―――聖杯戦争が始まる前夜。
マスターの一人である遠坂凛は、サーヴァントとしてラーヴァナを呼び出す事を決定した。
その強大な戦闘力、本人の戦闘力に加え、移動要塞たるプシュパカ・ヴィマナ。
そして、彼の宝具『ラクサーシャラージャ』は聖杯戦争において大きなアドパンテージになるはずだ。
だが……。

「ちょっとライダー!あんた本当に勝つ気あるの!?
あんないいところで敵サーヴァントを逃がすなんて!!」

「勝つつもりだと……?
そんなもの、始めからある訳がなかろうが!!
悪役が勝って世界が絶望に覆われる英雄譚など、誰が喜ぶものか!
余はどうすれば物語が盛り上がるか、
どうカッコよく倒されるのかを考えるので忙しいのだ。邪魔をするな!」

「……私何でこんなサーヴァント召喚したんだろ……。」

―――そして冬木市で連続する女性の失踪事件。
冬木市のセカンド・オーナーである凛はその事件を探るためにラーヴァナと共に捜査に乗り出す。
だが、凛のうっかりによって、彼女はキャスターであるに攫われてしまう。
彼女が敵の城の中にいる状態では、プシュパカ・ヴィマナでの直接攻撃はできない。
そう決意したラーヴァナは直接自らキャスターの居城へと乗り込む事に決意した。
その人の中の悪徳を具現化したような悪夢の城の内部は、決してラーヴァナの美学に合うものではなかった。
そして、姿を表すは、この城の主であるキャスター、エリザベート・バートリー

「ようこそ。異国の神代の王よ。
どうかしら?妾の城は?同じ『悪』同士、気が合うのではなくて?」

「―――ああ、よくわかった。」

ギリ、とラーヴァナは歯を砕け散るばかりに噛み締める。
彼の中にある『美学』が、この女を許してはならないと告げていたのだ。

「貴様は倒される事によって人々に希望を与える『悪役』ではない。
貴様は―――『悪』だ!
人々に、民草に絶望と悪夢を与えるだけの『邪悪』だ!!
余は悪役として、貴様のような私利私欲のために
他者に危害を与える邪悪を許すわけにはいかぬ!!」

「アハハハハハ!滑稽ね!太古の神代の王よ!
悪役が正義の味方ぶるなんて、自分のアイデンティティを投げ捨てるようなもの!
何が『悪役』よ!貴方はただの愚か者にすぎない!
完全な邪悪になりきれない半端者よ!舞台の上の愚かな道化よ!
そんな中途半端な愚か者では―――妾は倒せない!」

「見せてあげるわ……。『役』ではない、真実の『邪悪』を!!
『血に濡れし白亜の虚城(チャフティツェ・フラド)』 !!」

彼女の叫びと共に、床から壁から天井からあらゆる拷問器具の刃が飛び出し、
ラーヴァナへと襲いかかる。
ラーヴァナも手にした剣や棍棒や槍や弓で迎撃するが、いかんぜんその数が多過ぎる。

「知っているわよ!
貴方の宝具の能力は、純粋な人間である私には全く効力を発揮しない!
貴方のような男の血は好みではないのだけれど……貴方の血に宿る膨大な魔力は魅力的ね。
この美しい妾の糧になれる事を光栄に想いなさい!!」

ラーヴァナの宝具『ラクサーシャラージャ』
それは人間や獣以外の外れた存在からの攻撃に対して驚異的なまでの再生能力を発揮する宝具である。
だが、外道に落ちたとはいえ、彼女は純粋な人間。
彼女からの攻撃には、彼の宝具は発動しないのだ。

「貴様には解るまい……。『悪役』である事の『誇り』が!『美学』が!
そして知るがよい。神秘がより強い神秘に打ち消されるように。
悪はより強い悪に飲み込まれるという事を!」

ああ―――そうか。余は、人間を愛してるのだ。
人間の可能性を、正しくあろうとするその魂の有り様を愛してるのだ。
その光を美しく見せるために、余のような暗闇が必要なのだ。

だが、こいつは違う。こいつは光を際立たせる暗闇ではない。
こいつが光を飲み込む漆黒の穴だ。
それはつまり、人間の可能性を全て奪い去るということだ。
そのような事を―――余が許せるはずがないではないか!!

「余を倒せるのは英雄(にんげん)だ……。
英雄(にんげん)でなければならんのだ!!
それは決して貴様ではないぞ!外道!!
来るがよい!プシュパカ・ヴィマナよ!!」

―――その瞬間、今まで光学迷彩によって偽装されていたプシュパカ・ヴィマナが
バートリーのチャフティツェ・フラドの近くに姿を表す。
そして、プシュパカ・ヴィマナはラーヴァナの呼び掛けに答えてそのまま空中を前進すると、
そのまま凄まじい勢いで直接キャスターの居城、に体当たりを行う。
凄まじい轟音。
キャスターのチェフティツェ・フラドのランクはC+。
神代の居城であるランクAのプシュパカ・ヴィマナの体当たりに耐えられるはずもない。
まるで紙で出来た城のように、彼女の城はいとも容易く崩れ落ちていく。

「わ、妾の城が!!妾の城がぁああああ!!」

始めからこうしなかった理由は、ラーヴァナは己のマスターを救い出すためである。
だが、もはや己のマスターを見つけ出した以上は遠慮する義理もない。
ラーヴァナは疾走し、跳躍すると囚われの女性たちや己のマスターを確保する。
さらに、ラーヴァナはひび割れた床に、己の棍棒の一撃を叩きつける。
その一撃によってバートリーが立っていたひび割れた床は粉微塵に砕け散り、バートリーはなすすべなく下に落下する。

「ラーヴァナァアアアアアアアアアアア!!」

「それが余の名だ……冥府に落ちても忘れるな!!」

下の階に落下したキャスターの胸に、己の拷問器具の一部である天空を向いた槍先が突き刺さる。
そこから溢れ出る膨大な量の鮮血。
己の力の源である血を失ったキャスターはたちまち本来の老婆へと戻っていき、そのまま力尽きる。
これが、彼らの戦いの決着だった。