第30話まで

三戦英雄傅


第二十八回~霊帝裸照事件に英断を下し、◆W0wczkw01 はリンリン大友を調教す~



 さてさて、前回窮地に立たされた小銀玉皇后と小魔玉ですが、
いったい、霊帝はどのような判断を下したのでしょうか。

趙忠:「陛下、ご決断はお早いほうが宜しいかと」
霊帝:「むぅうう」
中野区民憲章 :「ホホホ、陛下は筋金入りのMですな」
張譲:「おお、中野区民憲章!」

 中野区民憲章の登場に張譲をはじめ、十常侍たちは顔色を明るくしました。



 身の丈八尺もある大男。中野区民憲章、都・洛陽生まれの洛陽育ちのこの男、史学に明るく
とりわけ文語や繁体字に詳しいことで名を馳せていた学者でありました。

 一介の学者・中野区民憲章もまた、十常侍の権力の駒として、
どMの霊帝を満足させるための駒として宮中に召しだされたのでした。
 当初は、小銀玉皇后の美貌と毒舌に未練を持っていた霊帝も、
中野区民憲章の巨躯から繰り出される罵倒と暴力の迫力に骨抜きと
なり、「中野区民憲章を知らなかった朕の半生は、なんだったのであろう」と
感嘆したとも伝えられております。

 口語・簡体字を得意とする小柄な女性の小銀玉皇后に比べ、文語・繁体字を得意とした
中野区民憲章。その与える迫力たるや、歴然としたものでございました。

 霊帝が小銀玉皇后に飽き、中野区民憲章が寵愛を欲しいままにしていた
ちょうど、今、裸照事件が勃発したのでございます。



何進:(ま、まずいではないか。妹の小銀玉の不始末は、儂の責任問題まで問われる。
このまましがない肉屋に元通りか? いや、元部下の袁紹が相国となっておった。ここは、
袁紹の地位と名門・袁家の力に頼るほかあるまい)

 機を見るに敏な何進は、さっそく配下の(・×・)AaAを晋国に走らせました。
さすがは、元、商人。何進は、妹・小銀玉という商品の価値を見捨ててはおりませんでした。

曹操:「なんだ。この可愛い顔文字の男は」
袁術:「小動物顔よのお。これ、もそっとこちらへ」
(・×・)AaA:「ええい!! 触るな! 俺は何進大将軍の使者だぞ」
袁紹:「何? 大将軍の、とな?」
(・×・)AaA:「名門・袁家の力もありながら、貴殿が今の地位におられるのは何故か考えたことが
おありか?」
袁術:「何を言う。本初兄さんの実力に決まっているだろうが」
魔法剣士情熱的:「そうだ。そうだ。そうに決まっている」
タケノコ萌え:「ちょっと、魔法剣士情熱的、あなた何言っているのよ。相手は都の大将軍からの
ご使者よ。つまり、大将軍の代理でいらしたのよ。何か、事情があるに違いないわ。
御頭も、名族らしく冷静になってください」
魔法剣士情熱的:「すみませんねぇ。オイラ、向こうで待機しています」



 魔法剣士情熱的は、ようやく出番らしい出番が来たというのに、しょんぼりと肩を落とし席を外しました。

袁紹:「して、ご使者の目的は?」
(・×・)AaA:「取り繕っても仕方無いので、率直に言う。何進大将軍の危機を助けて欲しい」
果物キラー:「ほお、大将軍の危機と」
 世事に目が無い果物キラーは、身を乗り出して、会話に参加しようとしました。
(・×・)AaA:「実は、何進大将軍の妹御・小銀玉皇后の不祥事が宮中にて発覚し、
大将軍までもが責任を問われそうなのだ」
無双ファン:「皇后の不祥事とは、これのことですか?」

 無双ファンは、少年らしい素早さで父親である果物キラーの胸元を開けました。

果物キラー:「こ、これ、何をする!! 私には近親相姦や男色の趣味は無い!!」

 息子の突然の行動に果物キラーは、頬を赤らめ、激しく動揺を見せました。

ひょーりみ:「息子に興奮する果物キラー、きめえ」
荀イク:「こ、これ、ひょーりみ殿。古来より、変態と文才とは比例するものなのです」

 荀イクのとりなしに、一同の視線は陳琳と曹操に集中しました。



許攸:「ちっ、なんだよ。孟徳……もう少し早く気が付いておれば儂が相手してやったものを」
袁術:(許攸……名を口にするのもおぞましい。貪婪淫蕩にして不純の人物よ)
荀イク:(許攸の貪欲で身持ちが修まらないのは、変わらぬことよ)
曹操:「わ、儂は変態では無い。断じて、誓って正常な人間だ」
学徒出陣:「果物キラー殿、きめぇは、ひょーりみ殿の挨拶ゆえ、真に受けるでないぞ」

 学徒出陣が、果物キラーを慰めようと果物キラーの肩を叩くと、果物キラーの肌蹴た胸元より
大量の紙が流れるように床上に落ちました。

学徒出陣:「うおっ、なんじゃ、これは」
魯粛:「なんと破廉恥な。春画を隠し持ち出勤とは」
奇矯屋onぷらっと:「息子に春画を見つけられるなんて。マヌケが。普通は立場が逆
ではないか」
果物キラー:「こ、これは袁家十人衆の職務で……」
タケノコ萌え:「嘘よ! 袁紹様の統治する、この晋国では、そんな卑猥な任務は無いはずだわ!」
袁術:「お主らしくも無いな。果物キラーよ。よりによって袁家十人衆の職務だと
偽るとは。息子に春画の隠し場所が見つかったのは、堪えたのか」
陳琳:「この勢いなら、言える。私の文学の師匠は、団鬼六先生だ!」
袁紹:「……果物キラー、お主、妻帯者であるというに」

