シロウが使い魔-05


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第5章

 「馬にも乗ったことが無いなんて。異世界のメイジも大したこと無いのね」
 珍しく主人(あるじ)として自慢ができることを見つけたルイズは、
 上機嫌に士郎にたいして口撃をしていた。
 (う~痛てて。ちくしょ~。戻ったらギーシュあたりに自転車を『錬金』させてやる)
 乗りなれていない馬に長時間乗ったことで、少々腰を痛めた士郎である。

 「まずは、服を買うわよ」
 貴族御用達の店へと入るルイズと士郎。店員に士郎のサイズを測らせると、色々注文を出していく。
 店では士郎が口を一言も開かないまま買い物は終了した。上流階級恐るべし。

 次は士郎の要望で一般の衣料品店に行くことになった。
 まずは出来合いの平民の服などを士郎の好みで買う。
 次に羊毛に見える繊維を中綿にした布団を2組注文する。片方は綿をかなり硬めに。もう片方は柔らかめに。
 「なに?ベッド用のマットなら、貴族向けの店で注文した方が、ぐっすり寝れるわよ」
 ルイズは言うが、士郎はやんわり断る。シーツなど他にも数点の布を買い込む。
 お金はエンジンの設計図の代わりに貰ったお金でまかなう事ができた。

 丁度お昼時になったので、休憩する。
 カッフェなる店が流行っているらしく、そこで昼食を摂る。

 驚くことにそこでは緑茶と瓜二つの“お茶”が出されていた。カッフェなのにお茶?とは思う士郎だが、
 そこは翻訳上、瑣末なことであろう。

 昼食後、嗜好品の店を訪れお茶を買い入れておくことを忘れない士郎。
 今現在、この国にはコーヒーは存在していないようだ。まぁいいけど。

 ルイズが秘薬の店に行きたいというのでもちろんお供をする。
 そこで何らかの秘薬を買い入れたようだが、士郎にはどんなものかは全然わからなかった。

 これまでの買い物は全て学院に配送してもらうように手を売ってもらう。
 街には、運送を一手に引き受ける配送業もあり、学院でも良く使っているとルイズに教えてもらった。


 最後に向かうところは、街でもあまりきれいとはいえない場所にある武器屋だった。

 ルイズが店の扉をくぐると、店の主と思われる男が胡散臭げに視線を投げかける。
 相手の格好を見て貴族だと気づくと
 「貴族のお嬢様。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目を付けられるようなことなんか、
  これっぽっちもありませんぜ」
 とにかく謙(へりくだ)った態度に出る。
 「客よ」 ルイズは腕を組んで言った。
 「こりゃおったまげた。貴族が剣を! おったまげた!」

 ルイズは黙って、懐から一振りの短剣を店主の目の前に置く。
 「この剣に見合う鞘が欲しいの」
 それは士郎が投影したアゾット剣だった。
 「こりゃなかなかの名品で……。鞘はどのようなものが?金・銀・鉄・革。なんでも作れやすが」
 あつらえになると店主。

 「護身用に肌身離さず身に付けたいから革の方がいいわ。出来合いの革の鞘って無いの?」
 なんだ、一番安値の物か。と店主は不満に思ったが儲かる分、文句は決して言わない。
 「へぇ、そちらの剣(アゾット剣)と同じ大きさの短剣ごと鞘を買っていただければいいかと。
  もちろん不要な短剣は下取りさせていただきまさぁ」

 ルイズは適当な短剣(の鞘)を選び、店主に値段を聞く。短剣の下取り分安くなった値段を提示する店主。
 「それでいいわ。それはこのまま貰っていくから。……シロウ?」

 士郎は店の片隅で独り言をなにやら呟いているようだ。
 「どうしたのよ、シロウ」

 「こら!デル公。またてめ~はお客様に余計なちょっかい出してやがんな!!」
 声を張り上げる店主。それに答えるように士郎のそばから声が聞こえた。
 「うるせい! へぼ店主!! 俺様はこの小僧っこに武器のイロハを教えてやっているとこでぇ」

 「それって、インテリジェンスソード?」
 「そうでさ、若奥様。意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ。こいつは口はやたら口が悪いわ、
  客に喧嘩を売るわで閉口してまして……」

 ふと士郎がその魔剣を持ち上げると、五月蝿かった剣が暫し黙り込む。そして、
 「おでれーた。てめ、『使い手』なんか。……、俺を買え」と突然自分を売り込む。

 既に『ガンダールヴ』のことを知っている士郎とルイズは目配せをしあう。
 「あの剣はお幾ら?」
 「あれなら、百で結構でさ」
 「じゃあ買うわ。シロウ、他に買う物ある?」

