「ああ、アルトリア。
 いまイングランドはまさに消滅の危機にあり、
 村一つを滅ぼす勢いで軍備を蓄え、
 矢一本、釘一つ、麦一粒だに無駄に出来ない情勢だ。
 この私、ケイも我が親愛なる王の為に、
 日夜身を削り、心を削り、
 明日の騎士団の為に働いている。
 その中で、キャメロットの主、
 我ら円卓の盟主にも、多少の無理を強いている。
 確かに、国王も人、飢える事もあろう、
 誘惑に負けることもあろう、
 それは仕方ない、仕方ないことではないか
 さぁ、この兄がしっかりと見守ろう、
 我が君主がつまみ食いする様を!」
「・・・・・・やめてください、兄上・・・・」

 妹がどこぞの島国でわけもわからんチンチクリンに食われた事実を知ると発狂しそうだな、ケイ
「いやぁ、めでたい、めでたい。
 あの妹をまさか女として扱う猛者がいるとは。
 何かとあると聖剣を振り回し、
 黄金の剣を折るような女だというのに。
 なに? 魔術師?
 おお、その点で小僧はマーリン師をもこえている。
 あのマーリン師すら、アルトリアには手を出さなかったのだ。
 それにしても、あのギネヴィアに聞かせたいものよ。
 夫を寝取った男がいる、
 常々誰かと火遊びをする王妃にはいい薬だ、
 どのような顔をするものか!」

「宝具とはその人物の生きた象徴、
 騎士の紋章がひとつであるように、
 子につけられる名前が一つであるように、
 生涯共にする伴侶が1人であるように、
 英霊に唯一、誇れるものがあればよい。
 2つも3つもあるというのは、
 まるでその生き様がぶれているようなもの、
 一つの物語、
 一つの軌跡としてみた場合、
 あちらへふらふら、
 こちらへふらふらと流れるようなもの、
 これでは吟遊詩人たちも歌に困ってしまう。
 唯一つの結晶を謡うことにくらべて、
 いくつもの象徴を並び立てる歌に、意味があるのだろうか。
 というわけで、妹よ。
 その勝利すべき黄金の剣を・・・・」
「渡しません」

「私は、サーとは呼ばれているが、
 そのありかたは文官、
 小間使いといっていいものだ。
 三騎士など華やかなものには向いていまい。
 なにせ、キャメロットには騎士は多くいても、
 文官と呼べるものは片手の指より少ないのでね。
 アルトリアは常に立派な王として行動しているが、
 行動に伴う意志はともかく、そのスキルは王ではない。
 戦費の為に村を干す覚悟はできてはいても、
 どうすれば村の犠牲を軍備に変えるか、
 どのようにすれば効率よく軍を作り上げるか、
 そのあたりの事務に向いている性格ではない。
 ランスロット? ガウェイン?
 奴らに何を期待するのかね。
 彼は、普段はキャメロットの外で、
 のんびりと名誉をかけてトーナメントをしてもらっていたほうが、
 イングランドの為になるにきまっているだろう。
 サー・ベディヴィエール?
 おお、あの小僧か。
 確かに一見、気が利くように見える、
 人付き合いも上手く、この私の役割をも果たせるように・・・
 ・・・見える、だけでね。
 私が彼に与えている任務は護衛騎士にして、司厨長。
 つまり、アルトリアの雑な料理は、
 すべて彼の手を経てきているのだよ」

「私の能力が英霊として弱い?
 ふむ、確かに一見そのように見えるかもしれない。
 英霊とは信仰によって人の枠を超えたもの、
 低く見られるという事実はただそれだけで英霊の格を落としている。
 信仰は物語によって紡がれるもの。
 華々しき活躍などしていない私のようなものは、
 それ相応の信仰しかもたぬのも無理はあるまい。
 しかし、同時に我らはその物語の中で輝くもの、
 その物語の中で唯一として座にある英霊。
 ならば、真に最強の英霊は存在せず
 ただただ最適の英霊こそ存在する。
 マスターの諸君。
 我らはサーヴァント、従僕の名で呼ばれる道具。
 嘆く前に、己が手に入れた手札と相手の手札で駆け引きを始めるのだ。
 それが、君たちの役割だろう。
 それが出来ぬものには、この戦争における勝利はない」