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第17話「どうしてあんたがここにいる!?」

シャトルに迫っていたMSの前に立ち塞がったフリーダムは、その大火力でバビとディンの大軍を次々と叩き落していく。
キラ・ヤマトの卓越した能力とフリーダムの性能を十二分に生かしたことによって、放たれたどの攻撃もコックピットに直撃することはなかった。
しかし、フリーダムの攻撃を受けた何体ものMSはそのまま地上に落下し、爆発する。
そしてシャトルを追撃する部隊の戦闘能力を奪ったフリーダムは続いて、基地の滑走路や格納庫へ攻撃を加えていく。

基地が追撃能力を失った頃、ハイネのグフ、インパルス、ザク、GXがそこに到着する。
「くそ、フリーダムの野郎、好き勝手やりやがって」
「なにせ名前がフリーダムだからな。とはいえ不愉快極まりないが」
「お前ら無駄口はその辺にしとけよ?俺が囮になるから、レイは俺のフォローを頼む。
 シンはその隙をついて奴を仕留めろ。ガロードはアスランが来るまで、負傷者達の救助を頼めるか?」
「わかった、まかしとけ!」
「了解しました」
「了解!」

ハイネのグフが、スレイヤーウィップをフリーダムに向けて放つ。
それに対して、フリーダムはそれをシールドで振り払って、サーベルを引き抜き、斬りつける。
だが、そのフリーダムの眼前を地上のザクファントムから放たれたビームが通り過ぎた。

「うおおおおお!」

目の前を通過したビームに驚き、やや後ろに下がったフリーダムに今度はインパルスがサーベルを引き抜いて斬りつけた。
サーベル同士の鍔迫り合いが始まり、プラズマが迸る。
両機の動きが一時的に止まり、そこで手の空いたハイネが再びスレイヤーウィップを放つ。
フリーダムは、それを何とかシールドで弾くと、機体のパワーの差を生かしてインパルスを弾き飛ばし、蹴りを入れる。
インパルスもそれをシールドでガードするが、蹴りの勢いを殺せず、吹き飛ばされる。
だが、そこにさらにハイネがヒートソードで斬りつける。

「くそ、しつこい…これじゃキリがない!」

キラは慣れない連携攻撃に思わぬ苦戦を強いられていた。
3機とバラバラに戦えば、機体のパワー、スピードを始めとする各能力も、パイロットとしての能力も、確実にキラの方が勝っている。
だが、各機が連携して戦えばその差は覆され得る。
まずハイネが仕掛けて、それを潰そうとするとレイの援護射撃が飛んでくる。
それに怯めばインパルスが容赦なく攻撃を仕掛けてくるし、モタモタしているとまたハイネのグフがさらに攻撃を加えてくる。
これが延々と繰り返されることで、キラの精神力は徐々に削り取られていく。

その頃、アスランはというと、共に基地に着いたばかりのミーアを安全なところへ案内して、アークエンジェルに搭載されているセイバーの下へと急ぐ。
そこでは既に発進の準備を終えたルナマリアのザクが発進シークエンスに入っていた。

「あ~ら隊長、今頃来るなんていい身分ですね。今までラクス様とお楽しみですか?」
「ルナマリア!あれは誤解だ、俺は何も…」
「五回も!朝から随分と盛んですこと…ったく」
「いい加減にしろ!」
「何ですか、私を殴りますか?それなら後でご自由に!ルナマリア・ホーク、ザク出るわよ!」

不機嫌極まりないルナマリアのザクがアークエンジェルから発進して行く。
今回もウィザードはガナーウィザードであった。
彼女は射撃が得意でないことを自覚しているはずなのであるが、どういう訳か選ぶのはいつもガナーの方である。

ルナマリアが発進して行くのを見ていたアスランは頭を抱えていた。
朝、目を覚ませば、パンツこそ履いていたものの、ピンク色した物体が横にいた上に、そこへ運悪くやってきたルナマリアにはあらぬ誤解をさせてしまった。
その上、基地への送迎を付き合わされるわ、車の中ではベタベタされるわ、
挙句に、基地に攻撃を仕掛けてきたのは、最愛のカガリを攫って行方をくらませていたキラ・ヤマトのフリーダムであった。

