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これは・・・。」
アスランは頭に引っ掛かっていた何かが、掴めた感じがした。
「・・・イージス。」
それは、自分がここに来るまで共に戦っていたMSの名前。
赤いそのブローチの形は、イージスのシールドに酷似していたことにようやくひらめいた。
そして、
『Call is my name.The voice is my master athrun=zala.(私の名を呼んだ声の主はマイマスター、アスラン・ザラと認識しました。)』
そしてブローチから赤い光は溢れてくる。
「な、なんだ!?」
「やはり、そのデバイスはあなたのものだったようです。」
フェイトが冷静に返事を返す。
そして光が段々大きくなってアスランは堪え切れずに目を閉じた、すると次に目を開けると、
「な!?ふ、服が・・・変わってる!?」
赤を基調とした服、両手には黒い篭手のような物がはまっており、左手の甲には先程のブローチを大型化したような盾が装備されている。
そして腰には黒いライフルが装着してあった。
「それがアスランさんのバリアジャケットです。」
「これが・・・。」
「そして、そのデバイスの名前は。」
「・・・イージス。」
皮肉にも、この世界でもこの名前と共になるとはな。とアスランは心の中で自嘲した。

PM4:00
この時刻になると、翠屋の客足は一気に増え始める。
学校帰りの学生が下校途中に来店するからである。
そして、その中で忙しく動き回る人間が一人。
「5番テーブル、サンドイッチとケーキセットです!」
「はいよー!」
「7番さんのオーダーお願い!」
「はいっ!」
たったったっと早く、だが、雰囲気を壊さぬよう小走りでテーブルに行く。
「お待たせしました、ご注文の方はお決まりでしょうか?」
「あ、はい。ホットケーキと、アイスミルクティーで。」
「ホットケーキとアイスミルクティーですね。かしこまりました、少々お待ちくださいませ。」
ウエイターの青年は頭を下げ、奥の厨房へと足早に戻る。
「3番テーブルのお客さんの分出来たから、キラ君お願い!」
「はい!」
彼、キラ・ヤマトは翠屋で立派にウェイターの仕事をしていた。

キラが翠屋で働き始めてまだ三日程しか経っていないが、
予想以上に仕事の飲み込みが早く、わずか三日でほとんどの仕事をマスターしていた。
体の方も問題なく回復し、快調に働いている。
そして、この三日間で妙にお客の数が序々に増えていえる理由は、
「ねーねーさっきのウェイターさん、ちょっとかっこよくなかった?」
「結構美形だったよね~でも私達と同年代くらいに見えたけど・・・。」
「この前まではあんな店員さんいなかったよね。」
「新人さんかな?」
という会話が、来店する女性の間で評判の的にされていた事でもある。
そして来店した女性がその事を広め、一度見てみようと来る。というわけである。

そして閉店時間。
「お疲れ様でした~。」
スタッフのみんながそれぞれ帰宅する。
「お疲れ様です~。」
キラはモップを持って店内の掃除をしようとした。
「キラ君、ちょっといいかな。」
カウンター越しから士郎がキラを呼ぶ。
「はい、何ですか?」
返事をしながらカウンターへ小走りで行く。
「もうすぐなのはの塾が終わる頃だから迎えに行ってやってくれないか?」
「僕がですか?」
「ああ、今日は恭也も美由希も迎えに行けないみたいなんだ。」
「でも僕場所を知らないんですけど・・・。」
「ああ、それなら大丈夫。」
ゴソゴソと引き出しから一枚の紙を出してくる。
それには塾までの行き先が書いてあった。しかも分かりやすく、目印になるものとかも記載されてあった。
「これを使ってくれればいいから。」
「わかりました。」
「帰りはそのまま家に帰ってくれればいいから。閉店作業は俺達でやっておくよ。」
「はい。それじゃ、行ってきます。」

