シロウが使い魔-04


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第4章

 「く、くふふふふふふふ」
 妙な笑い声を出しながらルイズはもだえていた。
 自室のベッドの上で、枕を抱きしめて顔をうずめながら足をバタバタしながら
 笑いを押し殺していた。

 それは、先ほどのことである。

─回想─

  「サーヴァント・衛宮士郎。
  ───これより我が剣は貴女と共にあり、貴女の運命は我と共にある。
  ───ここに、契約は完了した」

 一瞬、呼吸を忘れるくらいにルイズは己が使い魔に見とれてしまった。
 周囲の景色も、時間も、全てが消え去った瞬間……

 < ぐぅぅぅぅうぅぅぅぅぅ >

 台無しである。いくら昼食をまだ摂ってないにしてもである。

 士郎は自分の失態を顔色に顕著に表していた。火竜山脈の万年マグマと比べても
 なんら遜色ないくらいに真っ赤になっていた。

 「…………!」
 ルイズは吹き出すのをこらえる事に精一杯だった。何とか呼吸を整えて

 「遅いけど昼食にしましょ。私の部屋へ運んできて」
 と声を掛けてそのまま部屋に戻ってきたのだった。

─回想終了─

 今もルイズの顔色は真っ赤である。先ほどの名乗り。
 実はそれだけでもルイズは、悶えるには十分だったのだ。
 (私、何を使い魔にこんな気持ちになっているんだろう……)
 そして、名乗りの直後のお腹の音も思い出し、今度は笑い悶える。
 実は士郎のお腹の音に隠れて、ルイズもお腹を鳴らしていたのだが、それを士郎が知ることは無かった。


──────────────────────────────

 お腹の音を聞かれて、逃げるように部屋へ戻ったルイズに取り残され、
 しばらく士郎は立ち尽くしていた。
 気を取り直して、厨房へ食事を調達しに向かう。

 「…………」
 ルイズとは、しばらく恥ずかしくて口も利けないだろう。

 厨房に入ると、なにか大きな物体がもの凄い勢いで衝突してきた。
 「シロウさん! 無事だったんですか?!!」
 シエスタだ。先ほど別れてから、ずっと泣いていたような顔である。
 「わだじ! わだじ! じゅっどジロヴざんのごど、じんばいじで……」
 言葉にならなくなってきている。

 周りのメイドに訊いたところ、
  シエスタがトラブルに巻き込まれたようだと聞いて、見に行こうとしたところ
  泣きながらシエスタが帰ってきた。
  訳をきいても、「シロウさんが……、シロウさんが……」 としか言わない。
  決闘騒ぎがあったとひとりの学院の教師が教えてくれた。
  そして今度はギーシュと名乗る生徒が厨房のシエスタを尋ねてきた。
  シエスタは視線で呪い殺してやるというくらいに、ギーシュを睨みつけた。
  「さきほどはすまない。あれは全面的に自分の非であった」
  と、ギーシュが謝っても、けしてシエスタは睨むのをやめなかった。
 そして士郎が登場したというわけである。

 (そうか、ギーシュは早速謝罪したのか)と、ギーシュの潔さを認めようかとも思った。
 「ジロヴざ~~~~ん!!!」
 泣きついて離れないシエスタを周りの助けも借りて引き剥がして、料理長に賄いを2人分頼む。

 なにがあったかはどうせ明日には噂でわかるだろうと思い、詳しい説明はしないでおいた。

──────────────────────────────


 <コンコン>
 ルイズの部屋の扉がノックされる。
 「開いているわ」

 士郎が食事を二人分運んできた。
 「……!、じゃあ早速食べましょ」
 笑いを堪えつつ、食事を始めるルイズ。同じく食事を始める士郎。

 「なにこのシチュー!! 凄く美味しい!!」
 士郎が持ってきたシチューの皿と、粗末な麦で作ったパン。これが今まで食べた料理の中で
 一番旨く感じたルイズ。
 「なに? 厨房の平民たちって自分たちだけでこんな美味しい料理を独り占めしているの?」

 さすがにそのようなことを言われていると反論せざるをえない。恥ずかしさを忘れて口を開く。
 「違うよ。それはルイズがこれをはじめて食べるからだろう。
  あと昼間、掃除で働いたって理由もあるはずだ」
 「どういうこと?」