 漢朝を思いながらも行動に移すことのできぬ日頃の鬱憤が溜まっていたのでしょうか、晋国の者たちは口々に
果物キラーを批難しました。



無双ファン:「お止め下さい。人の父親を悪く言うのはよしてくださいよ」
荀イク:「しかし、無双ファン殿が、お父上の春画を」
許攸:「俺は実はショタなんだ。孟徳の血を引き、文才豊かな曹丕でもイケるぞ」
曹丕:「寄るな、ケダモノ!!」
ひょーりみ:「許攸きめぇ」
学徒出陣:「前言撤回。許攸に対しては、挨拶ではないぞ」

 正史『晋史』許攸傅には、この時の許攸の一言に対する袁術と荀イクの
許攸に対する人物評が今も残っております。許攸の劣情の標的とされた曹操の
子息の名は、曹丕と言いまして、小銀玉皇后と大尉・小魔玉の間にできた
徽皇子の一つ年下の少年でありました。
 曹丕は、曹操に似て詩の才能を持っておりました。

無双ファン:「よく見てください。春画の中身を」
ひょーりみ:「これは、小魔玉の兄上!」

 果物キラーが隠し持っていたのは、裸照事件で流出した小魔玉の春画でございました。
一時は兄と慕った小魔玉の絵姿を前に、ひょーりみは涙を浮かべ、春画を握り締めました。



ひょーりみ:「小魔玉の兄上は、医師として成功し、幸せな家庭も持っていた。なのに、
今や民から憎まれる暴虐大尉だ。それも、これも、あの女狐のせいだ」
田豊:「ひょーりみ殿、それは違いますぞ」
ひょーりみ:「どこがどう違うのだ。田豊殿、説明されよ」
荀イク:「確かに、小銀玉皇后も無関係ではありますまい。しかし、拷問にかけたわけでもなく、
脅されたわけでも無い。行動したのは、暴虐大尉への道を選択したのは、当の大尉なのです」
田豊:「さすがは、荀子様の子孫ですな」

 荀イクに誤りを指摘され、ひょーりみは、男ながらに嗚咽を漏らし、号泣しました。

ひょーりみ:「俺だって、薄々気が付いていたさ。小魔玉の兄貴は、純粋なだけで
、欲望に弱いだけだって。だけど、どうしようも無いだろう? だから、俺は兄貴の
存在自体を消し去るために晋国へ来たのだ」

 ひょーりみの泣き声に袁紹の息子たちは、唖然と口を開いておりました。

袁譚:「なんだ? あの熱い奴は。これだから庶民は」
袁尚:「全くだ。血の繋がっておらぬ義兄弟のために、危険な橋を選ぶなんて」
荀攸:(ひょーりみ、奴も博打の神に魅入られた者に違いない)



 暴走しつつある各人の感情を一つにしたのは、(・×・)AaAの一言でございました。
(・×・)AaA:「この春画が、大将軍の窮地の発端でございます」

 (・×・)AaAの差し出した一枚の春画には、小銀玉と小魔玉の絡み合う様子が
詳細に描かれておりました。

(・×・)AaA:「ただの醜聞ではありませぬ。これを描いた絵師は宮中の画家でも無く、
市井の正規の絵師ではないのです」
袁紹:「しかし、絵師は高祖の代より登録した正規の絵師しか用いてはならぬという
法があるではないか。それに、この卓越した技術、これが正規の絵師でなくして
誰が描いたというのだ?」
(・×・)AaA:「高祖は、正規の絵師の職権と収入を危ぶみ、今日の法を制定された
わけですが、この法を犯した小銀玉皇后はすなわち、高祖と漢室への反逆罪を
働いたという解釈をする法律家もいるわけです」
荀攸:「さもあらん」
(・×・)AaA:「さらに、これらの春画を描きし絵師集団は『憂い似ー』と申しまして、
馬元義なる黄巾賊の幹部が率いております」
勇魚:「馬元義、聖天使ザビエルの腹心と言われる男だ」



(・×・)AaA:「法と不貞を犯した小銀玉皇后をどMの陛下がお許しになったとしても、
他の者は黙っておかないでしょう。妲妃が処刑を免れなかったように」
袁術:「なるほど。我が袁家の力を頼みに、来たというわけだな」
(・×・)AaA:「宮中の恥を打ち明けるようだが、そうだ」
袁紹:「うむ。公路よ。お前は袁家十人衆を発足させて以来、全ての者を使いこなせては
いなかったな。ここは、名門袁家の名を世に知らしめる絶好の機会。袁家の人材の
豊かさを洛陽に見せ付けてやるが良い」
袁術:「承知」
(・×・)AaA:「ありがたい。この御恩、必ずやお返ししますぞ」