地図を見ながら夜の街を進むキラ。
「えーと、この次の角を曲がって・・・。」
きっちり地図に従って移動する。
「200メートル先・・・あれか。」
目的地が見えてきた。すると建物のドアからぞろぞろと子供達が出てきた。どうやら丁度終わった所なのだろう。
「あ、なのはちゃん。」
出てくる子供達の中になのはの姿を見つける。見ると他の女の子と三人で楽しそうに会話している。
(・・・友達かな。)
すると、キラに気付いたのか、なのはがこっちに近づいてくる。
「あれ?キラ君、どうしたの?」
「なのはちゃんのお迎えに行ってくれって、士郎さんに頼まれたんだ。」
「そうなんだ。」
「なのは、その人誰?」
黄色の髪の女の子がなのはに問いかける。
「あ、アリサちゃん。この人が学校で言ったウチに住み込みで働いてるキラ君だよ。」
「初めまして、キラ・ヤマトです。」
「あ、どうも初めまして、なのはの友達のアリサ・バニングスです。」
「初めまして、月村すずかです。」
黄色の髪と藍色の髪の女の子が丁寧に挨拶してくる。
「えと、キラさん、記憶喪失だって聞いたんですが・・・。」
アリサがキラに聞いてくる。
「・・・うん、まぁそうかな。」
「何か思い出せることって無いんですか?」
次はすずかが聞いてくる。
「・・・ごめん、今はまだ何も。」
そういってキラは首を横に振る。
「そうなんですか・・・。」
「早く戻るといいですね。」
二人の心遣いは嬉しかった。けれども、元々この世界の人間ではないキラにこの世界での記憶などないのだから。
「・・・うん、ありがとう。」
「それじゃ、あたし達はお迎えの車があるので、キラさん、しっかりなのはをエスコートしてあげて下さいね!」
「あ、うん。それはもちろん。」
「それじゃなのはちゃん、また明日ね。」
「うん、アリサちゃん、すずかちゃん、また明日~。」
そういって二人は車に乗って、キラが来た方向と反対側に走っていく。
「それじゃ、帰ろうか。」
「うんっ。」
車を見送った二人は高町家へと帰路に着く。

「あれ?今日はアルフが訓練の相手なのか?」
アスランは目が覚めてから訓練場に行くとそこにはアルフのみがいた。
「ああ、フェイトは別次元だよ。」
「ひょっとしてジュエルシードの反応があったのか?」
「ああ。」
「俺は行かなくていいのか?」
「あんたはここでイージスの最終調整だよ。最終訓練は模擬戦闘。」
そういってアルフの足元に魔方陣が描かれ、アスランとの間に複数の魔方陣が発動する。
「この傀儡兵、まず5体と戦ってもらうよ。」
「わかった。」
「じゃ・・・始め!!」
アルフの声に反応した傀儡兵がそれぞれ動き始める。
「イージス!」
『サーベルシフト、レフト&ライトアームズ』
イージスの声がすると、アスランの両方の篭手から魔力で形成された黄色い刃が発現する。
「はあああああっ!!!」
正面から来る傀儡兵の剣を左手のシールドで受け流して、右手のサーベルで左から右への横一線に薙ぐ。
(まず一体!)
真っ二つになった正面の傀儡兵から両方から来る傀儡兵へと視線を向ける。
(挟み撃ちか!)
避ける暇も無く、両方の剣を両手のサーベルで受け止める。
「く・・・!」
ギギギギ・・・と両方から押し込まれるアスラン。だが、
ふっと両手の力を抜き、バックステップをする。
急に力を抜かれたせいで傀儡兵は衝突し一瞬動きが止まる。
そして腰に下げたライフルを右手に持ち、正面の二体の頭に打ち込む。
(三体!)
数を頭に確認、認識して次のターゲットを視線で追う。
すると、視線で追った傀儡兵はすでにアスランをロックオンしていた。
『ファイア。』
放たれる魔力弾。直線状だったのでアスランは左手のシールドを掲げて防ぐ。
『ファイア。』
続けて放たれる魔力弾。アスランは標的にならないよう、回避に専念する。
そして反対側に回り込み、向こうが振り返る前にシールドを投げ飛ばし顔面を潰す。

