薬物解禁

All drugs should be decriminalized.
全ての薬物を解禁すべきだ。

1 現状分析

 世界のほとんどの国で、麻薬の生産・販売・所持・使用などは全て処罰の対象になっています。しかしその内容にもいろいろあり、厳しい刑罰に対象になる国からやや緩い国までさまざまです。全体的にアジアに死刑を科す可能性のある国が多いようです。

 しかし、ポルトガルでは2001年から、薬物の使用者に刑法ではなく行政法を適用しています。つまり、薬物の使用者を逮捕せずに、更生施設に入れるなど警察・刑務所を関わらせない方法で対処しています。

 これは世界でも珍しい革新的な政策ですが、効果のほどはどうでしょうか? ポルトガルの15歳から64歳人口の薬物使用率の統計によると、大麻の使用者は2001年の3.3%から2007年には3.6%へ増加、コカインは0.3%から0.6%に増加、覚せい剤は0.1%から0.2%へと増加しました。どうやら、不逮捕政策が薬物使用者を減らしているとは、まだ言えないようです。

2 メリット・デメリットとそれに関する情報

●メリット
 -薬物犯罪の取り締まりにかける資金の節約
 -薬物使用者が安心して治療できる

●デメリット
 -薬物犯罪拡大の可能性
 -治安の悪化
 -ドラッグ・ツアーの増加

●関連情報
 『世界薬物報告書2009年版』168ページから引用します。
 「ポルトガルは、近年、薬物使用者を拘束しないと決定した国のひとつである。国際麻薬統制委員会によれば、ポルトガルによる2001年の薬物使用の「非犯罪化」は、国際条約の規定範囲内にあるものである。薬物の所持は依然として禁止されているが、制裁は、刑事法ではなく行政法規の下で行われる。個人的使用の目的での少量の薬物所持は、逮捕の対象ではなく、出頭命令が下される。薬物は没収され、被疑者は委員会に出頭しなければならない。被疑者の薬物使用形態が審理され、罰金(わが国の過料にあたるものでしょうか)が科されるか、治療に回されるか、プロベーション(保護観察)の対象とされることとなるだろう。薬物取引の事案は、従前と同じように起訴されるが、ポルトガルで摘発された薬物取引事犯の件数は、ヨーロッパの平均値に近いものである。こうした状態は、完全な薬物禁止制度の下で薬物を避けてきた人たちを引き続き薬物から遠ざけるいっぽうで、薬物使用者に対しては拘禁刑ではなく治療を奨励している。警察からの出頭命令を歓迎しない人のなかには観光客もおり、結果的に、ポルトガルの政策はドラッグ・ツアーの増加を招かなかったと報告されている。また、薬物関連の問題の多くは減少したようである。」

 しかし、「非犯罪化」によって、望ましい結果だけがもたらされたわけではありません。もう少し引用を続けます。
 「この取り組みは議論を呼んでいる。ポルトガルは、この政策を導入後、薬物使用の増加をみたが、しかし、同時期にヨーロッパの多くの国では同様の増加があった。大麻の使用はやや増加したにとどまったが、コカインおよびアンフェタミンの使用率は、低水準から顕著に倍増した。さらに、2001年から2006年の間に、コカインの押収が7倍に増加したことは驚異的である。同時期にヨーロッパの数カ国でコカインの押収が急増したが、2006年にはポルトガルはいきなり世界第6位のコカイン押収となった。同期間には、殺人の発生数が40%増加したが、薬物取引に関係するものである可能性がある。発生率自体は低水準であり、リスボンはヨーロッパでも安全な都市のひとつではあるが、この期間では、ポルトガルはヨーロッパで唯一、殺人の顕著な増加を示している国である。」

末端の薬物使用者に対して、刑事罰を科すことを見合わせ、別な方法で問題解決を図る。ここでいう「非犯罪化」とは、こうした政策のことです。決して薬物使用を解禁するものではなく、また、薬物取引を認めるものでもありません。刑事罰を受ける心配がなくなったことで、薬物使用者が、安心して治療機関にやってくるようになったというプラスの面もありますが、反面、薬物使用が一時的には増加し(その後は減少しているが)、薬物マーケットが活発化してしまうという影響が出ているのも現実です。

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最終更新:2009年10月03日 06:21
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