シロウが使い魔-07


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第7章 土くれ

 衛宮士郎が今、ハルケギニアで作りたいものが5つある。

 一つは自転車。だが、部品を錬金で作るのが難しいらしい。
 冶金技術がものすごく遅れているようだが、ある程度は魔法で補えるだろう。

 二つ目は反射望遠鏡。金属加工の技術の遅れは『固定化』の呪文がいくらでもカバーしてくれる。
 単純な構造物なら作れるはず。ということで、思いついたのが反射望遠鏡だった。
 コルベールには既に設計図を見てもらっている。
 この世界の望遠鏡はかなり粗末なものらしいので、精度は比ぶべくもない。

 三つ目は魔法瓶。これも『固定化』があれば案外簡単に作れるはず。
 一般庶民もかなり便利がるアイテム、間違い無しである。

 四つ目はしょっつる。いわゆる魚醤である。衛宮士郎は基本的に日本食を好む。
 ハルケギニアに来て、何が困ったかといえば毎日洋食タイプの食事であることだ。
 かといって、大豆製品がこの世界にはないらしい。代用の調味料で思いついたのが、魚醤である。
 衛宮士郎は過去、工房代わりの土蔵で醤油を作ろうとして切嗣に怒られたこともある。
 作り方はわかっているので、機会があれば作ってみようと思っている。

 最後にマッチ。
 突然お茶が飲みたくなったりしたとき、火種が無いのが困りものである。
 もちろん学院には火のメイジも多いし、頼めばコモンマジックの“着火”程度ならすぐやってもらえる。
 しかし、真夜中の人気の無い時間だと頼めない。学院の厨房にも、火種程度なら残っているが、
 それをわざわざ火に熾すわけにもいくまい。
 士郎はマッチの原材料を(リンを使っている程度しか)知らないので、
 コルベールに研究してもらおうかと思っている。
 コルベール自身は火のメイジのためか、マッチの重要性を今一つわかっていないようだ。

 ………

 コルベールの小屋に篭っているついでに、今は魔法瓶の作成に取り掛かっている。
 「ふむ、外側のガラスと内側のガラスの間に空間を設けるのですな?」
 「そのあとに、隙間の空気を吸い出して隙間を閉じます」
 『固定化』されたガラスの間にある空間から、空気を魔法を使って抜き、密閉する。
 「さて、今作成したガラスのポットに熱いお湯を入れます」
 「ほうほう」
 「これをしばらく放置しておきます。まぁ1時間くらいですか」
 「ではその時間でシロウ君の文字の学習を進めましょう」

 ………1時間後

 「そろそろいいかな?コルベール先生、ポットのお湯でお茶でも入れましょうか」
 「? もうお湯も冷めたのでは?」
 「ふたを開けると……」
 「おお、湯気が! 冷めてないということかな?」
 「いえ、蓋の部分や外側と内側の部分の接合部、その他放射熱などにより熱は逃げます。
  ただそれ以外では熱が逃げにくくなっているので、普段より冷めないんです」
 「ほほう。 素材とか色々研究すれば、もっと冷めにくい物ができますな」
 「そうです。 これを大量生産すれば、結構売れるんじゃないでしょうか?」
 「一考の価値はあるな。 これなら『錬金』できるメイジも多いことでしょう」
 『土』系統のメイジを確保することがこれからの課題になりそうだ。

 ………


 閑話休題。

 士郎がコルベールの小屋を出れなくなったため、ルイズは少々不満だった。 
 士郎がいつの間にか見当たらなくなったため、キュルケは少々不満だった。

 結果、不満は互いの少女へ向かうことになる。
 「キュルケ! あんたのせいでシロウが困ってんのよ! もうちょっかい出さないで!」
 「ルイズ! あなたシロウをどこに隠したのよ! あたしの恋路を邪魔しないで!」

