今回のシュタインズゲートを見ていたらついSSを書きたくなってしまいました。
これはフィクションであり、現実とは一切関係ありません。

―――それは、いつも通りの凛のうっかりと不運なミスが連鎖して起こった。
協会のつてを頼って手に入れたはずの聖遺物……ガウェインの鎧の欠片が、
他の物にすり替わっていたことである。
そして、それを確認もせず召喚を開始する凛。
その結果、召喚されたサーヴァントとは……。

「吾輩は……騎士の中の騎士!
誇り高きラマンチャの男!!ドン・キホーテでぁあある!!」

「ああ……やっちゃった……。」

それでも何とか戦いを開始していく二人。
戦闘能力は最低のドンキホーテだが、その宝具『我、騎士道を邁進す』と
「錆び付いた英雄譚」で聖杯戦争を引っかき回しながら何とか戦い抜いていく。
だが、その中でも彼の騎士道は揺らぎはしない。
それは、敵のサーヴァントといえど同様である。

「な……なぜ私を助けるの……?
私は、貴方の敵なのに……。」

敵のサーヴァント、キャスター壱与。
戦闘能力がほとんど無い上に、『我、騎士道を邁進す』の効果によりパニックになったマスターの自滅により、
彼女ははぐれサーヴァントになったのだ。
だが、ドンキホーテは、そんな彼女に手を差しのべる。

「そのような事決まっておろう。
吾輩は、騎士の中の騎士、ドン・キホーテ!!
女性に向ける刃など持ってはおらぬ!!女性を救うのは……騎士の役目ぞ!!」

「だめだ。このサーヴァント。早く何とかしないと……。」



そんな彼らに襲いかかるは、強大な力を持った魔王ラーヴァナ。
その強大な力を誇る魔王に戦闘能力に劣る彼らでは対抗できようもない。

「ふん、道化では余を倒すことはできぬ。
魔王を打ち倒すのは、いつだって英雄(にんげん)だ!!
見せてやろう。真の貴様の姿をな!!」

「あ……ああああああああああああ!!」

そうじゃ!そうじゃ!吾輩は……いや、ワシは……ただの妄想に囚われた、愚かな老人じゃった。

「ははははは!どうだ自分の姿を見せつけられた気分は!道化!!
それでも余を倒したければ……来るがいい!
我が居城、プシュパカ・ヴィマナへ!!ははははは!ふぁーははははははは!!」

ラーヴァナの幻術によって自身の真の姿を知ってしまったドン・キホーテ。
そして、その隙に自身のマスターは攫われてしまうという体たらく。
何が騎士だ。何が英雄譚だ。ワシには何もできぬ。できぬのだ。

「は……ははは……。無駄じゃ。無駄じゃよ……。
吾輩には……いや、ワシには何もできん。何もできないただの無力な老いぼれじゃよ……。
所詮、何も。何も……。」

「ドン・キホーテ!!」

呆然と虚ろな目で呟くドン・キホーテに大して、壱与のビンタが炸裂する。

「貴方は……危機に陥っていた私を助けてくれました。
私が敵対するサーヴァントであるにもかかわらず、
『か弱い女性を救うのは騎士の努め』と言って。
貴方は道化でも英雄卿でもない。立派な騎士なのです。
そんな貴方が……囚われた女性を助けにいかなくてどうするのですか!!」

「私の鬼道による情報収集によれば、あの魔王は強力な再生能力を持っていますが、
その効果は『人間』に大してはほとんど能力を発揮しません。
あの魔王を倒せるのは大英雄でも強力な戦闘能力をもった存在でもありません。
貴方のような『人間』なのです。」

その言葉と共に、ドン・キホーテは天に向かって哄笑する。

「魔王を倒せだと!?囚われのマスターを救えだと!?
笑わせる!!それではまるで―――英雄譚そのものではないか!!」

「いいだろう。やってやる。それが物語の選択だというのならばな。
ワシは……いや、吾輩は―――騎士の中の騎士!ドン・キホーテ!!
魔王を倒すのは、英雄の努めぞ!!」

