──────────────────────────────Another Servant    9日目 太陽王─────────


──────Riders Side──────

 冬場であっても力強く燦々と輝く太陽が丁度天頂に差し掛かった頃。

「さてとおい牧師、舞台の用意は全て整った。そろそろ俺様たちもシャイニングロードを闊歩しにゆくぞ!」
 ライダーは頃合を見計らっていたかの如く颯爽と立ち上がった。
 しかしゲドゥの方は己のサーヴァントの相変わらず意味不明な言動に冷めた口振りで嘆息した。
「………いい加減肝心な部分を抜いて話し始めるのを止められないのかライダー?それでは理解できるものも理解できん」
 またしても唐突に始まるライダーの奇行に辟易しながらもゲドゥ牧師は一応相槌を返す。
 最近徐々に分かってきた事なのだがこの男………無視しても色々面倒臭いのである。
「ふん。唯人がファラオの考えを解する必要などない。下賤の者はただただ王の命に従い働けばよいのだ」
 まさに唯我独尊な言動でライダーはゲドゥにさっさと外へ出ろと身振りで促がした。
 ここでライダーとまともに討論するだけ時間と気力の浪費も甚だしいと知っている牧師は鉄面皮のまま黙ってそれに従った。
 マスターが自分の指示に従って外に出たのを確認すると、
 ライダーは手鏡でいそいそと自身の姿を覗き見ながら腰布のポケットにあたる場所から野球ボール大の木箱を取り出した。
 蓋を開ける。中には橙色のクリーム状の物体がたっぷりと収めてある。
 そしてライダーはそのクリーム状のなにかを指先で適当に掬い取って慣れた手つきでペタペタと頭髪に付け始めた。
 なにがそんなに上機嫌なのか謎歌まで歌い出している。
「ラメセス二世~この世で一番偉大なファラオ~妻は美女だし俺様ハンサムなおしどり夫婦~♪
 (台詞)国家予算使って妻に神殿建造。何も問題ないだって俺様ファラオで大金持ちだから!」
 ライダーの不審極まりない行動に思わず外へ向かっていた牧師の足が止まった。
 ちなみにラメセスの顔の造形具合は客観的に評価しても普通だ。美形ではないが不細工でもない割と凡庸な顔立ちである。
 しかしそんな部外者からの無言の抗議に気にする素振りもなくラメセスは歌い続け、クリーム状の物体を頭髪に塗ってゆく。
「DOKKAN!DOKKAN!建ててる~♪DOKKAN!DOKKAN!建築~♪太陽戦車がぁ走り出すぜGOGOラメセスⅡ~♪
 蠢く怪しいエネミー(ヒッタイト国)容赦はしないぜ皆殺しぃ♪
 命に(家来達の)代えても守るよー愛する妻(ネフェルタリ(はぁと))を神に変えろぉ♪
 ヤリ抜く(一晩中)気合でぇピッチ(腰の)を上げてくー♪手強い女ほど疲労感もでかいぜー♪
 DOKKAN!DOKKAN!戦争~♪DOKKAN!DOKKAN!増領~♪戦争経済の儲けにびゅんびゅん乗って~♪
 斬るYOU!KILLYOU!サーヴァント~♪GET!GET!聖杯~♪願いはもう魂が決めてるのさーファラオSOUL~♪」
 謎のファラオソングを歌い終わると同時にライダーは満足いったのか鼻をふぅんと鳴らして頭髪を両手で後方へと一気にかき上げた。
「おまえ、本当にいったい何がしたいん……む?」
 今まで以上のライダーの奇態っぷりにいい加減牧師も文句の一つでも言おうとした矢先に彼はその変化に気が付いた。
 ……どういうわけかライダーの髪の色が変化している。
 ラメセスⅡの赤茶色のボブカットだった頭髪は今や原型を留めておらず。
 毛先は炎のように逆立ち毛色は陽光を吸収せんばかりの黄色に似た金髪に染め上がっていた。
 さらに驚くべきところはライダーの表情である。
 明らかに今までとは違うと断言できる。それは王者の威風さえ感じさせる堂々たる顔付きだった。

「もう一度聞くぞ……ライダー。貴様なにをした?」
 あまりの豹変に警戒心を強めながらゲドゥは問い質した。
 状況次第では逃走する必要がある。戦闘はやるだけ無駄だ。代行者と言えど真っ向勝負で勝てる相手ではない。
 だが当のライダーは牧師の問いには答えず今度は顔や目尻に別の顔料を塗って装飾してゆく。
 それはさながら女性がする化粧のようでもあった。
「ライダー!」
 無言を貫くライダーに再度ドスを強めて呼び掛ける。
 するとライダーは劣勢に焦燥する部下をなだめるかように厳かな語調で口を開いた。
「騒ぐな見苦しい。戦支度というのはいつの時代だろうと必要不可欠なものであろうが?
 俺様はその準備をしているだけだ。この魔法薬も領土を広げる戦の際手に入れた古代の戦利品よ。一時体毛を変色する効力がある」
 いまいち要領を得ない返答にゲドゥは僅かばかり困惑した。
「察しが悪いな。ファラオが本気で戦を開始するならば相応の格好をせねば示しがつくまい」
 マスターの困惑を無視してライダーはさらに金細工の首輪や腕輪などの煌びやかな装飾品を淀みない動作で身に付けていく。
 格好だけ見ると今のラメセスⅡはまさに古代エジプトに君臨したファラオそのものだ。
 塗料で貌を神秘的に飾り、頭髪も神々しい色に染め、本来の姿から離れた容姿に自身を作り変える。
 そうすることでラメセスⅡは己の意識を王としての自分に変革するのだろう。
 言わばこれはライダーの本気スタイル。ラメセススーパーモードとでも表現すべき状態であった。
 そうして全ての身支度が済むとライダーはマスターを置いてさっさと庭へと出て行ってしまった。
 ゲドゥもその後を追う。