 「「決闘よ!!」」 ある意味、息はピッタシだった。

 月明かりの元、ヴェストリの広場で背中合わせに立つ2人の女生徒。

 証人兼ジャッジとしてキュルケの親友タバサが呼ばれた。タバサがルールを説明する。
 「10歩歩いたら、振り返って呪文を唱える。先に倒れた方が負け」

 「「わかったわ」」

 「開始」 タバサが開始の宣言をする。

 「「1、2、3、4、5、6、7……」」 互いに杖を胸元まで持ってくる。
 「「8、9」」

 「「10!」」 両者振り向き呪文の詠唱に入る!
 キュルケはお得意の『ファイヤーボール』を唱える。 
 ルイズは先日見つかったばかりの『猫だまし』を唱えた。

 ルイズの呪文が一足先に完成。キュルケの目の前で炸裂する!
 「きゃっ!」 キュルケの呪文の詠唱が途切れる。

 ルイズは既に次の呪文の詠唱に入る。といってもその他の呪文は使えないはずだった。
 (あたしだって『ファイヤーボール』くらいなら使えるはず!)
 呪文完成! 発動……せず。いつもの失敗魔法が発動した!

 <どごぉぉぉん>

 目標のキュルケを大きく外れて、本塔の上のほうに命中したようだ。

 「あなた、どこ狙っているのよ」 ルイズを鼻で笑うキュルケ。
 (さっきはなんか訳のわからない呪文で驚かされたけど……)呪文を詠唱するキュルケ。
 「食らいなさい!」
 『ファイヤーボール』がルイズを跳ね飛ばした。

 「キュルケの勝ち」 タバサがキュルケの勝利を宣言する。
 「くっ! おぼえてなさい!」 雑魚キャラのような捨て台詞を吐くルイズだった。



 <ずごごごごごぉぉぉ>

 突然の地鳴りと共に、土で出来た巨大なゴーレムが目の前に現れた。
 現れたかと思うと、そのまま本塔に殴りかかるゴーレム。
 <ばごんっ!!>
 本塔の壁が一部壊れる。

 「なに?」 キュルケが突然の成り行きについていけずに誰とも無く訊いた。
 「盗賊」 端的にタバサが答える。
 「止めなきゃ!」 いち早くルイズが行動を起こす。

 「今度こそ!『ファイヤーボール』っ!!」
 失敗魔法発動。 ゴーレムの表面がはじけた。 だが、そのまま修復されるゴーレム。

 キュルケとタバサが続く。
 「『ファイヤーボール』っ!」「『ウィンド・ブレイク』」
 かなりのダメージを食らったようだが、やはり修復されていくゴーレム。

 ゴーレムの肩に黒い人影が見えたと思ったが、本塔に出来た亀裂から中へ消えていった。

 タバサが自分の使い魔の風竜シルフィードを呼んで、他の2人と一緒に乗り込む。
 「『土くれ』のフーケ。最近このあたりに出没しているらしい」
 「このままじゃ学院の宝が盗まれちゃうじゃない!」 ルイズが声を荒げる。
 「奴が出てきたところを集中的に狙いましょう」 キュルケが提案する。

 しばしのち、黒ずくめのローブの人物が、ゴーレムの肩へ戻っていく姿が見えた。
 「「『ファイヤーボール』」」「『ウィンド・ブレイク』」
 3人は、先ほどと同じ呪文を今度はフーケに向かって撃ち込む。

 「や、やったの?」 ルイズがフラグを発動する。

 一瞬、人物に命中したと思えたがそれ自体がダミーだったようだ。
 土煙にまぎれて、逃げおおせたフーケ。 まんまと学院の宝を盗まれてしまった。

 ………翌朝

 トリステイン魔法学院は大騒ぎになっていた。もちろん『土くれ』のフーケ襲来の件である。

 『宝の弓、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』

 などと、宝物庫の壁に残されていた。

 宝物庫に教師が集まり、口々に好き勝手なことを言い合う。
 「衛兵は何をしていた」「衛兵など平民、それより当直の貴族は誰だ」「ミセス・シュヴルーズですな」
 「ミセス・シュヴルーズ、貴方は何をしていた」「も、申し訳ありません」
 シュヴルーズ以外の教師がシュヴルーズを責め立てる。

 「泣いても、お宝は戻ってこないのですぞ!貴方は『宝の弓』を弁償できるのですかな!」
 「まぁまぁおよしなさい。我々の中にまともに当直の仕事をこなしていた人物、果たして居りますかな?」
 オスマンが弁護をする。
 「それは……」 一番猛烈に責め立てていたギトーは、口篭ってしまう。
 「今回の件は我々全員にあるのじゃ。油断していた我らがまず反省せねばならん」

