TOUCH ~触れ合った人々の些細な問題~
ワタシノモノ
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匿名ユーザー
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豊口万里江は、タクシーを降りた。緑色のタクシーは走り去る。
有馬浩之の仕事場に来たのは初めてのことだ。
自分の恋人は、決して仕事場に万里江を連れてこようとしなかった。同僚の日下部を紹介されたことはあったが、それも数度のことだ。
自分の恋人は、決して仕事場に万里江を連れてこようとしなかった。同僚の日下部を紹介されたことはあったが、それも数度のことだ。
そっと、自分のお腹に手を当てる。
─浩之、子供ができたって言ったら、驚くかなぁ。
ずっと子供が嫌いだったけど、いざ自分が母親になるかと思うと、気持ちは変わるものだ。
駐車場を歩き、エレベータに乗る。
既にメールは送ってある。
既にメールは送ってある。
エレベータの入り口で警備員とぶつかりかけた。
「おっと」
「すみません」
「いや、こちらが悪い。お嬢さん、大丈夫かね?」
「ええ。私は」
「それはよかった。すまなかったね」
帽子を脱いで頭を下げてから、初老の警備員は駐車場の隅にある警備室に入っていった。
「おっと」
「すみません」
「いや、こちらが悪い。お嬢さん、大丈夫かね?」
「ええ。私は」
「それはよかった。すまなかったね」
帽子を脱いで頭を下げてから、初老の警備員は駐車場の隅にある警備室に入っていった。
あんな歳の取り方をしたいものだ。
そう思いながら、エレベータの中に入った。
1階のボタンを押して、万里江は目を閉じた。
1階のボタンを押して、万里江は目を閉じた。