振り返り最後の標的に視線を向けるアスラン。
傀儡兵はアスランが向かってくるのを確認すると左手の銃口を向ける。
魔力弾の連射速度は中々速く、こちらがライフルを構えてロック出来るほどの隙もない。
放たれる魔力弾をギリギリの距離で避け、真っ直ぐに突っ込んでいくアスラン。
シールドはさっきの傀儡兵に投げたせいで防御はできない。
(ならば、懐に入り込む!)
除々に距離を詰めるアスラン。弾が効かないのを悟った傀儡兵は左手の銃を捨て、両手に剣を構えアスランへと向かっていく。
先に動いたのは傀儡兵の方だった。両手の剣を大きく振り下ろす。
それを両手のサーベルで受け止めるが、かなりの重心がかかっていた。
「こ・・・の・・・イージス!!」
『サーベルシフト、レフト&ライトレッグス』
アスランの両足の靴の先から手の甲と同じ魔力刃が形成される。
両手の力を込めて、傀儡兵の剣を自分の両端に受け流す。
そして、右足に力を込め、アスランは地面を蹴る。
「こんのおおおおっ!!!」
そのまま右足のサーベルで傀儡兵を真っ二つにし、オーベーヘッドの要領で着地する。
そして両手と両足のサーベルが消え、ふうとアスランが一息つく。
「はい、ご~か~く。」
アルフがパチパチと拍手する。
「で、次は?」
「お?」
「まだあるんだろう。さっき「まず」って言ってたからな。」
「休憩はいらないのかい?」
アスランはさっき投げたシールドを拾い上げ、左手に装着する。
「構わない、続けよう。」
「わかったよ・・・それじゃ、最後はこいつだ!」

アルフは一際大きな魔方陣を描き、そこから出てくる傀儡兵。
だが、先程まで戦っていた傀儡兵とは大きさが違う、約数倍以上の大きさだ。
「こいつはちょっと手強いよ!」
大きさの割にはそこそこ素早い速度でアスランに接近する傀儡兵。
だが、動きのモーションが大きいので見切った動きで回避するアスラン。
「デカイ割にはそこそこ早いな。」
そして飛翔し、後ろに回りこみ、ライフルを構えて、トリガーを引く。
銃口から放たれる魔力弾が傀儡兵に当たって終わり・・・のはずが。
「弾かれた!?」
確かに命中はしたのだが、貫通どころか傷一つついていなかった。
「そう、こいつは装甲が並の奴とはケタ違いに硬いんだ。」
アルフが淡々と言う。
「・・・だったら、イージス!!」
『サーベルシフト、レフト&ライトアームズ』
両手に魔力刃を展開し、向かってくる攻撃を回避し、右手の刃を胴体へと向けたが、
刃は斬れる事なく、右手は止まってしまった。
「・・・これでもだめか。」
ならば。
近接していた距離を大幅にとり、アスランは空中で魔方陣を展開する。
「イージス!」
『スキュラ、展開。』
アスランが正面に掲げた右手の前に魔方陣が展開、魔力が凝縮する。その先には・・・傀儡兵。
「はぁぁぁぁっ!!!」
『バースト。』
ドオンッ!といった擬音の後、高密度の魔力波が傀儡兵の胴体を貫通する。
そして傀儡兵が沈黙したのを確認すると、着地し、バリアジャケットを解除する。
「これでいいのか?」
「・・・文句無し、合格だよ。」
アルフが満足そうに言う。
これで、フェイトも喜ぶだろう。と思っていた。
そして、あの女も・・・と。

そして日曜日の朝。
高町家、リビングにて。
「おはよう、なのはちゃん。」
階段から降りてきたなのはに朝の挨拶をするキラ。
「ふぁ~キラくん・・・おふぁよぉ~。」
返事はするものの、まだ寝ぼけ眼ななのは。
「あはは、凄い寝癖だよ。」
見ると、色々な方向へ髪が曲がっていた。
「ふぇ~、洗面所にいってきます~。」
たったったっと洗面所に向かうなのは。
「ユーノも、ご飯だよ~。」
キラが二階に向かって声を出すと、その声に反応してユーノが降りてくる。
そして用意されたユーノ専用の器の中のご飯を食べる。
「・・・そういえば、君が僕を見つけてくれたんだったよね。」
なのはから後で聞いた話で、キラを最初に見つけたのはユーノだという。
「・・・ありがとう。」
キラは微笑みながらユーノの頭を撫でる。

「それじゃ今日はキラ君、お休みなんだ。」
「うん、そうみたいなんだけど・・・。」
お休みと言われても、やる事が皆無に等しい。
この街の事はまだよくわからないし、友達もいない。
「これといってすることもないから、散歩でもしようかな。」
「散歩って・・・キラ君おじいちゃんみたい。」
「おじっ・・・。」
なのはの言葉に少しショックを受けたようだ。
(16歳で・・・おじいちゃん・・・。)
「あ、それじゃキラ君も一緒に行かない?」
「え、何処に?」
「今日、お昼からすずかちゃんの家にお呼ばれしてるんだけど、キラ君も一緒に行こうよ。」
「すずかちゃんって、この間の塾の時に一緒にいた友達?」
「うん、そうだよ。」
キラはこの間迎えに言った時に出会ったなのはの友達を思い出した。
「で、でも僕なんかが行っても邪魔になるだけだよ・・・。」
「大丈夫だよ、元々その時に紹介しようと思っていたんだし。」
「い、いいのかな・・・。」
「私、電話で聞いてみるね~。」
たったったっと電話機の方へ向かうなのは。
そして5分後。
「OKだって~。」
「いいんだ・・・。」
「それじゃ準備しててね~。」

