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背後から来る気配を察したアスランはフェイトと共に林の影に隠れた。
そして横たわる少女に駆け寄る青年。
こちらからの距離があり、尚且つ相手の後ろにいる状況なので、顔が見えなかった。
だが、それはこっちにとっては好都合であった。
「・・・俺が気絶させよう、その隙に逃げるぞ。」
「わかった。」
アスランは一気に距離を詰める為、足に力を込める。
そして一呼吸おき、
静かに、そして迅速に駆けた。
(もらった!!)
アスランは右手を構え、青年の首に手刀を当て気絶させる
はずだった。
ブンッ!と当たる筈の右手が虚空を薙ぐ。
(な!?)
目標の青年が当たる直前に左へと回避したのだ。
そして青年が回避直後にこちらにパンチを繰り出してきた。
が、アスランも軍人。回避された事に意表を突かれたが、それを軽々とバックステップで回避する。

そして、視線が青年の顔へと赴いた瞬間。

アスランの思考は止まった。

そしてようやく振り絞った言葉は、かつての友の名前だった。

対峙する二人の青年。
だが、二人とも動こうとはしない。
いや、動けないわけではない。
今、二人の青年の頭の中はひどく混乱していた。
(そんな・・・そんな・・・!)
(まさか・・・!)
「アスランさんっ!」
響く声に、はっと我に返った二人。
「――ッ!!」
舌打ちをし、振り返って林の奥へと走っていくアスラン。
「!!」
後を追おうとするキラだったが、走り出そうとした時にはすでにアスランは視界から消えていた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」
背中から嫌な汗が出てくる。極度の緊張状態が解けたことによる反応なのだろう。
「・・・アスラン」
そして数分程立ち去った方向を見ていた。
「どうして、君が・・・」

その後、キラはなのはを抱えて屋敷へと戻った。
右手に怪我をしていたけれど、医者によれば命に別状もなく数日で治るとの事。
目が覚めたなのはは、アリサやすずかが心配そうな目で見ているのを見て、心が痛んだ。
そして、夕方にキラと共に高町家へと帰宅したが、帰り道、キラはずっと何かを考えている様子だった。

そして夜、なのはの部屋。
「今日のあの子・・・間違いなく僕と同じ世界の住人だ。」
「うん・・・ジュエルシード集めをしているって・・・あの子とまた、ぶつかっちゃうのかな・・・?」
表情がより曇り、俯くなのは。
「あと、気になったことが・・・」
「?」
ユーノはなのはが気絶してからの事を話し始めた。
あの子の知り合いだと思われる青年の登場。
結界を張っていたにも関わらず、キラがなのはの元まで来た事。
そして、キラとその青年は互いに名前を言ってた。という事。
「・・・そんな」
「向こうは「キラ」って言ってたし、キラさんも向こうの人の事を「アスラン」って・・・」
「・・・それじゃ、その人はキラ君の知り合いなの・・・?」
「・・・多分、そうだと思う。」

同刻、市街地、マンションの一室。
「おかえり、フェイト、アスラン」
「ただいま」
「・・・・・・」
「?どうしたんだい、アスラン?」
アルフがアスランの顔を覗き込もうとする。
「なんでもない・・・気にするな」
目を合わせないように視線を背ける。
「ふーん、ま、いいけどさ。で、どーだった?」
「少し、邪魔が入ったけど、大丈夫」
「さっすが、あたしのご主人様!」
アルフが盛り上がっている所を素通りしていくアスラン
「アスランさん?」
「悪い・・・今日はもう寝るよ・・・おやすみ」
それだけ言って奥の部屋へと入っていく
「・・・?どうしたんだい?アスランの奴?」
「・・・・・・」
フェイトは気になっていた。
昼間の少女の事もそうだが、途中、林から出てきた青年。
彼もアスランの事を知っているような素振りだった。
でも、アスランはあの世界の住人じゃない。
なのにどうして・・・。
「フェイト」
「何?」
アルフの頭を優しく撫でるフェイト。
「大丈夫だって、なんていったってフェイトにはこのアタシがついてるんだからさっ!」
満面の笑顔でふふんと胸を張るアルフ。
「・・・うん、そうだね」
私には、やらなきゃいけない事がある。
例えまた、あの子と戦う事になったとしても・・・。

