アキレウスは暴風の如く敵を攻め立てる。
アキレウスの神速の足運びに耐え切れずコンクリートで舗装された道路は葉っぱをかけられたかの如く崩壊していく。
しかし、それほど激しい攻撃を受けながら、フィンは傷一つ負っていなかった。
アキレウスは困惑する。例え奴の宝具の効果でパラメータがランクアップしても、俺の方が確実に強いはず。なのに!何故!攻めきれない!

アキレウスは勘違いしていた。フィンの真の恐ろしさはその槍術にあらず。
武勇の英雄クー・フーリンと並び立つ知勇の英雄フィン。
彼の武器は『血統の青槍(ビルガ)』ではなく『全知なる白き指(フィンタン)』で得た情報を生かす智恵。
アキレウスの呼吸、攻撃の癖、力、スピード、緩急のつけ方、攻撃に対する反応、直感、反射、防御の癖、間合いの取り方、得意な間合い、苦手な間合い。
アキレウスの戦いにおける全てを知ったフィンはアキレウスの最も嫌う戦いをしているのだ。
未来視といっては過言ではない程、フィンは完全に敵の動きを読みきっているのだ。
しかし、さすがはギリシアの大英雄。自分の戦力全て知られ、対策を取られていても一方的に攻め続けている。

だが、アキレスはいくらせめても倒しきれず、戦局の変わらない今の状況にいらだっていた。
そして、さらにフィンから来る攻撃しかし、アキレウスは避けない。

――ベチィ――

全く力の込めていない一撃。二十合の打ち合いで一回か二回の割合で来るのだ。
力を込めていれば、フィンに隙はできただろうがそのうちどれかはアキレスにダメージを与えただろう。
その事実がアキレウスをいらだたせる。

(この俺を相手に手抜きかッ あ゛~アァッ!! 才能のない凡骨が俺にッ ふざけるんじゃねーー)

アキレウスは怒りに任せて、がむしゃらにヤクザキックを放つ。
蹴りがフィンの顔面にめり込み、十メートル後方に飛ばされる。
アキレウスは当たるとは思っていなかったため、呆けた表情をしていたがすぐに気持ちを切り返す。

「はっ 散々手こずらせやがって この凡才が! カスがいくら頑張ってもカスはカスなんだよ
「ククククク カスに手こずった貴様もカスではないのかね? 頭のおかしい淫売の股から生まれた君の方がカスだと私は思うがねクククク」
「・・・・手前・・・・・ママの悪口を言ったな」
「ああ、言ったとも、どうしたんだい? 過保護なママがいないと怖くて何も出来ないのかい? ママー僕ちゃんフィンが怖いから助けてーって叫んだらどうだい 淫売ママが助けてくれるかもしれないぞ」
「手前は殺すッッ! 肉片一つも残さねぇッッ!」

アキレウスは腰を下げ、前屈姿勢をとった。十メートル離れたフィンの元へアキレウスの足の筋肉がうなる音が聞こえた。
極限に絞られた弦から放たれた矢の如く、一瞬にして音速を超えるスピードに加速した。
この超スピードから放たれる投槍を喰らえば、フィンの五体は木っ端微塵になるだろう。

しかし、フィンの顔に怯えの色はない。むしろ、余裕の笑みを浮かべている。
「かかったな! アキレウスッ!これが我が『策』だ… きさまはこのフィンとの知恵比べに負けたのだッ!この距離この加速では我が策を逃れることはできんッ! きさまはチェスや将棋でいう『詰み(チェックメイト)』にはまったのだッ!」
「グアアアアアアアァァァァッッッーーーーーーー」
アキレウスは絶叫を上げ、あらぬ方向へ突撃する。
民家にぶつかる。
地面の横たわったアキレウスの全身は機関銃で撃たれたかの如き重傷を負っていた。

フィンは蹴り飛ばされた時、吹き飛ばされながらも槍で地面のコンクリートを剥がし、空中に巻き上げていたのだ。
巻き上げたコンクリートの無数の礫が落ちてくる頃にアキレウスを超スピードで突撃するようフィンは会話で誘導したのだ。

アキレウスの超スピードは、正に諸刃の剣。
神馬以外誰も及ばぬスピードは静止物にぶつかったとしても致命的なダメージを与える。
コレが武器や大きなコンクリート片なら回避できただろうが、空中に飛び散った無数のコンクリートの礫を避けることはできない。しかもアキレウスはフィンの策で冷静さを失っていたのだ。回避できるはずがない。

「ンッン~~♪ 実に! スガスガしい気分だッ!
歌でもひとつ歌いたいようなイイ気分だ~~フフフフハハハハ
人の嫁を奪ったディルを殺した時のも… これほどまでにッ!絶好調のハレバレとした気分は無かったなァ… フッフッフッフッフッ
最 高 に 『ハイ!』 っ て や つ だ ア ア ア ア ア ア ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ー ッ」

――ガッ――

「クク………ク……ククククククハハハハハハ なかなか楽しませてもらったぞヌァザの血統よ・・・・
始めてだこれほどの深手を負ったのは・・・・・貴様なら私を殺せたのかも知れんな・・・・
だがお喋りが過ぎたようだな貴様は・・・」
フィンの肩を万力のような力握り締める。

バカな!
並みのマスターだったら、あの状態から動けるまで回復するには時間がかなり掛かるはずだ。
自分のマスターである破格のマスター適正を持った凛であったとしても回復するには十分以上は掛かるはずだ。

フィンは『全知なる白き指(フィンタン)』で六体のサーヴァントの情報を余すところなく収集していたが、フィンは人間を軽視していたため、『全知なる白き指(フィンタン)』でマスターの情報を収集していなかったのだ。そのためアキレウスのマスターがイリヤと言う例外だったことを知ることはなかった

「!?なっ 馬鹿なァァァァッッッ!? フィンが、このフィンがこんなところで死ぬなんてぇぇぇぇぇぇ!!チクショォッ! チクショォォォォォォォッッッッ!!」