 「普段から働いて体を動かしている人間は、体が塩分の濃いものを欲しがるようにできてる。
  このシチューだって、普段体を動かしていない人間には、濃すぎる味付けだと思う」
 ルイズは神妙に話を聞く。
 「厨房の賄いは余り物を食材として作られるんだ。だから大体シチューになる。
  なんでも煮込めばいいんだからな。
  料理長の腕は抜群だろうけど、それは自由に食材を使えるときにこそ発揮されるはずだよ」

 それほど多くこの学院で食事をしたわけではない士郎だが、大体見当を付けて話していた。

 「ふ~~ん、そうなの……」
 相槌を打ちつつ、またそのうちに賄い料理を食べさせてもらおうと企むルイズだった。


 <コンコン>

 扉がノックされる。ルイズが入室を促す。

 「ミス・ヴァリエールとシロウさん、
  ミスタ・コルベールがお呼びらしくてお部屋の方に来るようにと……」
 言伝を持ってきたのは顔を真っ赤にしたシエスタだった。

 「わかったわ。あ、丁度良かった。食器をついでに片付けてもらえる?」
 シエスタは、士郎に何かを言いたげな視線を向けていたが、
 「はい、わかりました。では、失礼致します」
 と告げ、そのまま戻っていってしまった。

 「なにかしら?ミスタ・コルベールの用件って……」

 ………


 「シロウのルーンが始祖ブリミルの使い魔のルーンですって!?」
 「声が大きい!ミス・ヴァリエール」
 始祖ブリミルとは、ぶっちゃけ世界の創始者みたいな扱いの偉人である。
 「それだと、ルイズはそのブリミルって人と同じ属性って事ですか?」
 ルイズの魔法を気にしていた士郎がコルベールに尋ねる。
 「それはわからない。まぁ否定する根拠も乏しいが。なにせ≪伝説≫だからね」
 属性がわかるかもと一瞬思ったルイズだが、これに少し肩を落とす。

 「がっかりさせるようだが、例えばだ。
  シロウ君が『ガンダールヴ』としてこの世界に呼ばれる。
  そして『虚無』の使い手となる人物がこの世界に現れる。シロウ君は忠誠心をもって
  その『虚無』の使い手に仕える。 ということにならないとは言い切れない」
 用は、『サモン・サーヴァント』『コントラクト・サーヴァント」に付随している忠誠効果が
 ルイズの召喚の場合あらわれなかったことを問題視しているのだ。

 「だが、単純にミス・ヴァリエールが《虚無》という可能性ももちろんある。畏れ多いが。
  ミス・ヴァリエールの魔法の失敗による爆発は、
  なんらか《虚無》と関連付いているからというふうに見る方法も無くも無いような気がないでも……」
 ルイズはコルベールを睨む。遠回りに否定したがっていることがありありとしているからだ。

 「じゃあ俺が『ガンダールヴ』とか言うものだとしたら、調べる書物は始祖ブリミル関連を
  中心に漁ればいいんですね?」
 「そういうことになるな」
 「意外と帰る方法を見つけるのも早く済むかもしれない」
 士郎はまだ見ぬ帰還方法を期待してテンションがあがった。

 それと反対にルイズは意気消沈。でも、士郎の前ではその素振りを隠すのだった。

 このあと、コルベールは一連の会話を誰にも言わないように釘を刺す。
 この事を知っているのはコルベールと学院長のオールド・オスマン、ルイズと士郎の4人だけ。
 下手に『ガンダールヴ』の事が世間に知られると、軍が黙っていないと思われるからだ。

 士郎がやった“強化”の魔術だが、この世界において該当するのは『硬化』らしいこともわかった。

 ………



 翌朝

 士郎はシエスタの猛アタックを受けることになった。
 といっても、洗濯のことである。
 「さあシロウさん、まずはこれに着替えてください!」
 と、男性物の簡素な服を上下分手渡される。

 「ではシロウさんの服も一緒に洗っちゃいましょう!」
 たくさんの洗濯物が山積みの桶とは別に、水を張った桶が合った。
 そこへシエスタは袋に入った灰を入れて、溶かし始める。
 「物(繊維)によっては生地を傷めるので、気をつけてくださいね」
 洗濯物を灰の水に沈めていくシエスタ。ある程度の洗濯物を浸けると足で踏みつけ始める。
 「まんべんなく染み込ませたら、今度は同じように水洗いしてください」
 桶から灰汁を捨てると、代わりに水を入れる。そしてまた踏む。
 水が汚れるとそれを捨てて、新しい水を入れる。これの繰り返しである。
 「水が濁らなくなるまで、きちんと繰り返してくださいね」