次の日。
なのははいつもの早朝訓練の為、ユーノと共に練習場所へと向かう。
だが、そこにはすでに先客が来ていた。
その後姿はなのはが知っているもので、こちらに気付いたのか振り返る。
「おはよう、なのはちゃん」
朝の挨拶と共に振り返った人は、翠屋の住み込み従業員、キラ・ヤマトだった。
「え?な、何でキラ君がここに?」
「なのはちゃん、毎朝ここに来ているでしょ?」
「え!?ど、どうして?」
「何度か出て行く姿を見たんだ。それで気になって後を」
「・・・ここなら、二人きりになれると思ったから、かな。」
「?」
キラの言っている意味がよくわからなかった。
「なのはちゃん。」
「はい。」
「・・・話があるんだけど・・・いいかな?」
「え、えっと・・・」
なのはは困惑した。
昨日のユーノの話を聞く限り、キラはなのはのバリアジャケット姿を見ていることになる。
ということは、話というのはそれのことだろう。
(ど、どうしよう~ユーノ君~)
(ど、どうするって言っても・・・)
今なのはの頭の中には昨日のことをどうごまかそうかと画策していた。
だが、元々嘘をつけない、嘘が嫌いなタイプのなのはにとってそれは難しい。
「・・・僕は」
返事を待っていたキラは突如口を開く。
「本当は、記憶喪失なんかじゃないんだ」
「えっ?」
「僕は・・・この世界の人間じゃないから」
真剣な眼差しで見つめるキラ。その真っ直ぐな視線と言葉を受けて硬直する。
(やっぱり、この人は異世界の・・・)
図らずとも、ユーノの推察は当たっていた。
「・・・あんまり驚かないんだね」
「え?」
「なのはちゃん、もしかして僕が記憶喪失じゃないって知ってたの?」
「そ、それは・・・」
次々と言い当てるキラの鋭い指摘に、言葉が詰まるなのは。
「・・・なのはちゃん」
「は、はい!」
「今から言う話を聞いてくれないかな・・・?」
「話・・・?」
「うん」
そしてキラは語り始める、自らが体験してきた、全ての事を・・・。

同刻。
アスランはベランダに出ていた。
「・・・・・・」
ただ何かをするわけでもなく、ずっと向こうの方角を見続けていた。
実は昨日一睡もしていない。その原因は、
「・・・・・・キラ」
昨日、フェイトを迎えに行った時に出会った。いや正確には"再会"した、この世界で唯一自分を知る人間。
(やはりあいつもこっちに来ていたのか・・・)
自分もイージスの自爆で死んだものと思っていたのが、こっちの世界に飛ばされたんだ。
キラもこっちの世界に来ていてもおかしくはない。
「・・・・・・」
だが、この世界に来るまでは俺とあいつは敵だった。
お互い、殺すつもりで戦った。
あいつがニコルを殺したから。
俺の迷いが、ニコルを死なせてしまったから。
だが、俺は結果的には殺すことは出来なかった。
現にあいつは今もこの世界のどこかで生きている。
「・・・俺は・・・」
どうすれば、いいんだ?
もう一度会ったら、また殺しあうのか?
だが、今の俺はザフトのアスラン・ザラじゃない。
それはキラにとっても同じ事で、組織としての敵ではない。
殺し合う理由はない。
だが、はいそうですかとまた仲直りできるかと言えば、無理だ。
今後あの少女がジュエルシードを探し続けるなら、またキラと逢う事にもなるだろう。
その時、俺は・・・・・・。
「・・・いや、迷うわけにはいかない」
俺には大事な約束があるんだ。
プレシアからフェイトを護ってくれという大事な約束が。
その約束を護らなければいけない。
だから、もしキラがフェイトの邪魔をするようなら、俺が・・・・・・。

