一瞬…であった……!! ザッハークがリナルドの命を賭けた『揺らめく焔天(フランベルジュ)』で二頭蛇を切断され よもやの事態に我を失ってからこの瞬間まで…!!
それは時間にしても…一秒にも満たない間だった!!
だが…その間に…!!!



半死半生のヴラドは次の行動を起こしていた……!!!



背後からザッハークの肩に飛び乗り、杭を深々と刺すヴラド……!
もう絶対に放さない……! 呪いに犯される! ヴラドは餓え渇く鮮血の粛杭(カズィクル・ベイ)で自分ごとザハークを攻撃する!!
「鮮血の粛杭(カズィクル・ベイ)」
無数の杭が生える。しかし・・・
「ナめるnaaaaaaaaaa」
身体の内側から焼かれ、杭でズタズタにされてもまだ滅びない
再生した二頭蛇がヴラドを食らう。肉を食らう。総身を蛇に食われヴラドは消滅した。
二体のサーヴァントを倒した後は、マスター殺すだけだ。
敵のマスターを殺そうと振り向いた直後、正体不明の傷が出来る。悪魔じみた直感でザッハークはすぐに原因を突き止めた
「ギザマGAあ」
教会の屋根の上に一人の男が立っていた
ザッハークにマスターを殺されたアーチャーだった。
ザッハークに負わされた傷は深く、一射打つだけでに死に近づいている
アーチャーが弓を射る、もはや、ザッハークは立つ事しかできない。たった一人で幾多のサーヴァントを倒したがココが限界だ。
――終われん――
まだ終われん。アンリ・マユを殺すまでは絶対に。我と同じ願い――人間を玩弄に弄ぶ神々、我等人間が逆襲するのだ!! そのためにソロモンに聖杯を渡し、ソロモンがアンリ・マユを召喚するまで死ねん。
「ウォォォォォォッォォォォォォォォoooooo」
神への憎しみを込めた断末魔をの叫びを上げ、悪神に命を弄ばれた男は消滅していく。
消滅していく意思に明友の声が聞こえる
――よく、やったぞザッハーク 同じ願いを持つ明友よ 貴様のおかげで、王の神殿を作れた――
もう、安らかに寝ろ。貴様の願いは――俺が叶えてやる!!―



――ああ、・・・ お前なら・・俺の願いを叶えてくれる・・・驕り高ぶった神に俺達人間の意地を・・・・
神に殴りつけてくれる・・・あ・・あ・・・安心した・・――
神殿の内部に鎮座する男がいた。ソロモンは明友の言葉を胸深く刻み付けた。



「ああ・・・必ずだ・・・・明友よ・・・・奴等に人間の意地を見せてやる」 




空中神殿が衛宮士郎達の前に姿を現す




 最凶のバーサーカー、ザッハークをなんとか退けた士郎たちを嘲笑うかのように出現する魔術王の空中神殿。
 満身創痍の彼らを巨大な黒い影が覆う。
「クソっ、あんな場所どうやって行けばいいんだ!?」
 その場にいる誰にも、もうそんな余力は残されていない。
 せめて神殿の内部にさえ侵入できれば――――――。
「その役目、私にまかせてもらおう……」
 そこにありえない戦力が存在した。
 それはマスターを失い、瀕死の重傷を負って消滅したと思われた竪琴の騎士。
「な、アーチャー!? あんたまだ生きて!」
「言峰が死にこの傷と毒。この体、もってあと数分といったところだろう……だが、それで充分だ」
 老騎士へと視線を向ける弓兵。
 目と目で語り合う歴戦の弓兵と偽りの騎兵。
「……かたじけない、アーチャー殿」
「なに、これでようやく私も本来の自分として事を為せるのだ。礼には及ばんよ」



 神殿―――その内部を標的に“矢”を番える。
 限界まで弦を引き絞る。
 おそらく自分はこのあと消滅するだろう。
 悔いが無いといえば嘘になる。
 ならばこそ、己の全てをこの一矢にかけるのみ―――!







