シロウが使い魔-10


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第10章 

 「なによ、どうゆうことなの? シェロって何? なんでそんな格好なの?」

 グリフォンを先に行かせて、声の届かないくらいの位置でタバサの竜はついていく。
 開口一番、ルイズは士郎に尋ねた。

 「いや、俺が『ガンダールヴ』とか使い魔とか一切秘密だから、こんな格好したんだけど
  名前はキュルケのアドリブ。 おれも初耳」
 ルイズの耳元でひそひそ声で答える。
 「じゃあ何でツェルプストーとタバサが一緒なのよ?」

 「昨夜コルベール先生に相談したんだよ。そしたら、タバサの使い魔ならあっという間に
  移動できるって言うからタバサに相談しにいったらキュルケが付いてきた……」
 「なによ、移動なら馬でいいでしょ?」

 (馬に慣れてないから嫌という事は置いといて)
 「来週のダンスパーティ、楽しみにしてたんじゃないのか?」
 馬での移動なら往復1週間以上かかってしまうとコルベールから聞いた士郎。
 「それはそうだけど……。でもこれって一応秘密の任務なんだから……」
 といいつつ、士郎の心遣いに心温まるルイズであった。

 「とりあえず、ルイズの使い魔のことを訊かれたら、召喚したけど他の使い魔に食べられたと
  いうことにしてくれ。 俺のことは貧乏貴族で、“従者”として雇っているとかで」
 士郎がルイズに付き添って出た初めての授業を思い出す。
 ルイズの爆発魔法で誰かの使い魔が食われたとか騒ぎになっていた。
 「え~、なによ。それ」 不満を言いつつもルイズは納得した。

 「じゃあしばらくしたら休憩して、ルイズはあっちに乗り換えてくれ。
  俺のことは秘密な。 近衛やっている人間には特に秘密にしないとな」
 「わかったわ」
 なんだかんだ、士郎の言うことには素直に従うルイズである。


………

 道中の小高い丘。 しばらくの休憩である。

 「君はルイズの従者らしいけど、なんで学院の生徒が従者をやっているんだい?」
 「彼の家、とても貧乏なの。 でも貴族だから学院に見栄をはって通わせてもらって、
  生活費とかは私が出す代わりに、私専属の従者をやってもらっているの」
 ルイズはすらすらと嘘をついた。
 「ほほう。 彼はなんのメイジなんだね?」
 「『土』系統よ。 土のドット」
 「ちょっと魔法を見せてもらってもいいかな?」
 妙にこだわるワルド。 士郎はそんなワルドに素直に答える。
 「いいですよ」

 右手に杖を構え(もちろん杖など必要ないのだが)、『錬金』の詠唱をする士郎。
 (────投影、開始) そして、聞こえぬ声で唱えた。

 士郎の左手に現れる小刀。
 「これでいいですか?」
 このとき、士郎の左手に刻まれているルーンは光を放っていない。
 実は左手は肌色の湿布とファンデーションで偽装が施されていた。
 「あ…あぁ、ありがとう。あと、君が従者をやっているって、どんなことをやっているのかい?」
 しつこいほど、士郎に話を聞くワルドである。

 「お茶を入れたり、掃除をしたり色々です。 あぁそういえば、お茶の用意をしてあった」
 士郎は自分の荷物から、ポットを取り出す。 そして皆に木のカップを配る。
 「ジンジャーのはちみつ漬けです。 まだ熱いから気をつけてください」

 蜂蜜と生姜を1対1から2対1の割合で用意する。
 生姜は皮をむき、薄くスライスして蜂蜜に浸るようにして壜に漬け込む。
 これで一晩寝かせれば、生姜のエキスと蜂蜜がまざりあう。
 お湯に溶かして飲めば、蜂蜜生姜湯の完成である。




 「熱いって、そんなポットに入れていたらすぐ冷めちゃうんじゃないの?」
 キュルケが尋ねると、ギーシュが答えた。
 「ふふふふ、そう思うだろう。 だが、このポットは僕が開発した大発明品なのだよ」

 本当は、士郎が設計してコルベールを製作したものに一部改良を施しただけだった。
 内部のガラスを補強のため、ギーシュが錬金で銅を覆ったのだ。
 これが以外にも冷めにくくなるという利点を発揮。(輻射熱の放射を抑えるため)

 ふふん、と鼻を高くするギーシュをよそに、士郎は皆にポットの中身を注いで回る。

 「あ、おいしい」 ルイズがまず反応する。
 コクコクとタバサが頷く。 かなり気に入ったようだ。すかさずおかわりを要求する。
 タバサにおかわりを注いだ後、他の人間にも注ぐ士郎。

 くつろぐルイズ一行。休憩を終えると、ルイズはワルドのグリフォンへ騎乗。
 かわりにギーシュがタバサの竜へ乗り込む。
 「じゃあ、このままアルビオンへ向けて一気に飛ぶけど、おひげのおじさま、用意はよろしくて?」
 「ラ・ロシェールに寄るのではないのか?」
 キュルケの言葉に疑問をさしはさむワルド。