「それではゆくぞ牧師。ついて来るがいい」
 腕を組み庭の真ん中で踏ん反り返る王様は行き先も告げずに宣言した。
「もはやお前の行動に口を挟む気にもなれんがせめてどこに行くのか位は教えたらどうだ?」
 流石の百戦錬磨の代行者もこの聖杯戦争においては目的地不明の場所においそれと踏み込む気にはなれないらしい。
 無駄と知りつつも一応抗議の声は上げておく。
 するとそんなゲドゥの抗議が通じたのかまるでうっかり忘れていたと言わんばかりの調子でライダーは目的地を告げた。
「知れたこと目的地は町外れの山に建つ寺だ。元ランサーのマスターであるあの小娘の所へ攻め込み───滅ぼす」
 言葉尻に微かな殺気を漂わせてライダーが哂う。
 敵マスターの所在が明確に知れてるならそこを攻めない手はない。
 あと何人かのマスターの拠点もゲドゥが町に潜らせた聖堂教会の工作員の情報網によって大方の場所は掴めてはいる。
 が、まだピンポイントには絞り込めていない以上今回のような襲撃作戦のアドバンテージを殺ぐような愚行は避ける。
 フラフラと敵マスターの工房周囲をうろついて索敵結界にでも引っ掛かろうものなら折角の電撃戦が元も子もない。
 ゲドゥの方もライダーの短い説明で全て合点がいったとばかりにこの方針に同意を示した。
「ほう貴様も一応は兵士か。戦に対しては物分りが良くて結構だ。では出撃する」
 ライダーはゲドゥ牧師の二の句もない合意に感心しつつ、両手を天に向かって広げた。
 
「天におわす我が父ラーよ!今こそそなたの神子に神力を貸し与えたまえ──!!」

 そしていつぞやの時のように呪言を唱え虚空より己が宝具を現界させた。
 陽炎の熱気揺らめきながら陽光色の戦車船がその雄姿を堂々と曝け出す。
 その発する魔力に、その神々しさすら覚える威光に、さしものゲドゥも眼を細めた。
 いつも鉄面皮な男の若干動揺した姿を悠然と眺めていたライダーは腕を組み直し実に満悦な様子で、且つ自慢気に宣言した。
「そういえば貴様が直接コレを見るのは初めてだったな。これこそが俺様の宝具。
 ファラオを神の世界に送るいと高きの太陽の船『日輪抱く黄金の翼神-ラー・ホルアクティ-』だ!」
「────」
 ゲドゥは言葉も発せず庭に出現した戦車の仔細を観察するのに没頭する。
 予想を遙かに超えるモノが出てきた。
 ステータス上強力な宝具を所持するのは透視能力で知ってはいたが、これほどの代物だったとは理解らなかった。
 これならば確かに常に自身の勝利を確信していたライダーの気持ちも理解できる。
 強力などという領域ではない。これは下手するとあの悪夢的なアーチャーの魔城さえも超える宝具かもしれないのだ。
 しかしそんな喜ばしい興奮よりも先にゲドゥはどこか釈然としない面持ちで戦車のある一点を見つめていた。
 初御披露目の強烈なインパクトで最初はその違和感に気付く事さえ出来なかったが時間の経過に従い徐々に心身も冷静にもなる。
 そして違和感の正体に気付く。……足りない。
 ライダーが召還したこの戦車はとあるものが決定的に欠けていた。

「一つ訊ねるが。この戦車には車体を牽引する動物はいないのか?」

 そして戦車としてはあまりに致命的な欠陥を指摘した。
 牽引する動物がいないような戦車などただの鑑賞用の飾り物でしかない。戦闘どころか走行すらも出来ない。
 しかしそんなごく常識的な戦車論もライダーの失笑で蹴り返された。
「下らん。何を間抜けた事をぬかしている?俺様の太陽戦車にそんな無様なものはいらん。
 どうしてもと言うのならば牧師貴様が引っ張るというのはどうだ?やるならば特別に金糸で編んだ手綱を取り付けてやるぞ?
 いやそうしよう、むしろやるがいいぞ貴様にはよくお似合いだハーハッハッハッハ!」
 今のは古代エジプト王宮式のジョークなのかそれとも本気なのか、いまいち判断の付け難いことまで言っている。
「牽引する動物が必要ないだと?」
「当然だろう。貴様一体全体この戦車を誰の船だと思っている?
 ファラオたる者ヒトを家臣を民を率いる存在だぞ?そのような立場の者が家畜風情に引っ張られるなぞ笑い話でしかないわ。
 もしそんな輩がいるのならそのような王など三流も三流だ。ファラオとは認めん。だが俺様は違う。
 先頭は常にこのラメセスの指定席にしてヒトの行く末を決定する場所。俺様の前をゆくなど何者だろうと許さん」
 ラメセスⅡにとってファラオこそが全ての先頭に立つ存在というのが王としての確固たる理なのだろう。
 心からそう思っているのだろう。その傲岸な言葉には微塵の躊躇や迷いは感じられない。
「そして王の行く手を阻む障害もこの地上には存在せん。我が太陽の船車は陸海空を股にかけるのだーふはははは!」
 豪笑するライダーを尻目にああそれでか。と牧師は言もなく納得した。
 道理で戦車というの割にはフォルムがどことなく船っぽいわけである。
 噛み砕いて形を説明すればライダーの宝具は近未来的な船のような本体の側面に車輪を三つずつ取り付けた形状をしている。
 この形状ならば陸走はもとより恐らく水でも浮き進む事が可能だろう。
「俺様が直々に許そう。さあ牧師よとっとと乗れ。
 本来なら直進したいところだが今は昼間だ。人目に付かんように大きく迂回して寺へ向かうぞ」
「そう思うならば態々こんな真昼間に行動を起こさなければよいだろうに──」
 ライダーは小声で洩らす牧師を乗せるや否や車輪を猛烈な勢いで回転させ戦車を急発進させる。
 突然の急発進で振り落とされそうになるゲドゥを無視して、僅かばかり陸地を助走すると太陽の船車は蒼き大空へと舞い昇った。
「うぉっ…なっ!?この船車は空まで飛ぶのか!?」
「ハーハッハッハ!天空の一つも飛べんファラオなぞ二流だ!だが一流の俺様は大空をも駆ける。
 手順よく始末してゆけばこの日を最後に聖杯戦争は終戦だ。この俺様の勝利という結果を残してなー!!」
 ラメセスが吼えた勝ち鬨をその場に残して太陽の船は一瞬にしていずこかに飛び去っていった。