その言葉と共に、彼は手にしたランスを天空に向かって突き上げる。

「敢えて、もう一度言おう!
吾輩は、騎士の中の騎士!ドン・キホーテ!!
騎士道は―――吾輩の手の中にある!!」



―――ラーヴァナの居城、プシュパカ・ヴィマナ。
そこに乗り込んだドンキホーテと壱与は、まるでまさしく迷路のような内部構造に四苦八苦していた。
そして、その中で偶然にも他のサーヴァントであるロムルスと合流し、
共同戦線を取る形になった。
だが、彼らは気づいていない。
プシュパカ・ヴィマナはラーヴァナの思うがままに操作でき、
彼らはラーヴァナの手によって引き合わされたということを。
それを見ながら、囚われの凛は疑問をラーヴァナへとぶつける。

「何で私に何もしないの?私を倒せばドンキホーテは自然に消滅する。
なのになぜ?それに……アンタ、わざとドンキホーテと壱与とロムルスに会わせたでしょ。何で?」

その凛の言葉を聞いたラーヴァナはやれやれといわんばかりに首を振る。

「ふん、あの壱与とドンキホーテだけでは余には対抗できぬからな。
あの三騎でようやく余に渡り合えるというものだ。
それに……貴様らは『悪役』というのを理解してはおらぬな。
実に、実に嘆かわしい限りだ。」

そして、ラーヴァナはまるで魔王のようにばさっとマントを翻すと言葉を紡ぐ。

「良いか?「悪役」というのはッ!
最後に「英雄」によって倒されなければならんのだ!!
その英雄譚を見る事によって!世の人々が『夢』を!『希望』を!『正義』を!
その胸に抱くことができるのだ!!」

「この世界を見て余がどれほど絶望したか分かるか?
英雄も悪役も幻想も希望も夢も絶望も勇気も何も存在しない。
全てが遠き果てに去ってしまった何から何までまっ平らな世界。
善と悪の境界線すらあやふやで、何の幻想も英雄譚も希望も存在しない世界。
それが悪役にとってはどれほどの苦痛、どれほどの孤独か―――貴様に解るか!?」

そう叫んでいるラーヴァナの姿はまるで自分一人だけが取り残されて泣いているようだった。
それを見て、凛は思わず呟く。

「つまり―――アンタは「英雄」が大好きってことか。」

「そのとおりだ!余のような存在は、『悪になるしかなかった弱い存在』は、
英雄(にんげん)によって倒されなければならないのだ!!」
来い!来いよ英雄!余を打ち倒してみせよ!余を満たせ!余を救え!余を救ってくれ!!」



―――プシュパカ・ヴィマナの王座。
そこには、王座に座っているラーヴァナの姿が存在していた。
それに挑むは、ロムルス、壱与、そしてドンキホーテ。
ラーヴァナはまさしく魔王の威厳をもってそれを出迎える。

「よく来たな。歓迎しよう。
だがな、貴様らには余を倒すことはできぬ。
神もどきに、偶像の女王、それにただの人間ではな。」

ラーヴァナのその挑発に、ロムルスは不敵に微笑む。

「ふん、それはどうかな?
やってみなければわかるまい?
絶望的な状況をひっくり返す事こそが英雄だ。」

「なるほど。それは道理だ。
だがな。貴様では余を倒す事は出来ぬぞ?神もどき。
貴様の神性はこの中でもトップクラスだ。
それでは、余を倒す所か、傷つける事すらできぬわ。」

確かにロムルスの神性はサーヴァントの中でもトップクラスのAだ。
これではラーヴァナを倒す所か傷つけることすらできまい。
さらに壱与も神性を所有している上に戦闘能力が皆無では話にならない。
ドンキホーテでは戦闘能力が決定的に欠けている。
だが、そんな状況でも、ロムルスはにやりと不敵に微笑んだ。

「ああ、確かに俺ではお前を倒す事はできない。
だが……この程度ならばできる!!
『討ち立てる繁栄の大樹(パラティウム・クィリヌス)!!』」 

「なっ……!!」

瞬間、がくんとプシュパカ・ヴィマナは飛行速度を落とし、ゆっくりと墜落していく。
それは大樹と密林が成長するに従ってますますひどくなってゆく。
ロムルスが作り出した大樹は、ヴィマーナの魔力を吸収してどんどん巨大化していくのだ。
そして原動力である魔力を失ってプシュパカ・ヴィマナはさらに地面へと落下していく。