アスランが物思いに耽っていると、
コンコン。とドアがノックされる。
「はい」
ガチャとドアを開けて入ってくる少女、フェイトだった。
「あの、朝ご飯出来ましたけど・・・」
「ああ、すまない。もうそんな時間だったのか」
チラッと壁にかけてある時計を見ると、時刻はAM6:00。
「朝ご飯、いりますか?」
昨日帰ってきてから何も口にしていないので、意識し始めるとお腹が空いてくるのがわかった。
「そうだな。頂くよ」
ベランダからドアへと歩むアスラン。
「あの、聞いてもいいですか?」
「何だ?」
「ベランダで何をしていたんですか?」
「・・・少し、考え事をね」
「もしかして、昨日の人のことですか?」
フェイトの発現にピクッと反応するアスラン。
「・・・ああ」
嘘をついても仕方ない。そう思い正直に答えるアスラン。
それにこの少女にも自分の事情をそろそろ話しておいたほうがいいだろう。
「フェイト」
「何ですか?」
「朝食が終わったら、少し付き合ってくれないか?」
「あ、はい」
「ありがとう」
そして食卓には主人の帰りと居候の起床を心待ちにしていた使い魔はよだれを垂らしながら待っていた。

「・・・・・・これで終わり」
キラは、自分の世界の事や自分が体験してきた事を話していた。
そしてその話を聞いて、なのはは困惑していた。
ユーノの推察通り、キラは異世界の人間だったのはあまり驚かなかったが、
まさか、キラの世界では今も戦争が続いているとは思いもよらなかったからである。
戦争なんてもう何年も昔の話で、とっくに終わって歴史の1ページに過ぎなかったはずの出来事を
今、目の前の青年が語っていた。
ナチュラル、コーディネイター、連合、ザフト、オーブ、モビルスーツ。
聞きなれない単語ばかりであったが、キラの説明もあって何となくは理解できた。
(小学3年生には難しすぎるとも思うんだが。)
「ごめんね」
いきなり謝罪の言葉を発したキラにキョトンとするなのは。
どうして謝るんだろう?と思っていたが、
「いきなりこんなこと言っても信じられないだろうけど、でもこれが僕のいた世界での出来事なんだ」
そういって俯くキラ。
そして気になったことがあり、口を開くなのは。
「あの・・・どうして私にそんなことを?」
普通なら士郎や桃子のような大人に話すべきである内容の話を、どうして子供のなのはに聞かせるのか。
それが不思議に感じた。
「・・・昨日すずかちゃんの家で」
ビクッ!と反応するなのは。
「庭でなのはちゃんが倒れていた時、見たんだ」
背中で冷や汗をかきながらなのははおずおずと聞く。
「な、何を・・・?」
ドキドキドキドキと心臓の鼓動が早くなる。
「・・・僕の」
「えっ?」
「僕の、友達を・・・」
「それって・・・」
昨日、ユーノが言ってたもう一人の魔導師のことだろう。
キラも彼もその時お互いの名前を呼んでいたとの事なので、知り合いには違いない。
「・・・彼は、僕の元いた世界での、友達なんだ・・・」
「・・・」
「でも、この世界に来る直前まで、戦っていたんだ」
「え?ど、どうして?」
「それは・・・」

「再会した時、俺とあいつは敵だったんだ」
朝食が終わるとアスランはフェイトとアルフに自分の世界の事と自分自身の事を話していた。
連合による核の使用にて起こった『血のバレンタイン』
それによってアスランの母、レノア・ザラも死んでしまった事。
それにより、自分の軍に入り、戦争の早期終結の為に戦った事。
そして、ある作戦の際に再会したかつての友・・・。
「あいつは連合の、そして俺はザフトの兵士として、何度も戦場で戦った」
不意に拳を握る力が強くなるアスラン。
「何度も説得した、こっちへ来いと、俺もあいつとは戦いたくはなかった。あいつもきっと同じ気持ちだった」
「じゃあなんでそいつはあんたと戦ったんだい?」
意味が分からず疑問を発するアルフ。
「あいつにも、守りたいものがある。そう言っていた。だから俺はあいつと戦う事を決めたんだ」
「ふーん」
「でも、俺は心のどこかで迷ってしまっていた。その迷いと甘さが、俺の同僚を・・・死なせてしまった」
「・・・」
フェイトはただアスランの話をじっと聞いていた。
今までほとんど他人と関わる事がなかった為か、話を聞く事に集中し耳を凝らし、アスランを見ていた。
「そして俺は、今度こそ必ずキラを討つ。と心に誓い、戦場へと赴いた」