 そして────。

「も、もぬけのから……だと…?お、おい牧師!あの小娘たちはどこに消えたというのだ!?」
「……さあな……むしろ私が聞きたいくらいだ」
「おのれぇ!わざわざファラオ自らこんな辺鄙な場所まで出向いてやったというにあの小娘この俺様に無駄足踏ませるとは不届千万!」

 意気揚々と攻め込んだ彼らは目当ての人間が忽然と姿を消すという予想外の状況にぶち当たりオロオロと困惑するのだった。







──────Sabers Side──────

「ではのう綾香ちゃん。またいつでも訪ねてくるといい。歓迎するよ」
「はい、またこの辺りに旅行に来る機会があったら是非。
 では柳洞さんもお達者で。今日まで大変お世話になりました。他の方々にも宜しくお伝えください」
 陽が地上に顔を出し、朝鳥が一日の始まりを告げる時刻。
 丁寧な御辞儀と共に沙条綾香は柳洞寺の和尚と最後の別れの挨拶を交わす。
 そうして彼女は何の未練も感じさせない凛とした態度で柳洞寺の山門を後にした。

 昨夜の戦いを無事乗り切り郊外までの長い道のりを踏破して寺に戻ると綾香たちは早々に床に入り休息を取った。
 そして今朝。夢見の悪さで朝早くに眼が覚めた彼女はこの寺を離れる事を決めた。
 陣地替えの理由はさほど大層なものではない。
 昨夜の妖狐の一件とその晩見た寺の崩壊という悪夢もあり、そろそろ潮時だとぼんやり思っただけの話だ。
 要するに彼女はただ祖父の友人とその家族が住んでいるこの寺を聖杯戦争の戦禍に巻き込む様な真似はしたくなかったのだ。
 そんな唐突な思い付きで決定した移転だったが少女にとっての幸運だったのはこの無邪気な騎士が現在の相方だったことである。
 勿論あっさりと突然の陣地変えをOKしてくれたこともあるがそれ以上に、
「それにしても幸運だったわ。セイバーがいい隠れ家を知っていてくれて。
 これなら一般客がいる宿に泊まる必要もないし、なにより野宿をしないで済むってのが最高ね」
 誰にも迷惑のかからない新しい拠点をセイバーが知っていたことだ。
 ウンザリするほどに長い寺への階段を下りながら綾香は隣にいる姿無き騎士に話かけた。
「うへへ~そうだろそうだろ?!もっと褒めてくれればいいと思うぞ。いやむしろなにか褒美をくれてもいい」
「調子にのるな」
 言葉こそきつめだが少女の語調は非常に柔らかい。
 早朝ということもあってか周囲に人影はまだ殆んど無い。周りを気にせず他愛もない雑談をしながら足を進めていく。

 現在彼女たちはランサーが気高く散った場所に向かっていた。
 ここから割と距離があるから馬なり何なりの足がいる。と言うセイバーの話を聞いてとりあえず足を入手する必要性が生じた為だ。
 そこですぐに思い立ったのが彼の元マスターであるアインツベルン嬢が使用していたあの馬鹿豪奢でメルヘンチックな馬車だった。
 だが馬車をあの場に放置してから既に二日が経っている。馬ごとを誰かに持ち去られた可能性だって十分にある。
 しかしそれでもひょっとしたらまだあの場所にあるかも、という淡い期待も胸に残っていた。

 まあ本当にごく僅かの万が一にも残ってれば儲けもの程度の薄~~い期待感ではあるのだが…。


「…………うっそだぁ…本当に?」
「おっし!さっすがオレの幸運だぜ!天使様ありがとう!神様ありがとう!アーメン」
 信じられないといった顔で佇む少女と、姿は見えずとも小躍りしながら天に感謝の祈りを捧げている騎士。
 そんな二人の視線が注がれる先には…いったい何の冗談なのか件の馬車が未だにそこに残っていた。
 馬の方も元気なようで朝食時なのか暢気に足元に生えている草なんぞをモリモリ食べている。
「ちょっと、なんでまだ残ってるのよ……いやそりゃあ馬車が残っててくれたのは嬉しいけどさぁなんか納得いかないわね」
 ぶつくさと言う綾香の感想ももっともである。
 よくもまあこんな如何にも金目の物ですと堂々と主張している馬車が盗まれなかったものだ。
 それかあるいはあまりに堂々とし過ぎていて誰も手が出せなかったのかもしれない。
 綾香はぼやきつつもおっかなびっくりな様子で馬の鬣に触れた。
 すると、
「ヒヒーーーン!ブルルル!!!」
 唐突に馬が後ろ足立ちをしながら鼻息荒く嘶いた。馬の巨体で出来た影が綾香の体を覆いつくす。
「ひぃぃっ!ちょ、ちょなに!?なによ一体っ!?!マスターのわたしとやるっていうのこのうま!
 ウマこのー!豪華な馬車馬だからって調子に乗るんじゃないわよっ!かかってきさないよぅ!コノ!コノ!」
 驚きのあまり尻餅をついた綾香はその格好のままわたわたと後退する。
 よほど驚いたのかシュッシュッ!とシャドウボクシングで馬を威嚇しながら要領を得ないことまで口走っていた。
「………なあアヤカ、馬相手に何を言ってるんだ君?」
 そんな少女の珍事を心底不思議そうな目で見下ろしながらセイバーは思ったことをそのまんま口に出していた。
「うっさい!アンタも馬と一緒にぶっとばすわよっっ?!」
 今の己の痴態がとんでもなく恥かしかったのか顔を茹蛸のように朱に染めた綾香はフーッ!と無関係なセイバーまでも威嚇していた。