「さあ、我が最期の音色に乗って往け、ライダー!!」



 アーチャー渾身の“一矢(アロンソ・キハーナ)”が空へと放たれた――――――。







「ガッ・・・ハァ・・・ッ!」



 ライダーが地に倒れ伏す。その固有スキルと宝具でダンジョンと化した神殿を潜り抜け、とうとうキャスターの眼前までたどりついた彼だったが、キャスターの悪魔が召還した武装兵士たちとキャスター自身の魔術の前に、ただの田舎の下級貴族でしかなかった彼と痩せ馬ロシナンテが傷つき、力尽きるのは自明の理だった。



「ようやく倒れたか英雄狂よ」



 そういうキャスターも内心ではこの状況に驚き、称えていた。まさかただの人間と痩せ馬でしかない彼らが、彼の七十二の悪魔の力を前にこれほどの粘りを見せるとは。



「錆びた英雄譚(ラスト・ファンタズム)・・・。そうか、お前も私と同類だったのだな」



 神秘を否定するライダーの固有スキル。それを知りキャスターはつぶやき、納得した。この男もまた自分の信じた物に裏切られたのだと。神など力ある悪魔でしかなく、騎士道などこの世界の何処にも無くなってしまっていたのだと。消え行く老騎士に聞こえるはずはないと知りながら。



「・・・・な・・・に・・・」



しかし、ライダーはその言葉に反応を示した。



「・・・まだ喋れるのか。ならば末期の言葉くらいは聞いてやろう。
―――その言葉は、私が拳とともに神に叩き付けよう」



英雄は嘘をつかない。キャスターの言葉は彼の心の底からの思いだった。だが



「・・・・一緒に、するでない」



ライダーの口から出たのは、彼の予想と正反対の言葉だった。



「何?」



「一緒に・・・するなと、言ったのだ魔術王。・・・確かに・・・私は裏切られた。だが・・・それ以上に・・・裏切ってしまったのだ・・・・・・・アッ・・・ガハァッ‥・!」



残り少ない現界時間をさらに縮めながら、老騎士は喋り続ける。



「私も・・・気付いて・・・しまった。私が・・・夢見た世界は・・・何処にもな・・・いと・・・。騎士道・・・など・・・時代・・・遅れの妄想・・・なのだ・・・と・・・。・・・だが」



老騎士は傍らで倒れている痩せ馬に眼をやる。生涯の相棒の周りには多くの武装兵士達が犇いているが、キャスターの命令なのかいまだ止めを刺されては居なかった。



「私は・・・気付かな・・・ければ・・・良か・・・った。いや、気付・・・いても、最・・・後ま・・・で・・・夢見て・・・いればよ・・・かった・・・のだ」



老騎士の息切れる間隔が増えていく。それは消滅のときが真直に迫っていることを示していた。



「最後・・・まで夢・・・見て、夢を・・・見て・・・いるふ・・・りをして・・・死ねば・・・よか・・・ったの・・・だ。それ・・・どこ・・・ろか・・・私・・・は・・・」



今でも後悔するあの今際。ドン・キホーテという伝説の騎士は、ただの郷士アロンソ・キハーナに戻ってしまった。そしてそのアロンソ・キハーナのした事と言えば、生涯最高の友を、自らの夢と共に裏切っただけだった。
私たちの旅は無価値であったと。お前が仕えたのは偽者の騎士だったと。感謝ではなく謝罪の言葉を遺してしまったのだ。



「―――――フン。もう良い」



キャスターは苛立たしげに吐き捨てる。過去と未来とを教える彼の悪魔は、ライダーの過去すらも彼に教えていた。そして今のライダーの言葉から、ライダーがどのようなことを考えているか判断するのは彼にとっては容易い事だった。



「お前のようなものと自分を重ねていたのが腹立たしい。貴様もわが父と同じく、神の御許とやらに逝くが良い」



キャスターが武装兵士達に攻撃を命じようとする、だが



「いや、・・・逝く・・・のは貴様も・・・一緒だ」



ライダーが呟く、そして



「少年・・・サンチョ・・・いや、マスター。君達の・・・・勝利だ」




キャスターの眼前に、緋色の長槍が出現した。





「な・・・ッ!・・・・ガハァッ!」



見てから避けたのでは遅すぎる。あらゆるものを矢として番え、空間を跳躍して飛来するその必中の矢は




「今の出現の仕方はアーチャーの弓か・・・ッ!それにこの槍はあの吸血鬼の・・・づゥ・・・ッ!」



彼の悪魔と知性はこのような状態でも状況を正確に理解させる。しかし理解できても最早遅いのだ。いくら彼の悪魔が傷を瞬時に癒し、彼が体内に防壁を張ろうとも、彼の体を完全に貫通したランサーの槍『餓え渇く鮮血の粛杭(カズィクル・ベイ)』は、それよりも早く血を杭に変え、彼の体を串刺しにしていく。