「キラ、何を考えてるんだ…」

その日、アスランの身に起こった数々の災厄は彼のキャパシティを既に超えていた。
目を覚ました次の瞬間、数十本の毛髪が落ちていくのを感じた。
さらにルナマリアが現れた瞬間にさらに数十本、そして車内でのストレスで数十本が、とどめと言わんばかりにフリーダム来襲をしって百本以上は抜けたはずだ。
きっと戦闘を終えてメットの中を見たら、恐ろしいことになっているだろう。
そんなことを思いつつ、アスランは発進準備を進めていく。

幾度となくフリーダムと斬り結んでラチがあかないと感じたシンは攻め方を変えることにした。
シンはインパルスのサーベルを正面に向けて構えさせてフリーダムへ向かっていく。
それをキラは機体を上昇させて回避する。そこにレイがビームを放ち、さらにフリーダムに回避運動を取らせる。
だが、それはレイの作戦通りであった。

「もらったぜ!」

フリーダムの背後からビームソードを構えたハイネのグフが斬りかかっていた。
ハイネの位置を把握していたレイは、シンの攻撃を回避したフリーダムが回避運動を取ることでハイネの間合いに入る角度から、ビームを放ったのである。
それはヴェステンフルス小隊のコンビネーションがフリーダムに捕らえようとした瞬間であった。

しかしその時、ハイネのグフの目前を高エネルギーを帯びたビーム、オルトロスが飛び去っていった。

「な、なんだと!?」

戦場に到着したルナマリアのザクから放たれた攻撃である。
ハイネ達が連携攻撃をしていたことなど露知らず、ルナマリアが自分の腕を過信して放たれた攻撃は、ハイネに、フリーダムの目の前で隙を作らせてしまった。
そしてその隙はフリーダムに乗るキラ・ヤマトにとっては十分過ぎるチャンスであった。

「今だ!」

フリーダムが手にしたサーベルがグフの首を跳ねて、さらに怯んだところを両肩のバラエーナで両腕を吹き飛ばし、止めとばかりに蹴りを入れて、地上へと叩き落す。

「しまっ…がああああぁぁ・・・」
「ヴェステンフルス隊長!?」
グフが重力に引かれて地上に叩きつけられたのを見て、ルナマリアのザクの動きが完全に止まってしまう。
そこにフリーダムの両腰のクスフィアスから放たれたレールガンが、ザクの上半身を直撃する。

「きゃあああぁぁ…!」
「あんたはああああ!!!」

ルナマリアのザクに小さな爆発が起こると同時にシンがフリーダムに向かっていった。
だがそれに対してキラはSEEDを発動させ、正面からインパルスに向かっていく。
フリーダムは、インパルスの突きをギリギリのところでではあるが、確実にそれを回避してインパルスの腕を切り落とし、手にしているシールドの突起部分でインパルスの頭部を殴りつけてメインカメラを破壊すると、さらにサーベルで首を跳ね飛ばしてハイネ同様に蹴りでインパルスを地上へ叩き落した。

「くっそおおおおおおお!!!!!!!!!」

戦場にシンの無念の叫びが響き渡り、それをBGMにその場をフリーダムは離れていこうとする。
地上へ落下していくシンは、突然下から受け止められる感触を感じる。
その振り返った先にいたのはGXであった。

「おいシン、大丈夫か!?」
「ガロード…くそ!くそ!くっそお!フリーダムウウウ…!!!」
「まだ姿勢制御はなんとかできるよな!あとは俺がやる!」

ガロードはそう言って、インパルスからそっと手を離すと、背中のリフレクターであった部分を輝かせてGXがフリーダムに向かっていった。
GXは、ディバイダーを展開させて、フリーダムにビームの雨を降らせる。
それをフリーダムは容易に回避するが、フリーダムが回避運動を取っている間に
GXはハイパービームソードを引き抜いて斬りつける。
だが、フリーダムもサーベルで応戦し、鍔迫り合いが始まる。
両機のパワーはほぼ互角であり、キラもインパルスを弾き飛ばしたときのようにはいかない。

