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チャチャゼロ残酷編12  魔弾と魔眼/凶刃と狂犬 ……満月の下、歩く影が2つ。 片方は、バイオリンケースを片手に提げた、長身の人物。 片方は、学生服に身を包んだ、小柄な帽子の少年。 龍宮真名と、犬上小太郎だった。 「あーあ。何で2人で行動せなあかんのや。俺、1人の方が動き易いのに」 「本音を言えば私もそうだし、君も1人で大丈夫だろうとは思うがな。  依頼主の指示となれば、仕方ないさ。これも雇われの身の悲しい定めって訳でね」 ぶつくさと呟く小太郎に、真名はフッと笑みを浮かべる。 先日、美空とココネが返り討ちにあって以来、魔法先生たちの巡回はその体制を変えていた。 元々半人前の美空たちのみならず、1人でも十分な戦力となる先生たちも2人1組にしたのだ。 こうするとチーム単位の戦力は上がる一方で、巡回しきれぬ隙はさらに大きくなる。 その分を、魔法先生たちは「傭兵」たちを増強することで、フォローしようとしていた…… つまり、真名や小太郎といった「一応は部外者」の「雇われ人」たちの負担が増えることになる。 龍宮真名。学園都市内にある龍宮神社の1人娘でありながら、凄腕のスナイパーにして傭兵。 「報酬さえ貰えれば何でもするし誰にでもつく」と公言し、魔法先生たちに雇われることも多い。 犬上小太郎。今でこそ千鶴たちの部屋に「飼われている」身だが、元々は裏の世界の人間。 その幼さに見合わぬ豊富な実戦経験を持つ、優れた戦士だった。 2人はこの状況下において、貴重な戦力としてカウントされていた。 自身は魔法こそ使えぬものの、しかし戦い方次第では生半可な魔法先生よりも強いこの2人。 ある意味、最強のタッグと言ってもいい。果たしてこの2人に勝てる者が、どれほど居るだろうか。 ---- 月の下、2人は並んで歩く。 人気がほとんど無い他は、実に穏やかな月の夜。満月にうっすらと雲がかかる。 「しかし、やっぱ西洋魔術師はダメやな~。いくら見習い言うたかて、あんなあっさり……」 小太郎がバカにしたように言うのは、美空とココネの2人のこと。 流石に真名も、眉を寄せる。 「そういう言い方は良くないぞ? むしろ敵の方をこそ手強いと見るべきところだ、そこは」 「せやけどな……」 「?!」「!!」 突然、会話の途中で、2人の顔は強張る。一瞬で仕事モードの顔つきになり、視線を前方に向ける。 いつの間にいたのか――そこには、1つの人影の姿。 黒いマントに身を包んだ、長身の人物―― 「敵か!?」 「いや、あれは……」 身構える小太郎、相手を見極めようとする真名。 そんな2人の緊張にも構わず、その黒マントの人物は、ゆっくりと歩み寄って…… ハラリと、顔を隠すフードを外した。 「あれ、アンタは……!?」 「お仕事ご苦労様です。龍宮真名さん、犬上小太郎さん」 なにやら長い鞄を担ぎ、丁寧に2人に対してお辞儀をしたのは。 真名の同級生にして、エヴァンジェリンの従者の1人。 絡繰茶々丸だった。 「……追加の任務、だと?」 「はい。魔法先生たちの依頼に加えて、私からお2人に依頼をしたいのです」 満月の光の中、茶々丸の唐突な申し出に、真名と小太郎は顔を見合わせる。 2人の困惑をよそに、茶々丸は淡々と説明を続けていく。 ---- 曰く―― どうやら魔法先生の一部が、エヴァンジェリンに嫌疑を抱いているらしい。 魔法先生の一部が、学園長の許しを得ずに動く可能性すらある。 この事態は、エヴァンジェリンの従者である茶々丸としては看過できない。 そこで、茶々丸もまた、独自の判断で犯人を追うことにした。 真犯人を捕まえ、その正体を暴くことで、エヴァの嫌疑を晴らしたい。 しかし、相手は只者でないことははっきりしている。茶々丸1人では困難が予想される。 ならば、誰かと協力すればいい。それもできれば、元々犯人と事を構える覚悟のある連中がいい。 巡回に参加し、しかしエヴァへの先入観のない、雇われ人2人ならなおのこといい―ー 「ただ――私の関与が知れると、せっかくの『犯人』も納得してもらえない恐れがあります。  疑い深い魔法先生たちは、我々がニセの犯人を用意する可能性すら考えるでしょう。  無駄に話が拗れる原因は、作りたくありません」 「……そりゃ、ちと考えすぎと違うか?」 「かもしれませんが、根拠のない話でもありません。  実例を挙げるのは控えさせて頂きますが、過去にも何度か似たようなトラブルがありましたし」 「ふむ。つまり――茶々丸に協力して貰っても、そのことを誰にも話すな、と?  成功しようが失敗しようが、お前とは最初から遭遇すらしなかったことにしろ、と?」 「龍宮さんは理解が早くて助かります」 つまり、茶々丸の「お願い」とは、こういうことだ。 今後、真名と小太郎の巡回チームに、茶々丸自身も加えて欲しい。 そして、茶々丸が関与したことについては、決して口外しないで欲しい―― 「お支払いするお金は、依頼料というより、口止め料ということになるのでしょうか。  実際に犯人の捕縛に成功すれば、成功報酬も払わせて頂きます」 「こちらとしては戦力が増えた上に、収入も増えるというわけか――どう思う、コタロー君?」 「なんか複雑に考えすぎやと思うけどなー。でもま、金も援軍も、あればあるだけ助かるしな」 -[[ページをめくる>真名編―第一話―2]]