 そうして。
 そんなこんなの微笑ましくも些細なイベントを終え、二人が乗った馬車は一路冬木郊外にある森林へと向かっていた。
 手綱を握るのは勿論セイバーだ。ただし今の彼はいつもの全身鎧の格好ではなく平服姿で馬車を華麗に操っている。
 中世騎士風の外人が手綱を握る超豪勢馬車が街中を我が物顔で爆走するなどいくらなんでもありえない。
 いくら人目が少ない早朝とはいえどもありえない。いくら今のご時世が時代の節目であるとしてもありえない。
 とマスターである綾香が断固として譲らなかったので渋々セイバーは着込んだ甲冑を脱ぐことになったのだ。
 ちなみにセイバーは鎧の下に今着ている布製の平服を纏っていた。

「でな!でな!そしたらオリヴィエのやつなんて言ったと思う?
 ”まったく君は掃除の天才だな。異教徒の軍勢も魔物も家の家具さえもみんなまっさらに一掃してくれるとは頼もしい限りだ”
 なんて言うんだぜ?いやぁ上手いこと言うよなーあっはっはっは!」
「いやそれは半分皮肉……って言っても分からないわよねきっと」
 道中セイバーはずっとこの調子であった。
 親友オリヴィエの武勇を凄い凄いと褒め称え、自分との友情思い出話に花を咲かせ、友と共に打ち立てた栄誉を嬉々として話す。
 まるで子供のような無邪気な表情で心底楽しそうにずっと。
「しかし貴方って本当にそのオリヴィエって人が好きなのね。セイバー気付いてる?さっきからオリヴィエの話ばっかりよ?」
 騎士の思い出話に相槌を打ちながら、からかうような口調で綾香はセイバーを突っつき始めた。
 ローランは単純な性格なため弄ると面白い反応をしてくれるので飽きない。
「おいおい失敬な、ルノーやパラディンのみんなの話もちゃんとしてるぞ。
 その言い草じゃあまるでオレがオリヴィエと好き合ってるみたいじゃないか失礼な!
 そりゃあフランク軍の中には男の方が好きだと言う騎士もいたが、オレはオード一筋なんだぞ!」
「誰もそんな事言ってないっ!なんで話しが斜め上の男色話に行くのよ!?
 ったくもう。わたしが言ってるのは話の頻度のことを言ってるの。
 昨日だってアーチャーとの言い合いでオリヴィエのことをなんか言ってたじゃない。
 それでセイバーにとってその人の存在ってかなり大きいんだなぁって思ったの」
 マスターである少女の口からアーチャーの名が出た瞬間騎士の顔の皺が寄る。
 一時的に忘れていた屈辱の念が沸々と湧き上がってくる。
「アーチャー……卑劣な手で貴婦人を追い落とし、恥知らずにも聖杯の器まで略奪していった男。
 オレはあんな卑怯者大嫌いだ。今度遭ったら絶対やっつけて彼女の敵を討ち悲願成就の鍵を獲り返してやる」
 仇敵の面貌と悪行を思い出してより不機嫌そうな或いは拗ねているような微妙な表情をしたかと思うと、
 直ぐに表情を崩し今度は真面目な顔付きになった。
 視線は前方を……否、どこか遠い所を見据えていた。
「セイバー?」
「簡単なことさアヤカ。己の親友を誇らない英霊などいない。
 英雄にとっての親友とは即ち自身と同格の存在と認めた者のことを指す。
 つまりオレたち英霊が持つ宝具と同じでその英雄と親友はイコールに等しいんだ。
 だから親友の誉れは己の誉れも同然だし、親友の侮辱は己の侮辱も同然だ。
 どんな英雄であっても自分の親友は心底誇りこれでもかと自慢するもんだよ。誰だってきっとそうさ」
 僅かな淡い微笑と共にセイバーはそんな言葉で締め括った。
 一瞬だけローランの横顔に見た負の念。それが後悔なのか悲哀なのか憐憫なのかは分からない。
 その横顔に思わず言葉が詰まりその先を聞き出す事も出来ず、ついどうでもいい言葉を発していた。
「そっか、要するにわたしに親友自慢大会したい訳ね」
「うん。まったくもってその通りなのであった。
 アヤカってなんか雰囲気が独特っていうか近寄り難そうで友達少なそうだしなー」
 その顔にさっきの負の感情は微塵もない。まるで悪戯がバレた悪童の笑顔でそんなことを言う。
「なに堂々とマスターに喧嘩売ってるのよアンタ?やるっていうの?デュエルするの?」
 先の不穏な空気はすっかりナリを潜め馬車内は元の穏やかな空気に戻っていた。
「いえ滅相も御座いませぬ御婦人よ。ところでソレ何だ?」
 綾香が大事そうに膝に抱えている壷。
 それはセイバーが御車台に座った時からずっと気になっていたものだった。
「上手く話逸らしたわねまあいいけど。これはお爺様の骨壷よ。この国では西洋の国と違って遺体は土葬じゃなく火葬するの」
 そう答える綾香の声は思いの外平然としていた。
 その言葉や表情からは家族を喪ったというのに悲哀の情は微塵も覗えない。
「ふ~んそっかあ、それは君の祖父ちゃんなのか。良かったな祖父ちゃん」
「よかった……?」
 少女は思わず眉を顰めた。
 彼がどういうつもりでそんな事を言っているのだろうか?次に出てくる言葉次第では………。
 しかしそれは彼女の杞憂に終わった。
「君は家族なんだろう?一番近しい者に看取られて死ねたのだったら……絶対良いに決まってるさ」
「………そうね。うん、そうかもしれない」
 非常に単純明快な言動をするこの騎士にしては珍しくどこか寂しさと優しさを感じさせるセイバーの言葉に
 少女は少しだけ涙が出そうになったが、やっぱり我慢することにした。
「よしオレに任せてくれ!アーチャーを斃したらアヤカの爺ちゃんの仇もちゃんと討ち取ってやる!」
「えぇわかった。口にしたからにはセイバーにはちゃんとライダーを倒してもらうわよ」
「オウ!」