 「おお、オールド・オスマン、貴方のお慈悲に感謝します。これからは父と呼んでよいでしょうか」
 と、オスマンに抱きつくシュヴルーズ。 オスマンはシュヴルーズの尻を撫でたりしていた。
 「私のお尻でよければお好きなように。 そりゃもう、いくらでも」
 ……オスマンに対する周囲の視線が冷たくなっていく。




 咳を一つして、オスマンは言った。
 「で、犯行の現場を見ていたのは誰じゃね?」
 「この三人です」 コルベールが自分の後ろに控えていた三人を指し示した。
 ルイズにキュルケにタバサである。士郎はルイズの付き添いでこの場にはいるが、現場は見ていない。

 「詳しい説明をしてもらおうかの」
 ルイズが進み出て、見たままを述べた。

 「大きなゴーレムが現れて、壁を壊したんです。肩に乗っていた黒いメイジが、ここからなにかを……、
  その『宝の弓』だと思うんですけど……、盗んだ後、またゴーレムの肩に乗りました。
  私たちが呪文を唱えて阻止しようとしたんですが、土煙にまぎれて消え去っていきました」

 「それで?」
 「あとには、土しかありませんでした。手がかりになるようなものは特に見つけていません」
 「ふむ、そうか……。 ときに、ミス・ロングビルはどうしたかね?」
 誰も知らないと反応が返ってくる。 そして丁度ロングビルが現れる。

 「オールド・オスマン。盗賊の手がかりをつかみました!」

 「手がかりじゃと?」
 「今朝方、この状況を見てすぐに調査に当たったのです。
  周囲を聞き込んだところ、あやしげな人物を見たとの目撃証言を掴みました」
 「仕事が早いの。ミス・ロングビル。 それでその場所は?」 
 「ここから馬で四時間くらいにある森の廃屋に黒ずくめのローブの人物が入るのを見たようです」

 「すぐ王室に報告しましょう! 王室騎士隊であればあっという間に……」
 「喝ぁぁっ! 王室なんぞに報告してたまるか! 時間も惜しいし、今後王室が学院に関与するなぞ
  不愉快にもほどがある! 我々の問題は我々が解決するのが当然じゃ!!」
 コルベールの提案を即効で却下して、オスマンは皆に言う。




 「では、捜索隊を編成する。我と思う者は杖を掲げよ」
 誰も杖を掲げない。困ったように顔を見合すだけである。オスマンがいくら促してもだめである。
 だが、ここで一人杖を掲げるものが現れた。ルイズである。シュヴルーズが驚き、声を掛ける。
 「ミス・ヴァリエール! あなたは生徒ではありませんか! ここは教師に任せて……」
 「誰も掲げないじゃないですか!」
 口を少々への字にして、真剣な目をするルイズ。この場の誰よりも格好よかった。

 横目でルイズを見るキュルケ。 やれやれという顔をしながら続いて杖を掲げる。
 「き、君たちも生徒じゃないか!」 コルベールが声をあげる。
 見るとタバサも杖を掲げていた。
 キュルケと目があうと、タバサは一言「心配」と言った。

 「では、君らに頼むとしようか」 オスマンが言う。
 コルベールやシュヴルーズが反対の声を上げるが、オスマンはそんな声を無視する。
 「彼女たちは敵を見ている。その上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと
  聞いているが?」
 「本当なの? タバサ」 キュルケは思わず訊いてしまう。
 周りがざわつく。シュヴァリエの称号はそれほどの価値があるのだ。

 「ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、
  彼女自身の炎の魔法も、かなり強力と聞いている」
 オスマンは続けた。
 「ミス・ヴァリエールは優秀なメイジを数々輩出したヴァリエール公爵家の息女で……」
 言葉に詰まるオスマン。 色々と秘密の話があるので言葉が濁ってきた。
 「彼女は将来有望なメイジなのじゃ……。 そうそう、その使い魔は、
  グラモン元帥の息子である、ギーシュ・ド・グラモンを傷一つ負うことなく倒した腕前じゃ」

 「そうですぞ、なにせ彼はガンダ……」
 不用意に口を滑らせそうになるコルベールにオスマンは杖で地獄突きをかます。
 「ぉごぉぉぉ……」 悶絶するコルベール。

 「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」 オスマンが宣言する。
 ルイズ・キュルケ・タバサは「杖にかけて」と同時に唱和する。
 そしてスカートの端をつまみ恭しく礼をする。 士郎は黙って見ている。