そしてお昼過ぎにキラとなのははバスで月村家へと向かった。
本当ならなのはの兄恭也も一緒に行くはずだったのだが、
高町家を出る前に、すずかの姉の忍が迎えに来て、二人でどこかに行ってしまった。
なので、二人で向かうことになってしまった。
そうこうしてる間にバスは目的地に着き、降りて少し歩くと月村家へと到着する。
「・・・大きい、家、だね。」
目の前に広がる豪邸に唖然とするキラ。
「何度見ても凄いよね~。」
もう何度か見て慣れているなのはでもやはりこの大きさはすごいんだろう。
ピンポーンとインターホンを押す。
すると、中から一人の女性が出てきた。
「なのはお嬢様、いらっしゃいませ。」
ニコッと笑う、メイドの格好をした女性は挨拶を交わす。
(メ、メイドさん・・・。)
キラは心の中で驚きを隠せなかった。何せ生まれてこの方メイドなんて始めて見たのだから。
「こんにちわ~。」
「なのはお嬢様、こちらの方は・・・?」
「電話で言ってたキラ・ヤマト君です。」
「は、初めまして、キラ・ヤマトです。この度は、お招き頂きありがとうございます。」
緊張しているのか若干声が上ずっているキラ。
「初めまして、キラ様。私はこの月村家でメイド長をしております、ノエルと申します。」
「あ、はい。よろしくお願いします、ノエルさん。」
「それではこちらへどうぞ。」
ノエルに案内された先には一つのテーブルがあり、先客がいた。
「なのはちゃん、キラさん。」
「すずかちゃん。」
「なのはちゃん、いらっしゃい。」
すずかの向こうにいた声の主に視線を送るキラ。
するとそこにはもう一人メイドさんがいた。
そして視線が交差する。
「えと、そちらの方は・・・?」
「あ、えと・・・。」
「ほら、この間言った、なのはちゃん家でお世話になってるキラさんだよ。」
「初めまして、キラ・ヤマトです。」
「あ、どうも。初めまして、私はこの月村家ですずかちゃんの専属メイドをしている、ファリンといいます。」
「それではお茶をご用意致します。なのはお嬢様は何がよろしいですか?」
「えーと・・・おまかせします。」
「キラ様は?」
「え?あ、じゃあ僕もお任せで・・・。」
「かしこまりました。ファリン。」
「はい、了解しました、お姉さま。」
返事と共に敬礼のようなポージングをするファリン。そして部屋を出て行くノエルとファリン。

テーブルの前にある空席に座るなのはとキラ。
「なのは、キラさん、おはようございます。」
「おはよ~。」
「おはよう、えと、アリサちゃん、でよかったかな?」
「はい。あたしの名前覚えててくれてたんですね。」
「まぁ、この間会ったばかりだし。すずかちゃんも今日はありがとう。」
「あ、いえそんな・・・。」
「あれから、何か思い出せそうですか?」
アリサが聞いてくるが、その質問にはもう答えは一つしか出ない。
「・・・ごめん、まだ何も。」
「そーですか・・・。」
「そういえば、今は翠屋で住み込みで働いているんですよね?」
すずかが暗くなりそうな流れを断ち切るかのごとく、質問を変える。
「うん、今日はお休みだけど、ウェイターをやらせてもらってるよ。」
「お仕事どうですか?」
「最初は大変だったけど、慣れれば何とか。最初はレジの打ち方とかメニューの略し方とかが覚えるのが大変だったかな。」
「へ~。」
アリサが興味深々な顔で話を聞いている。
「そういえば、今日は誘ってくれてありがとう。」
なのはがアリサとすずかの両方に視線を向けて言う。
「こっちこそ、来てくれてありがとう。」
「・・・今日は、元気そうね。」
「えっ?」
アリサの言葉に驚くなのは。
「・・・なのはちゃん、最近少し元気なかったから・・・もし何か心配事があるのなら、話してくれないかなって、二人で話してたんだよ。」
すずかの言葉にさらに驚くなのは。
「すずかちゃん・・・アリサちゃん・・・。」
なのはが視線をすずかからアリサへ向けると、アリサは微笑みながら視線を返した。
それを見ていたキラは、友達が友達を心配するという当たり前な事に喜びを感じていた。
「・・・友達・・・か。」
友達という言葉はキラにひどく重く圧し掛かる。

