シロウが使い魔-13


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第13章 空軍

 「ところで、お前どのくらいまで過去のこと思い出したんだ?」
 「なんでぇ、藪から棒に」

 ワルドと一戦交えた帰りの、森の中での士郎とデルフの会話である。

 「別に藪から棒でもないだろうが。お前の能力次第で、俺の戦う方法も左右されるだろ」
 「なるほど……。悪りぃな、そんなに思い出したことはねぇや。
  魔法を吸収できるってことは思い出したんだけどなぁ」

 「ふ~ん。お前、魔法を吸収し続けるとレベルアップするとかしたりはしないのか?」
 「いや、そんなことすると寧ろ壊れちまわぁ。限界ってモンがあらぁな」
 「ということは、吸収する回数は有限なのか」
 「時間を置けば、その回数も元に戻るけどな」
 「どういうことだ?」
 「吸収した魔法は少しずつ消化されていくからな。人間の腹ン中と一緒さ」

 「なるほどね。じゃあ魔法は何回分くらい吸収できるんだ?………………」

 ………

 「ただいま」
 扉を開けてワルドが戻ってきた。 一人で、である。

 「ワルド、私の従者は?」
 「彼ならじきに来るよ」
 「そう」

 ワルドは小屋へもどる道すがらシェロ対策を練った。
 結論として、1対1に持ち込めば何とでもなると思われたので、
 そのシチュエーションをつくることに尽力すべきだと決める。
 ただ、この大人数のパーティをばらけさせるのは容易ではなさそうだ……。

 「ただいまぁ」 士郎もしばらくして帰ってきた。
 「遅いっ!!」 ルイズが怒鳴る。
 「ごめん。……じゃあ時間がもったいないから、早速出発」
 「…ったく、じゃあワルド、あなたが用意したっていう船にみんなを案内してよ」

 「そうだね。では、なるべく目立たないようにみんな付いてきてくれ」

 ………


 無事、誰も欠けることなく一行は港へ停泊している船へとたどり着いた。
 船といっても、それほど大きなものではない。寧ろ、小型船といったほうがいいだろう。
 ワルドがポケットマネーで借り上げた船だ。
 積荷はグリフォンとドラゴンが1頭ずつだけなので、小型船でも問題はない。

 「へへっ、お待ちしてましたぜ、旦那」
 船長らしき人物がワルドに話しかけてきた。

 「で、旦那方はどちらの国に亡命しようとしてらっしゃるんで?」
 どうやら船長は、一行がアルビオンから国外逃亡を図っていると思っているようだ。

 「ああ、そこはまだ特に決めてないんだよ。すまないね」
 ワルドはいけしゃあしゃあと返答する。
 「そうですかい。ところですぐに出立でよろしいんですよね?」

 「ああ、針路の方は彼の指示に従ってもらいたいんだ。そこらへんは全て任せているんだ」
 と、脱走兵(エイブ)を指し示す。

 わかりやした。と船長が返事をして出発の準備に取り掛かる。

 ………

 船が発進し、クルーはそれぞれ持ち場に従いて仕事をしている。
 エイブが船長に針路を指示している間、一行は甲板の上で周囲を警戒していた。

 とりあえずは何事も無く港を離れることができたが、いつ貴族軍に見つかるかわからない。

 エイブが示す針路はなぜか大陸の真下を目指していた。

 「この進路で本当にいいんですかい?」
 船長がたまらず尋ねるが、問題ないとエイブは返答。

 浮遊しているアルビオン大陸は、下の部分は常に雲に覆われている。
 その雲の下を潜り込むようにして船は進んでいく。

 ………

 アルビオンの下に潜り込んでから10分くらい経っただろうか。
 「上の雲の中に何かいるみたいよ……」
 キュルケが何かを発見する。

 「ありゃ、軍船ですぜ。……あの旗は、劣勢の王軍のようですが」
 船長が望遠鏡を使い、雲の中から現れた船に掲げられた軍旗を確認する。
 「どうしやす?」

 「あぁこのまま停船してもらっていいかな。実は我々はあの船に用があったのだ」
 「へ? そうなんですか? まぁ今の雇い主はあんた方だから従いやすが……」
 不振な目で船長はワルド達を見る。 それはそだろう、戦争中の軍に接触するなど
 下手したら何か酷いことに巻き込まれかねないのだから。

 相手の船から停船命令がなされた。既に停船しているので相手の接触待ちである。

 ………



 「我らはアルビオン王立空軍、本国艦隊である。
  貴様たちの身分と、何故このような場所を航行しているのかを述べよ」
 接舷後に乗り込んできた兵士が船長に向かって問う。

 「あっしらはこちらの方々に雇われまして、その、単なる、輸送中なだけでさぁ」
 「輸送中だと? 怪しいな。 このような場所にいる理由がわからんぞ」
 亡命船であれば、たしかにこのような航路を取る必要がないから当然である。

 そこで脱走兵のエイブが口をはさむ。
 「自分は王立空軍兵士のエイブであります。貴族どもに捕らえられておりましたが、
  なんとか脱走して、王立空軍の一員としてまた戦うべく、こうしてやって来たのであります」

 「我が軍の所属だと? 階級と名前を述べ、身分を証明するものを提示せよ」
 「了解であります」
 軍人同士のやりとりが行われる。他のメンバーはそのやり取りを見守る。