 店内の武具を一通り見たが、他に目ぼしいものは無かった。弓も数点あったがたいしたものではない。

 こんな感じで、士郎の街でのはじめての買い物は終わった。

 帰りはまた馬に乗るのかと士郎は少しげんなりした。

 ………


 学院に着いたは夕方ぐらいとなった。

 ルイズの部屋。
 「シロウはこのインテリジェンスソードも『錬金』できるの?」
 「俺っちはデルフリンガー様だ。まぁデルフって呼んでくれ」
 「俺のは『錬金』じゃなくて、投影魔術な。いや、コイツをはじめて見たときから解析できないから
  何かなと思って近寄ったら、コイツが話しかけてきたんだ」
 「コイツじゃなくてデルフな」
 「“剣”属性のメイジでもインテリジェンスソードは別扱いなのね」「…デルフな」
 「コイツみたいなのが投影できることになったら、俺の固有結界内に一人でグチグチしゃべる剣が
  いることになるからなぁ。かえって助かったよ」「…デルフ…」

 「なによ、そのコユウケッカイって」
 「ん~、簡単に言うと精神内の世界が現実に影響を及ぼす現象かな?
  俺が剣の投影をできるのは、その固有結界を体現する能力の一部というか……」
 「……ますますわかんないわよ」

 デルフはいつの間にか拗ねて黙ってしまった。

 「なあ、ルイズ。君の魔法について、ひとつ提案があるんだ」
 真面目な顔で士郎が話す。ルイズは「何?」と訊く。
 「失敗で終わるかもしれないけど、魔法訓練やってみないか?俺流なんだけど……」
 「やるわ!」 ルイズ即答。
 「そりゃ俺みたいな半人前に提案されても……って、即答かよ!?」
 「私は魔法が使える用になるなら何でもするわ! シロウ、でいつやるの?今やりましょう」

 腕をまくり、杖を構えるルイズ。
 「い、いや、ここじゃさすがにまずいよ。広い場所に移らないと。あと道具も必要だし」
 「道具?」
 「コルベール先生の部屋に一冊の呪文書があるんだ。俺には、読めないんだけどね」

 ………

 既に日は落ちて、空から2つの月が明かりを照らす。場所は召喚の儀式を行った場所である。

 ルイズの手元には一冊の呪文書。といっても、唱えても魔法が発動する呪文が載っているのではなく、
 ルーンを分解した辞書を士郎は用意したのだった。

 「ルイズは魔法を失敗すると必ず爆発が伴うんだよな?
  それなら逆にアプローチしてみたら、どうかなと思った」
 「逆?」
 「爆発する魔法を探す。 しかも失敗の魔法ではなく、意図的に爆発を起こす魔法をだ」

 呪文一つで爆発(失敗)が導き出されるのなら、同じように爆発(成功)もあるのではないかと
 士郎は考えたのだった。

 「でも、属性の魔法では『爆発』なんて聞いたことがないってコルベール先生は言ってた。
  じゃあ探すしかないなと。丁度いい呪文書もコルベール先生が持っていたし」
 「うん、理屈はわかったわ。 ……つまり、スペルの組み合わせを探し続ければいいのね?」
 「成功する保証は何も無いよ。草原の中の針を探すようなものだから。それでもやるかい?」
 「もちろんやるわ。 いえ、やらないといけないの。 私が誇りを持って貴族を名乗るには……」

 ………


 「風属性で使われる『ウィンデ』とか水属性の『ウォータル』とかは、
  言葉(ワード)としては対象外よね?」
 「そうだなぁ。今やりたいのは、一番単純な爆発呪文探しだから、多分いらないと思う」
 「じゃあまず『イル』を最初にしてみるわ。残りは(スペルを)何にしたらいいかしら?」

 「爆発。破裂。炸裂。爆ぜる。弾ける。割れる。壊れる。……ん~、こんな感じの言葉かなぁ」
 「シロウ同じ言葉が混じっているわよ。それにしてもシロウは古代語まで使えるの?」
 どうやら、翻訳機能でまったく同じ言葉になったり古代語になったりしているようだ。

 「じゃあ最初は『イル・プロージョン』で試してみるわ」
 士郎の言葉から『プロージョン』と言う古代語を抜き出して呪文を組み立てたルイズ。

 杖を構え『イル・プロージョン』と唱え、前方の空間に向かい杖を振り下ろす!

 <どごんっ!!!>

 爆発(魔法)発動。問題はこれが成功魔法か、失敗魔法かなのだが……

 「駄目、失敗みたい」
 「そうか……、用はこれを繰り返すんだけど、本当にこれは大変な作業になるんだけど……」
 士郎は再度、ルイズにこの地道な作業を行うか尋ねようとしたが、
 既に次の呪文に挑戦し始めるルイズだった。

 「イル・プロージョン・デル」

 <ぱぁぁぁんっ!!!!>

 ルイズが杖を振り下ろした瞬間、甲高い音が目の前の空間で炸裂する!
 それは極限まで圧縮された空気が一気に開放されたような、タイヤがパンクした音のような、
 巨大な風船が割れた時の音のような、そんな音だった。