「きゅい~~~!!」「ふぇ?」
悲鳴の方向を見ると、ユーノが一匹の猫に追いかけられていた。
「きゅ、きゅ、きゅ、きゅ、きゅ~~~!!」「にゃ、にゃ、にゃ、にゃ、にゃ~~~!!」
「あ、ユーノ君!?」「あ、ダメだよ!」
なのはとすずかの言葉は届くことなく、二匹の追いかけあいは止まらない。
そして、そんな時に。
「は~いお待たせしました~。イチゴミルクティーとクリームチーズクッキーで~す。」
ドアの向こうからファリンが帰ってきた。両手にお盆を持って。
そしてその足元で、二匹の攻防戦が始まる。
「きゅ、きゅ、きゅ、きゅ、きゅ~~~!!」「にゃ、にゃ、にゃ、にゃ、にゃ~~~!!」
「あわ、うわ、あわわわ、うわわわ。」
最初はバランスを保っていたファリンだったが、次第にくるくる回る内に・・・。
「わわわわ~~~~~。」
目を回してしまい、ついには倒れそうになり、
「ファリン、危ない!!」
すずかの声も空しく、ファリンの体が後ろに倒れそうになった。
ガシャンと響く音。目を瞑る三人。だが、
「・・・ギリギリセーフ、かな。」
三人が次に目を開けると、ファリンの体を支えながら、片手でお盆を持っているキラの姿があった。
おそらく瞬時にそこまで駆け出して、左手でファリンの体を支えつつ、右手でお盆の中心を手の平で乗せていたのだろう。
「・・・ふぇ?あ、ああああ、す、すみません!!キラ様~~!!」
ようやく正気に戻り、キラから離れるファリン。
「・・・あなたは何をやっているのですか、ファリン。」
後ろから冷たい声で言うノエル。
「それより、大丈夫ですか?ファリンさん。」
「え?あ、はい。大丈夫です。すみません、ありがとうございます、キラ様。」
ペコと頭を下げるファリン。
「あ、いや、とっさに体が動いただけなので。」
「ありがとうございます、キラ様。」
後ろから声をかけるノエル。
「あ、いや、そんな。」
お礼を双方から言われて照れるキラ。

「でも、すごかったよね~キラさん。」
「うん。」
アリサとすずかが驚きと羨望の眼差しでキラを見つめる。
「こちらは、キラ様の分のハーブティーになります。」
「ありがとうございます、ノエルさん。」
「・・・キラ様は何かスポーツでもされていたのでしょうか?」
「え?」
「いえ、先程の動き。かなり無駄の無い動きでしたので、何か運動でもされていたのかと・・・。」
ノエルが冷静に先程のキラの行動を分析していた。
「・・・すいません、それもまだ思い出せないんです。」
キラはこの場は嘘をついてごまかす事にした。
「も、申し訳ございません、私とした事が・・・。」
ノエルが申し訳なさそうに頭を下げる。
「いえ、ノエルさんは悪くないですよ。ですから、頭を上げてください。」
「ですが・・・。」
「それに、記憶が戻る手掛かりになるかもしれません。そうすると僕がノエルさんにお礼を言わなくちゃいけないですよね。」
「キラ様・・・。」
「ありがとうございます、ノエルさん。」
ニコッと微笑むキラ。
「・・・ありがとうございます。キラ様。」
再度、頭を下げて顔を上げるノエル。
とりあえず何とかこの場をしのぐことが出来たキラ。
(このまま、嘘をつき続けるのは、もう無理だな・・・。)
だが、本当の事を言ったところで誰も信じてくれるわけも無い。
自分がこの世界の人間じゃなく、別の世界の人間だなどと・・・。

「あれ?そういえばユーノ君は?」
なのはがキョロキョロと部屋の中を見回すが、何処にもいない。
「もしかして、まだ追いかけられてるんじゃないの?」
アリサがティーカップを置く。
「・・・ちょ、ちょっと探してくるね。」
カタと椅子から立ち上がろうとするなのは。
「私達も探そうか?」
同じように椅子から立ち上がろうとするすずか。
「大丈夫。すぐに戻ってくるから待ってて。」
そういってなのはは部屋から小走りで出て行く。

瞬間。

「!!」
(なのは!)
突如ユーノから念話が頭に直接響く。
(ユーノ君、今のって・・・。)
(うん。ジュエルシードの反応だ。屋敷の外まで出てきて!)
(わかった!)
なのはは屋敷の外を目指して走り出す。だが、その感覚に気付いた者は一人ではなかった。
(何だろう、今の不思議な感覚は・・・?)