 だって、過去を振り返り涙を流すよりもこの騎士と共に未来にに進むべきだから──。







──────Fighters Side──────

 その日、珍しく遠坂刻士は少々不機嫌だった。
 遠坂たるもの常に余裕を持って優雅たれ。
 誰に言われるまでもなくそんな家訓はこれでもかと言うほどに胆に銘じた上で実践している。
 とはいえ余裕を保つためにはまずそれなりの余力がなくては実行に移せないものだ。
 そして遠坂は現在、その余力の大部分が削られている状況だった。

 約半世紀前に行なわれた第一次聖杯戦争に比べて今回の第二次聖杯戦争は冬木の町への被害が非常に大きかった。
 小さいところではサーヴァントやマスターの戦闘によって起きた人工物自然物を問わない破壊。
 雨生虎之介とバーサーカーがやらかした趣味と実益を兼ねているとしか思えない一般人に対する押し込み殺人。
 さらには自然発生では考えられないような神秘の発生…秘境に生息するはずの妖獣までもが人里に出現する始末。
 そしてとどめは城を宝具とするアーチャーと間桐燕二による大規模な破壊行為だ。
 特に最後のは拙い。雨生の押し込み殺人も拙いが間桐が引き起こした破壊の方が規模が段違いだ。
 むやみに世間の注目を集めるのに十分過ぎるニュースの連続である。
 聞く所によれば近々幕府や攘夷派の人間が冬木に送られて来るなどというセカンドオーナーにとっては笑えない噂まで流れている。
 目的までは不明だが現在の国内のいざこざを知っていれば敵勢力に対する牽制だろう。
 その情報の真偽の確認を取るだけでも一苦労だというのに、
 さらに平行して神秘の隠匿も抜かりなく完遂せねばならないとあってはとてもではないが余裕の残る状況ではない。
 そしてそんな遠坂にさらに追い討ちを掛けるようにたった今まことに業腹な報告が入ってきたのだ。

「遠坂殿がそのような顔をするとは珍しい。大丈夫か?」
 主人の険しい表情に気付いたファイターは労わるように声をかけた。
「ん?ああすまないファイター、まだ大丈夫だ。だが流石に問題が起こる間隔が短すぎる。
 おかげで遠坂家だけでは完全には手を回せなくなってきたのが些か問題かな。
 危険度の高いものの隠匿を優先して処理しているせいで危険度の低い事柄の処理がやや杜撰になっている。
 おまけにまた厄介な面倒事の種が出てきた。まったく困ったものだよ」
 遠坂はやれやれと大仰なジェスチャーを交えながら冗談めかしてはいるものの眼が笑っていない。
 明らかに家訓を守るためにどうにかして不愉快さと苛立ちを押し殺そうと必死に努力している眼だった。
「厄介事の種…とういうことはなにか別の問題が?」
「ああ。たったさっき増えたよ。ところでファイター。
 君は数日前のアーチャーが宝具を使用した河川縁沿に黒衣を纏った集団が居たのを覚えているか?」
 遠坂はファイターの問いに答えながら別の問いを投げかけた。
 首を縦に振るファイター。突如乱入してきた黒衣の集団の姿はファイターもハッキリと覚えていた。
 この国に住む大多数の人々が普段から着ている和服とは根本部分からして造りが違うため一目で違いがわかった。
「あの連中の正体は恐らくだが聖堂教会という組織に所属する異端狩りの殺し屋たちだ」
「聖堂教会の殺し屋………。それはまた随分と物騒な連中だな?」
「でだ、そんな物騒な連中が何故日本の冬木に、しかもこんな大事な時期にいるのかを確認すべく私は倫敦の友人と連絡をとった。
 そしてその調査報告がつい先程私の元へ届いたというわけさ」
「なるほど、してその御友人はなんと?」
 遠坂の表情から不穏な気配を感じながらもファイターは先を促がした。
 とりあえずはどんなに嫌な報告であっても現状の把握はきちんとしておかなくては打開策のとりようもない。
「ふん。聖堂教会はこの国に代行者を派遣した覚えはない。どんな連中だったのか?などとのたまったそうだ。
 まったく白々しい連中だ。代行者が教会の命令無しで勝手に行動を起こすことなどまず有り得ない。
 絶対にあの連中は教会から請けた何らかの使命でこの地に居る」
 相手の言い分のあまりの幼稚さについ失笑を混じえて吐き捨てる。
「つまりこのことが指し示しているのは冬木に派遣された代行者は非公式の秘密工作員である可能性が高いということだ。
 目的は…そうだなやはり状況的に聖杯戦争に一枚噛んでくる任務である可能性が最も高いと見た方が賢明だろう。
 次点は我々を狙った異端狩りだが……私はその可能性は薄いと思っている」
「それはなぜ?」
 遠坂はあくまで私の勘に過ぎないのだがっと一旦断わりを入れると。
「聖杯や聖槍は彼らの教義の中でも一際重要度の高い聖遺物だという理由だ。
 かくいうこの遠坂の家も昔から彼らと同じ教義を信仰しているためその重要性は理解している。
 それに第一次聖杯戦争が教会と協会の眼を逃れるためにこの極東の地を降霊場所に選んだという事情もある。
 よって前回のことを全く知らない聖堂教会が遅蒔きながら聖遺物の真偽確認を取りに来たっというのが私の見解だ」
 一気に自分の見解を話した。
「まあどちらにせよどう転んだところで私には厄介事の種にしかなりえまい。魔術師と代行者は古来より天敵同士だ」
 そして最後に溜息で締めくくった。
 自身の領地を異端狩りに土足で踏み入られるような真似をされて良い顔をする管理者などまずおるまい。
 遠坂もその例に洩れず勝手な真似をしてくれた聖堂教会に対し不愉快さを露わにしていた。