 ラ・ロシェールはアルビオン行きの船が発着している港町である。
 もちろん普通はアルビオンまでは船に乗っていくのだが、士郎が早く行き帰り出来るように
 わざわざタバサに頼んで竜に乗せてもらっている。直接向かえるならそれにこしたことはない。

 アルビオンは浮遊大陸なので、同じ場所に居るわけではない。次回の最接近は一週間は先だ。
 それなので、一気にアルビオンまで行くのは、一般的には無謀の極みであるが、
 タバサの竜なら問題が無かった。



 「いや、私のグリフォンならそれくらいなら飛べるはずだが…。
  一気といっても、小休止くらいはとるのだろう?」
 「まぁ、時々はね。大丈夫のようでしたら早速出発しますわよ」

 ………

 アルビオンへ向かう空の上。ワルドはルイズを乗せてグリフォンを操っていた。

 「……」
 いざ、ルイズに使い魔の事を聞こうと思ったが、どう切り出すか悩むワルド。
 すでに色々予定が狂ってきているので、心の整理が必要だった。
 「あ~、ルイズ。君は使い魔は連れてきて居ないのかい?」
 とりあえず無難に質問してみた。

 「……、他の使い魔に食べられちゃったの……」
 うつむき加減で応えるルイズ。 ぱっと見、悲しくて俯いているようにも見える。
 その実、こんなことを言わされて不機嫌な顔を隠しているのだが。
 「そ、そうか……。残念だったね」
 話が途切れてあわてるワルド。
 「あ、そうそう、君の従者くんはどこらへんの貴族なのかな?」
 (え!?)とあせるルイズ。その設定は聞いてなかった。ロバ・アル・カイリエというのも
 おかしい気がする。
 「え、ええと……。聞いてない……の。あとでシロ…シェロに聞いてみるわ」
 いつぼろが出るか気が気じゃない。なるべく黙っておこうとルイズは思った。

 ………



 ルイズの反応が急に無くなって、ワルドは手が打てなくなってきた。
 予定では、ルイズに使い魔の話を訊いて、そのあと婚約の話を切り出すつもりだったのだが。

 とりあえずワルドは現状を再確認する。

 ルイズが人間を召喚したという話は裏づけがまだ取れない。今聴いた話が事実なら、
 普通の使い魔を召喚したということだろうか…? 要再確認。

 ルイズは魔法を一度も使えなかったことは知っているが、今もそうなのだろうか?
 これも本人に確かめておかねばなるまい。

 以上2つの事柄により、今後のルイズとの接し方も変わる。
 ルイズが伝説の人物と同じ(虚無の使い手)ならば、できうる限り大切に扱わなければなるまいし、
 そうでなければ、他の任務を優先して動かねばならないだろう。
 そう、アンリエッタの手紙の奪取とアルビオン皇太子の暗殺である。

 今は様子見ということで、兎に角アルビオンの大陸を目指すことを最優先にしよう。

 ワルドのグリフォンは優秀といっても、タバサの操る竜ほどでスタミナがあるわけではない。
 グリフォンにはかなり負担をかけることになってしまう……
 祖国や知人を裏切るようなワルドでも、自分の愛馬(?)はやはりかわいいものなのだ。
 アルビオンへ着いたら、用意できる最高の餌と水を用意してやろうと決めたワルドである。

 ………



 士郎はアルビオンが浮遊大陸であるということは聞いている。
 だから離陸前のキュルケとワルドのやり取りは大体理解していた。

 それでも実感していたわけではない。脳内の想像だけである。

 だから、こうして少しずつその風景が見えてきたとき、士郎の口は開きっぱなしになっていた。

 「で、でかい………………」

 島の下部は雲に覆われているが、全体の巨大な影は決して見逃せるものではない。

 島が浮いているのではなく、大陸が浮いている光景。こんなものが空を飛んでいる世界。
 地上に住んでいる人間は、おちおち生活していられないのではないかと思うのだが、
 この世界の住人には慣れっこになっているのか、あまり気にしていないようだ。

 「あれが、一定の軌道を周っているんだよな?」
 「あぁ、そうさ。僕も最初見たときは、かなり驚いたものだよ。」
 「ハルケギニアの大陸の上は通らないのか?」
 「たしかに近づくことはあるけど、上に来ることは無いみたいさ。
  そんなことになったら、普通に暮らしてなんか居られないよ」

 まぁ、そうだろう。海上でうろついてくれる分には実害はないんだろう。

 「いったんあそこに降りる」
 遠くに見える島をタバサが指し示した。

 島といっても無人島のようだ。どうやらアルビオンから落ちてきた土の塊のようである。
 草木も生えていない。

 あそこで息を整えてから、遠く高くそびえる大陸に羽ばたくつもりなのだろう。



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