屋敷の扉を開けて外に飛び出すなのは。
(なのは、こっち!)
外にいたユーノはなのはを先導するように走り出す。
(反応があったのはこっちの林の方だよ!)
たったったっと林の方へ向かうなのはとユーノ。
(この辺のはずなんだけど・・・ここじゃ人目が・・・結界を作らなきゃ。)
「結界?」
「最初に会った時と同じ空間だよ。魔法効果が生じてる空間と、通常空間との時間進行をずらすの。
 僕も少しは・・・得意な魔法。」
ユーノは目を閉じ、目の前に魔方陣を展開する。
「あまり広い空間は引き取れないけど、この屋敷付近くらいなら、なんとか!」
魔方陣が輝きだし、空間結界が発動する。目の前に光が生じ、その光が消えると・・・。

「にゃ~お。」

「・・・・・・へ?」
「・・・・・・お。」

なのはとユーノは凍結したように凍りついた。
その光の中から出てきたのは、先程までユーノを追い回していた猫なのだから。
「にゃ~お。」
ずん、ずん、と前進する猫。もはやその足音はすでに象クラスである。
「あ、あ・・・あ、あれは・・・?」
あいた口が塞がらない状態のまま言葉を発するなのは。
「た、多分、あの猫の大きくなりたいっていう思いが正しく叶えられたんじゃないのかなぁ・・・。」
「そ、そっかぁ・・・。」
「だけど、このままじゃ危険だから、元に戻さないと。」
「そ、そうだね。流石にあのサイズだと、すずかちゃんも困っちゃうだろうし。」
いや、困るとかそういう問題でもないような気がするんですが。
「・・・とりあえず襲ってくる様子もないみたいだし、ささっと封印を・・・。」
懐に手を入れて、首に下げてあるレイジングハートを取り出す。
「じゃ、レイジングハート。」ビュウン!!
なのはが言葉を発している最中、後方より黄色の魔力弾が眼前の猫に命中する。
「にゃああ・・・。」
はっと後ろを振り返るなのは。
その視線の先には、一人の少女が電柱の上で立っていた。
「バルディッシュ。フォトンランサー、連撃。」
『フォトンランサー、フルオートファイア。』
少女が無表情に言葉を放つと、少女の持っている黒い斧からも電子音のような声が発せられ、
斧の先に雷撃のような塊が発生し、そこから無数の光の矢が猫目掛けて発射される。
「にゃおお・・・うにゃああ・・・。」
全段命中。猫は溜まらず怯んでしまう。
「な!?魔法の光・・・そんな・・・。」
少女の魔法に驚きを隠せないユーノ。

「レイジングハート、お願い!!」
『Stand by ready setup.』
なのははバリアジャケットを装着し、レイジングハートもデバイスモードへと変化する。
『フライヤーフォン。』
なのはの両足に桃色の小さな翼が生える。
そして地面を蹴り、猫の元へ飛ぶ。
後方より先程の魔法矢が無数に向かってくる。
振り返るなのは。レイジングハートを正面に構え、
『プロテクション。』
防御魔法を展開し、矢を消滅させていく。
「?・・・魔導師。」
少女は特に驚いた様子もなく、ただ無表情に矢を放つ。
だが、先程と違って若干狙いをずらし、猫の足元を狙った。
足元を狙われた猫はバランスを崩し、横転する。
そして、対峙する二人の魔術師の少女。
「同系の魔導師・・・ロストロギアの探索者か。」
「!!」
「間違いない・・・僕と同じ世界の住人・・・そしてこの子、ジュエルシードの正体を・・・?」
チラと少女が視線をレイジングハートへと向ける。
「バルディッシュと同様、インテリジェントデバイス・・・。」
そしてなのはも視線を上げ、少女の持つデバイスへと視線を向ける。
「バル、ディッシュ・・・?」
「ロストロギア、ジュエルシード。」
『サイズフォーム、セットアップ。』
デバイスの声の後、バルディッシュの先端から魔力刃が形成され、鎌のような状態へと変化し、両手に構える少女。
「申し訳ないけど、頂いて行きます。」
そして、少女は目の前の敵を排除する為に向かっていく。