「き、貴様ぁああああっ!!」

『討ち突ける繁栄の枝葉(パラティウム・クィリヌス)!!』

その瞬間、大樹からロムロスが取り出した二つの投槍がラーヴァナの両太股を貫いた。
しかも、その投槍から無数の枝が伸び、ラーヴァナの動きを絡め取ろうとしていく。
いかに再生するとはいえ、その傷口が槍で貫かれたままでは傷は再生できない。
しかも抜こうとするのを拒むように、その投槍から無数の枝が伸びラーヴァナの体へと巻き付き、
さらに床にも巻きついてラーヴァナの動きを止めようとしているのだ。

「そうか!貴様……余の動きを止めるのが目的か……!!」

「そのとおり。しかもその投げ槍は貴様のヴィマーナの魔力によっていくらでも再生できる。
貴様のヴィマーナの魔力が尽きるまでな!!」

「なぁああめぇええるぅうなぁあああ!!」

そうラーヴァナは叫ぶと、その腕を利用して体に伸びてくる枝を切り払いながら
太股に突き刺さった投槍を無理矢理引きはがす。
元はロムルスの攻撃によって作られたその傷は瞬時に再生を開始する。
だが、その瞬間を狙い済ましたように、ロムルスは更に投槍を大樹から取り出し投擲する。

その投槍は、再生を行い始めた両太股、両脛、そしてラーヴァナの胴体へと突き刺さる。

「今だ!足は止めたぞ!行け!ドンキホーテ!!
貴様が道化でなければな!」

「駆けよ!ロシナンテ!!疾風のごとくに!!」

その瞬間、ロシナンテにまたかったドンキホーテはランスを構えると、
ラーヴァナへと疾走する。

「わ、私だって……私だって無力じゃないっ!!
お願い!力を貸して!私に光を!!神獣鏡反射!!」

壱与の力、鬼道の願いによって、その場にいる霊的存在は光に姿を変えて、
壱与の神獣鏡へと結集し、反射して猛烈な光となりラーヴァナの網膜を焼きつくす。

「がああああっ!!目が!目がぁあああっ!!」

網膜を焼かれ、ロムルスの投げ槍によって動きを封じられたラーヴァナに向けて、
ランスを構えたドンキホーテはただひたすらに疾走する。

「聞け!魔王よ!そして我が名に戦慄せよ!!
ワシは……いや、吾輩は―――!!」

そう、以前のワシは風車を怪物と間違い突撃していた。だが、今度は違う。
今度は風車ではない。正真正銘の魔王だ。
笑わせる。これでは―――まるで英雄譚ではないか!!

「騎士の中の騎士!ライオンの騎士!ラ・マンチャの男!
アマディス・デ・ガウラの次に騎士道に忠実な存在!!」

「吾輩は―――ドン・キホーテ!
騎士の中の騎士!真実の騎士!ドン・キホーテだああああっ!!」

次の瞬間、凄まじい音と共に、ドンキホーテのランスはラーヴァナの胸を貫いていた。

「クハッ。」

「クハハハハハ!!良い!実に良いぞ英雄!
そう、それで良い!悪役とは!魔王とは!
最後に『倒されなければならん』のだ!!」

胸を貫かれ、血を吹き出しながら、ラーヴァナは哄笑し、絶叫する。

「ここに英雄譚は完結した!
地には平和を!男には勇気を!女には愛を!
そして―――人々には希望を!
語り伝えよ!悪とは!必ず倒されるということを!!」

さらさらと、チリへとなっていく体を見つめながら、
ラーヴァナはドンキホーテの方へと向き直ると、
最後に小さく呟く。

「ありがとう……。余を……救ってくれて……感謝……する。」

その言葉と共に、ラーヴァナは完全に消滅した。
英雄に倒されることこそが―――彼にとっての救いだったのか。
ドンキホーテは―――無意識の間に敬礼をしていた。
無言の敬礼だった。奇妙な友情がそこにはあった―――。