 あまりの音に驚いたのか、ルイズは直立したまま気を失い倒れてしまった。

 ………

 「ルイズ?大丈夫か?」
 ルイズを部屋へと運んだ士郎。洗面器に水とタオルを用意して、濡れタオルで頭を冷やしてやる。
 「…………ん、……シ、シロウ」
 「どうした?ルイズ。やっぱりこの訓練は無茶だったかもしれない。他の方法を……」
 ここで飛び起き士郎に抱きつくルイズ。
 「シロウ!! 成功したの!! 生まれて初めて魔法に成功したの!!」

 「成功って、さっきの爆発は魔法に成功して爆発したのか?」
 「そう!そうなのよ! 先生やお母さま、お姉さまが言ってたわ。得意な系統の呪文を唱えると、
  体の中に何かがうまれて、それが体の中を循環する感じがするって!!そんな感じなの!
  今、私の中に魔法のリズムがうまれたのよ!!」
 しっかと士郎に抱きついて涙を流すルイズ。

 「これで……、これで……、もうゼロのルイズなんて呼ばれないですむ。お姉さまの役にだって
  立てるし、お母さまを落胆させることも無くなって、やっと本物の貴族だって胸を張って言えるわ……」
 「そうか、よかったな。ルイズ」
 「あ……、ありがとう、シロウ。私…、貴方のおかげで。…これからは全力で貴方の望みをかなえるわ」

 魔法の訓練を提案してから1時間も経たずに、このような急展開を見せることになるとは
 士郎自身も思ってなかった。
 「とりあえず、コルベール先生にも報告しよう」
 「そうね!」
 晴れ晴れとした顔でうなずくルイズ。 魔法が成功したことを教師に報告できる喜びにあふれている。


 ………

 「驚いた。ミス・ヴァリエールが本当に魔法を使えるようになるとは!」
 コルベールの部屋で実際にルイズが魔法を唱えたときの反応である。
 「で、これはいったいどのような魔法なのかね?」

 「魔法のキーワードが“プロージョン”なので『破裂魔法』って感じですかね?
  現実は猫だましみたいなものですけど」
 「「猫だまし?」」 ルイズとコルベールに意味は通らなかったみたいだ。

 <パぁーーン!>
 いきなりコルベールの目の前で両の手を叩く士郎。 目を白黒させるコルベール。
 「今の、俺の世界では猫だましって言う技なんですよ。格闘技の。」

 「おぉぉ、びっくりした。 ほほう、なるほど。たしかにその『猫だまし』にそっくりだね。
  ミス・ヴァリエールの唱えた魔法は。
  では魔法の方も、『猫だまし』という名前で良いのではないかね?」
 「「 え? 」」 ルイズと士郎が驚く。

 「いや、これからもミス・ヴァリエールの魔法を探索というか、開発していくなら、名前も必要だろう。
  見つけた魔法はミス・ヴァリエールの専用魔法として、どこかに記録していくといい」
 「ああ、そっか。ルイズの魔法道は今始まったようなものなんだよな」

 ルイズ、感激にウルっときたが、『猫だまし』は無いだろうと正直思ったりもしていた。

 「ところでミス・ヴァリエール。その、君には申し訳ないんだが、魔法が使えるようになったことも
  しばらく周囲には黙ってもらえないだろうか」
 「なぜですか!? ミスタ・コルベール」
 「それは君が『虚無』の可能性が高まってきたからだ」
 以前あれだけ否定したがっていた『虚無』を、この段階になって肯定する理由を二人は知りたがった。

 「古い文献を探している間に始祖ブリミル自身の魔法に、いくつかの記述が見つかった。
  一つは幻覚タイプといえるもの。次に門を開くなどの移動系。
  最後に、これを一番多用していたようだが爆発系の魔法だ。
  ミス・ヴァリエールの先ほどの魔法とは違って、かなりの規模の爆発のようだがね」

 「 ! 」ルイズはついに自分の系統というものにたどり着いたのである。


 「で、でも、それじゃあ私は、魔法の、『虚無』の修行を行えないんですか!?」
 「いや、人のいないところでの修行ならかまわない。ただし、人に悟られないようにすることが前提だ」
 「音も駄目ってことですね。ミスタ・コルベール」
 「……そうだ」

 『猫だまし』しかわかっていない現状では、修行には音が発生してしまう。
 サイレントを誰かに掛けてもらう以外に、学院内での修行は厳しいだろう。

 「……わかりました。それでも何とか修行する方法は探してみせます。
  だめなら、学院から離れて修行するって手もあります」
 「そのあたりは、君たち二人でなんとか頑張ってくれたまえ。
  私は明日からブリミルの呪文に絞って、調べを掛けようと思う」

 この日はこれでお開きとなる。かなり夜も遅くなってしまった。

 「シロウ。私、立派な貴族になれると思う?」
 士郎が部屋まで送り届ける帰り道。
 「大丈夫! 俺はブリミルって人のことは知らないけど、ルイズの努力次第だよ」

 「ふふ、あんまり応援の言葉になってないわよ」

 今夜も2つの月が二人の歩く先を明るく照らしていた。


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