<プロローグ>
 カランカランカラン―
 おめでとうございま~す、と金髪の処女神フッラが、手にしたベルを鳴らしながら笑顔で言う。
 ここはヴァーラスキャールヴ。軍神オーディンの館である。
 キリスト教に信仰を奪われて以来、すっかり閑古鳥が鳴くユグドラシルで、知恵の神でもあるオーディンは町興しならぬ神話興しを画策していた。
 その結果、何やらわけのわからない宴が始まった次第である。
 そのお祭りの最中、北欧の英雄の代表の一人として招かれたシグルドは、福引イベントに参加するハメになり・・・
 呪われた指輪の力なのか、見事一等賞を引き当てたのであった。
フッラ「一等賞はなんと、ヴァルハラ温泉のペアチケットですね~。ベルセルク達が経営してるホテルの無料券とセットですよ~」
シグ「・・・ヴァルハラで何をしているんだ、ベルセルク達は」
フッラ「ラグナロクがいつまでたっても来ないので、みなさん退屈だと不満そうでして。暇つぶしとばかりに温泉経営を始めたようです」
シグ「だから、なぜに温泉なのか」
フッラ「そこに温泉があったからですよ。オーディン様もお気に入りなんですよ、ヴァルハラ温泉」
オー「あそこの温泉、マジで腰痛に効くんじゃよな」
シグ「・・・まぁ、せっかくだから逝くとするか。
   おい待て、今なんか言葉が妙な方向に歪まなかったか?」
フッラ「気のせいですよ。では、いってらっしゃいませ~」
ブリュ「さぁ、行きましょうシグルド。ヴァルハラ温泉、一度行ってみたかったのよね」
シグ「・・・ブリュンヒルド、居たのか」
ブリュ「ええ、ずっと」


<中ボスステージ vs ヘクトル&パリス>
シグ「む、あそこに居るのは・・・」
パリス「おや、シグルドさんじゃないか。奇遇だn・・・」
ブリュ「『神戦誘う戦姫の槍(ロギ・ヴァルキュリア)』ーっ!!」
パリス「ぎょわーっ!!?な、いきなり何をするんだ!?」
ブリュ「黙りなさい、女の敵。貴方が視界に入るだけで不愉快です。即効消えろ」
パリス「ひどくない?女の敵とか言われてるけど、僕にもそれなりに言い分が・・・」
ブリュ「ギヌロ」
パリス「・・・怖。兄さん、助けて」
ヘクト「・・・情けないにもほどがあるぞ、パリス。
   あ~、ブリュンヒルド殿。トロイア戦争の件は、こいつにも同情の余地はあるし、こいつなりに反省もしているんだ。
   そこまで毛嫌いするのは、やめていただけないだろうか?」
シグ「ブリュンヒルド。ヘクトルの言うとおりだ。それに、いきなり攻撃は流石にどうかと思う」
ブリュ「・・・まぁ、ヘクトル殿やシグルドが言うなら、仕方ないわね。すっごく嫌だけど、我慢してあげるわ」
パリス「ありがとうございまーす。泣きたい」
シグ「それで、お二人はそろってどちらに?」
パリス「実はオリュンポス神殿で、ゼウス様主催のパーティが開かれてさ。そこのくじ引きイベントに僕が参加したんだけど」
シグ「どっかで聞いたことのある話なんだが」
パリス「ほら、僕って運はやたら凄いじゃない?一等賞当たっちゃったんだよ。それがなんと、ヴァルハラ温泉のペアチケット」
ヘクト「それで、兄弟水入らずで温泉につかりに行こうというわけだ」
シグ「ほう、意外だな。あ、いや・・・パリスのイメージだと、女性を誘いそうなものだと思っていたのだが」
パリス「・・・うん、さすがにね。もうトラブルはこりごりっていうかね。色々あってさ・・・。
   最近、ちょっと女性不信ですよ、僕?」
ブリュ「・・・・・・」
シグ「どうした、ブリュンヒルド。肩を震わせて、何やら怖いんだが・・・なぜ槍を構えるんだ。ちょっと、待て」
ブリュ「せっかくのシグルドとの温泉旅行なのに、こんな女の敵と一緒になるってどういうことよーっ!?」
パリス「ぎょわーっ!?襲いかかってきたっ!?しかも気持ちが分からないでもないから、すっごいやるせない!」
ヘクト「パリス、お前の女難の相の凄まじさには、驚きや呆れを通り越して感心すらしてしまうな、うんうん」
パリス「いや、頷いてないで助けてーーっ!!」


