MAGISTER NEGI MAGI from Hell

桜咲刹那拷問録6【腹パン】

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匿名ユーザー

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刹那たちがエヴァに監禁され、丸一日が経とうとしていた。
拷問部屋から出た別荘の野外で、一人物思いにふけるエヴァ。
(さて・・・そろそろ丸一日か・・・もう溜飲も大分下がったが奴らをどうするか・・・)
その彼女の元に、フラフラと近寄ってくる影。それは、全身血に塗れたこのかだった。
彼女の血ではない。再び刹那を治癒した際ついたものだろう。
「エヴァ・・・ちゃん・・・」
うつろな目のまま消え入りそうな声で話しかけてくるこのか。
「ん・・何だ?(ひぃっ・・・・こわっ・・・・・!)」
平静を繕い、威圧的な態度を崩さず答えるエヴァ。すると。
「・・・お願い・・・こっから・・・出して・・・」
予想外とも予想通りとも言える言葉が、彼女の口から出てきた。
「・・・なぜだ?貴様は先刻、刹那と一緒でなければここを出ないと自分で言っていたではないか。
奴を置いて一人逃げ出したくなったか?」
(ちゃう・・・うちはせっちゃん見捨てたりなんか・・・・)
エヴァのその言葉に反論したかったこのかだが、これからの事のためにあえて口を噤んだままでいる。
「・・・まさか奴を助けるために、なにか良からぬ事をたくらんでいるのか?」
自分の考えが見透かされたのか。と、このかは焦りを表情に出さぬよう必死に努めた。
「・・・・まぁ、無駄だがな。この空間では私は無敵だ、何人助けを呼んでも余計な犠牲者が増えるだけだぞ?
それに刹那がこの中に人質としている以上何もできまい」
続くエヴァのその発言は結果助け舟となる。
「うぅ~・・・」
突如、このかは呻くように泣き始めた。
「もう・・・いやや・・・こんなん耐えらないよぉ・・・気が狂いそぅ・・・」
糸が切れたように泣き続けるこのか。
「いや・・・いやなんよ・・・・・うぅっ・・・・いやぁ・・・」
彼女はただ『いや、いや』と連呼し泣き続ける。
関西、ひいては東洋最強の魔力を持つやもしれない者とは思えぬ、無力な一人の少女の姿がそこにはあった。
その姿にエヴァは少々不快そうに眉を顰めたが、それは一瞬の事であり、次の瞬間に彼女は軽く笑みを浮かべる。
(あぁ・・・そうか。私が気に入らなかったのは・・・この・・・)



エヴァが刹那に対して過剰ともいえる怒りをぶつけていたのは、ただ恥をかかされたからではない。
自分と同じ人外ゆえの孤独と強さを共有していたはずの刹那が、人間と馴れ合い、
あらゆる意味で「人並み」になっていくのが許せなかったのだ。
だが、それも終わり。この二人の情など脆弱な人間が保身と自己満足のために創り上げた上辺だけのものと証明された。
そう考えるともう、怒りも消えていた。
「まぁ・・・・いいだろう。では、最後に刹那に一言挨拶をしに行くか・・・・」
皮肉を込めた口調でエヴァはそう言い。このかはそれに黙ってうなづく。


中に戻るとそこにはいつも通り無表情の茶々丸と、同じく表情を失っている刹那がいた。
身体の傷は先程このかの魔力で治癒されたが、心の傷と疲労は短時間では癒されようが無く、
冷たい床に裸のままただ座り込んでいる。
そんな刹那に追い討ちをかけるように、言葉を放つエヴァ。
「お前の大切なお嬢様はお先にお帰りになられるそうだ。もうここに来る事もあるまい。
茶々丸、私はすぐに戻るがそいつの世話を任せたぞ」
「ハイ、マスター」
無表情だった刹那の顔がこわばる・・・が次の瞬間には安堵の表情が浮かぶ。
「・・・・・お・・・嬢様・・・・良かった・・・・・私のせいで・・・申し訳ありませんでした・・・」
刹那の言葉は本心であった。自分が原因であるこの事態からこのかが開放された事に対するこの上ない喜び。
しかし同時に、彼女自身も気づかぬ深層心理ではそれ以上の悲しみと無気力感に襲われていた。
過酷な拷問の中において、刹那はこのかを思う事、同時にこのかもまた自分を思っていてくれる。と信じる事。
それが彼女の支えとなっていた。
支えを失った彼女の精神はさらに追い詰められていく。
それでも、このかはそんな刹那の方を見ようとせず、無言で目を伏せたままだった。
その両者の姿を見て、エヴァは自分の考えに確信を持つ。
(所詮こんなものだ。こいつらの馴れ合いなど。苛立ちもするがもういい。今となっては逆に怒りも沸かぬわ)
「さぁ・・・行こうか・・・お嬢様?」
エヴァ達が去り、再び二人きりで残される刹那と茶々丸。
「・・・この・・・ちゃん・・・・」
誰にも聞こえぬ小さな声で刹那はそうつぶやいた。



「開門!」
(ドクン・・・ドクン・・・)
二人はエヴァの別荘から、彼女の自宅の中に出る。
(ドクン・・ドクン・・ドクン・・)
このかは自分の心音が聞こえて来る中、汗に塗れた手の中の「それ」を強く握っていた。
(ドクンドクンドクンドクンドクンドクン)
「さぁ、貴様の用は済んだ。とっとと・・・・」
そう、エヴァは振り返りながら言おうとしたが
        • ゴチンッ!!
次の瞬間エヴァの脳天に走る衝撃。
このかの手に握られている鈍器。カナヅチだった。
「き・・・貴様・・・・なぜそんな物を・・・いや、それよりよくも・・・」
ゴチンッ!!
再び頭を激しく殴られ、エヴァの意識は闇に沈んでいく。