 ………

 「よし、貴官の身分は分かった。そして、他はどのような者たちだ?」
 「彼らはトリステインからの使者であります。縁あってこうして同行することになりました」
 「トリステインの使者だと!」
 突然の成り行きに驚く兵士。自分では判断がつけられぬとみて上司に報告を仰ぐことにした。
 「よし、しばし待たれよ。 上の者に報告してくるのでな」

 ………

 しばらくして、数人の人間が軍船から乗り込んできた。
 先頭に立ってやってきた身分の高そうな人間が口を開く。

 「ようこそ、トリステインの方々。私はアルビオン王国皇太子、ウェールズ・デューダーです」

 慌ててルイズが前に出る。 

 「わ、私はトリステインの姫殿下、アンリエッタ様の使者としてやってきました
  ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールで、こっちは共の者です」
 「ようこそ、ルイズ」

 士郎から見たウェールズの第一印象は、雰囲気がたしかに王族っぽいなというものだった。
 それにしても、皇太子ほどの者がこのような危険な場所にいてもいいものなのか心配だった。
 それはルイズにしても同じだったらしい。こう尋ねた。
 「あの、失礼ですが本物の皇太子さまなんでしょうか?」

 「あはは、こんなとこにうろついていては無理もないな。
  う~ん、そうだ、証拠をお見せしましょう」

 と、皇太子はルイズの指に光るルビーを見つめて言った。
 自分の薬指に光る指輪を外すと、ルイズの手を取り、水のルビーに近づけた。
 2つの宝石は共鳴しあい、虹色の光を振りまいた。

 「この宝石は、アルビオン王家に伝わる風のルビーだ。きみが嵌めているのは、
  アンリエッタが嵌めていた、水のルビーだ。そうだね?」



 ルイズは頷いた。

 「水と風は、虹を作る。王家の間にかかる虹さ」

 皇太子がなんか言っているが士郎には聞こえていなかった。アンリエッタ王女は
 今ルイズがしている指輪を「お金が心配なら、売り払って旅の資金にあててください」とか
 言って渡していた。 慌ててたとかうっかりのレベルで済む問題ではなかろう。
 無事に戻ったら、一言言わないではいられない。

 「まぁとりあえずは君たちも我々と共に城に戻ろう。こちらの船も随伴するのかね?」

 「いえ、この船はアルビオンの港で借り受けただけですので、ここでお別れしようと思ってます」
 ルイズがそう返答すると、皇太子は部下に向かって
 「おい、この船長にお礼をいくらか渡しておいてくれ」と指示をする。

 「では、皆さん、我が軍の船へいらしてください」

 ………

 アルビオン王立空軍の軍船に乗った一行。先程まで乗っていた船は港へと戻っていった。
 ちなみに小型船の船長は、結構な報酬をもらってホクホク顔だった。

 一行は軍船の中の広い部屋へ案内された。会議室兼食堂の部屋だろう。

 「この船の本日の哨戒任務は終了しましたので、既に城へ向かっております。
  じきに到着しますので、しばらくはここでお待ちください」
 そう、兵士の一人に告げられる。

 「あの、甲板に出てもいいですか?」 士郎が尋ねる。

 「そうですね、我々の邪魔にならなければ問題ないと思います」

 兵士の許可をもらい士郎は甲板へと向かう。
 「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
 ルイズが後からついてくる。

 「どうした?ルイズ」
 「べ、別になんでもないわよ。
  ただアンタはご主人様を放っておいて勝手にどこかに行くなんて許さないんだから」
 (意訳:士郎と一緒にいたい)ってことです。



 士郎はルイズを伴い、甲板に出る。

 甲板上では多くのクルーが持ち場で周囲を見張っていた。
 それはそうだろう。すでに船は雲の中を進んでおり、辺りはねずみ色一色なのだから。

 「右舷5度に目標C4」
  「右舷5度に目標C4」
   「右舷5度に目標C4」
 クルー同士で伝言が伝わっていく。
 そして船が方向を変える。見事な統率である。

 「どうだい? 我が軍の凄さが分かってもらえたかい?」
 いつの間にかそばにウェールズ皇太子がやってきていた。

 「えぇ、見事なもんですね。 何も見えない雲の中を楽々と進むなんて」
 士郎は正直な思いを告げた。それにしても、なぜ雲の中を進むのだろう。士郎が尋ねると

 「ああ、城の上は敵が見張ってて降りるのも容易じゃないんだ。
  だから、城の地下、大陸の地下から潜り込まないといけないんだよ」

 船の周りはついに真っ暗になった。太陽光も届かない場所になったからだ。
 それでも難なく船は進む。測量と魔法の明かりだけで航行しているのだ。

 大陸の裏側に300メイルほどの穴が現れた。そして船はそこに飛び込んでいく。

 「僕はこの瞬間がたまらなく好きなんだ。冒険心をくすぐられるからね」

 「なんか空賊っぽいですね」 士郎が言うと、
 「わかるかい? そうなんだよ!」 と皇太子は返事をした。

 「いっそのこと、空賊に転職したらいかがです?」
 その士郎の言葉に、

 「空賊……、空賊か!! こいつはいい!!!
  城に戻ったら早速提案してみよう!!」

 と冗談ともとれない感じで皇太子は満面の笑みで答えた。


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