本人は振り返り、微笑みながら返答する。
「おはよう、なのはちゃん。どうしたの?こんな朝早くに」
「あ、うん……ちょっと早く起きちゃって……」
「そうなんだ……まぁ僕もそうなんだけどね」
「キラ君も?」
「うん」
少し歩き、壁へともたれ掛かるキラ。
それに続くように隣にもたれるなのは。
それから少し沈黙が続き、意を決した様になのはは口を開く。
「……キラ君」
「ん?何?」
「あれから私考えたんだけど……やっぱり私あの子の事、フェイトちゃんの事が気になるの……」
「……」
キラの脳裏に蘇る金髪の少女の姿。
アスランが行動を共にしているあの子。キラも少し気にはなっていた。
「凄く強くて、冷たい感じもするのに、だけど、綺麗で優しい瞳をしてて……なのに、なんだか凄く寂しそうなの……」
「……うん」
なのはの言葉に素直に耳を傾け、素直に頷くキラ。
「きっと理由があると思うんだ。ジュエルシードを集めている理由……だから私、あの子と話をしたい」

「……理由はわからないけど、少なくとも何か目的があって動いているのは間違いないと思う」
「え?」
キラは昨日のアスランとの会話を話した。
そしてアスランがあの子と一緒に行動している理由も……。
「それを聞いた時は、僕と一緒だって思ったよ。僕もなのはちゃんに助けてもらって、高町家のみなさんに救ってもらったから……」
「……」
「だから、アスランの気持ちもわかるんだ……」
同じ世界から来て、同じように助けてもらって、でも、戦わなくちゃいけない……。
「本当は戦いたくなんかない……だけど、このままじゃ何も変わらないから」
言葉だけじゃ、伝わらない気持ちがあるから。
広げた右手を力強く握り締める。
「……キラ君」
「だから、なのはちゃんも諦めないで」
「……うん」
そして数分後、美由希が早朝ランニングから帰って来る。
「あれ?二人共どうしたの?こんな朝早く」
「「えと、なんとなく目が覚めちゃって……」」
二人の声がハモる。
その事に思わず吹き出す美由希。
それにつられて同じように笑うキラとなのは。
そしてそのまま美由希の修行を見学することになった二人。

同刻。
「おはよう」
「おはよう」「おはよ~」
交わされる朝の挨拶。
これもまた慣れてきた感じがするから不思議なものだ。
「今日は一度庭園へと戻るんだったな」
「はい」
「……」
まただ。昨日と同じくこの話題になるとアルフの表情が曇る。
ただ帰るだけだというのに、そうしてそんなに暗くなることがあるのだろうか?
「プレシアもきっとお前を心配しているだろうから、たまには帰って顔を見せてあげないとな」
「……はい」
「……」
やはり、この時のアルフは何も喋ろうとはしなかった。

朝食後。マンションの屋上に集まる三人。
フェイトが詠唱を始める。空間転移の魔法の詠唱なのだろう。
そしてそれを悲しげな表情で見つめるアルフ。
……これは一度本気で聞いてみないとダメかもしれないな。
向こうから帰ってきたら聞いてみることにしよう。そう考えた瞬間。
三人は金色の光に包まれた。
眩い光に一瞬目を閉じる。そして次に開けた瞬間。
目の前に広がる景色は一変した。
だが、そこは見覚えのある景色。
この世界に来てから始めて目を覚ました場所。
時の庭園であると、認識した。
「……とりあえず報告を済ませてきますので、二人はここで」
「いや、俺も一緒に行こう。プレシアには聞きたいことがあるからな」
「……」
フェイトはそれに対しての返答を言い渋っていた。
「……アスラン」
それまで黙っていたアルフが突然口を開く。
「……フェイトについてやっててくれないか?」
「?そのつもりだが……」
「……頼んだよ」
その真剣な眼差しと言葉の意味を読み取ることはできなかった。
けれど、あのアルフがここまでいうからには何かがあるのだろうと思った。
そして、
「えっ?」
アスランはフェイトの手を引いて扉に手を掛ける。
「行こう」
「……はい」
扉は開かれ、二人は中へと入っていく。