「よう、やっと見つけたぜ、フリーダムよお?」
「その声…ダブルエックスの!?」
「覚えておいてくれて光栄だぜ。お前、カガリさんをどこに連れてきやがった!?」
「そんなの君には関係ないだろ!」
「こちとらカガリさんの奪還を頼まれてるんでな、そういう訳にはいかないんだよ!」
「カガリを!?一体、誰に?」
「そんなの、はい○○です、だなんて言う訳ねえだろうが!」

両機が少し距離を離し、GXが再び切りかかっていった。
フリーダムはそれを受け止めるが、サーベルの出力の違いのため、一旦、さらに距離を置く。
そして、鍔迫り合いになり、サーベルが出力負けを起こさないように、手数でGXを攻めていく。
SEEDの能力を発動させたキラの全力の攻撃がガロードに襲いかかる。
対するGXもそれを回避したり、ディバイダーでフリーダムの腕を押さえて斬撃を止める。
そこでフリーダムは至近距離でバラエーナとクスフィアスをGXに向けた。

「同じような単純な手が何度も通用するかぁ!」

だがGXは思いっきりフリーダムを蹴り飛ばしてディバイダーのビームを放ち、
対するフリーダムはバラエーナとクスフィアスを発射する。
すると両機の攻撃がぶつかり合い、やがて大きな爆発が起こってGX、フリーダムとも大きく後ろに吹き飛ばされた。

辺りを大量の黒い煙が覆いつくし、視界がほぼゼロとなる。
「くそ、どこいきやがった!?」

ガロードが辺りを振り返るが、周囲の視界は爆発により発生した煙で覆われている。
そして黒い煙が晴れたときにはフリーダムの姿ははるか遠方にあった。

「逃げられちまったか…」

するとそのときガロードの下にハイネから通信が入る。
「おい、ガロード、無事か?」
「ああなんとかな。お前こそ大丈夫なのかよ」
「足がやられた…たぶん肋骨も逝っちまってる…まあなんとか命には別状はなさそうだがな。
 とりあえずで悪いんだが、シンや俺の救助を頼めるか?ちょっと自力ではどうにもなりそうにない」

ガロードとレイがハイネやシンの救助を行なっていると、セイバーのアスランが遅れてそこに到着する。
「ガロード、フリーダムはどうなった?」
「アスラン、遅えぞ!今まで何してたんだよ!」
「す、すまない…」
「フリーダムはもう逃げちまったよ、ハイネとシン、ルナマリアがやられた」
「そうか…」
「まったくあんたの知り合いは何考えてるんすか、ザラ隊長?」
「それは自分も一度聞きたいところでした。実際にどうなのですか、ザラ隊長?
 ヤキンの後、最近まで奴とオーブにいたのでしょう?」

シンとレイがアスランを問いただす。
シンとしては憎き家族の仇に完膚なきまでにやられてイライラしていると同時に、オーブの式典に乱入し、今回はザフトの基地を突如襲撃してくるという到底まともとはいえない行動をとる人間が一体何を考えているのか少しは知りたかったというのがあったし、レイとしては、未だに信用ならないアスラン・ザラが、かつてザフトを裏切って行動を共にしたキラ・ヤマトの行動についてどのように考えているかを、自分が知りたかったのと同時に、アスランが最終的にデュランダルにあだなす存在となるかを判断するために、アスランのスタンスを確認しておきたかったのである。

「あいつは…でもきっと世界のことを想って…」
「ハァ?」
「あなたは何を言っているんですか?どのような理由があれ、キラ・ヤマトがザフトの基地に突如として襲撃をかけ、強奪されたシャトルを追撃した部隊を壊滅させ、基地施設を破壊したんです。
 世界のため、だなどという漠然としたことを言っても説明になっていません」
「お前ら!今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ!さっきから救助活動を続けてるガロードを見習え!」
「…すんません」
「失礼しました」

ハイネに謝罪した2人がガロードの方へ向かっていくが、ハイネは残されたアスランにも厳しい視線を向ける。
「なあアスラン、俺達は仲間だぜ?お前の事情もわからなくはないが、
 少なくとも今のフリーダムはザフトに攻撃してきている敵だ。
 シンにしたってレイにしたって、お前がそんなんじゃ仲間を信じることはできない。
 今のお前はザフトなんだぜ?」
「それは…わかっています…」
「議長はお前を信じたからこそ、お前を赤の、しかもフェイスとしてザフトに戻したんだ。そこんとこ、忘れんなよ?
 緑に降格させられたディアッカなんて気の毒だぜ?挙句に女に振られちまったしな」
「…ああ、肝に命じておくよ…」