「そして、彼は僕の親友を討った」
淡々と話し続けるキラ。
「僕はそれが許せなくなって、怒りに身を任せて、彼と戦った・・・」
一息置いて、なのはへと視線を向ける。
「そしてその戦いの中、爆発に巻き込まれて・・・それから気付いたらこの世界に来ていたんだ」
「それじゃ・・・あの時あんな大怪我してたのは・・・」
「多分、爆発のせいだと思う。でも、どうしてこの世界に来たのかはまったくわからないんだ」
「・・・その人と」
「?」
「その・・・アスランって人と、また戦うの?」
「・・・・・・」
キラは返事をすることが出来なかった。
自分自身、もう戦争も戦いも嫌だった。
この世界に来て、もう自分は戦わなくて済むと思っていたのに。
なのに、再会してしまった。かつての親友で、少し前の敵に・・・。
「キラ君の友達・・・なんだよね」
「・・・うん。少なくとも、僕はそう思っている」
「だったら、もう」
「でも、アスランは、きっと僕の事を・・・恨んでいる」
「・・・」
「当然だよね、だって僕はアスランの同僚を・・・」
「キラ君は・・・」
「?」
「どうしたいの?」
「どう・・・って?」
「その、アスラン君とこれから・・・」
「・・・仲直りしたい・・・けど」
「だったら!」
なのはは近づいてキラの両手を握る。
「お話しようよ!」
「・・・話?」
「うん!今度会ったら、お話してみようよ!もう戦わなくていいように!」
「・・・そう、だね」
キラの瞳に光が灯ったように大きく見開く。
「・・・ありがとう、なのはちゃん」
なのはの手を握り返すキラ。
「僕・・・やってみるよ」
「キラ君・・・」

「!!!!」
体中に走る感覚、感じる大きな力。
(なのは!)
(ユーノ君、これって)
(うん、ジュエルシードの反応だ!)
(結構近い・・・)
バサァッ!!と公園の林の向こうから黒いカラスのようなモノが大きな羽を羽ばたかせながら飛び上がる。
見た所普通のカラスの三倍くらいの大きさはある。
「な、何・・・あれ・・・」
あまりにも常識外れなカラスを見て目が点になるキラ。
「カ、カラス・・・かなぁ」
見たまんまの言葉を言うなのは。
(ユ、ユーノ君。どうしよう?)
(キラさんの目の前で変身する訳には・・・)
そうこうなのはとユーノが念話で会話している時に、カラスはこちらに気付き、一気に距離を縮めてくる。
「!!危ない!!」
それにいち早く気付いたキラがなのはを突き飛ばし、カラスの攻撃をモロに受け止める。
「ぐっ!!」
脇腹にめり込むように入るカラスの羽。苦痛に歪むキラの表情。
「キラ君!」
「僕はいいから、早く逃げて!」
「でも!」
キラではあのカラスをどうにかすることは出来ない。
出来るのは自分とレイジングハートだけ。
だけど、ここで変身すれば、キラに自分の正体が知られてしまう・・・。
いや、違う。
大事なのは、そんな事じゃない!
今この状況をどうにかできるのは自分だけなのだ。
なら、出来る事をする!
「・・・ユーノ君」
「えっ?」
念話ではなく、言葉に発するパートナーの名前。
思わず反応してしまったユーノ。今は結界を貼ることに集中していたが、
「ごめん」
その後の言葉と行動にもっと驚いた。