 袁家の思わぬ加勢が得られると知り、(・×・)AaAは普段の毒舌も忘れ、
袁紹へ拱手しました。

 袁術は兄の手前、大人ぶって見せましたが、実は何の策も持ち合わせていませんでした。
袁術:「ここで手柄を立てねば、ピンハネした袁家十人衆の俸禄の行方が
露見してしまうな」
 経理に明るい一方でお金に汚い袁術は、密かに己の配下の給料を
ピンハネしていたのでした。困り果てた袁術は、袁家十人衆を招集し、緊急軍議を開きました。



袁術:「お前たちに集まってもらったのは、他でも無い。都・洛陽の何進大将軍の危機を
救う策を出してもらいたいからだ。何進大将軍は、元は平民の出とは言え、我が兄
袁本初の上司でもあられたお方。無碍に断ることもできまい。誰か、我こそはと思う
策士はおらぬか?」
魔法剣士情熱的:「あのー、御頭」
袁術:「おお、魔法剣士情熱的。何か策があるのか」
魔法剣士情熱的:「オイラも軍議に参加してもいいんでしょうか」
袁術:「聞くまでも無いわ」
魔法剣士情熱的:「ほほお。ふんふん。なるほどねー」

曹洪:(魔法剣士情熱的、味方をも惑わす男だ)「御頭、魔法剣士情熱的は外して軍議の続きを」
袁術:「そうじゃな」
荀イク:「御頭、ここは晋国一の知恵の持ち主、丁原殿のお言葉をいただきましょう」
袁術:「丁原か。背に腹は変えられぬな」

 荀イクの進言により、丁原が袁術に呼び出されました。

丁原:「丁原、只今参上いたしました」
袁術:「丁原、時間も無いので単刀直入に聞く。お主、此度の裸照事件を何と考えておるのだ」
丁原:「はっ。大将軍兄妹には悪いですが……ここは、我等が晋国台頭の機会かと」
荀イク:「機はまだ熟しておりません。大将軍は、我が殿の恩人。今回だけ
お助けしませんか」
丁原:「ほお。あの肉屋を。皆さん、随分と人が良い」
袁術:「兄上の命なのだ」
丁原:「では、一言だけ。小銀玉皇后に代わり、陛下の寵愛を受ける者の背後を
探れば面白いことが出てくるでしょう」
荀イク:「中野区民憲章のことですか?」
丁原:「ええ。後は、某にこの件、一任していただきたい」
袁術:「よし、丁原、お主に裸照事件関係の御頭代行を命ずる」
丁原:「はっ」



 こうして、丁原は裸照事件解決の任務中は袁家十人衆を束ねる『御頭代行』と
なりました。丁原に任を任せ、袁術が安堵の息を吐いている頃、
夜の闇に紛れ、噂の中野区民憲章の部屋を訪ねる者がおりました。

中野区民憲章:「誰かと思えば、お主か。まあ、入るがいい」



 中野区民憲章の前に現れました一人の男、名を蕎序と言いまして、宮中に
仕える宦官でありました。

蕎序:「我等が偉大なる指導者、馬元義様万歳!!」
中野区民憲章:「うむ。馬元義様への変わらぬ忠誠心、お主のことはよしなに伝えておこう」
蕎序:「ははー」
中野区民憲章:「これ、畏まるでない。黄巾党へ男根をも捧げたお主の忠義、誰が疑おうか。
ところで、敵はいかがいたしておるのだ」
蕎序:「敵は、もはや戦意を喪失し、日の光も浴びず、塞ぎがちの日々でございます。
食うものも食わず、もはや、衰弱死も時間の問題かと。もとより帝に何の情も持たぬ小銀玉。
あの女が欲しているのは小魔玉のみでございますれば…兄の何進が妙な動きを見せておりますが、
なに、肉屋の悪あがきなど恐れるに足りませぬ」
中野区民憲章:「ほほお。なるほど、の。やはり、お主が小銀玉付きになったのが、小銀玉の運の尽きよ」
蕎序:「その、仲介者の十常侍も、用が済みましたら」



 蕎序と中野区民憲章は、互いの首を切り裂く真似をして、腹を抱えながら笑いあいました。自分たちの
思い通りに動かぬ小銀玉皇后に業を煮やした十常侍たちは、小銀玉皇后失脚の種を探し出すために、
新人宦官の蕎序を小銀玉皇后付きにし、朝から晩まで監視させていたのでした。

中野区民憲章:「愚かな、愚かな奴らよのお。利用しているつもりで、おのれ等が我等に利用されているとも
知らずに」

 中野区民憲章は、笑いが止まらないらしく、顔を真っ赤にさせながら、身を捩じらせました。

蕎序:「小銀玉を消したなら、自然、小魔玉も失脚する……後は小魔玉の地位に中野区民憲章様が
座るだけ……」
中野区民憲章:「一介の学者では、食っていけぬ。金も権力もいくらあって困るものではないからの。
小銀玉も、清流派の奴らを敵に回さねば良かったものを」
蕎序:「左様、あの陳家を敵に回したのは痛手でしたな。しかし、陳家は、いつまでも我等と
同盟を組んでいるでしょうか」
中野区民憲章:「陳家当主のまあcは、煮ても焼いても食えぬ男。しかし、まあcには選民志向の強い
孫の陳羣がおる。この陳羣の自尊心ある限り、我等には刃向かうまいて。陳羣は小魔玉派の中山幸盛を
嫌いぬいておる。ムコーニンの後釜に中山幸盛を置いたのが、小銀玉と小魔玉の誤算」
蕎序:「共通の邪魔者の小銀玉、小魔玉を消した後もでしょうか」