**魔弾と魔眼/凶刃と狂犬 ……満月の下、歩く影が2つ。 片方は、バイオリンケースを片手に提げた、長身の人物。 片方は、学生服に身を包んだ、小柄な帽子の少年。 龍宮真名と、犬上小太郎だった。 「あーあ。何で2人で行動せなあかんのや。俺、1人の方が動き易いのに」 「本音を言えば私もそうだし、君も1人で大丈夫だろうとは思うがな。  依頼主の指示となれば、仕方ないさ。これも雇われの身の悲しい定めって訳でね」 ぶつくさと呟く小太郎に、真名はフッと笑みを浮かべる。 先日、美空とココネが返り討ちにあって以来、魔法先生たちの巡回はその体制を変えていた。 元々半人前の美空たちのみならず、1人でも十分な戦力となる先生たちも2人1組にしたのだ。 こうするとチーム単位の戦力は上がる一方で、巡回しきれぬ隙はさらに大きくなる。 その分を、魔法先生たちは「傭兵」たちを増強することで、フォローしようとしていた…… つまり、真名や小太郎といった「一応は部外者」の「雇われ人」たちの負担が増えることになる。 龍宮真名。学園都市内にある龍宮神社の1人娘でありながら、凄腕のスナイパーにして傭兵。 「報酬さえ貰えれば何でもするし誰にでもつく」と公言し、魔法先生たちに雇われることも多い。 犬上小太郎。今でこそ千鶴たちの部屋に「飼われている」身だが、元々は裏の世界の人間。 その幼さに見合わぬ豊富な実戦経験を持つ、優れた戦士だった。 2人はこの状況下において、貴重な戦力としてカウントされていた。 自身は魔法こそ使えぬものの、しかし戦い方次第では生半可な魔法先生よりも強いこの2人。 ある意味、最強のタッグと言ってもいい。果たしてこの2人に勝てる者が、どれほど居るだろうか。 ---- 月の下、2人は並んで歩く。 人気がほとんど無い他は、実に穏やかな月の夜。満月にうっすらと雲がかかる。 「しかし、やっぱ西洋魔術師はダメやな~。いくら見習い言うたかて、あんなあっさり……」 小太郎がバカにしたように言うのは、美空とココネの2人のこと。 流石に真名も、眉を寄せる。 「そういう言い方は良くないぞ? むしろ敵の方をこそ手強いと見るべきところだ、そこは」 「せやけどな……」 「?!」「!!」 突然、会話の途中で、2人の顔は強張る。一瞬で仕事モードの顔つきになり、視線を前方に向ける。 いつの間にいたのか――そこには、1つの人影の姿。 黒いマントに身を包んだ、長身の人物―― 「敵か!?」 「いや、あれは……」 身構える小太郎、相手を見極めようとする真名。 そんな2人の緊張にも構わず、その黒マントの人物は、ゆっくりと歩み寄って…… ハラリと、顔を隠すフードを外した。 「あれ、アンタは……!?」 「お仕事ご苦労様です。龍宮真名さん、犬上小太郎さん」 なにやら長い鞄を担ぎ、丁寧に2人に対してお辞儀をしたのは。 真名の同級生にして、エヴァンジェリンの従者の1人。 絡繰茶々丸だった。 「……追加の任務、だと?」 「はい。魔法先生たちの依頼に加えて、私からお2人に依頼をしたいのです」 満月の光の中、茶々丸の唐突な申し出に、真名と小太郎は顔を見合わせる。 2人の困惑をよそに、茶々丸は淡々と説明を続けていく。 ---- 曰く―― どうやら魔法先生の一部が、エヴァンジェリンに嫌疑を抱いているらしい。 魔法先生の一部が、学園長の許しを得ずに動く可能性すらある。 この事態は、エヴァンジェリンの従者である茶々丸としては看過できない。 そこで、茶々丸もまた、独自の判断で犯人を追うことにした。 真犯人を捕まえ、その正体を暴くことで、エヴァの嫌疑を晴らしたい。 しかし、相手は只者でないことははっきりしている。茶々丸1人では困難が予想される。 ならば、誰かと協力すればいい。それもできれば、元々犯人と事を構える覚悟のある連中がいい。 巡回に参加し、しかしエヴァへの先入観のない、雇われ人2人ならなおのこといい―ー 「ただ――私の関与が知れると、せっかくの『犯人』も納得してもらえない恐れがあります。  疑い深い魔法先生たちは、我々がニセの犯人を用意する可能性すら考えるでしょう。  無駄に話が拗れる原因は、作りたくありません」 「……そりゃ、ちと考えすぎと違うか?」 「かもしれませんが、根拠のない話でもありません。  実例を挙げるのは控えさせて頂きますが、過去にも何度か似たようなトラブルがありましたし」 「ふむ。つまり――茶々丸に協力して貰っても、そのことを誰にも話すな、と?  成功しようが失敗しようが、お前とは最初から遭遇すらしなかったことにしろ、と?」 「龍宮さんは理解が早くて助かります」 つまり、茶々丸の「お願い」とは、こういうことだ。 今後、真名と小太郎の巡回チームに、茶々丸自身も加えて欲しい。 そして、茶々丸が関与したことについては、決して口外しないで欲しい―― 「お支払いするお金は、依頼料というより、口止め料ということになるのでしょうか。  実際に犯人の捕縛に成功すれば、成功報酬も払わせて頂きます」 「こちらとしては戦力が増えた上に、収入も増えるというわけか――どう思う、コタロー君?」 「なんか複雑に考えすぎやと思うけどなー。でもま、金も援軍も、あればあるだけ助かるしな」 -[[ページをめくる>真名編―第一話―2]]

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