キラはどうにかカラスの体当たりを紙一重でかわし、そこらに落ちている石を投げて反撃する。
だが、命中したところで向こうには何の反応すらない。当たったことすら感じていないのだろう。
「・・・どうしたら」
キラがその言葉を発したその直後。
背後にて桜色の光が天に向かって伸びた。
光の方向に視線を向けるが、あまりの光に目を瞑るキラ。
「な、なんだ・・・!」
そして瞼の隙間から光が差し込まなくなってから瞳を開くと、自分とカラスの間に、
白い服を着た少女が杖を持って立っていた。
キラはその服には見覚えがあった。
それは昨日、月村家の庭で横たわっていた少女が着ていたはずの服。
だが、キラはその服の事に関しては自分の勘違いか夢か何かだと思っていた。
だが、今目の前にその服を着た少女が立っている。そしてその少女に向かって口を開く。
「なのは・・・ちゃん?」
名前を呼ばれた少女は振り返る。
その少女はやはり自分の知っている、高町なのはだった。
「ごめんね、キラ君。ここは私が何とかするから」
なのははそれだけ言うと正面を向き直し、カラスと対峙する。
「レイジングハート!」
『フライヤーフィン。』
言葉を発した後、持っていた杖から女性の声がしたと思ったら、
なのはの足元に小さな羽のようなものが現れる。
地面を蹴り、空へと舞い上がるなのは。
「飛ん・・・で、る」
目の前の光景にただ呆然とするキラ。
無理もない。目の前で女の子が空を飛んで大きなカラスと戦ってるなんて、
漫画やアニメみたいな光景が今自分の目の前にあるのだから。

空中に舞い、カラスの標的をこちらに誘うなのは。
それに釣られて、カラスがなのはへと進行方向を変える。
「レイジングハート!」
『シューティングモード。』
レイジングハートの先端が形状変化し、長距離砲撃形態へと変化する。
両手で構え、照準をカラスにあわせようとするが、なかなかに早く移動するのでうまく照準が定まらない。
「うう・・・早すぎる・・・」
不規則な動きで距離を縮めてくるカラス。
向こうもなのはに狙いを定めたのか、一気に突っ込んでくる。
「!!」
『プロテクション。』
とっさに反応した右手をかざし、前面にバリアを展開する。
バリアに真っ直ぐ突っ込んできたカラスは反れるように進行方向が変わる。
だが、カラスはすぐに方向転換し、なのはへと向かっていく。

下から見ていたキラは今のなのはの不利な状況にハラハラしていた。
カラスの攻撃も回数を重ねるごとに精度が増し、なのはの表情にも段々焦りが見えてくる。
「・・・なのはちゃん」
でも、今の自分には何も出来ない。
空を飛んで助ける事も、カラスを倒す力も、何もない。
キラは自分の無力さに歯がゆさを感じていた。
自分よりも小さな女の子が、あんなにも頑張って戦っているのに。
自分はただここで見ていることしかできないなんて・・・。
「僕にも・・・」
力があれば・・・助ける事が出来るのに。

『・・・呼んで下さい』

「え?」
突然聞こえた声に振り返る。が、周りには誰もいない。
だけど、はっきりと聞こえた声。

『・・・名前を・・・呼んで下さい』

「!!」
やっぱり聞こえた。
それも、さっきよりもはっきりと。
振り返り、辺りを見回してもやはり誰もいない。

『私の名前を・・・呼んで下さい』

その声が一番はっきりと聞こえたその時、
キラのポケットから光が溢れていた。
「こ、これって・・・!」
ポケットに手を入れて、入っているものを取り出す。
それは、眩いばかりの光を放っているその物体は、以前なのはから預かったクリスタルであった。
見た事もないものだったので自分のものではないと思っていたのだが、なのはに「キラ君が持っていて」と言われ持っていたものである。

『私の名前を・・・呼んで下さい・・・』

何度も問いかけてくるその声は、やはり
「・・・まさか、これが?」
右手に乗っているクリスタルからの声なのか?
「・・・名前?」
名前とはこのクリスタルの事なのだろうか?
だが、これを見た事もない自分に名前など分かるわけもない。
「名前って・・・」
キラは必死に思い出そうとする。だが、何も浮かんでは来ない。

『私は・・・あなたと共に戦い・・・そして、またあなたの力に・・・』

共に・・・戦い・・・?力に・・・?そんなの・・・ん?
キラは一つの名前が思い浮かんだ。

「・・・・・・ストライク」

それは、C.E.で共に戦ってきたMSの名前。
幾度となく共に戦火を駆け抜けてきたキラの機体の名前。

『・・・Call is my name.The voice is my master Kira=Yamato.(私の名を呼んだ声の主はマイマスター、キラ・ヤマトと認識しました。)』