そして一時間くらい経過した頃だっただろうか。
アルフは扉の前でウロウロと挙動不審に歩き回っていた。
(今日は何も聞こえないから大丈夫だと思うんだけど……)
毎回、扉の向こうから聞こえていた音。
それはとても耳に響く、音と声の不協和音。
聞きたくない、聞きたくない。
そう思い何度耳を塞いだだろうか。だけど、それでも脳裏に焼きついて消えることのない音。
それが、今日はほとんど聞こえない。
それどころか誰も何も話していないんじゃないかと思うくらいに静かで、
聞こえるのは自分の足音のみが広い廊下に共鳴していた。

ギィッ。
「!!」
音の方向に振り返ると、扉が開き、奥から出てくる。
見ると、アスランがフェイトを背中に背負っていた。その姿を見て駆け寄るアルフ。
「アスラン!」
こちらへと顔を向けるアスラン。
「アルフ」
そして一目散にフェイトへと駆け寄るが、当の本人はアスランの背中ですやすやと寝息を立てていた。
「寝てる……」
「ああ、俺がプレシアと話してる間に寝てしまったみたいでな。報告は俺が済ませておいたから問題ない」
「……」
そしてフェイトの身体を見てみるが、どこにも見当たらなかった。
「……ああ、いや何でもないよ」
「?……それより帰るにはどうすればいいんだ?」
「ああ、まかしときなよ。あたしも移動魔法は使えるからさ」
「そうか」
アルフは目を瞑り、詠唱を始める。足元に魔法陣が展開し、アスランもその中へと入っていく。
そして魔法陣が輝き、一瞬にして移動する。
次の瞬間には元のマンションへと戻っていた。
アスランはフェイトをベッドに寝かせ、自室へと戻っていく。
その後、改めてフェイトを見てみるが、やはりどこにもなかった。
アスランにも聞かれたが、言うことはできなかった。

フェイトがあの女に、プレシアに酷い事をされかったか。と

あの女がフェイトに対して酷い仕打ちをしていたのは昔からだった。
だが、今回が初めてではないだろうか。
フェイトが"無傷"で帰ってきたのは。
ジュエルシードを集めたから?それとも……
チラと個室のドアへと視線を向ける。
アイツの、アスランのおかげなんだろうか……?

思考を巡らしたアルフだったが、とりあえずフェイトが無事だったことを喜び、考えるのをやめた。

夕刻。
今日はシフト的に休みだったキラとユーノはジュエルシードを探す為に街を散策していた。
そして、つい一時間ほど前から感じる感覚。
もうすぐ発動するであろうジュエルシードの存在を二人は感じていた。
(どう?ユーノ)
(……まだ完全に発動してないから正確な位置特定はできませんけど……)
(そっか……あ)
(?)
突然念話が終わり、正面を見るとこちらに向かって歩いてくる少女が一人。
「おかえり、なのはちゃん」
「おかえり、なのは」
「あ……キラ君、ユーノ君」
呼ばれてこちらに気付き、たたっと駆け寄ってくるなのは。
「二人はジュエルシード探し?」
「うん」
「なのはも感じる?」
「うん……もうすぐ目覚める子がいるのは……」

瞬間。

「「「!!!」」」
大きな魔力の流れが発生する。
感じる。間違いない、これは……
「ジュエルシードが……」
場所は……ここからそんなに遠くない!!
「行こう!!」
「うん!」
駆け出す三人。
「ユーノ君!レイジングハートは!?」
「持ってきてるけど……まだ完全に修復してないんだ」
「どのくらい修復しているの?」
「まだ60%くらい……これじゃほとんど魔法は使えない」
「そんな……」
落胆するなのは。
「大丈夫。僕がジュエルシードの相手をするから、なのはちゃんは封印をお願い」
微笑みかえすキラ。
「……うん!」