 「では、馬車を用意しよう。魔法は目的地に着くまで温存したまえ。
  ミス・ロングビル、彼女たちを手伝ってやってくれ」
 「もとよりそのつもりですわ」 ミス・ロングビルが応えた。

 ………



 女生徒3人とミス・ロングビルとともに、宝物庫から学院正門まで向かうときに士郎は尋ねた。
 「で、この中に『宝の弓』を見た人間はいるのか?」
 4人とも、『宝の弓』は見たことがないという。
 「……、それじゃあ取り戻すにしたって何が『宝の弓』か判らないじゃないか」
 士郎はあきれて、踵を返す。
 「どこ行くのよ、シロウ」 ルイズが尋ねる。
 「学院長のとこ。『宝の弓』がどんなものか訊いてくる。門の前で待っててくれ」

 ………

 学院の宝物を取り戻しにいく馬車の中。
 「で、『宝の弓』ってどんな物なの?」 ルイズが尋ねる。
 「学院長が言うには、みすぼらしい弓だそうだ」
 「お宝じゃないの~?」 キュルケが不満の声を上げる。
 士郎は聞いた話を皆に伝える。

 オスマンは学院の近くに住む貴族が亜人を見世物として手に入れた話を聞いた。
 酷いことだと憤慨したオスマンは、密かに亜人を脱出させようと計画を練った。
 その貴族の屋敷に忍び込もうとした矢先、もう一人の亜人が仲間の亜人を脱出させようとしていた。
 屋敷は大騒ぎになっていた。オスマンは2人の亜人に協力して、屋敷から離れさせることができた。

 捕まっていた亜人は脱出できたものの、長い監禁生活により体が弱っていた。
 そしてまもなく息を引き取る。女性の亜人だった。助けようとしていた亜人はその連れ添いであった。
 男性の亜人も脱出の折に深手を負っており、永くなさそうだった。
 男性の亜人は最後に一族に伝わる弓と、自分と女性が付けていた宝石をオスマンに渡す。
 自分が死んだ折には、この弓で宝石を月まで打ち上げて欲しいとのことであった。

 その亜人の一族は、葬送の儀として個人が持っている『魂の宝石』を月まで飛ばすそうだ。
 やはり脱出のときに弓もダメージを受けていて、2つの宝石を飛ばすまで壊れないでいるかもわからない。

 士郎は馬車にいるルイズ・キュルケ・タバサ・ロングビルに伝えた。ロングビルは御者をしているが。

 「なんで『宝の弓』なの?」 宝にこだわるキュルケが訊く。
 「弓が“マジックアイテムしか射出できない”マジックアイテムらしい。
 『魂の宝石』を射出するために作られた専用の弓ってことらしいけど。
 『宝の弓』って名前はその由来から、理事長が適当に付けたそうだ」

 「あんのクソじじぃ~っ……」 御者台で言ったロングビルの小声は皆には届かなかった。

 「じゃあなに?『土くれ』のフーケはご大層に宝物庫の中で一番のガラクタを持っていったのね。
  で、『魂の宝石』はどこにあるの?」
 やはりキュルケはお宝にしか興味が無いようだ。
 「理事長室の机の中に保管してあった」

 そんなこんなで、馬車は目的地の森に到着する。
 森の入り口に馬車を停めて、小屋までは徒歩である。
 ルイズとキュルケは不満を言ったが、馬車で敵地に乗り込む馬鹿は居ないと窘められた。

 ………



 小屋が見える位置に五人は陣取る。まずは士郎とタバサが小屋まで偵察に出る。
 「誰もいないようだな」
 「誰も居ない」
 「鍵はかかっていないみたいだけど、俺が先に中に入るよ」
 杖を構えて、こくりとタバサがうなずく。

 シロウが小屋に入る。中にはひと気がない。特に罠もあるように見えない。
 続いてタバサが中に入る。小屋の中で改めて『ディテクト・マジック』を唱える。
 異常ないようだ。