 士郎は教わったとおりに洗濯の作業をする。小一時間もするとたくさんあった洗濯物は
 残りわずかとなる。
 「こっちの洗濯物は作りが細かいものとかなので、足で踏むやり方はできないんです」
 女生徒の下着だろうか。そちらは手もみ洗いで作業している。
 「こっちは私が洗濯するので、シロウさんは洗濯物を干す作業してもらえますか?」

 学院の一角に干し場があり、洗濯ばさみで乾かしていく士郎。
 自分の服が乾くのはまだだろうから、今日は一日シエスタに渡されたこの服で過ごす事になるだろう。

 ………

 ルイズを普通に起こす士郎。朝食を摂った後、教室へ。
 授業中、何もしないで居るということに居心地の悪さを感じた士郎は、ルイズに筆記用具を用意してもらう。
 自分なりにこの世界の魔法の勉強をしつつ、文字も勉強しようと努力する。

 士郎の書く文字に興味を示したのが他の生徒たちだった。
 「なにこの文字?」「ロバ・アル・カリイエの字?」「僕の名前書いてみてもらえるかな?」
 休憩時間に入ると、ちょっとした騒ぎに。
 士郎がそれぞれのノートに適当に当て字をした漢字で名前を書いてやる。
 昨日の騒ぎで、士郎に対して微妙な空気があったが、これによりちょっとした人気者になる。

 そして授業が終わり昼食。
 昼食が終わるとデザートの時間。

 ギーシュが士郎に声を掛けてきた。
 「君、ちょっといいかな?」
 士郎はギーシュに付き従う。


 人気の無いとこに来たとたんに
 「君には本当~にすまないことをしたッ!!」
 ギーシュが謝罪をする。彼が言うには、昨日のシエスタへの暴言は引っ込みがつかなくなったものであり、
 その場で割り込んできた士郎にこれ幸いと八つ当たりをしたものであったらしい。
 平民に対して弱気な態度を見せられないという貴族の体質は根深いものでありそうだ。

 「あと、君が取り出した剣ってあれは『錬金』によるものだろう?」
 と、突然衝いてきた。
 「え?なんのことだ?」
 「この青銅ギーシュの目をごまかす事はできないよ。最初の君は寸鉄帯びていなかったのは明白さ。
  あと戦闘終了と同時に君の武器は掻き消えたしね。という事は、君はメイジなんだね!?」

 ギーシュの口封じをするわけにもいかない士郎はどうしたものかと一瞬悩む。

 「あぁ、メイジという事はもちろん誰にも言わないよ。ただ一つだけお願いがあるんだ」
 先にギーシュが口を開く。
 「君の『錬金』した武器。あれが非常に気に入ってしまったんだ。自分でも『錬金』できるように
  なりたいから、ぜひそのやり方を指南してくれないかな?」
 片刃の剣のデザインが気に入ったらしい。その位ならそれほど大変なことでもなさそうなので了承する。
 「俺がメイジとかなんとかって噂が立ったらお前のとこを襲いに行くから気をつけとけよ」
 と、脅しを入れるのはもちろん忘れない。

 ………

 午後、ティータイムの終わったルイズは図書館へ向かう。
 始祖ブリミル関連の書物を漁りにいくのだ。6000年も歴史があると、それは膨大すぎる蔵書量となる。
 ルイズは『レビテーション』など使えないため、とりあえずは手の届く高さの書物に限られるが、
 それでも数日で目を通すことなどは不可能であった。地道な作業となる。

 士郎は書物は読めないが、同じく図書室で文字の勉強をする。
 ちなみにコルベールにも『フェニアのライブラリー』でブリミル関連の書物を調べてもらう。

 主に探す資料は、“ガンダールヴ”“始祖の使い魔”“虚無の呪文”“異世界”の4つである。
 これらの目ぼしい記述が見つかった場合、ノートに書き写し、それを後ほど報告するというものである。

 夜になり、コルベールの部屋で報告会を行い、それでその日は終了である。

 ルイズを部屋まで送り届けるときに、ルイズが言った。
 「明日は虚無の曜日だから、街に出るわ。前に言った買い物とかするからね」
 (そんなみすぼらしい格好なんて私の使い魔にさせてられないわ)
 ルイズは今日一日士郎が着ていた服が気に入らなかったらしい。

 「それじゃシロウ、おやすみ」
 「ああ、おやすみ。ルイズ」

 士郎の異世界3日目が終了する。

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