「……あれだ!」
ユーノの声に正面を向き反応する二人。
目の前にある大木が見る見る内に巨大化する。
「レイジングハート!」「ストライク!」
「「セーット、アーップ!!」」
「「Stand by ready setup.」」
各々のバリアジャケットに身を包む。
「ストライク、エールジャケット!」
「OK. エールジャケット」
キラのバリアジャケットの上に形成される赤い色のジャケット。
「封時結界!展開!!」
ユーノの足元に形成される魔法陣。結界が周辺を包んでいく。
「ぐおおおおおおおおおお!!!」
雄たけびのような声を上げながら起き上がる大木。
そして振り下ろされる腕と思われる枝。枝の太さも長さもジュエルシードの魔力で強大になっている。
「二人は下がって!ここは僕が!!」
枝を回避し、上空へと上がるキラ。後方へと大きく下がるなのはとユーノ。
ライフルを構え、トリガーを引く。
発射される複数の魔力弾。だが、
「バリア!?」
魔力弾は大木の前に発生した障壁のようなものに弾かれて消滅する。
そして地面から複数の枝が出てきて、一斉にキラへと襲い掛かる。
「!!」
ライフルを腰にマウントし、肩のサーベルを引き抜く。
ザシュッ!ザシュッ!!
無数に襲い掛かる枝を次々に切り刻んでいくキラ。
だが、枝は切っても切っても次から次から出てくる。
「くそっ!これじゃキリがない!!」
何とかして大木本体に攻撃しないと……そう考えていると、

「イージス」
『スキュラ、バースト』
ドオンッ!!

「!!」
突然上がる声と魔力砲。
正面の大木の上空からの攻撃。大木はバリアを張り、これを防ぐ。
「アスラン……!」
見上げる上空に、右手の魔法陣から魔力砲を発射しているアスラン。
そして正面を見ると、スキュラに耐えている大木。
『今です、マスター。ランチャージャケットを』
「え?……うん、ストライク!ランチャージャケット!!」
『OK.Change、ランチャージャケット』
赤いジャケットが光を帯び、緑色へと形成変化する。
そして背面の大型バスター『アグニ』を正面の大木へと向ける。
「ストライク!」
『アグニ、バースト』
ドオンッ!!という音と共に発射される魔力砲。
これもバリアで防ごうとする大木だったが、バリィンッ!!と音を立てて崩れる障壁。
二つの魔力に耐え切る事が出来なくなり、バリアは破壊され、二つの魔力に飲み込まれる。
そして、一瞬眩い光が辺りを包み、
次の瞬間には大木は消滅し、ジュエルシードのみがそこに浮かぶ。

「「!!」」

反応する二人。だが、即座にブレーキを掛ける。
「……ジュエルシードには衝撃を与えない方がいいみたいだ」
チラとアスランがフェイトのバルディッシュへと視線を向ける。
「……昨日みたいな爆発が起きるかもってことだね」
同じくなのはのレイジングハートを見るキラ。
「……キラ、大人しく引いてくれないか……?」
「……それが出来るなら、とっくにそうしてるよ」
「そう、だな……なら仕方ない」
『サーベルシフト、ライトアーム』
イージスの言葉の後に発生する魔力刃。
「……アスラン。君は何でジュエルシードを集めているの?」
「……」
無言だが、表情が少し強張るアスラン。
「僕の憶測でしかないけど、あれはとても危険なものだと思う。君はそれを使って何をしようとしてるんだ?」
「……お前には関係ない」
「……そう。なら……ストライク!ソードジャケット!!」
『OK.Change、ソードジャケット』
緑色のジャケットが今度は青く変化する。そして肩の大剣『シュベルトゲベール』を持ち、正面へと構える。
「……僕が勝ったら、聞かせてもらうよ」
「……」
お互いを見据える両者。そして、同時に動く。
「「はあああああああああっ!!!!!」」
振り下ろされる二つの刃。

ぶつかり合うと思った、次の瞬間。

二人の空間に発生する何か。そこから出てきた誰かは二人の攻撃を防御魔法で防ぐ。
「ストップだ!ここでの戦闘は危険すぎる!」
「「!!!」」驚愕の表情を浮かべる二人。
そして突然の第三者の出現に驚く四人。