 それからも遠坂は忙しそうに邸内をあっちへ行きこっちへ行き、手紙を受け取り手紙を出しと雑務をこなしていた。
「その様子ではアーチャーの正体を調べるどころではなさそうだな」
 マスターとサーヴァントにとって聖杯戦争の進行は何よりも優先しなければならない事項だ。
 遠坂自身もそれは理解っているのか詫びの言葉を口にする。
「ああすまないな。だが流石に今日ばかりは書物漁りに手を回しているだけの暇がない」
「いや謝る必要などない。遠坂殿には土地管理者としての重要な仕事があるのだ。私などに構わずそちらを優先するべきだ」
 ファイターはマスターへ非難めいた感情を一切見せずに本気でそんなことを口にしている。
 元よりファイター自身には聖杯を求める理由はない。
 誰よりも切実に己の力を求めた遠坂刻士に力を貸すべくこの現世の召還に応じたのがファイターだ。
 彼にとって優先すべきは遠坂の事情。そのため聖杯戦争を一時休止するのにもなんら不満も抱かない。
 そんな出来の良いサーヴァントの言葉に遠坂は素直に礼を返した。
「私では遠坂殿のように効率良く書物漁りはできない。
 アーチャーの正体は分からないが、一晩思案した結果セイバーの正体なら心当りが幾つか無いわけでもない」
「それは真かね?!」
 我ながら食い付きが良いなと内心苦笑しながらもそれでも期待感を抑えられない。
 雑務で足止めを喰らっている遠坂陣営の現状ではファイターの言葉にはそれだけの魅力があった。
「だが遠坂殿の期待に沿えるかは分からない。決定的な証拠がないせいで数人までしか絞り込めていないのだ」
 やや控え目な口振りのファイターだが不特定多数から数人単位まで絞り込めれば遠坂にとっては十分だった。
「構わんさ。数人に絞り込んだだけでも十分過ぎる位の情報だ」
 では。と咳払いした後ファイターは絞り込んだ英霊の名前を列挙していく。
 ローラン。ルノー。ランスロット。トリスタン。フェルグス。オリヴィエ。ディートリッヒ──。
 そうしてその英霊である可能性の根拠と共に挙げられる名はどれもこれも一流の偉名ばかりであった。
 特にパラディンと円卓の騎士に属する英雄の名が多い。
 遠坂は黙して耳を傾け考えを巡らせている。
「……ふむ。それで君が最も確立が高いであろうと思う者は誰だね?」
 思案しながら顎を手で弄りっていた遠坂の手が止まった。
 眼光は冷たくも理知的。巡らす思考は己のサーヴァントをぶつける際の最も効果的な戦術。
 例え今列挙されたどの英霊が敵になろうと物怖じする気など毛頭にない。逆に必勝の策を探して捻じ伏せてみせる気概だ。