 外で待機していた他のメンバーも小屋の入り口までやってきた。
 中から士郎とタバサが出てくる。手には『宝の弓』と思われるマジックアイテムを持っている。

 「タバサ、フーケは?」
 ふるふると首を振るタバサ。
 「なによ、盗賊はどこにも居ないの?」 ルイズが少々ホッとしながら表面上文句を言う。

 「盗品は戻りましたが、フーケの捜索をしますか?」 ロングビルが皆に尋ねる。

 「先に弓を持って学院に戻りましょう。報告をまずしないと。
  フーケの捜索なら、改めて組織した方がいいと思います」 士郎が提案する。
 「そうね、そうしましょう」 ルイズもキュルケも賛成のようだ。 タバサも頷く。

 ………

 「ふむ、そうじゃったか。フーケはおらなんだか。 それでも宝物が戻り、何よりめでたい」
 オスマンに報告すると、このような反応が返ってきた。
 「学院長、その『宝の弓』では葬送をおこなわないのですか?」
 「今にも壊れそうでやたらに使えないんじゃ。弓の名手を探すわけにもいかなくてのぉ」
 貴族から逃がしてやった経緯から、表ざたにはできないらしい。

 「よろしければ、俺がその葬送を行いましょうか?」
 「ん?(そういえば武器なら何でも使いこなせるのじゃな。ガンダールヴは)ぜひとも頼もうかの」

 ………



「黙祷!」 コルベールが号令をかける。 
 本塔の屋上にて、オスマン、ルイズ、キュルケ、タバサ、ロングビル、士郎が黙祷する。
 今回の葬送は内々に行われる。総勢7人。捜索隊のメンバーとコルベール、オスマンのみである。
 しばし黙祷の後、士郎が夕暮れに姿を現した赤と青の月に向けて弓を構える。

 <しゅぃぃん>

 赤い宝石を赤の月へ送る。亜人女性が持っていた『魂の宝石』である。

 <しゅぃぃん>

 青い宝石を青の月へ送る。亜人男性が持っていた『魂の宝石』である。

 <ばきゃっ!>

 役目を終えたとばかりに、『宝の弓』の弓部分が割れる。
 士郎は、弓に掛けられていた魔力が抜けていくのも感じていた。この弓はもう使えないだろう。

 葬送の儀は終わった。 学院長に壊れた弓を渡す。

 「ロングビルさん、ちょっと残ってくれないかな?」士郎がロングビルに声をかけた。
 「どうしたの?」 ルイズが士郎に尋ねる。
 「いや、他の人は先に戻ってくれてていいから」
 塔の屋上に士郎とロングビル、コルベールが残る。

 「なんの用でしょうか?」 警戒しながらロングビルが尋ねる。
 「ミス・ロングビルは『土』系統のメイジでいらっしゃいますよね?」
 「はい、そうですが……」 コルベールの質問に、ロングビルは答える。
 「『土くれ』のフーケはもちろん土系統……。だが今回の捜索では、姿を現さなかった」
 士郎があとを引き取る。

 「なにが仰りたいのでしょうか」 ロングビルがそっと懐に手を忍ばせる。
 「簡単なことですよ……」
 コルベールは、ロングビルの正面へ立ち……

 <がばっ> 土下座をした。

 「私たちと共に、発明の手伝いをしていただきたい」

 「へ?」

 「いや、今シロウ君と色々な製品の開発をしておるのですが、どうにもメイジの数が足りなくて、
  『土』系統のメイジが欲しいのです。
  もちろん、製品になって利益が出たあかつきには分配させていただきますぞ」
 「『土くれ』のフーケが出たら、盗賊稼業をやめることを条件に仲間に入れようと思ってたんです。
  だけど、現れなきゃしょうがないし……」

 「は、はぁ」

 「仲間になっていただけますかな?ミス・ロングビル」
 「……、ええと、利益といってもどの位になるものなのでしょう」
 「品は売れ行きに左右されるので、はっきりとはいえませんが、
  下級貴族の収入程度は超えると予想しております」

 コルベールは必死になってロングビルの勧誘を続ける。 なにか別の思惑もあるようだ。

 「まぁ少々のお手伝い程度でしたら、かまいません。 秘書の仕事の合間で良ければ」
 「よしっ!」 思わずガッツポーズを取るコルベール。

 そんなこんなで、ハルケギニアでの新製品開発メンバーが一人増えたのだった。


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