take it a try


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「はぁはぁ…ここまでくれば大丈夫だろ」
全力疾走を続けた結果、THE FIRSTは市街地の端まで辿り着いた。
途中、何度か後ろを確認しながらの逃避行だったが幸いなことに彼の後を追いかける者は居なかった。
先程の紳士風な男、そして不良学生風の巨大兵器。
いずれも彼の持つ知識に該当する物は無く、困惑は深まるばかり。
「いくら仮面ライダーでもあんな化け物を相手にすんのは無理だろ!」
悲痛な叫びが市街地に木霊する。
「しかしこいつを着けたまま走るのは骨が折れたぜ…。」
鯛焼き名人アルティメットフォームを脱ぎ捨てると一筋の汗が頬を伝った。
ようやく色々な物から開放され、一息つくかと思いきや…彼は思わず途方に暮れてしゃがみこんでしまった。
鯛焼きによるステルスマーダー化を目論んでいたTHE FIRST。
傍から見ればギャグにしか思えないその一挙一動も、本人は至って真剣。
本気でこのロワを制する気でいたのだから救えな・・・・・・いや、今回の一件は災難であった。
なにしろ数時間かけて作った鯛焼きは全滅、屋台も全壊してしまった。
あの衝撃では再興は不可能だろう。
「チクショー!あのオッサン、次に会ったら容赦しねぇ!!この俺の鯛焼きで地獄に…」
言いかけたところで気が付いた。
「…もう鯛焼き焼けねーじゃん」
今、自分のもとに有るのは鯛焼き名人のみ。
当然これだけでは鯛焼きを焼くことは出来ない。
材料も無ければ屋台も無い。
THE FIRSTから鯛焼きを取ったら最早何も残らないのである。
「それは言い過ぎだろ、オイ!俺だってなぁ、鯛焼きが無くても何とか・・・」
またしても言いかけて気が付く。
脳裏に浮かぶのは先程の男の姿。
もう1秒遅ければ間違いなく命を落としていただろう、紛れも無い生死のやりとり。
彼がライダーロワで何度も描いた話そのものであった。
あんな男達がここには沢山居る。
躊躇い無く人を殺す連中で溢れ返っているだろう。
「お、俺には無理だ…。あんな奴等を倒せる気がしない…!」
先程の啖呵はどこへやら、速攻ヘタレるTHE FIRST。
しゃがみこんで肩を落とすその姿は余りにも頼りない。
「最初から分かってたんだよ・・・俺みたいな奴が生き残るなんて絶対無理。」
自身の情けなさから来るものなのか、それとも別の要因なのかは分からない。
THE FIRSTは泣いていた。
嗚咽交じりの泣き声は静かな市街地に寂しく響き、滴る涙が無機質な道を濡らす。
「他のライダーロワ書き手を蹴落として勝ち残る覚悟も無ければ、人間を殺す覚悟も無い、ただ殺す殺すって息巻いてただけだ…グスッ」
何が有っても生き延びたいと思った。
彼が生んだ最狂のステルスマーダー、安達明日夢のように。
明日夢を生んだ自分ならば殺し合いの場においても躊躇いなく殺し合いに参加出来ると思った。
しかし彼は明日夢とは違う。
狂ってもいなければ、殺し合いをする理由も無い。
「自分は殺し合いに乗る!」と高らかに叫ばなければ、この空気に呑まれてしまいそうで怖かった。
平静を保つにはバカに振舞うしかなく、明るい自分を演出しなければいつしか心を闇に支配されてしまいそうで…怖かった。
彼は明日夢よりずっと臆病で、根性無しである。
それ故、必死だった。
藁にもすがる思いで鯛焼きを焼き続けた。
その結果がアレでは報われない。
「これからどうするかなぁ」
大きな溜息を吐き出し、目尻に浮かんだ涙を腕で拭った。
これから何をすべきか…サッパリ何も浮かんでこない。
鯛焼きという心の支えがあったからここまでやってこれたのだ。
どうしようも無くなり、途方に暮れているTHE FIRST。
そこに彼自身も馴染みのある「アレ」が辺り一帯に響き渡った。


あーたーらしーい あーさがきた きーぼうのあーさーだ♪


「皆さん、おはよーございます。
 人呼んで感電ラジオ、第一回チキチキ定時放送in書き手ロワイアル2nd~ドンドンパフパフ。
 と、まーやっぱ朝といったらラジオ体操だよね。そーゆーわけで流してみました。さわりだけ。
 さーて、皆さん殺し合いで忙しいだろうから、手短に業務連絡いくよー。
 では死者の発表デース。 ・・・」

