MAGISTER NEGI MAGI from Hell

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匿名ユーザー

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しばらく戯れた後、教室に向かった。途中、足が竦んで膝を落としかけたが、ハルナの肩を借りてなんとか教室
まで連れて行ってもらった。
先生の言葉は耳には入ってきていたけれども、別の事を考えていて、内容を理解しているとは言い難かった。
教師の目を盗んで、密かにパクティオーカードを胸ポケットの中から引き抜く。
この時間帯なら、まだみんなさっきの悪戯の事を考えているかもしれない。悪戯に引っかけた相手が戻って来たと
なれば、尚更そうだ。忘れられてしまう前に全員の頭の中を読んでおけば、何か解るかもしれない。

額に汗が滲み出てきた。犯人を知って、そしてどうする。ひょっとしたら、ただの悪戯なのかも。もしかしたら
相手も今頃、悪い事をしたと思っているのかもしれない。後で謝りに来るかもしれない。今、その人の頭の中を
読んで嫌な気分になるよりも、後で謝りに来たら、笑顔で許して、それで終わり、でもいいんじゃないか。
もし謝りに来なかったら、今後その人の顔を見る度に今日の出来事を思い返してしまうかもしれない。
だったら、そのまま知らずにいた方が、丸く収まる。
もしこの悪戯がずっと続くようであれば、またその時に見ればいいじゃないか。そうすればすぐに解る。
のどかは引き抜いたカードをポケットの中に戻した。
そうだ、これでいい。変に空気を悪くするよりも、自分が忘れて物事が終わるのなら、その方が絶対にいい。
額の汗を拭って、改めて授業に耳を傾けた。

    釘宮 円
纏まったと思った自分の思考が、徐々にバラバラになり始めている。本当にあれでよかったのだろうかと、
そんな堂々巡りでずっと頭が回りっぱなしだった。やはり人は、そう簡単には心の中まで覆せない。
不安感ばかりが頭の中に詰まってくる。謝ってしまえば、本当はその方が遙かに気が楽なのではないか。
大体どうして、私達がやったという噂が広がると言い切れるのか。宮崎のどかなら、黙っていてくれるかも知れない
のに。
朝食の食器を洗いながら、テレビを見てげらげらと笑い声を上げている美砂に内心苛々を募らせながらも、
やはり謝るべきだった、と後悔していた。
「ホラ、もう時間だよ。ワイドショーの何がそんなに面白いのよ」
テレビの主電源を切り、支度が済んだ事を知らせると、いつも通り三人で寮を出た。
二人のお喋りに適当に相槌をうちながらも、円はのどかに謝ろう決めていた。結局悩むぐらいなら、噂が立った
方がマシだ。何度か答えを行き来させながらも、その答えに落ち着いた。
教室に入ると、宮崎のどかはもう登校していた。委員の仕事の関係で、登校は朝早いのかもしれない。
しばらく視線をのどかの方へ向けていたが、やっぱり噂になるのは嫌で、後でどこかに呼び出す事にした。
どこで誰が聞き耳を立てているとも知れない。
始業チャイムが鳴る。一斉に教科書を出す音と、静寂。
一瞬、何が起きたのか解らなかった。
誰かが「嘘」という声を上げなければ、そのまま気付かない振りをして授業を進めていたかもしれない。

昨日とは明らかに量の違う、そして昨日よりもハードな内容の写真が、円の足下に散らばっていた。

一斉にクラス中からの視線が注がれる。何か言おうとしたが、言葉が出てこない。
円「ち、ちが……」  
それだけ絞り出しても、説明するには足りない。昨日の写真はそうだけど、今足下に散らばっているのは違う。
どう考えても、ただの言い訳と捉えられる内容だ。迷っている内に、最初に声を掛けてきたのは、あやかだった。
「釘宮さん、まさか、あなたが、昨日の写真を……?」
「え……?」  頭の中がパニックを起こしている。日本語だと解るまでに、時間が掛かった。
隣の席にいた刹那は、頬を紅潮させながら、写真を横目でちらちら見ていた。後ろの那波からは、痛い視線が
飛んでくる。前の二人は唖然としてただお互いに顔を見合わせ、時たまその視線をこちらに移していた。
「違いますわよね?あなたも悪戯されたんでしょう?」
否定できないし、肯定もできない。迷っている内に、自分に対する疑いの色は、どんどん濃さを増していく。
すぐに否定できないということは、何か疚しさを抱えているということだ。
重くなっていく空気の音が聞こえてくるようだった。
「あ、あの……私じゃ、ない……」
やっと口が開いたと思ったら、ますます怪しい言動になってしまった。嘘でもいいから、さっさと否定しておくん
だった。しかし、そう気付いた時には、もう遅い。
「いいから、さっさと片づけてきなさい」
一時間目担当の教師がそう促して、円はふらふらと立ち上がり、写真を回収し始めた。

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