ハイネはアスランを信じていた…いや信じようとしていた。
ヤキンの後、オーブで隠れるように住んでいたが、ユニウスセブン落下未遂事件を通じて、わざわざ、ザフトに復帰することを決意した、アスラン・ザラという男を信用したかった。
だが、今、目の前でアスランが取ったフリーダムに関する態度は、ハイネも見逃すことはできなかった。

他方で、アスランは余計に混乱していた。
ユウナから聞かされたオーブでの孤児院襲撃事件を契機に、キラ・ヤマトがオーブを出たこと、連合との同盟締結を発表すると思われた式典でのカガリの拉致までを理解することはできても、未だにカガリを解放せず、あまつさえザフト軍基地を襲撃してシャトルを強奪したことをどう考えればいいかまではわからずにいた。
オーブでのミネルバ撃沈及びディオキア基地襲撃は明らかなザフトへの敵対行為であるのだが、アスランの頭の中では、何か理由があるはずだ、というところで思考が停止している。
混乱の末、キラ・ヤマト達の行為の意味するところを考えることができなかったのである。

結局、フリーダムの攻撃により基地機能が著しく低下した結果、防衛のためにアークエンジェルの出航が数日先となった。
幸い、ルナマリアは全治数週間の怪我で済んだが、ザクは事実上スクラップ寸前となっていた。
他方、ハイネのグフの損傷自体は大きくなかったものの、ハイネ自身の怪我は全治数ヶ月と大きく、前線から離脱し、入院を余儀なくされた。
結果として、ミネルバからハイネが離脱することになったが、ハイネの強い推薦により、レイを小隊長として、シンとガロードを配属したバレル小隊がヴェステンフルス小隊に変わって編成されることになった。

翌日、シンは、ハイネを見舞った帰りに、バイクで海岸線沿いを走っていた。
フリーダムに完膚なきまでに倒され、ハイネは病院送り、さらにアスランの煮え切らない態度、シンには、自分にとって面白くないことが続きすぎていた。
特に、フリーダムに敗れた事実はシンに極めて重くのしかかっていた。
ハイネやレイの力を借りてあと一歩というところまでフリーダムを追い詰めたものの、ハイネが落とされ、1対1になった途端にあっさり自分も落とされた。
しかも腕と首を跳ねられただけ、相手は決してコックピットを狙ってこなかった。
シンにとっては屈辱以外の何物でもなかった。
そのため、気晴らしを兼ねてバイクで外に繰り出していたのである。

シンがバイクを止めて海を眺めているとどこからか歌声が聞こえてくる。
最近、どこか心がささくれだっていたシンにとって、その歌声は、シンの心を静かに包み込むような感じがした。
歌声のする方を見ると、岬の先で、金色の髪の少女がくるくると回りながら踊っていた。
ヒラヒラとした服が踊りと風になびき、その瞳はキラキラと輝いていた。
だが、踊っているうちに彼女は、突然海へと落下してしまう。

「ええぇぇ!?落ちたぁ!?」

やばい、驚き方が副長そっくりだと内心とても失礼なことを思いながら、少女が海に落ちた方へ向かっていく。
崖から下を覗き込むと、先ほど歌っていた少女が海で溺れている。どうやら泳げないらしい。
とはいえ、このまま放っておくこともできないので、シンは上着を抜き捨て、意を決して海へ飛び込んだ。
これがシン・アスカと、ファントムペインのエクステンデットであるステラ・ルーシェとの出会いであった。

シンは、溺れて暴れるステラをなんとか岸に引き上げるが、溺れた恐怖のあまり混乱してしまっているステラは海のほうへと再び歩き出してしまう。
ステラはその力を遺憾なく発揮して、引きとめようとするシンをてこずらせてしまう。