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおうか」

突然現れた第三者は自身の名と身分を明かした。
「時空、管理局……?」「執務官……?」
自分達の知らない単語に?マークが浮かぶキラとアスラン。
「まずは二人とも武器を引くんだ」
ゆっくりと降下し、地面に足をつける三人。
「このまま戦闘行為を続けるなら…!!」
突如感じる魔力反応。反応のある方向へと向く三人。
上空から降り注ぐ複数の魔力の矢。狙いは、クロノへと向けられていた。
「ッ!!」かざした手から発生する障壁でそれを弾くクロノ。
魔力の矢の発生源、その先にはアルフがいた。
「アスラン!撤退するよ!離れて!!」
「!!!」
続けて発射される矢。今度はクロノではなく、手前の地面を狙う。
命中した矢は爆発し、煙が上がる。後方へと回避するクロノとキラ。
二人よりも先に反応したアスランは上空へと飛翔し、
(何とかジュエルシードを……!!)
そう思い空のジュエルシードへと手を伸ばす。
が、
今度は地面からの青い魔力弾。
「くっ!!」
回避しきれずシールドで弾くアスラン。だが、衝撃のせいで大きく離れてしまう。
「アスランッ!!」
フェイトが叫び、駆け寄ろうとする。
爆煙の中から出てくるクロノ。構える杖の先に発生する魔力が発射されようとした

瞬間。

「待って!!」
「!!」
間に割り込んできたのは、キラだった。
「待ってくれ!撃たないで!!」
「キラ君!?」
だが、それに一番驚いているのは他ならぬアスランだった。
(どうして……俺を……)
「今の内だ!行くよ!!」
その言葉に続き、三人は夕焼けの空へと消えていく。
「あ……」
そしてその姿はどんどん小さくなり、見えなくなってしまった。

「クロノ、お疲れさま」
突如現れた魔法陣に浮かぶ女性の映像。
「すみません、片方は逃がしてしまいました」
「うん、まぁ大丈夫よ。でね、ちょっとお話を聞きたいから……そっちの子達をアースラに案内してあげてくれるかしら」
「了解です、すぐに戻ります」
消える魔法陣。そしてこちらを見るクロノ。
驚きの表情のままのなのはとキラ。
「さて、詳しい事情を聞かせてもらいたい。とりあえず僕達の船まで一緒に来てくれないか」
「僕達の……船?」なのはが聞き返す。
「ああ」

そしてクロノに従うまま転移し、彼のいう『船』の中へとワープする。
カツカツと前を進むクロノ。それに続くキラ、なのは、ユーノ。
(ユーノ君……ここって一体……)キョロキョロしながら挙動不審に進むなのは。
(時空管理局の次元航行船の中、だね)なのはと違い真っ直ぐトテトテと進むユーノ。
(次元、航行船?)先を行くクロノの後を進むキラ。
(えと、簡単にいうと、いくつもある次元世界を自由にする、その為の船)
(あ、あんま簡単じゃないかも……)
(えと、なのはの暮らしている世界の他にも幾つも世界があって、僕達の世界もその一つで……)
(じゃ、僕がいた世界もその一つ……なのかな)
(そう、ですね。その狭間を渡るのはこの船で、それぞれの世界に干渉しあうような出来事を管理しているのが、彼ら時空管理局なの)
(そうなんだ……)(……)
そして目の前の扉が開く。
振り返るクロノ。
「ああ、いつまでもその格好というのも窮屈だろうから、バリアジャケットとデバイスは解除して平気だよ」
「あ、そっか」「そう、ですね」
バリアジャケットを解除し、なのはは学生服、キラは私服へと変わり、それぞれのデバイスも待機モードへと変化する。
「君も、元の姿に戻ってもいいんじゃないか?」
「ああ、そうですね。ずっとこの姿でいたから忘れてました」
「「?」」首を傾げるなのはとキラ。
パァァッ。とユーノの身体が光り始め、
「「へ?」」
光が消えた後、そこにはなのはと同年代くらいの少年がいた。
「ふう、キラさんには初めてですれど、なのはにこの姿を見せるのは二回目になるのかな?」
呆然としたままカタカタ震えるなのはと開いた口が塞がらないキラ。
「え、え、え、え、え、……」

