―――闇が支配する中、一人の屈強なサーヴァントが囚われていた。
彼の名はバーサーカー、サムソン。
ランサー、フィン・マックールとの激しい戦いのすえ、彼は力の源である髪を切り落とされ、囚われの身となった
ランサーは彼に死体を触れさせ、強いぶどう酒を飲ませ、長髪を切り落とし短髪へと変えている。
そして、両目を抉り工場を支える二つの主柱へと鎖で繋ぎ止めている。
なぜ一思いに殺さないのかといえば、これは残るバーサーカーのマスターや、それに協力する士郎とかいう奴らをおびき寄せる餌だからである。
ランサーは、工場内にある巨大の溶鉱炉をみながらほくそ笑む。

「くくく……。まったくこの溶鉱炉というのはいいのう……。
死体だろうが魔術の痕跡品だろうが全て焼き尽くしてくれるわ……。」

マスターが存在しないランサーにとって魔力補給は重要だ
だが、足りないのなら補えばいい。幸い、サーヴァントは魂食らいだ。
ルーンの力を用い、そこらへんの人間の自我を徹底的破壊し、自分の生ける人形兼魔力補給用の食料としてため込む。
そして、さんざん利用したあとで溶鉱炉に叩き込めば、証拠は絶対に残らない
死体からこの工場がばれてしまっては元も子もないからである。
誰も古代の英霊であるサーヴァントが最新鋭の工場に潜むとは思いもつかない。

しかし、それももう十分
十分に魔力補給もしたし、人形の数も40は超える。
これならば、バーサーカーのマスターや士郎とやらを殺してもおつりがくる

……だが、ランサーは一つ誤算を犯していた。
バーサーカーが力を失うのは、髪を完全に斬り落とされた……つまりは丸坊主な時のみ。
長い髪をばっさりと切り落とされて、短髪になったバーサーカーには、未だ怪力が残されているのだ。


そして、ランサーの読みとおり、バーサーカーのサーヴァントと、
重症を負って衛宮邸で冬眠し、傷の回復中のアーチャーのサーヴァント、衛宮士郎がやってきた。
アーチャーのもう一つの宝具『天星猟犬(ラエラプス)』は士郎に与えられているが、ラエラプスの戦闘力は高くない

40を超える人形たちの連携攻撃に、少しづつ追い詰められていく。




「くくく!全くバカ丸出しじゃわい。
サーヴァントも連れずにノコノコとくるとはな。
バーサーカーよ、せいぜい己のマスターが死ぬところを見るがいい
おっと、貴様にもう眼球はなかったな。ははは!!」

その瞬間、バーサーカーの怒りが頂点に達する。
俺はどうなってもいい、だが、せめてこいつだけは―――!
次の瞬間、バーサーカーは生涯かつてないほど、神に真剣に祈りをささげた。
―――神よ、願わくは今一度、我に力を与えたまえ―――!!

「ガ……ガァアアアアアアアアアアアッ!!」

瞬間、バーサーカーから凄まじい魔力が迸り、力の源である髪が復活する。
そして、彼の力も戻り、その怪力で工場の主柱を押し倒し、完全に破壊する。


「な……なにぃいいいいいいいいいい!!?」

崩落する工場内部。
その崩落に巻き込まれ、人形たちは次々と押しつぶされていく。
士郎とイリヤはラエラプスが助け出したので問題ない。
束縛から解放されたバーサーカーは迷うことなくランサーに突撃する。
盲目となったバーサーカーだが、ランサーの足音、声、呼吸音から正確に位置を把握する。
フィンもバーサーカーの心臓を血統の青槍で貫くが、それでもバーサーカーはしっかりとフィンをベアバックする。


「いやぁあああああ!バーサーカー!」

戦闘続行Aを持っているバーサーカーはそれでもなおフィンを締め上げ、彼のからだの骨を次々とへし折っていく。

「がああああ……、こ、この死にそこないが……。」

そしてゆっくりと彼は溶鉱炉へと歩みよっていく。
その意図を察した士郎は叫ぶ、

「だめだ!バーサーカー!あんたがいなくなったらイリヤはどうするんだ!」

ちらりと士郎を見た彼の背中は語っていた。
―――誓いを守れ、と
イリヤを守るという誓いを守り抜けと、そう語っていた。
そして、彼はそのまま、フィンとともに溶鉱炉へと落下していった。

「いやああああああ!バーサーカー!バーサーカーぁあああああああああ!!」

「だめだ!イリヤ!イリヤまで落ちてしまう!」

溶鉱炉に落ちたフィンはその凄まじい高熱に肉体を溶かしながらのたうちまわっていた。
いかに霊体であるサーヴァントといえど、1500度以上の超高熱に耐えられようはずもない。
常人なら骨も残らないのに、それでも少しはもっているところはさすがサーヴァントか。

「嫌だ!こんな死に方は嫌だ!熱い!熱い熱い熱い熱い!!嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
だ、誰か……助け……。」

無様にのたうちまわり、超高熱に焼き尽くされながら、フィンは消滅した。
それと同じようにゆっくりと、溶鉱炉の中へと沈んでいくバーサーカー。
いかにサーヴァントであろうとも、耐えられようはずもない。
もはや、バーサーカーの体は完全に溶鉱炉に沈み、右腕だけが残されているだけにすぎない。
だが、その肉体を溶かされながらも、天に向かってバーサーカーの開いていた指がゆっくりと動く。
小指、薬指、中指、人差し指とゆっくりと閉じて、握り拳が作られ、最後に力強く親指が立てられる。
それは、士郎がバーサーカーに教えた大丈夫だ、ということを意味するサイン。

「バー……サーカー……。」

その親指を立てた拳もゆっくりと溶鉱炉の中に沈んでいった。
―――それが、生涯一度も誓いを守れなかった男の最後だった。