<ラスボスステージ vs ロムルス&マザー・ハーロット>
シグ「もうじきヴァルハラ温泉だな」
ブリュ「はぁー、はやくスベスベマンジョウガニを食べてみたいわ。どんな味がするのかしら」
シグ「そんなものに頼らなくても、君は十分きれいだと言っているだろうに・・・」
???「そうね、彼女はとても美しいわ。私ほどじゃないけれど」
ブリュ「っ!?邪悪な気!」
ハロ「はぁ~い、お二人とも。元気にしてるかしら?皆鯖のダーク・アイドル、マザーハーロットよん」
シグ「・・・・・・・・・」
ハロ「そんな『うわぁ、変なのに出てきた上に絡まれちゃったよ』みたいな顔しないでよ。
  濡れるじゃない」
ロム「・・・ハーロット、その辺にしときなさいって。彼らも困っているだろうに」
シグ「おお、ロムルスではないか」
ハロ「そんな『良かった、話の通じる奴がいた。このどうしようもないのどうにかしてもらおう』みたいな顔しないでよ。
  昇っちゃうじゃない」
ブリュ「あの、この痴女は殺しても?」
ロム「一応、これでも娘のようなものなので勘弁してくれ」
シグ「ところで、ロムルスと痴女が、なぜこのようなところに?
   ・・・何やら嫌な予感がするが」
ロム「わが父アレスが、ローマ神話の復興を目指して町興しならぬ神話興しを初めてな。
   なにをどう間違ったのか、宴会が始まったんだが・・・」
シグ「ああ、分かった。それ以上は言わなくていい」
ブリュ「どこも似たようなことやってるのね
   それで、貴方達もヴァルハラ温泉に行くの?今から?」
ハロ「ええ、もちろん。せっかくだから、黙示録の獣も一緒に入らせるつもりだけど」
ブリュ「・・・させるわけにはいかないわね。温泉が汚染されて台無しになっちゃう」
ロム「やはり止めに入るか。まぁ、気持はわからんでもないがな」
シグ「というより、ロムルスはいいのか?悪性の化身ともいえる獣を温泉に入れるなど」
ロム「あの獣もまた、我がローマの成れの果て。建国王としては、我が子のようなものでな。
  いやはや、私も大概親バカであるようだ。すまんな」
ブリュ「なら、力尽くで止めても構わないかしら?」
ロム「構わんよ。可愛い子のため、精々抵抗させてもらうだけだ」
シグ「・・・やれやれ」


<エピローグ>
ベル「■■■■■ーッ(お待たせしました。当ホテル限定メニュー。スベスベマンジョウガニでございます)」
ブリュ「キタキターっ!ほらシグルド、早く頂きましょう」
シグ「本当にベルセルク達が経営してる・・・シュールだ」
ベル「■■■■■ーッ(大変熱いので、お気をつけてお召し上がりください)」
シグ「言語理解スキルがあるから何を言っているか分かるが・・・
   他の客にはどう対応してるんだ。言葉通じないだろう」
ベル「■■■■■ーッ(そこはそれ。ボディランゲージや筆談といった形で接客させていただいております)」
シグ「もはや狂戦士でも何でもないな」
ブリュ「シグルド、カニ食べないの?なら貰っちゃうわよ」
シグ「いや、誰も食べないとは言っていないだろう」
ブリュ「ちぇー、残念」
ベル「■■■■■ーッ(では、ごゆっくり)」
 ●
 ●
 ●
ベル「■■■■■ーッ(お二人とも、楽しんでおられるようですよ)」
シグム「■■■■■ーッ(そうか、よかった。今日はあの二人が出会った日だからな。存分に楽しむといい)」
ベル「■■■■■ーッ(しかし、回りくどいことをしますね。温泉旅行のプレゼントくらい、直接渡せばいいのに)」
シグム「■■■■■ーッ(いや、流石に気恥ずかしいだろう。この年にもなって息子にプレゼントとか)」
ベル「■■■■■ーッ(別にいいじゃないですか、まったく)」
シグム「■■■■■ーッ(じゃ、これから俺は協力してくれたフッラ様にお礼をしにいくから。後は任せる)」
ベル「■■■■■ーッ(ええ、任せてください。温泉戦士のクラスは伊達ではありませんので)」
 Fin