「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!??」

なのはの叫びはアースラ内に響き渡った。

「なのは?」
何故そんなに驚いているの?といった表情で見るユーノ。(と思わしき少年)
「ユーノ君てユーノ君て、あのその、何?え?だ、だって、その、嘘?ふぇぇぇぇぇぇっ!!!」
首を振ったり、指を指したまま腕を上下させたりと。なのはは混乱していた。
「……君達の間で、何か見解の相違でも……?」
クロノが不思議そうな表情で見つめる。
「…………」
そしてキラは未だに開いた口が塞がっていない。
「えと、な、なのは?僕達が最初に出会った時って、僕はこの姿じゃ……」
「違う違う!最初からフェレットだったよ~!!」
そう言われて頭の中の記憶を辿っていくユーノ。そして答えを導き出す。
「あーっ!!あ、そ、そうだそうだ!ごめんごめん、この姿を見せてなかった……」
「だよね!?そうだよね!?びっくりしたぁ……」
ゴホン。と咳き込む会話に割り込むクロノ。
「その、ちょっといいか」
「「ん?」」
「君達の事情はよく知らないが、艦長を待たせているので、出来れば早めに話を聞きたいんだが……」
「あ、はい」「すみません……」
「では、こちらへ……」
クロノの後を着いて行く二人。そこで気付く。
「あれ?キラ君?」
「……はっ!?」
呼ばれてようやく意識を取り戻したキラ。
「ご、ごめん」
タタッと三人に駆け寄るキラ。そして歩みを再会する。
「……僕、この世界に来て」
「?」
「魔法の存在にも驚いたけど……今さっきの事が一番驚いたよ……」
うんうんっとなのはが首を縦に振って激しく同意してくれていた。

そして一つのドアの前で止まるクロノ。
機械的な音と共に開くドア。
「艦長、来てもらいました」
その扉の向こうに広がる景色。それは余りにも異色過ぎた。
機械的な壁面とは裏腹に、並べられた盆栽。中央に置かれた茶具。そしてコトンと音を立てる竹の音。
そして中央に座る緑色の髪の女性が笑みを浮かべながら正座している。
「お疲れ様。まぁお三人ともどうぞどうぞ、楽にして」
「は、はぁ……」
今日これで一体何度驚いたことだろうか。あっけに取られた表情のまま返答するキラ。

でも驚くのはこれからであった。

緑色の髪の女性、リンディさんとクロノという少年を交えた話で初めて知った事。
ロストロギアと呼ばれる失われた遺失世界の遺産の存在。ジュエルシードもそれに含まれる事。
そして……ジュエルシードの危険性も。
「ではこれよりロストロギア、ジュエルシードの回収については時空管理局が全権を持ちます」
「「「えっ!?」」」
「君達は今回の事は忘れて、それぞれの世界に戻って元通りに暮らすといい。」
突然の発言に表情が変わる面々。
「でも、そんな……」
「次元干渉に関わる事件だ。民間人に介入してもらうレベルの話じゃない」
「でも!」
それでも引き下がらないなのは。
「まぁ、急に言われても気持ちの整理がつかないでしょう。今夜一晩ゆっかり考えてみんなで話し合って、それから改めてお話をしましょう」
「送っていこう。元の場所でいいね」
クロノが立ち上がろうとする。
「待ってください」
それまで話を聞いていたキラが口を開く。
「何かしら?」
「あの、僕の話を聞いてもらえないでしょうか……」
「?」
そしてキラは話し始める。自分の事、元の世界の事を……。
「そう……それじゃあなたは元の世界からこの世界に転移してしまったという事ね」
「確かに何かの事故に巻き込まれて別の世界に転移することは稀にあることだ。君の元の世界の事もこちらで調べておこう」
「あ、はい……」
「……」

クロノに促され、元の公園に戻ってくる三人。
もう夕焼けが沈みかけ、暗くなってきている。
「とりあえず、帰ろうか」
「うん……」「そうですね」
キラの言葉に続くなのはとユーノ。やはり先程のこともあってか二人とも少し元気がない。
そして人間状態からフェレットへと戻る(?)ユーノ。
まあその姿でないと高町家に戻って、「実は僕がユーノなんです」っていうわけにいかないしね。
帰路に着く三人。
そして、これからを考えなくてはならない。自分達がどうするか……を……。