先程までのTHE FIRSTもビックリな明るい男の声が定時放送の始まりを告げる。
そこで耳にしたのは驚愕の事実。
彼の同郷、ライダーロワの書き手が2人死亡した。
「…マジかよ…。」
呆気に取られているのも束の間、禁止エリアの指定も行われていたため、慌ててメモを取る。
生きたいという切なる思いも混じっているのだろうが、彼はパロロワに慣れ親しんでいる。
やはり条件反射というのが大きいのかもしれない。
やがて放送は終わりを告げ、再び辺りは静寂を取り戻した。
「ライダーロワの書き手だけじゃない…総勢24名だぞ?殺し合いに乗った奴は沢山居るってことだ・・・。」
優勝など夢のまた夢。
生き長らえることすら難しいだろう。
THE FIRSTの心を絶望が支配していく。
そしてふと気が付いた。
「ははは…俺、明日夢と同じこと考えてるよ」
乾いた笑いが込み上げてくる。
「あーあ、嫌になるな・・・ホント」
身体の力を抜き、後ろへ倒れこんだ。
気が付けばもう朝だ。
眩しい朝焼けが目に飛び込んでくる。
「綺麗だ…」
しかし美しく輝く朝日は自分の心を見透かしているようで何となく嫌になった。
(どんだけ卑屈だよ)
表情を歪めながら横に寝返りを打った。
目の前には自分のバッグ」がある。
慌てて走って来たせいかチャックは開いたまま、無残に転がっている。
中身も半分顔を覗かせていた。
そしてTHE FIRSTの目に良く見知った物が飛び込んできた。
「こ、これは…!」
仮面ライダー龍騎に登場、序盤に退場し、その方面には熱烈な人気を誇ると言われている仮面ライダーシザースのカードデッキである。
今まで存在を忘れていた。
荷物確認をした時に勿論気づいていたのだが…彼はシザースのデッキを支給されたことを良しとしなかった。
鯛焼き名人を装着していたため、使用することが出来なかった点。
そして、なにより龍騎で最弱なスペックを持つシザースということから思わず首を捻ってしまったのだ。
先程の襲撃時もデッキのことなど忘却の彼方へ行ってしまっていた。
全く救えない男である。
しかし最早贅沢は言ってられない。
使える物は何でも使用しなければ。
「これがあれば何とかなるかもしれないな!シザースでも一般人相手なら…」
カードデッキを握る手に力が入る。
「でも…良いのか?本当に殺し合いに乗って…」
この手で誰かを殺すことなど想像も出来ない。
だが、無残に殺されるのも嫌だ。
THE FIRSTは迷っていた。
このまま悪意に身を任せ、殺し合いに乗るか。
それとも…。

彼は人一倍臆病だった。
それ故にこの戦いにおいて自我を保とうと必死に明るく振舞った。
だが、やはり彼は根本的なところで書き手なのである。
それもライダーロワの。
ヒーローとして戦い、散っていく覚悟ならば最初からあったのだ。
自分でウジウジ考え、その可能性すら潰していただけに過ぎない。
怖い。
それでも、放送を聞いて生まれた感情は恐怖だけではない。
主催者に対する怒り。
殺されてしまった人の悲しみ。
それを思う心はまさしくヒーローそのものである。
「変身」
ビルのガラスに映った彼の表情に先程の情けない姿は無い。
カードデッキを正面に掲げ、合言葉を唱える。
ただそう呟くだけの変身は、彼と同じ顔を持つ男…まるで相川始を思わせる。
眩い光がTHE FIRSTを包み、彼は変身を遂げた。
龍騎では典型的な悪党であったシザース。
しかし彼の心には熱い…いや冷たい闘志が蔓延していた。
「…震えてる…まだ怖いのか?それとも武者震いというやつか」
THE FIRSTは仮面の下で薄く笑みを浮かべる。
彼に余裕など無い。
ただ、吹っ切れただけである。
「どうせ死んでいく命だ…主催の連中に一泡吹かせてやる。何もせずに死んでいくのだけは…避けなければ。」
ヒーローとして戦うと決めたTHE FIRST。
殺し合いには乗らないと決めた。
だが、それは生き延びるためではない。
醜く足掻くのを止め、死を受け入れた者の思考であった。
対主催が敵と戦い…そして激闘の末に果てる。
彼がロワで描いたものは確かにTHE FIRST自身にも存在していた。
人一倍臆病な男を奮い立たせた覚悟、そしてほんの一握りの度胸。
しかし彼を仮面ライダーとして、ライダーロワの書き手として立ち直らせるのには充分であった。
「俺は三上了じゃない…相川始でもない。」

「俺はTHE FIRST、ライダーロワの書き手だ。恥ずかしくは死ねない…!」


たこ焼きでも、鯛焼きでも無い。
新たな力、蟹を使って戦うことを決めたTHE FIRST。
生きる覚悟では無い、死を覚悟したヒーローの後ろ姿はどこか寂しげであった。


【朝】【C-7 市街地】
【THE FIRST@ライダーロワ】
【装備】なし
【所持品】カードデッキ(シザース)@仮面ライダー龍騎
【状態】健康・精神的にやや疲労・対主催として戦う決意
【思考・行動】
基本行動:ヒーローとして戦って死ぬ。
1:死に場所を見つける。
2:ヒーローとして悪と戦う。
3:スーツの男(承)を敵と認定。次に出会ったら戦う。
※外見や声は三上了@仮面ライダー剣29-30話ですが、性格は相川始に近くなりました。
※鯛焼き名人アルティメットフォームはC-7に放置。


149:書き手の誓い 投下順に読む 151:書き手って一体何ですか?
149:書き手の誓い 時系列順に読む 151:書き手って一体何ですか?
113:走れたい焼きくん THE FIRST 161:仮面ライダーよ永遠に/THE FIRSTは二度死ぬ。




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