「────パラディン筆頭のローラン」

 それは彼も同じなのかファイターのそれは殆ど即答に近かった。
 彼の結論とする答えはほぼ決まっていたがそれでも可能性は残すべきとし他の名を挙げたに過ぎない。
「それが直接セイバーと剣を交え、全ての事を見聞きした君の出す結論なのだな?」
「そうだ。技量。胆力。自信。そしてそれを支えるに足りる実力。
 それに大司教や親友などのキーワード。騎士道、聖剣などのセイバーを構成する因子。さらに竜種さえも恐れない経験と自信。
 それらを統括し当て嵌まる人物を探すと……パラディン最強と讃えられたローラン、奴が今次聖杯戦争におけるセイバーだ」
 笑っていた。ローランの名を口にしながら。
 ファイターは心底喜ばしそうに闘志を滾らせた凄烈な笑みを湛えていた。
「ローランとルノーとランスロットの三択で迷ったが彼の性格も考慮すれば立ち振る舞いが優雅と謂われた湖の騎士のものではない。
 セイバーは華麗や優雅と言うよりは無邪気にして豪快な武人だ。同様の理由でローランの親友たるオリヴィエでもない。
 そして性格や実力などのローランと細部が被るルノーだが彼には竜殺しの逸話は見受けられない。
 それにルノーの宝具はヘランベルジュだ。
 刃毀れなしと謂われるランスロットのアロンダイトなら可能性はゼロではないが、
 ヘランベルジュでは私の『赤原猟犬』の攻撃を真っ向から受け止められた説明が付かない。
 しかしそれもかの煌きの聖剣にして不破と謳われるデュランダルだったならば───」
「明確なルールとして刀身が折れないという神秘を秘めていたならば後はそれを実行する技量さえあれば可能、か」
 遠坂の言葉にファイターこくりと頭を振った。
 以上全ての条件を満たし得る英雄はローランしかいない。
 セイバーはローラン。
 ファイターの中でその結論は変わらない。だがどうしても解決しない疑問があった。
「左様。しかし仮にセイバーをローランとした場合どうしても腑に落ちない事がある」
 遠坂は視線だけで続きを促がした。先を続けるファイターの顔にやや困惑の色が浮んでいる。
「ローランにはあの不死身にして無敵と謂われたシグルドのような鋼の肉体を持ってる筈だ。
 だが私との戦闘やアーチャーの狙撃でセイバーは確かに傷を負っていた……。
 これが一体どういうわけなのか私ではどうしても納得がいく解答がでないのだ」
 鋼ような無敵の肉体を持っている筈なのに傷を負う英雄。
 なるほどファイターが困惑するのも当然である。
 不死身でないシグルドなどシグルドでは有り得ないように、無敵の肉体を持っていないローランなどローランとは言えない別人だ。
 つまり根本からファイターの正体予測が間違っているということになりかねない。
「私の推測ではセイバーはローランしか考えられない。だがここにその予測を否定しかねない矛盾が存在する。
 遠坂殿にもこれについて意見を是非聞かせて貰いたい」
「…………」
 一際苦い表情で遠坂は黙考する。
 ファイターの話を聞く限りではセイバーがローラン辺境伯である可能性が最も高いと遠坂も同意している。
 先日のバーサーカーのいる戦場に突如強制召還されたのも援軍を呼ぶ宝具『オリファン』によるものだったとすれば説明もつく。
 一体どの辺りが鋼鉄の肉体なのか。
 耐久値の高さか?否ありえない。伝説に残るような特徴はそれはもはやその者の宝具やスキルにあたるモノだ。
 そもそもセイバーの耐久はBランク。これならばファイターの方が余程硬いと言える。
 ローランには明確に無敵の肉体という伝承が残っている以上それはスキルか宝具となるべき特性。
 マスターの透視能力でそれらしきスキルは見付けられなかった。
「セイバークラスの宝具として再現されていないというのは可能性としてどうだろうか?」
「それは私も考えた。
 いくら英霊と言えどサーヴァントとしてクラスに填められているからには生前持っていた能力を全て発揮できる訳ではない。
 さらに現界したクラスによっては使えない技能や宝具も存在する。
 ただ……ローランにとって最も該当し易く本来の姿に近いクラスはセイバークラスではあるまいか?」
「確かにな。それに『ローランの歌』においても奴はまともに傷を受けた気配が無い。
 そして『狂えるオルランド』でも同様ときているなら無敵の肉体は宝具として再現されている方が自然か」
 片足でリズムを取るようにトントンと床を叩く。
 ファイターとの攻防で傷を受けていたからには常時に無敵ではないということ。
 となると遠坂の知識から考えられる残りの可能性は──。
「まさか条件付の無敵概念か……?」
 ポツリと洩らした遠坂の言葉をファイターは耳敏く聞きとめた。
「それはつまりローランは特定の条件や状況化で無敵の肉体となれる、と?
 私との戦闘ではその発動条件を満たさなかった故に鋼の肉体にならなかったと?」
「自信は無いがね。ちなみにそういうのは肉体の宝具としては有り得るか?」
 ファイターは問いに軽く考え込んだ後、頷いた。
「そういう概念で括られているのならば十分に有り得る。現に私の最終宝具の解放にも条件がある分他人事ではない」
「では一旦そういうものだと仮定し当面はその発動条件を探る方針でゆくとしよう。敵の能力情報を識るのは兵法の基本だ」
 こうして彼らの疑問は一応納得のゆく形で氷解した。物収まりの悪さが解消した二人はすっきりとした表情であった。

「いやはやしかし遠坂殿の知力も大したものだ。
 無敵の肉体は常に無敵なのだという先入観を抱いていた私では到底この答えは出てこなかったことだろう!」
 ファイターは納得のいく答えに胸のつっかかりが取れたらしく、しきりにマスターを大したものだと称えていた。
 この闘王の素直な賞賛は讃えられることにいくらか慣れているさしもの遠坂でも悪い気はしないらしい。
 数刻前よりもやや機嫌が直ったようで口元には微笑らしきものを浮べている。
「もしこの予想が当たっているのなら後は打開策を練るだけだが───ローランの弱点は確か……」
「私の知っている限りではローランの弱点は足の裏だというのがあったはずだ!」
「私の記憶にも足の裏が弱点だという話を目にしたことがある」
 間違いないな!と自分たちの知識上の弱点が同様のものだったということに安堵。
 それから二人揃って口を噤んだ。
「……………」
「……………」
 沈黙が二人の間を流れる。
 話は順調に進んでいるかのように見えた。
 しかし最後の最後で思いもよらない落とし穴が二人を待っていた。
 足の裏が弱点であるということは即ち足の裏を攻撃すればローランの無敵の肉体も突破できるということだ。

 足の裏を攻撃……だと?