「はぁー、はぁー・・・・や、やった」
このかは刹那から聞いていた。満月を過ぎた時のエヴァの身体は常人以下である事を。
ならば別荘から外に出さえすれば、自分の攻撃でもエヴァを気絶させるに足るであろうことを。
とはいえエヴァにわずかでも警戒心があればこの奇襲は成功しなかっただろう。
なので、このかは心身ともにこの上なく無力な女子中学生を演じた。
途中何度も『自分は逃げるのではない』と声に出して叫びたくなった。悲しげな刹那を見て、抱きしめたくもなった。
それでも、この時のため、そうする事は出来なかった。
「はぁ、はぁ・・・・待っててや・・・せっちゃん・・・・・」
呼吸も落ち着くと、彼女は足早にそこから立ち去る。
だが、本当に刹那の身を安ずるなら、ここで彼女はエヴァを徹底的に打ちのめすべきだっただろう。
しかし、このかはそこまで残酷にはなれなかった。
最悪、怒りが自分に向いてくれれば刹那は助かる。そのようにこのかは考えていた。
だが、これは結果的には彼女「達」にとってより最悪の結果を招く行動となるのだった。



それから一時間、別荘の中の時間でさらに一日が過ぎようとしていた。
すぐ戻ると言ったエヴァが帰らない事を危惧した茶々丸は刹那を部屋に監禁したまま一人別荘を出る。

「・・・・マスター!」
そこには頭から血を流し、倒れているエヴァの姿があった。
「マスター、しっかりしてください」
茶々丸に気付けをされ、目を覚ましたエヴァ。彼女は瞬時に状況を理解する。
「大丈夫ですか?・・・血は止まっているようですが、今手当てを・・・」
茶々丸の姿など目に入らない様子でエヴァは、笑った。
「くっくっく・・・・はっはっは・・・・・・」
出し抜かれた。千年を生き、知恵と研鑽を積んだ自分が極めて若輩の部類に入る人間風情に。
「・・・・なめやがってあのガキ!ゆるさんぞぉー!」
堀川りょうヴォイスになりながら、激昂するエヴァ。頭の傷の手当てをしようとする茶々丸の制止を振り切った彼女は、
自分を殴ったこのかを探しにではなく、再び別荘の中。刹那のいる拷問部屋へと向かった。

部屋に続く階段の扉が開かれる。その下にはあれから丸一日経った今も床に座り込んだままの刹那の姿があった。

「・・・こーどくなーはねをさらしてー♪」

彼女は呟くように唄っていた。孤独と不安と退屈を紛らわすためか、それとも精神が少しずつ崩壊しているのか。
その歌詞はまるで自分自身の境遇を唄っているかのようであった。
エヴァはその痛ましい姿にも意に介さず刹那の髪を掴み無理矢理立たせる。
「いっ・・痛・・・」
無表情だった刹那の顔が苦痛と恐怖で歪む。
「貴様には少々説教をした後、帰してやるつもりだったのだが・・・・」
エヴァは力任せに叩きつけるように刹那の身体を壁に押し付ける。
「気が変わった!心身ともに徹底的にぶち壊してやる!」
そう言うと同時にエヴァの拳は刹那の身体に食い込んでいた。



ドスッ!
「えほっ!」
むせ返る刹那。彼女が肺の空気を吐き出した瞬間に、間髪いれず次の拳がうちこまれる。
「うぐっ」
呼吸が出来なくなり、胃液が逆流してくる感覚が襲ってきた。
「げほっ」
吐き出された胃液を避けようともせず、エヴァは刹那を殴り続ける。
「くっくっく、・・・・はっはっはぁーー!」
ドスッ!ドスッ!ドスッ!
「がっ・・・げほっ・・・・やめっ・・・・」
殴られ続ける刹那の吐き出す胃液には血が混ざり始めていた。
ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドムッ、ドムッ、ドムッ、ドムッ、ドムッ
殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る。
殴り続けた。刹那の身体は徐々に水枕のように柔らかくなり、身体を殴る音と感触が徐々に変わってくる。
肋骨が砕かれ、その破片が周辺の肉や臓器を傷つけながらミックスされているのだ。
このまま殴り続ければ体内で肉骨粉のようなミンチが出来上がる事だろう。
「げっ!がほっ・・・・ごほっ・・・・・ごぽぽ・・・・・」
刹那が吐き出しているのは血の混じった胃液から、胃液の混じった血に変わっていた。
大量の返り血を浴びながらそれでもまだエヴァは殴るのを辞めない。
「マスター!おやめください。死んでしまいます」
後を追ってきた茶々丸の制止の声でようやく我に返るエヴァ。

「・・・・・こひゅー・・・・こひゅー・・・・・げぼっ・・・・・がぼっ・・・・」
明らかに異常な呼吸を不定期にしながら、刹那は血を吐き続ける。
彼女の胸一面は毒々しい紫色に腫れあがっていた。
「これは・・・やりすぎたか・・・このままでは少々マズイ・・・私は治癒魔法は苦手でな・・・・
だが、安心しろ『ギリギリで』なんとか死なない程度には治す事はできよう・・・・ククク」
掴んでいた髪をようやく離されると、瀕死の刹那はそのまま崩れ落ちた。
エヴァは数十本もの刹那の抜けた髪の毛が絡みついた自分の手を見ながら、いっそう笑みを強くした。
(近衛木乃香・・・またここに戻ってくるつもりなのだろう?
その時、貴様の中途半端な真似がどれほどの愚行だったかを思い知らせてやる・・・)

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