同刻。
「ダメだよ、時空管理局まで出てきたんじゃもうどうにもならないよ……」
「……」
無言で俯くフェイト。
「逃げようよ……三人でどこかにさ……」
「それは……ダメだよ……」
顔を上げて否定するフェイト。
「だって!雑魚クラスならともかく、あいつ一流の魔導師だ……本気で捜査されたらここだっていつまでばれずにいられるか……」
重なる不安。
「あの鬼婆、あんたの母さんだってわけわかんないことばっか言うし……フェイトにだって……」
ひどいことをした。そう言おうとしたがその口をフェイトに止められる。
「母さんの事、悪く言わないで」
「言うよ!だってあたし……」
ガチャと開く扉。向こう側からアスランが入ってくる。
「どうした?電気も点けないで……」
カチとボタンを押すと天井の蛍光灯が光を帯び、部屋を包む。
「アスラン……」
「アスラン!フェイトを説得してやってくれ!!」
「説得?」
アルフは今自分達が置かれている状況を話す。
時空管理局。それは数多の次元世界を管理する司法機関のようなもので、
先程の戦闘に介入してきた少年。彼は時空管理局に所属する魔導師であるとの事。

「だから、いっそ三人で」
「……フェイト、君はどうしたい?」
振り返り、フェイトへと視線を向ける。
「……私は、逃げたくない」
「フェイト!!」
「だって、私達が逃げちゃったら、母さんが一人になっちゃうから……」
「あたしは、フェイトに笑って、幸せになって欲しいだけなんだよ……なのに、なんでわかってくれないんだよぉ……」
いつのまにかアルフの両目から涙が零れていた。
そしてその涙を拭うフェイト。
「ありがとう、アルフ。でも私、母さんの願いを叶えてあげたいの……母さんの為だけじゃない、きっと、自分の為」
ポンとフェイトの頭に手を置くアスラン。
「……アスラン?」
「……約束、してくれないか?」
「?」
「君の母さんの、プレシアの為ではなく、君は君の為に、フェイトはフェイトの為に頑張る。と」
見開く目。真っ直ぐに見つめるその瞳はとても悲しいものに見えた。
「……」コクと首を縦に振る。
「なら、最後まで俺は君を護るから。だから、最後まで頑張れ」
「アスラン……」
アスランはフェイトの頭から手を離し、視線をアルフへと向ける。
「アルフ、すまない。俺は君の要望に答えられない」
「アス、ラン……」
「だけど、俺も約束する。フェイトは俺が必ず護る」
「……約束だよ」
「……ああ」
笑顔で答えるアスラン。
だが、フェイトは感じ取っていた。
その笑顔が、とても悲しげな笑顔だと……。

夜。
高町家、なのはの自室。
「……だから、僕達もそちらに協力させて頂きたいと……」
レイジングハートへと語りかけるユーノ。その向こうはアースラとの通信が繋がっている。
「協力、ね……」
「僕はともかく、なのはとキラさんの魔力はそちらにとっても有効な戦力だと思います。
 ジュエルシードの回収、あの子達との戦闘……どちらにしてもそちらとしては便利に使える筈です」
「うん、なかなか考えてますね。それならまぁいいでしょう」
それまで聞いていたリンディが顔を上げ返答する。
「か、母さ、艦長!!」
思いも寄らない返答に思わず言葉を間違えそうになるクロノ。
「手伝ってもらいましょ、こちらとしても切り札は温存したいもの。ね?クロノ執務官」
「はい……」
渋々だが了承するクロノ。だが、リンディの言う事も間違ってはいない。
「条件は二つよ。三人共身柄を一時、時空管理局の預かりとすること。それから指示を必ず守る事。よくって?」
「……わかりました」