 蕎序の問いに中野区民憲章は、瞬時、笑うのを止め、真顔になりました。

中野区民憲章:「さあなあ。まあ、その時はその時でまあc諸共、陳家も消せば良いではないか」
蕎序:「中野区民憲章様には敵いませぬなあ。黄巾党もいずれ、暗愚で絵を描くしか能の無い聖天使ザビエルに
代わり、馬元義様が党首となられまする」
中野区民憲章:「俺様は二番手が好きなのだ。責任を持たなくて美味しいからな」
蕎序:「おお、恐ろしい方……私めを消さないでくださいよ」

 蕎序は、さぞ恐ろしそうに身を屈めて見せました。中野区民憲章は愉快そうに声を上げました。
どうやら、宗教という名の下に固い結束を誇っていた黄巾族にも、少しずつ亀裂が生じてきたようで
ございます。

 さて、中野区民憲章に権力の座を狙われている小魔玉はどうしていたのでしょうか。
愛妻の失踪に、後ろ盾の小銀玉の失脚の危機……小魔玉はいつになく、元気を無くし、
得意のゲラゲラという笑い声も忘れたようでした。



小魔玉:「ううむ。今回の危機を脱しても所詮は女衒のようなもの。女の容色は
一般には儚きもの。また、いつ、このような危機が訪れるかもわからんなあ。
息子のリンリン大友には、安泰な生活を送らせたいものだが」
八戸のぶなが:「いずれ、坊ちゃまに後を継がせ、王允の座を宇喜多直家信者にでも継がせ、
三公の座を坊ちゃま、中山幸盛、宇喜多直家信者で占めますれば安泰、かと」
小魔玉:「だが、宇喜多直家信者は有能な男……権力を手にしたなら、オイラの傀儡となることを
良しとはすまい。それに、蛮族より己の愛する女を取り返し、さっさと職を辞するかもしれん」
リンリン大友:「じゃあさー、その女の子には、ずっと僻地にいてもらえばいいじゃない」
八戸のぶなが:「ぼ、坊ちゃま!?」
小魔玉:「( ^∀^)ゲラゲラ さすがは、オイラの息子。そうだな。蔡文姫には、ずっと蛮族の慰み者になってもらおうな。
蔡文姫は、宇喜多直家信者をオイラの派閥に引き止める大事な人質だから、な」
リンリン大友:「うん。パパ。それがいいよ」
八戸のぶなが:(やはり、血というものは恐ろしいな)

 小魔玉、八戸のぶなが、リンリン大友ら三人が密談を交わす中、壁に耳を当て
じっと話に耳を傾ける一人の男の影がありました。中山幸盛でございます。



中山幸盛:(なるほど。私とていつまでも大尉の言うなりになるものか。しかし、大尉の派閥が
ある限り私が小魔玉の操り人形にすぎぬことには変わりない。この情報、有事の際の
切り札として保管しておこう)

中山幸盛は居住まいを正すと、たった今駆けつけたようにして小魔玉たちの前に現れました。

中山幸盛:「大尉、お待ちかねの◆W0wczkw01o先生とご一門の皆様が参られました」
小魔玉:「おお、早速、◆W0wczkw01o先生が参られたか( ^∀^)ゲラゲラ」
八戸のぶなが:「◆W0wczkw01o? 画数からして只者では無い様子」
小魔玉:「マイサンのリンリン大友は心優しき男ゆえ、海千山千の怪物の揃った
官界で生き残れるかわからん。そこで、帝王学のスペシャリストの◆W0wczkw01o先生を
お呼びしたのだ( ^∀^)ゲラゲラ 」



 中山幸盛は下男に合図し、下男は大勢の男たちを連れてきました。
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一同:「ザワザワ、ガヤガヤ」
八戸のぶなが:(いったい、何人いるのだ。これだけの集団を束ねる◆W0wczkw01oなる
男。末恐ろしい男だ。必ずや、この中華に名を残すに違いない)



 八戸のぶながは、◆W0wczkw01o一門の醸し出す異様な雰囲気に圧倒されました。
すると集団の中より一人の若い男が現れ、小魔玉に向かい拱手しました。

◆W0wczkw01o:「坊ちゃまの教育係に任命いただき、ありがたき幸せ。
俺が◆W0wczkw01o一門当主、◆W0wczkw01oだ」
リンリン大友:「パパあ、こいつなんか生意気じゃない? 後漢の大尉に向かって
タメ口利いてるよお」

 ◆W0wczkw01oが思ったよりも遥かに若いこともあり、リンリン大友は不満を口にしました。
ムコーニンより洗脳を受けて以来、リンリン大友は漫然とし、増長しておりました。
 すると、一門の男たちがすかさずリンリン大友を取り囲み、口々に罵りました。