「彼は・・・吸血鬼・・・などでは・・・ない。・・・国の為、民の為、正義の為・・・化け物と呼ばれようと己の道を曲げ・・・なかった。・・・・正真・・・正銘の・・・英雄だ・・・・あ・・・ガッ・・・!」




しかし彼の槍は一度真名が開放されれば周囲の血を元に無限に、無差別に増殖、攻撃する物である。ライダーの体から流れ出た血もまた槍となりライダーを、周囲の武装兵士達を串刺しにしていた。




「最初から相討ち覚悟だったというわけか・・・ッ!しかし何故だッ!何故消滅したはずのランサーとアーチャーの宝具が・・・・ッ!?・・・・投影ッ!?・・・馬鹿なッ!こんな異質な投影、わが七十二の悪魔の中にも・・・・・ぐあァッ!」




とうとう槍が彼の肩を貫く。彼にこの状況を無常に理解させ続ける悪魔も、彼の体内を突き破る槍を止めることはかなわず、悪魔によって召還された武装兵士達も、かつてかの公爵が三万の敵兵をそうしたようにほとんどが串刺しになっていた。




「おのれ・・・・・ッ!おのれおのれおのれ・・・・ッ!私は、私は神の下に召されたりはしない・・・ッ!私が神に会うのは奴を悪魔に堕とすときだけだ・・・ッ!奴もただの悪魔の一人に過ぎないことを世界中に知らしめる時だけだ・・・ッ!そうだろう。わが七十二の僕たちよ・・・ッ!・・・・ガアアアアッ!」




悪魔は応えない。生前ならいざ知らず、サーヴァントの身で七十二の悪魔達本体を呼び出すことは叶わず、神殿の効果で再現された悪魔の能力では彼の方を、背中を、手足を貫く槍をくい止めることは叶わない。




「貴様の・・・それは・・・僕でも・・・仲間でも・・・ない。従者とは、友とは、決して・・・見返りや・・・代価を支払うことで・・・・成り立つ・・・関係では・・・ないのだ・・・・・・・そう・・・・だろう、サンチョ。ランサー・・・」



ヴラドの槍に貫かれ、内側からズタズタにされている筈のライダーが呟く。彼を貫いた槍は、その後の連鎖攻撃を起こすことなく静かに濡れていた。それは、消滅前に彼を英雄だといってくれた友への恩返しだったのかもしれない。




「Jesus(クソッ)!貴様のような道化に・・・グッ・・・グァアアアアアアアアアッッッ!!!!」



幾千の槍が彼を内側から突き破る。キャスターの死を示すように、彼の気付いた神殿はガラガラと崩れ去り始めた。




「勝ったぞ・・・ロシナンテ・・・」



彼は近くに倒れ伏す、彼にとっては比類なき名馬であった痩せ馬に目をやる。奇跡的にロシナンテには槍は一本も刺さっていなかった。



「ロシナンテ・・・我・・・らの騎士・・・道は・・・確・・・かに・・・・成・・・された・・・ぞ。・・・サンチョ・・・お前・・・の主人・・・は、立・・・派な・・・騎士・・・に・・・なれた・・・か・・・?」



崩れた天井から空を見上げる。あの空の向こうに、かつて自分を騎士として埋葬してくれた友は居るのだろうか。



「いや・・・そうでは・・・ない・・・な。ドン・・・キホー・・・テ・・・デ・・・ラ・・・マン・・・チャは・・・伝説・・・の・・・立派な・・・騎士・・・だった・・・のだ・・・。」



そう言って笑い




「ありがとう・・・サンチョ・・・良く・・・仕えてくれた・・・」




今際に言えなかったその言葉を遺し、ドン・キホーテ・デ・ラマンチャと名馬ロシナンテは消滅した。