「死ぬ気か、このバカ!」

だが、シンが暴れるステラにやや腹を立てながら放った一言は、ステラをさらなる混乱へと陥らせる。
ステラは凄まじい怪力で両腕を振り回し、全身を揺らしてシンの制止を振り払おうとする。
あまりの状況に、シンは自分がコーディネーターで軍人であるのに、
ステラを押さえつけることができないのが奇妙であるということに気付けずにいた。

ブロックワード、ステラ達エクステンデットを管理するために彼女達に付けた枷。
シンは、「死」という言葉がステラのブロックワードであることを知る由もなく、ただ目の前で異常なほどの恐怖感を顔に浮かべているステラを見て、
彼女も戦争に巻き込まれていいようのない恐怖を味わってしまい、その恐怖を思い出してこのように激しい恐怖感に襲われているのであると考えた。

戦争の中で、大切な家族を失ったシンは、自分のような人間が1人でも生まれることを防ぎ、かつてのような辛い想いを2度と味わうことがないように、
罪のない人間が自分のような辛い思いをすることがないようにできるため力を欲したのがシンである。
それ故、目の前で恐怖に駆られているステラを放っておくことは決してできなかった。
守らなければ…どうしてこの子を放っておくことができるものか、いや絶対に守らなければならない…
そう思ったシンは、ステラの腕を掴み、力の限りを尽くして抱きしめた。

「大丈夫、君は死なない!君は俺が守るから!」
「え…守る…?」
「ああ、俺が守る。絶対に守ってみせる!」

シンの言葉にステラは落ち着きを取り戻すと、シンに手を引かれて、近くにあった洞窟へと入っていく。

「あ、俺、シン。シン・アスカ」
「シン…?」
「そう、シン。君は?」
「ステラ…ステラ・ルーシェ」

名前を聞いたのはいいが、シンは格別話題も浮かばず内心、慌てふためいてしまう。
そこでひとまず、ここから脱出した時のためにステラ自身のことを聞くことにする。

「ステラは家族は?」
「家族?」
「そう。お父さんお母さんお兄さんお姉さんとか…」
「いない…」
「ごめん…じゃあいつもは誰といるの?」
「ネオ、スティング、アウル…」
「そっか、じゃあここから出たらその人たちを探さないとね」

シンは家族を全て失ったステラの境遇に自分の姿を重ねていた。
シンがステラを守る、と決めた決定的な理由はそこであろう。
だからこそ、自分が味わった辛い思いと同じ思いをして、その恐怖に今も苛まれている(ように見えた)ステラに、これ以上、辛い気持ち、怖い気持ちを味合わせてはならないと感じたのである。

これ以上、辛い気持ち、怖い気持ちを味合わせてはならないと感じたのである。

「これ…」
救助を呼ぶための金属片を折り、
ひとまず服を乾かすために焚き火を炊いて、互いに背を向けていると、
突然ステラが立ち上がり、シンにピンク色をした貝殻を手渡す。
「俺に…?」
そう尋ねるシンにステラは静かに頷く。
「ありがとう…」
ステラの顔は静かに微笑んでいた。
だがそれを見たシンは、視界に入ってくるステラの体に顔を赤らめてしまった。
(俺ってやっぱりラッキースケベ………?)

少しして、洞窟の中に光が入ってくる。
助けを呼んでから、そんなに時間が経っていない。
にもかかわらず、もう助けが来たのだろうか、と内心思いつつ外に出てみる。

「よう、アスカ。こんなとこで何してんだ?」
「あ、あんた…」
「シ、シン、お前…こんなところで一体何をしてんだよ!?」
「な、何ってこの子を助けて…」
「・・・・・・・・・」

やってきた大型の軍用クルーザーに乗っていたのは、シンがステラと出てきたことに激しく驚いているガロードと、顔を赤らめているティファ、それと見慣れぬ女性を連れたアーノルド・ノイマンであった。
それを見た、ガロード達以上に状況がよくわかっていないシンは頭上に?マークをいくつも浮かべている。
「そんなことより、あんた達は一体どんな組み合わせだよ!?」

「これか?美女の一本釣りエンペラーなノイマンが、ナンパした女の人と軍のクルーザー使ってデートしようとしてたから俺とティファもそれに便乗したんだよ」
「美女の一本釣りエンペラーって何だよ!?まるでナンパばっかりしてるみたいな言い方じゃないかよ!  俺は海にいたこの女性と親しくなっただけだ。それにお前らが勝手に潜り込んだんだろうが」
「それってナンパそのものじゃないっすか」
「まったく、せっかくのクルージングデートのはずが、何で初々しいカップルを一本釣りしちまってんだ、俺は」
「だから俺達はそんなんじゃないですよ!」