クリスタルは一層光り、英語のような言葉を発したその直後。
光が収縮し、キラを包み込む。
その光に目が眩んだキラは目を瞑る。
そして何秒か経過し、光は完全に消えた。
目を開けて自分の姿を見て驚愕するキラ。
「ふ、服が・・・」
それは白を基調とした服で、所々に黒や青のラインが入っている。
そして右手には黒いライフル、左手には大きめのシールドが装着されていた。
『契約、完了。ストライク、ベーシックフォームで起動。』
「ベーシックフォーム?」
『基本となるフォームです。これからエール、ソード、ランチャーの三つのジャケットに換装可能です。』
「・・・本当にストライクと一緒なんだね」
『換装しますか?』
今この状況で一番適している換装は・・・あれしかない!
「ストライク!エールジャケット!」
『OK』
ストライクの機械的なボイスの後、白い服の上に赤いジャケットが出現し、そのジャケットの背面には赤い翼のようなものが出ている。
「・・・これで飛べるのかな?」
『はい、マスターが飛べるということを強くイメージしてください。』
「強く・・・イメージ・・・」
空を見上げ、見渡す空を飛ぶ自分を思い描く。
その姿をはっきりと描き、キラは足に力を込めて、地を蹴る。
そして、真っ直ぐと空へ舞い上がっていく。

空中で防戦一方のなのは。
攻撃をしたくても、向こうの体当たりをプロテクションで逸らすのが精一杯で攻撃の暇すら与えてくれない。
そしてまだ接近戦用の魔法を覚えてはいないので、どうすることもできない。
『マスター。』
そうヤキモキしながら考えていると、レイジングハートが不意に声を出す。
『高速で接近する何かを確認。』
「えっ?」
その声を上げた瞬間。
目の前の向かってくるカラスが下から飛んできた何かに当たって大きく吹き飛ばされる。
いや、正確には"何か"ではなく"誰か"であった。
その誰かに視線を向けると、白と赤の服に身を包んだ彼が。
「大丈夫?なのはちゃん」
キラ・ヤマトが、そこにいた。
「え?え?キラ君?」
突然の事に頭がついていってないなのは。
「うん、そうだよ」
「その格好・・・」
なのははキラのバリアジャケット姿をまじまじと見ていた。
「あ、あははは・・・僕にもまだよくわからないんだけど」
振り返り、カラスへと視線を向けるキラ。
「僕も戦えるってことみたい」
ガシャッと右手のライフルを構えて何発か撃つキラ。
だが、弾は当たることなく空へと消えていく。
「ライフルがダメなら!」
ライフルを腰に装着し、肩にある白い筒のようなものを引き抜く。
すると引き抜かれた筒の先から赤い細長い光が発現する。
そしてカラスへと向かって飛行する。
「これでっ!」
ぐんぐんと迫る両者。サーベルを持つ右手に力に込めるキラ。
そして一気に距離は縮まり、

交差した。

空中でブレーキをかけ、振り向くキラ。
と同時に、カラスの片羽が本体から分離する。
「クキャアアアアアアアアアアッ!!!」
断末魔の悲鳴を上げ、カラスのようなソレは、消滅していく。
そして、消滅した後、一つの青い結晶が中に浮いていた。
近づくキラとなのは。
「ジュエルシード・・・」
「ジュエルシード?」
ぼそっと言ったなのはの一言を復唱し問うキラ。
「ええと・・・私達はコレを封印するのが役目なんだ・・・」
「そうなんだ・・・」
チャキッと杖を構え、両目を閉じるなのは。
足元に魔方陣が展開する。
「リリカルマジカル、ジュエルシード封」
「!!危ないっ!!」
封印の儀式の最中にキラは突如元いた場所のなのはをはさんだ反対側に回り込み、左手のシールドを構える。
構えた瞬間、シールドに何かがぶつかり、消滅する。
衝撃の反動で思わず目をつぶったが、おそるおそる目を開けるキラ。
そして左手を戻し、攻撃してきた方向を見定めると、
一人の少女と一人の青年が空中に浮いていた。
そして青年が口を開く。

「・・・キラ・・・」

「アスラン・・・!」

「あの子・・・昨日の!?」

「・・・・・・」
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