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第5話「そういう問題じゃねーよ」

「えーと、確かここら辺だったよな」
ガロードはかつての大戦の犠牲者を弔う慰霊碑に来ていた。
カガリなりに、ガロードにオーブを知ってもらいたいという願いから一度、
そこを訪れて欲しいと頼まれたからである。
ガロードは慰霊碑に持参した花を添えると、周りに咲いていた花が海水を浴びたためか、枯れてしまっているのが見えた。

そのとき、後ろから足音が近づいてきた。
振り向くとそこにはどことなく、悲しげで、血の色を思わせる赤い瞳の黒髪の男がいた。
「あんたもお参りに来たクチかい?」
ガロードが何気なく尋ねる。
「昔、戦争のとき、家族がこの近くで死んだんだ…」

シンの脳裏にはあの時の光景が蘇っていた。
避難勧告が出され、未だ避難が完了していなかった場所で、緑色のMSと青い翼のMS―後にそれがフリーダムというザフトのMSであることを知ったが―
が撃ち合いながらやってきた。そして青いMSの撃った流れ弾で家族は一瞬にして命を奪われた。
目の前には家族の中でも特に大切だった妹のまだ温もりの残った腕があった。
その後、自分を助けてくれた軍人の勧めでプラントに渡って、力を求めた。
その末に力を手に入れた。ザフトの新型MS、インパルスという力を。
だが、その力をもってしても、カオス・ガイア・アビスは奪われ、ユニウスセブンでは、ヤキン・デューエを生き残ったパイロットの力を見せ付けられる結果となってしまった。

そのユニウスセブンという超巨大構造物を一撃の下に消し去った奴もいた。
立て続けに自分の無力さを痛感してしまったシンは、家族を失ったときと同様の悔しさを感じていた。
力が欲しい、もっと、もっと強大な力が。

「そっか、俺もある人に頼まれて今日初めて来たんだ。もっとこの国を知って欲しいってな」
「あんた、旅行者かい?」
「まあそんなところだ」
他愛もない会話がなされたとき、もう1つの気配がそこに現れた。

気配を感じたガロードとシンはその方向に目を向けた。
茶色の髪に、紫色の瞳をした、優しそうな顔をしながらも、どこか憂いある目をした男がそこにいた。
「あんたもお参りかい?」
「うん、そんなとこ。ここに来たのは初めてだけどね」
今、数奇な運命により強大な力を手にした3人が、正に運命ともいうべき対面を果たしていた。

三人はしばらく黙祷を捧げていたが、ガロードが沈黙を破った。
「それにしても、せっかく花が海水を被っちまってるな。もったいねぇ」
そこにキラが口を挟む。
「そうだね、じゃあまた花を植えないと…」
少し思うところがあったガロードがそれに対して口を開こうとした瞬間、シンの言葉がそれを遮る。
「どうせ植えても、どうせ人はまた吹き飛ばす…」
前の戦争で散々人が死んだ。なのにまた戦争を始めようとしている連中がいる。
力がある奴はどいつもこいつも戦いたがる。
そのとばっちりを受けて傷つく人がいるとも知らずに。
それでもって結局、戦いは終わらない。悲しみは拡がっていくだけだ。

「また戦争がしたいのか!あんた達は!?」

アーモリーワンで強奪された3機、連合と思しき部隊の姿が脳裏をよぎる。

再び沈黙がその場を支配するが、今度はキラがその沈黙を破る。
「それなら僕はまた花を植えるよ」
するとキラの言葉にガロードが今度は即座に反応した。
「そういう問題じゃねーよ。大事なのは、また花が海水に浸かっちまわないようにすることだろ」
かつて、地球連邦軍と宇宙革命軍の幾度に渡る戦い末にジャミルが引いた引き金。
それにより荒れ果て、この世の地獄へと姿を変えた地球。
自分は力がすべてを支配する世界で、生き抜いてきた。
だが、そんな世界の中でも大切な仲間達と出会うことが出来、自分も少しずつ変わっていった。
その最中、新連邦の樹立により、世界は新たな混乱の時代へと突入し始めた。
そして、世界最強の力、ガンダムダブルエックスを託された。

「過ちは繰り返すな」

命を賭してその力を託した男の遺志に報いるためにも、
大切な仲間達を護るためにも、ガロードは力を手にすることを選んだ。

三度、沈黙がその場を支配する。
「じゃ、俺そろそろ行くわ」
居た堪れなくなったガロードはその場を後にすべく歩き出す。
「そうだな、俺も行くとするか」
別方向に向けシンも歩き出し、
「・・・・・・・・」
キラもさらに別方向へと歩いていった。