名無し1:「あ? 誰に向かって口利いてるんだ?」
名無し2:「そんな口を利くのは、この口か? この口なのか?」
リンリン大友:「ぐふぅううううぅ!?」



 名無し2は、リンリン大友の両頬に往復ビンタを食らわせました。

リンリン大友:「酷い!! パパにでさえ殴られたことはないのにぃいいい!!!」
名無し3:「勝手に黙喚いてろ空気息子が^^」
リンリン大友:「誰? 誰? 今、空気って言ったのは!! 気にしてるのにぃいいいい!!!」
名無し4:「童貞が。ネトラジでもやってろ」
名無し5:「ネトラジやるには、童貞の資格が必要だからな」
中山幸盛:「童貞と言うな!! 綺麗な体と言え!!この不浄な輩め!!!」
名無し6:「何こいつ反応してるの?」
名無し7:「こいつ童貞なんじゃね?」
中山幸盛:「くっ……」
小魔玉:「中山幸盛、何を荒らしに負けておるのだ? 荒らしに乗せられているようでは
お主も官界生活が不安だな( ^∀^)ゲラゲラ」
◆W0wczkw01o:「俺は童貞だ^^」
◆U4UzUJJI72:「ここまでは俺の自演だ」
◆.CYVsNBIpc :「いいや、俺の自演だ」
◆5YQBmVKvH6:「黙れカス」
◆lbIsa2rJ5Q :「◆XHM5n0AhgAは自称法大OBってあたりで
クソコテとしてはたかが知れている^^」
◆W0wczkw01o:「お前ら自演もいい加減にしておけ^^」



小魔玉:「( ^∀^)ゲラゲラ、さすがは天下に名の知られた◆W0wczkw01o先生。
我が愚息の教育、頼みましたぞ」
◆W0wczkw01o:「ははっ! お任せあれ」

 こうして◆W0wczkw01oはリンリン大友に帝王学を教えることとなりました。
 ◆W0wczkw01oがリンリン大友の教育係になった翌日、小銀玉皇后を
廃し、幽閉するという霊帝の決断が公布されました。


中野区民憲章:「さすがは帝、ご英断にございます」
霊帝:「な、中野区…中野区民憲章、そ、そろそろ焦らすのは」
中野区民憲章:「よし、上手く俺様の靴の裏を舐めることができたら
考えてやる」
霊帝:「は、はい」

 もはや、霊帝は中野区民憲章の言いなりでございました。



何進:「遅かったか……」
(・×・)AaA :「いえ、晋国には優れた英知が結集しております。今少し、様子を
見ましょう」
何進:「帰ってきたか。(・×・)AaA。済まぬな。儂のような上司を持ったばかり
お前にも不自由をかけてな」
(・×・)AaA:「まだ、勝負は終わってはおりませぬ。この首皮の繋がっている限り、
負けではありませぬぞ!」

 晋国より帰還した(・×・)AaAは、何進を鼓舞しました。しかし、霊帝は
中野区民憲章の思うがまま。中野区民憲章は小銀玉を消そうとしております。
どう見ても、小銀玉、何進、小魔玉たちの戦況は不利だと思うのですが。
何か、秘策は残っているのでしょうか。


 三戦英雄傅、気になるつづきは、また、次回までのお楽しみに。



三戦英雄傅


第二十九回~小魔玉、再起の策を書状より見つけ出し、小銀玉に献策せんとする~



 小銀玉皇后を廃するとの霊帝の意思は、美貌を活かし宮女に変装し、
宮中に潜伏していた荀彧によりただちに晋国にも伝えられました。

荀彧:「何大将軍の妹君は廃されるとのこと。それから、小魔玉には
代行の書状を無事届けて参りました。小魔玉が目を通すか否か、は小魔玉
次第ですが」
袁紹:「公路よ。どういうことだ? 何大将軍をお助けしろと言ったはずだが」

 兄・袁紹のいつになく険しい目に、袁術は必死に言い訳を考えておりました。
そこへ丁原が現れました。それにしても、丁原は荀彧にどのような手紙を渡したのでしょうか。



丁原:「いえ。小魔玉には書状にて生き残りの術を伝えておきました。
荀彧の言うとおり、目を通すか、実行に移すか否か、これで小魔玉と皇后の命運は決まるわけです」
袁術:「その策を実行せねば、小魔玉と皇后は死ぬのか?」
丁原:「ええ。官界からも、この世からも」
袁紹:「その内容とは、如何なるものだ」
丁原:「易牙になれとだけ書きました。小魔玉も医師ながら、故事に強い男。
それだけで十分に伝わるでしょう」
袁紹:「己の子を殺し蒸し焼きにし、主君に食わせた、あの易牙のことか?」
丁原:「左様。小魔玉は生き残るために、我が子を殺さざるを得ないでしょう。
そして、我が子を殺すことでしか己の生き残る道は無いのです。
我が子を殺すのが嫌ならば己が死ぬだけのこと。大漢を蝕む逆賊にも肉親の愛情は
残っているか否か、興味深いではございませぬか」

 丁原は、何の感情も見せず、滔滔と意見を述べるだけでありました。



曹操:「軍師殿。お主、小魔玉の妻であった身であろう。たとえ不本意なことであろうと、
共に寝起きした情というものは無いのか? それに小魔玉の息子というのは
リンリン大友のことであろう。一時は、己を母と慕った青年ではないか」
丁原:「情? 情など斯様なものとうの昔に捨てました。あるのは、復讐心のみ。
情などに動かされるようでは軍師など務まりませぬ。
小魔玉の息子、とだけ書いたのです。貴公はご存知でしょうが、世に小魔玉の
子息はリンリン大友だけに非ず」