キラは困惑していた。
たまたまお手洗いを借りている時に、感じた奇妙な感覚。
「・・・これは・・・?」
周りの空間との認識の違い。一体何が起きているのだろうか。
とりあえず外に出てみよう。そう思い玄関をくぐるキラ。

「これがこっちの世界での部屋か・・・。」
アスランは訓練の後、アルフと共に探索世界に来ていた。
「まあ最終訓練も問題なくクリアしたから、あんたもこっちで暮らす事になるだろうね。」
「そうか。・・・ところで、フェイトはまだ帰ってこないのか?」
「まあ、問題ないとは思うけどね。何ていったってあたしのご主人様だし♪」
「はは・・・まあ何もないとは思うが・・・一応向かえに行って来るよ。」
「ええ?大丈夫かい?」
「ああ、この世界に俺を知っている奴などいない。・・・それに。」
「?」
「俺がこっちにきた事をいきなり教えてフェイトを驚かせてやりたいしな。」
そういってアスランはバリアジャケットを装着し、ドアをくぐる。

なのはと少女の戦いはすでに終わっていた。
実力の差があまりにもあり過ぎたのだ。
なのはは確かに素質と魔力量は天才的なのだが、何分実践経験が少ない。
それに初めての魔導師同士の戦いは、どうみてもなのはに不利だ。
それに比べて、あの少女は戦い慣れしているのだろう。どうみてもほとんど本気すら出していない。
落下してくるなのはを浮遊魔法で何とかギリギリ助ける事が出来たユーノだったが、
ジュエルシードを回収した少女がこちらを見ている。
(せめてなのはだけでも・・・。)と思っていたが、今の自分に打つ手などない。
どうする・・・?と思考を巡らせていたユーノだったが。
少女は振り返り、歩き始めた。
(見逃してくれたのか・・・?)ホッと一息ついたユーノ。
だが、
林の向こうから人が出てくる。

「アスランさん・・・!」
「最終訓練は終了したぞ、フェイト。これからは俺もジュエルシードの探索に協力させてもらうからな。」
林の向こうから出てきた人物はどうやら少女の味方のようであった。
状況一転、ユーノは気を引き締め直した。
「フェイト、あの子は・・・?」
アスランと呼ばれた青年が気絶し横たわっているなのはに視線を向ける。
「私達と同じ魔導師。ジュエルシードの探索者みたい。」
「・・・殺したのか?」
アスランの問いにフェイトは首を横に振る。
「気絶しているだけ。怪我はしているかもしれない。」
その言葉を聞いてアスランは安心した。
「それより、早くここから離れよう。」
「ああ、そうだな。」

キラは外に出て、林の中を入っていく。
まるで何かに吸い寄せられるように・・・。
「・・・・・・あれ?」
何かが、キラの視界に入った。
それを認識するまで数瞬必要としたが、それを頭が認識した瞬間、体が駆け出していた。

「・・・誰か来る!」
「ひとまず隠れよう!」
さっと林の影に隠れるフェイトとアスラン。

(・・・え?)
林の奥から来た人物に驚きを隠せないユーノ。
「・・・なのはちゃん!?」
走ってきたその人は、キラ・ヤマトだったのだ。
(どうしてこの人が結界内で・・・。)
ユーノが驚いているその横で、キラはなのはを抱き起こす。
「なのはちゃん!なのはちゃん!!」
呼吸の確認、心臓の動作、外見の外傷等確認して、気絶しているだけだと分かり、安堵する。
「よかった・・・でも、どうしてこんなところで気絶してるんだ・・・それにこの格好・・・。」
キラが思考していたその瞬間。
背後から迫る気配に体が反応し、左へとステップする。
すると自分がいた場所に背後から誰かが現れ、キラは思わずその人物に向かって殴りかかっていた。
だが、キラの攻撃もあっさりバックステップでかわされる。
かわされて体勢を崩しそうになったが、ちゃんと踏み出した足を地につけ、かわした奴を目で追う。

そして、お互いの視線が、お互いの顔を確認、認識する。

「・・・ア、ス、ラン・・・?」

「・・・キ、ラ・・・?」
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