戦後2年、この出会いを皮切りにして、世界は激動の渦へと突入していくことになる。
オーブのとある孤児院が謎のMS部隊に襲撃され、かつての大戦で最強と呼ばれた力、青い翼と自由の名を持つMS、フリーダムが復活したのはこの後すぐのことであった。

おまけ

「あっちゃー…ガス欠かよ。参ったな~」
フリーデンが停泊している基地への道の途中に車が止まっている。
慰霊碑を後にしたガロードであったが、乗ってきた車のガソリンが切れてしまって動けなくなっていたのだ。
「くそ、もうちっとで飯の時間だってのに…しょーがねー、歩くっきゃねーかぁ」

プップー!!!!

仕方なく基地まで歩くことにしたガロードの背後からクラクションを鳴らす大きな音が聞こえてくる。
ガロードが後ろを振り向くと、荷物を積んだ大型トラックが止まっていた。
「どこまで行くんだ?途中までなら車と一緒に運んでやってもいいぞ」
トラックの窓から顔を出している男が言う。
(ん?アレックスさんか?)
「基地の方だけど…」
ガロードがカガリに随行していた男を思い出しつつ答えると、思わぬ返事が返ってくる。
「なんだ、行き先は同じか。ならついでだから、車を荷台に積んじまってくれ」
「え、マジで?ラッキー!やっぱ俺、神様信じる!」

車を荷台に積み終え、助手席に乗り込む。
そして車が走り出し、ガロードは運転手の顔を見る。
(あ、やっぱあのアレックスって人とは違うか。よく見ると髪の毛の量が違う)
「ん、なんか俺の顔についてるか?」
「あ、いや、そういうわけじゃないんだけどさ」

「そうか。ところで、少し飛ばしていいか?
 18:30までにこの後ろの荷物を届けなきゃならないんだわ」
「え、もう20分しかないぜ?間に合うのかよ」
「なあに大丈夫、大丈夫。その代わり、しっかり掴まっててくれよ?」
これに快諾したガロードであったが、それを30秒後には後悔することとなった。

トラックが物凄い速度で道を走りぬける。
基地への道のりは分かれ道のほとんどないものであったが、山沿いに伸びているため、カーブが多い。
しかし、トラックはカーブに差し掛かっても減速するどころか、さらにスピードを上げながら進んでいく。
「おい、危ねぇって!スピード落とせよ!」
「大丈夫だって。それより舌噛むぞ、静かにしてろ」
通行量が少ないため、トラックはカーブでもまったく減速せず、運転手はカーブのたびに激しくハンドルを切る。
(あぁ、俺もここまでか…こんなことならもっとティファに…)
冗談のような、本気のようなことを考えながら、ガロードは車に揺られていた。

「おい、着いたぞ」
目をつぶって、助手席にしがみついていたガロードに声がかかる。
周りを見渡すと、フリーデンが停泊している見慣れた基地の入り口だった。
(あはは、俺生きてる…本当に神様っているのね)
トラックは基地の中に入って行き、倉庫の前に止まる。
「ははは、サンキューな。おかげでメシの時間に間に合ったぜ…」
ガロードは生きていることに感謝しつつ、荷台に載せた車を取りに行く。
(あーあ、荷台の荷物もすんごいことになってるんだろうな)
そんなことを思いながら、荷台の扉を開けると、中は美しく荷物が積み上げられたままであった。
「嘘ぉ…」
(信じられねぇ、あんな猛スピードだったのに…)
「こっちもプロだからな。荷物をおじゃんにしたら信用に関わる」
後ろに立っていた運転手がガロードの心の中を読んだかのようなことを言う。
ガロードは、世界は広いもんだと思いつつ、車を降ろして、荷下しを手伝った。

「じゃあな。もし、何か運んで欲しいもんがあったらここに連絡してくれ」
運転手はガロードに会社の名前が入った名刺を渡して、再びトラックを爆走させて去っていった。
その名刺には、バジルの葉っぱの輪っかをつけた天使の絵とともに「大天使宅配便」と書いてあった。
そして、名刺をふ~ん、といった感じで見ていたガロードはふと時計を見る。
「うわ、やっべ、メシの時間だ、急げ急げ」
ガロードは名刺をポケットに押し込み、フリーデンへと駆けていった。
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