 丁原の一言に晋国の重臣たちに動揺が小波の如く走りました。

無双ファン:「どういうことですか? 軍師殿。小魔玉に他に息子がいるとでも」



丁原:「ええ。その息子とは、徽皇子のことでございます」
学徒出陣:「いろんな物を受け入れすぎだろう。皇后は」
ひょーりみ:「小魔玉の兄上が女狐との間に子を?」
魔法剣士情熱的:「うへぇ…皇后と小魔玉って、そんな昔からそういう関係だったわけ?」
果物キラー:「あれだけイイ女だもんな。わかります」
荀攸:「まさか、子まで生していたとは。なるほど、皇后の弁皇子への風当たりが
厳しいのはそこであったか」

 動揺を隠せぬ群臣たちを尻目に、袁紹、袁術の兄弟と曹操は下唇を噛み締め、
何か感情をやり過ごしているようでした。

無双ファン:「どうなさいました? 殿も、袁術様も曹操様も」
荀攸:(この重大事実に動揺を見せぬとは。恐らく殿と袁術と曹操は、この事実を
前もって知っておったのだろうか。それとも、何か他に関連する事実があるのか。
それも、皆には知られたくない、隠蔽しておきたい事実が)
袁紹:「いや、何でもない。我等、晋国としては可能な限りの手助けをした故、
大将軍の恩には十分報いたであろう」
荀攸:(今日の殿は、やけにあっさりしているな)



 荀攸は、勝負師の勘で小魔玉と袁家と曹家の間に、何か因縁めいたものを
感じたようでございます。
 勝負師の勘、というものは果たして信用できるものなのでしょうか。

丁原:「徽皇子は、元より、人道に反し生まれた不義の子。しかし、その不義の子
一人の命で小銀玉皇后も何大将軍も、小魔玉も元の椅子に座ることができるのです。
これほどの良策はございますまい」

果物キラー:「いくら罪のもとに生まれた子と言えど、子供に罪はないだろう。
見損なったぞ。丁原!!」

 感受性が強く、子供好きの果物キラーは、侮蔑の表情を丁原と床に叩きつけ場を去りました。

丁原:「無双ファン殿。追わないのですか? あなたとお父上の絆の強さは、国内でも
知らぬ者はいないというほどのもの」
無双ファン:「父と私は別個の生き物ですから」



 無双ファンは、感情を乱す様子を見せることなく、丁原を見据えて答えました。
無双ファンの答えに、丁原は僅かに柳眉を上げ「ほお」と洩らしました。

 洛陽では、宮女に扮した荀彧より受け取った書状を小魔玉が握り締め、
貧乏ゆすりをしておりました。さすがの小魔玉も霊帝の勅命と、後ろ盾の
権力が失墜した今となっては、万策尽きたようでございます。

小魔玉:「心残りは、我が子・リンリン大友のことだけ。さて、どうしたものか」
八戸のぶなが:「大尉、まだ恋文ですか。大尉は女性からの誘いが絶えませぬな」
小魔玉:「まあな。あの宮女、媚嬢とは違う美しさのある女だった。味見で終わらすには
勿体無い女だな」
八戸のぶなが:「それほどまでの上玉で?」

 小魔玉は八戸のぶながの問いに、卑猥な笑みで答え、荀彧からの書状を開きました。

八戸のぶなが:「大尉、して内容は」

 小魔玉は書状を食い入るように見つめています。



八戸のぶなが:「お聞かせくださいよ。大尉に心を寄せる娘の初々しい恋文を」

 小魔玉は、八戸のぶながの再三の要求にも気付かぬ様子。ようやく、顔を上げた
小魔玉の顔色は血の気を失い、唇は紫色にさえ見えました。

八戸のぶなが:「大尉? お顔色が優れぬご様子ですが」
小魔玉:「いや、オイラは、いつもと変わらぬ。これより参内する。護衛の呂布を呼べい」
八戸のぶなが:「しかし、今、宮中に行かれては」
小魔玉:「くどいぞ。八戸。この事はリンリン大友にも、中山幸盛にも、宇喜多直家信者にも
口外するでないぞ。お前とオイラしか知らぬこと」
八戸のぶなが:「は、はあ」

 小魔玉は護衛の呂布ただ一人を供に、宮中へと向かいました。
 小魔玉が行き着いた生死を賭けた策とは、「易牙になれ」という丁原の手紙が
今後後漢に何を齎すのか。果たして、策は小銀玉皇后に受け入れられるものなのか。

 三戦英雄傅、気になる続きは、また次回。



三戦英雄傅


第三十回~訶梨帝母の目にも涙、我が子を贄とし小銀玉と小魔玉の野望の炎が蘇る~



 呂布ただ一人を供に従え、宮中に入りたるは、大尉・小魔玉。
宮中の警備の者共も、呂布が相手とあらば無闇に手出しもできず、二人の行く末を阻む
護衛はおりませんでした。

小魔玉:「小銀玉ちゃん、いや、小銀玉皇后」

 扉を開けると、廃人のように寝巻きを着たままの小銀玉皇后が床に座り込んでおりました。
小銀玉皇后も、一人の女性。いくら毒舌と言えども、愛する小魔玉と遭うこともままならぬ
生活を迎えるなど想像しただけで、苦しさにに押しつぶされてしまったのでしょう。
 振り返った小銀玉皇后の目の周り赤く腫れ、目やにのようなものさえ確認できます。