高町家、台所。
夕食後の後片付けを桃子とキラと一緒にしているなのは。
(なのは、キラさん、決まったよ)
ユーノからの念話が飛んでくる。どうやら管理局との話がついたようだ。
(うん、ありがとう。ユーノ君)(ありがとう、ユーノ)
「それじゃ母さん、俺と美由希は裏山に出かけてくるよ」
恭也が冷蔵庫から水の入ったペットボトルを出す。
「今夜もまた練習?」
「うん」
体を解しながら返事する美由希。
「気をつけてね」「気をつけて」
なのはとキラに言われて二人は「ああ」「うん」と返答する。
そして二人は台所から出て、玄関を出て走っていく。
ちょうどそれと同じくらいに片付けが終わる。
「さ、これでおしまいっと」
最後のお皿を棚にしまい、ガラス戸を閉める桃子。
「それじゃ僕は道場に戻ります」
「あ、はーい」
キラも台所を後にする。そしてなのはとすれ違い様に
(頑張って)と念話を飛ばす。
バタンと閉まるドア。
「……さて、お母さんに大事なお話って何?」
「……うん」
言わなくてはならない、これからの事を。
心配をかけることになっても、決めた事だから……。
そして意を決し、口を開くなのは。

ガラッ。と道場の扉を開けるキラ。
「すみません、お待たせしてしまって……」
「いや、構わないよ。それで、俺に話って何だい?」
キラは目の前の人物、士郎に話しを始める。
自分の失われた記憶。その手掛かりを見つけた事。そして、自分を知る人物の事を……。
魔法や自分の世界の事は話すわけにはいかなかったが、嘘と真実を混ぜた話を話す。
「なるほど、そのアスランって子は君の事を知っていると」
「はい、僕の友達だって言ってました……」
「ふむ……それで、どうするんだい?」
「……彼についていってみようと思います」
「……そうか」
「まだ僕自身はっきりとした記憶が戻っていないんですけど、でも何となく彼を知っている感じがするんです……」
「……」
「それで、もしついて行く事になったら、その……翠屋の仕事を……」
休まなくてはならない。それが一番苦しい事である。
だが、身柄を時空管理局で引き取られるということは、少なくともここにはいられないという事。
「……休まなくてはならないってことか」
「……はい」
自分勝手な我侭を言っているのは自分でも重々承知している。
でも、今ここで引き下がるわけにはいかないんだ。
「……キラ君」
「はい」
「君は、自分の過去について怖いと思ったことはあるか?」
「……」
思い出される戦争の日々、MSに乗って、ザフトの兵士を討つ日々。
正直、思い出したくもない過去である。
「……怖い、です」
キラはそんな自分が嫌で嫌でしょうがなかった。友達を護る為、クルーを護る為、アークエンジェルを護る為。
その為に敵を討ち、自分の手を血で染めていく。もうたくさんだと思うことは山程あった。
過去を思い出し、悲しみが支配しつつあるキラの両肩を士郎は両手で掴んだ。
「過去から、逃げたらいけない」
「……え?」
「どんなにつらい過去でも、それは君であることには間違いないんだ。過去からは逃げることはできない。
 それに例え過去に君がどんな人間だったとしても、」

「今の君は、翠屋の店員、キラ・ヤマト君なんだから」

「士郎、さん……」
「だから、過去の自分の事で押し潰されそうになったら、俺達と過ごしたこの数週間を思い出してみてくれ。
 そうすれば、君は今のままでいられる。」
いつしかキラの目から涙が零れ落ちていた。
「ほらほら、男の子が泣くな!」
バシィッと背中を叩く士郎。
「それに、もう決めたことなんだろう?大丈夫、翠屋ならどうにかするさ」
「……すみません」
「でも、一つだけ約束してくれないかな」
「?」
「ちゃんと無事に帰ってくる事。君に何かあるとなのはやみんなが心配するからな。
 それに君はもうウチの家族の一員だと俺は思っている。多分俺だけじゃない。
 なのはや母さんや恭也や美由希も、みんな君の事を大事な家族だと思っているさ」
「……」
嬉しかった。素直にその言葉しか出てこなかった。
こんな自分を、家族の一員だと言ってくれたその言葉が。
とても、とても嬉しかった。

「はい……ありがとう……ございます……」
止まらない涙。だけど、その涙の感情は、とても心地よかった。

そして、同じく桃子に事情を説明し、準備が出来たなのは。
荷物を持ち、玄関へと出ると。そこには既に待っていたキラがいた。
視線を交わし、三人は夜の闇を掛けていく。
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