シンはこのやりとりにキョトンとしているステラを乗せて、クルーザーが発進する。
やがてしばらく進んでいると、陸の道路の方からステラを呼び声が聞こえてきて、ステラが身を乗り出してその方を見る。

「スティング!アウル!」
「すいません、あっちに戻ってください」
「了~解」

クルーザーがステラを呼ぶ声がしたところに到着すると、そこには緑色の髪をした男と水色の髪をした男がいた。
ファントムペインのエクステンデット、スティング・オークレーとアウル・ニーダである。
「おい、近づいてくるの、あれザフトの」
「ああ、わかってる。でもなんでステラの奴・・・」

2人はステラがザフトのクルーザーに乗っている理由がさっぱりわからずあっけにとられていたが、そんな様子を気取られるわけにもいかないので、平常心を保ちながらステラの方へ向かっていく。

「おいステラ!まったく心配かけやがって」
「もー探したんだぞ、このバカ~」
「ステラのお知り合いの方ですか?」
「あ、ハイ。ザフトの方々にはお世話をお掛けしたようで・・・」
「いえ、気にしないで下さい。当然のことをしたまでです」
「ありがとうございます。じゃあ私達はこれで・・・」

スティングはステラを車に乗せてその場を立ち去ろうとする。
だが、それをステラが止めた。

「ねえシン、一緒にいかないの?」
「そ、それは・・・」

シンは答えに窮する。

「ほら、あんま迷惑かけるなよ」

だが、スティングに言われて寂しそうな顔をしたステラを見て、シンが思わず口を開いてしまった。

「また会いに来るよ、絶対、絶対に!」
「ホント!?」
「ああ、きっと会いに来る。約束するよ」
「うん!」

手を振ったステラを見送りながらシンはニンマリとしている。
それはシンが久しぶりに浮かべた笑顔であった。

「やっぱり何かあったんだろ?」
シンの横でガロードがニヤニヤとしている。
「もう、別にやましいことなんて何もねーよ」
結局、基地に戻るまでシンはガロードに冷やかし続けられることになってしまった。

だが、そんな幸せそうな顔をしているシンを見るティファの表情が曇っていたことに気付いている人間はいなかった。
ティファ自身、彼女が感じ取ったことをシンに言うべきか迷っていた。
今はこの先にどのような未来が待っているのかを読取ることはできないが、やがてシンを苦しめる真実が必ず突きつけられるときが来る。それにどう対処するべきか、はティファには判断できなかったのである

「そういやノイマンさん、相方のメガネの人は?」
「ああ、昨日シャトルの強奪犯に運悪くぶん殴られて顔面にデッカイ痣ができちまって部屋に引き篭もってるよ。
 そうだ、その診断結果出るのは明日だから出発は明後日以降だろうし、またあの子に当て来たらどうだ?」
「マジですか、大丈夫すか、チャンドラさん?」
しかし、それを聞くシンの顔は明らかに嬉しそうなものであったことはいうまでもない。

翌日、タリアの許可を得て、再び海岸に来たシンはそこでステラの姿を探していた。
海が好き、ということを聞いていたのでもしかしたらと思って来たのである。
シンは少し高いところから辺りを見回していると、海岸の外れの方で、背格好が似ている金髪の女性がいるのを見つけだす。
それを見て、ビックリさせようと思ったシンは、その女性の後ろから静かに近づく。

「ス~テラ?」

そう言ってシンが満面の笑みを浮かべながら女性の肩に手をかける。
だが、振り返った女の顔は確かに知っている人間のものであったが、
それは自分にとって、世界でも有数の憎悪人物ランキングの上位に堂々と食い込むほどの憎き相手の顔だった。

「お前…まさかシン?」
「どうしてあんたがここにいる!?アスハ!」

シンがステラだと思って声を掛けた相手、
それは式典で、さらに憎きフリーダムに拉致されたカガリ・ユラ・アスハその人だったのである。
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