小銀玉:「小魔玉…さん」
小魔玉:「小銀玉ちゃん、オイラが小銀玉ちゃんを助けに来たよ」
小銀玉:「小魔玉さん、本当に小魔玉さんなのか? いつものゲラゲラはどうしたのか」
小魔玉:「オイラだって、ゲラゲラできない気分のときはある。いいかい、時間が無い。
これから言うことを実行したなら、小銀玉ちゃんとオイラは、また元の通り会うこともできるようになる」
小銀玉:「漏れ、小魔玉さんのいない人生なんて考えられん。何でも聞くから言ってくれ」

 目にした小魔玉の姿と声により、小銀玉の顔に生気が戻りました。



小魔玉:「何でも、そう、何でも、犠牲にしなくてはオイラたちのこれからは無いのだ」
小銀玉:「金か? 今なら兄さんに頼めば金なら大丈夫だ。まだ財産も没収されていないはずだ」
小魔玉:「一人の人の命が必要なのだ」
小銀玉:「人の命? 誰の。早く言ってくれ。たった一人の人の命で漏れと小魔玉さんが助かるなら安いものではないか」

 小銀玉の言葉に、小魔玉は面を上げてしっかりとした声で言いました。

小魔玉:「そうだよ。小銀玉ちゃん。たった一人の命でオイラ達は中央に返り咲くことができるんだ。
だから、躊躇してはいけない。オイラが欲しいもの、それは徽皇子の命」

 あまりに唐突な小魔玉の申し出に小銀玉は、憔悴した目をしばしばと瞬かせ、小魔玉の真意を
読み取ろうと小魔玉に駆け寄りました。

小銀玉:「な、何を言ってるんだ。小魔玉しゃん。徽皇子は、漏れと小魔玉しゃんの愛の結晶ではないか。
徽が皇帝になれば、漏れも皇太后に、小魔玉しゃんも皇帝の父親に」
小魔玉:「ならん!!」

 小銀玉の声を小魔玉が一喝しました。小銀玉皇后は、小魔玉の怒鳴り声に、身を縮めました。



小魔玉:「いいかい。小銀玉ちゃん、現実をよく見るんだ。今のままでは、徽皇子が王座に着くことはなく、
小銀玉ちゃんも一生幽閉されたままだ。いや、仮に徽皇子が皇帝になっても、側近たちの手により
小銀玉ちゃんは暗殺されてしまうだろう。漢の武帝の故事はわかるかい? 昭帝が何故、帝位に就くことが
できたかわかるかい? 呂氏の専横の二の舞を恐れた武帝が昭帝の生母・趙氏に自害を命じたからだ。
小銀玉ちゃんは、趙氏になりたいのかい」
小銀玉:「い、やだ。漏れは、趙氏などのように大人しく死ぬものか!! 幽鬼になっても呪い殺し、屍になっても
蘇って肉を喰らってやる」
小魔玉:「そうだろう。死んだら御終いなのだ。人間は、生きていなくてはいかない。人間の生死を
決めることができるのは天のみなのだ。だから、自害を企んでも死ねる者もあれば、死なぬ者もいる。
帝の寵愛は確かに中野区民憲章に移ってしまった。中野区民憲章はオイラ達を疎んじている。
だが、肉親の情というものは切れぬもの。霊帝も、徽皇子への愛情は残っているだろう」

小銀玉:「その徽を殺してしまっては元も子も無いではないか」
小魔玉:「これから、オイラの言うとおりにするんだ。いいね」

 小魔玉は、地獄の鬼のような形相をして、小銀玉の細い両肩を揺らしました。小銀玉は、ただ、頷く
だけでした。



 小魔玉と小銀玉が再会した翌日、栄安二年七月十八日。
 霊帝は、いつものように中野区民憲章と供に、布団の中で朝のまどろみを感じておりました。

霊帝:「なにやら、外が騒がしいの。どうも、鳥の囀りなどという爽やかなものではない。なんだか懐かしい
声じゃのお。それにしても、中野区民憲章。寝顔の迫力も大したものよの」

 霊帝は隣で地響きのような鼾をかく中野区民憲章に目を細め、昨晩の営みを回想しているようでございます。

蕎序:「こ、皇后、あなた様は、既に幽閉された身。陛下にお目どおりなど叶いませぬ」
小銀玉:「いいや、会わせてもらう。漏れと陛下の愛の結晶の徽皇子が病を得てしまい危ないのだ。
せめて最後に父親に会わせたいというのが、母としての愛情だろうが」
趙忠:「こ、これ、肉屋の娘…いや、小銀玉様。あなた様は、一生穴倉のような場所で罪を
悔いつつ天寿を全うすることが帝により命じられているのですぞ」
張譲:「勅命に背いて、ここまで来るとは、いやはや、やはり育ちですか」
小銀玉:「何とでも言え、帝に会わせろ!!」

 皇帝の寝所の前で騒いでいるのは幽閉されていた小銀玉皇后でございました。



霊帝:「おお、そうじゃった。あの声は皇后の声じゃ。徽がどうのこうの喚いているようだが…
懐かしいし、顔だけでも見てやるかの」

 霊帝は中野区民憲章を布団の中に置き去りにし、寝所の扉を開けました。
扉を開けると、綺麗な衣装に身を包んだ小銀玉皇后とぐったりした我が幼子が目に入りました。
 小銀玉皇后は看病に疲れたのでしょうか。美しい顔には暗い隈が影を落とし、唇は
紫色にさえ見えました。

霊帝:「徽! 皇后! いったいどうしたというのじゃ」

 霊帝は徽皇子のただならぬ様子に仰天し、小銀玉皇后に詰め寄りました。

小銀玉皇后:「漏れが、漏れがいけないのです。幽閉された身では徽と面会するのも一日に
限られた回数のみ。乳母に預けても他人では、病の一つ見つけることは適わず…病に罹り気が付けば
虫の息。どうか、どうか最後だけは陛下の腕の中で眠らせてやってくださいませ」

 小銀玉は普段の毒舌もどこへやら、すっかり美女の様子で霊帝に懇願しました。



霊帝:「おお、徽よ。何と言う。これも朕がそなたを母から離した所為だというのか。
許せ、徽よ。この愚かな父を許してくれ。誰か、医師を、医師を呼べい!!」
小魔玉:「陛下、この小魔玉、元は医師でございますれば」
霊帝:「小魔玉、お前、皇后を寝取った身で何と言う……」
小魔玉:「人命と私怨、どちらが大切なのですか」
霊帝:「小魔玉、お主も名医・吉平の弟子。徽を診立ててやってくれ」
小魔玉:「はっ」

 小魔玉は、徽皇子の脈を診たり、瞼を裏返したり、舌を診たりしましたが、
表情が優れません。

小魔玉:「恐れながら、陛下、最早、手遅れかと」
霊帝:「なんと、天下の名医・吉平の弟子のお主までも見捨てるというのか」
小魔玉:「皇后の仰るとおりに最後だけは、陛下の腕の中で」
霊帝:「徽よ、徽よ。朕は皇后の弁に対する冷たい仕打ちから、弁にばかり同情を
寄せ、お前のことは皇后任せにしておった。冷たい父と恨むであろうな。
天よ。どうか朕の命は取り上げても構わぬから、この幼子の命を救いたまえ!」



 霊帝の叫びも空しく、霊帝の腕の中、徽皇子は見る見る間に体温を失っていきました。
己の腕の中で死んでいく徽皇子。霊帝の悲しみたるや、想像にあまるものでございました。
 徽皇子の死より一月、霊帝は宦官以外誰とも会うことはせず、小銀玉皇后の部屋で
過ごしました。息子を亡くした父と母が寄り添うように生活し、小銀玉皇后は霊帝の
寵愛を再び得ることに成功したのでございます。

 栄安二年八月二十七日。小銀玉皇后は、皇后の座に返り咲き、小魔玉も大尉を続投することに
なりました。全ては、何進と小魔玉と小銀玉の思うように進んだのでございます。一人の幼子の
命を犠牲にして。
 小銀玉皇后は、真っ赤な衣装に身を包み、豪華な宝石をしゃなりしゃなりと鳴らし、玉座の隣に
座りました。自分を幽閉に追いやることを進言した宦官たち、自分を快く思わぬ官吏たち、
自分から霊帝の寵愛を奪った中野区民憲章、さまざまな顔を見渡すことができました。

小銀玉:(なんと、ちっぽけで空しいものか。こんなものの為に、皆、人を陥れ、欺き、
殺しているのか。それでも、これらの者は『権力』というものを欲しがる……漏れは
実の子を、愛する小魔玉さんとの間にできた実の子を殺し、また皇后になった。
我が子の命と引き換えに権力を握るとは、何と因果なものか…)



 小銀玉は、小魔玉が呂布を引き連れて来た日に小魔玉が口にした献策を反芻しておりました。

「いいかい。小銀玉ちゃん、ここに一瓶の薬がある。劇薬というものだよ。一度
口にすると二刻ばかり仮死状態になることができる。ただ、仮ではなく、本当の死を迎える可能性も
大きい。徽皇子は幼い。薬がどのように反応するか保証はできない。オイラも仮で済むように調合したつもりだ。
我が子が自分の腕の中で行き絶えていく、これほど残酷なことはないだろう。ここで徽皇子が息を
吹き返すのがオイラの狙いだが、そのまま冥土に旅立つ可能性もある。これは、賭け。
天に全てを委ねよう。我が子の死と生還、これを共有した霊帝は小銀玉ちゃんを絶対に
手放さなくなるはずだ。二人の間には、大きな喪失感という絆ができる」と。

霊帝:「いかが致した? 皇后」

 霊帝は傍らの小銀玉皇后に声をお掛けになりました。見ると、小銀玉皇后の白い頬には
一筋の涙が流れていました。

霊帝:「泣いているのか。まだ、徽のことを」
小銀玉:「恐れ多いことでございます」



 小銀玉は、霊帝の問いには答えず、顔を袖で拭い、きっと群臣を睨みつけました。

小銀玉:(劇薬は徽に耐え切れず、徽は事切れた。無くして初めてわかるものがあると書物で読んだことはあったが、
まさか漏れも経験するとは。待っておれ、漢室に巣食う老害ども、お前らの思い通りにはさせん。
漢は盛れと小魔玉さんのものにしてくれる。漢の妲己、呂后、結構。ただの粛清など
手ぬるいわ)

 さてさて、再び皇后となった小銀玉の恨みを買った清流派と十常侍、中野区民憲章。
彼らの運命と、晋国の忠臣たち、黄巾賊の内紛、乱心の演技を続ける弁皇子の
運命は。

 三戦英雄傅、気になる続きは、また次回。

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最終更新:2008年06月11日 06:10