「………なあファイター」
「ど、同感だ……正直なところ足の裏を攻撃するよりは首を落とした方が早いだろうと思われる。落とせればの話ではあるが」  
 セイバーのソレはちょっと弱点と呼べるだけのデメリットにはなりそうになかった。
 落胆で二人して嘆息する。
 同じく身体の一部を弱点とするシグルドやアキレウスとは条件がまるで違うからだ。
 アキレウスやシグルドはかかとや肩甲骨が急所となり最終的に死に至る破目になったが、ローランは足の裏が致命傷になっていない。
 彼の伝説における死因は『救援の聖音』の使用による生命力の枯渇なのだ。
 これでは足の裏への攻撃が致命傷になる位の弱点になりうるか怪しいところである。
 おまけにその足の裏もあの頑強そうな全身鎧によって爪先から足の裏までしっかりと防護されていた。
「だがそれよりも」
「そう、そもそも何より足の裏に対する有効な攻撃手段が我々には無い」
 ファイターの台詞を引き継いで、遠坂は額を指先で押さえながら苦々しい声で吐き出した。
 これが彼らにとって一番の問題であった。いやこれはローランを敵に回す全ての者にとってもそうであろう。
 大地に常に密着している足の裏になどどうやって攻撃しろというのか?
 それもあれだけの絶技と運動能力を誇るサーヴァントを相手にして。
 格下や人間ならまだしも相手が空を舞う天使でもない限りサーヴァントの足の裏などそうそう狙える部位ではない。
 撒きびし程度の攻撃力ではあの甲冑を突破できない。
 では地面から空に向かって発動するタイプの攻撃魔術か?そのタイプの攻撃魔術なら遠坂が使用できる。
 無駄だ話にならない。セイバーの対魔力はBランクもある。
 簡易魔法陣を敷きテンカウント詠唱した遠坂の大魔術でも有効打にはなるまい。
 ならば底に剣山を仕込んだ落とし穴式のトラップか?
 馬鹿なそんなものが通用すると思うなどまともな思考の働くマスターの発想じゃない。
 いやそれを言うならそもそもローランの鋼の肉体の発動条件を知らなければ作戦も実行しようがない。
「とりあえず遠坂殿は引き続き管理者の雑務に専念してくれ。手の空いている私の方で攻略法を考えてみる」
 良い打開案が出てこずにうんうんと苦悩するマスターを見かねたファイターが今取るべき行動を提案した。
 遠坂は雑務もこなさねばならないのだ。攻略法は直接刃を交えた自分の方で考えるべきだろう。
「とりあえず今から町に出て攻略に使えそうな地形や物がないかを見てこようと思うのだが、
 遠坂殿は邸で待機し何か危険を察知したり外出の用がある時は私に戻って来いと強く念じてくれればそれで伝わる」
 ファイターはそれを最後に早速外へ出るため霊体となったところで遠坂に呼び止められた。
「おっとそうだった。待てファイター色々と話が出てきたおかげで言い忘れていたが今日は私に付き合って貰う。
 昨日から今日の明け方にかけて冬木に多数の魔力反応が突如として出現のを私の仕掛けた網が感知した。
 他のマスターによる罠である可能性もあるが、昨夜の妖狐の件もある。
 万一の怪異の可能性に備えて早々に魔力反応の正体の確認を取っておきたい」
「私は別段構わないのだがその……雑務の方は?」
「なぁになにも問題は無い。いつものようになんとかするさ」
 遠慮がちに訊ねてみると返ってくるその自信と余裕ある言動からいつもの遠坂刻士に立ち戻ったことをファイターは実感した。







──────Casters Side──────

 すっかり陽も昇りきり町がにわかに活気を帯び始めた午前。
「マスター少し外へ出てきます」
「こんな時に大層な御身分だなキャスター。一体どこへなにをしに行くつもりだ?」
 ソフィアリはジロリと非難めいた視線をキャスターに浴びせかけた。
 下僕が出かける事前に一言かけた事さえ気に食わないのか、あるいは下僕が外出すること自体が気に入らないのか、
 とにかく本日のラウネス・ソフィアリはすこぶる機嫌が宜しくないようだ。
 恐らく昨夜の敗戦のショックと癇癪が尾を曳いているのだろう。
「それが昨日から河を跨いだ両町に突然不審な魔力源がいくつも出現しましたのでそれの確認をと思いまして」
 キャスターも無駄口や余計な事は一切口にせずただ淡々と事実だけを報告した。
 一介のマスターである遠坂が感知した以上魔術師の英霊たるキャスターのサーヴァントがこれを見落とす筈がない。
 当然のようにクリスチャン・ローゼンクロイツもこれら魔力源を全て正確に捕捉していた。
「不審な魔力源だと?やれやれ、それでは私も出向かなくてはなるまい」
 いかにも煩わしそうな雑事にソフィアリのテンションが一気に下がる。
 だが不快度のメーターの方は全く下がっていない。むしろ総合的に悪化している。
 するとそれを見かねたかのようにすかさずキャスターが進言した。
「いいえそれには及びません。この程度の些事でいちいちマスターの手を煩わせるまでもありません。
 それに魔力源は自然発生したものとは考えられないため敵の罠である可能性が高いでしょう。
 万が一マスターに怪我をされては忍びないのでボクが今から直接現地に赴いて確認と処理を行なおうと思いますが──」
 よろしいでしょうか?と最後に付け加えソフィアリの顔色を窺った。
 恭しく主人の手足になるという旨を強調しつつ、キャスターはマスターへ心理的誘導をかけていく。
 ここは何がなんでも単独で行動をする口実を得なければならない。
 そしてその目論見は実にすんなりと成功した。
「サーヴァントらしい殊勝な心掛けがだな。いいだろうそこまで言うなら好きにしろ。ただし感覚の共有はしておけ」
 立場的強者独特の見下した物言いでソフィアリはキャスターの提案に頷いた。
「それは構いませんが現地では人目を避ける為にもずっと霊体でいるつもりなので視覚の共感まではできませんよ?」
「構わん。お前がその時どこで何をしているのかを確認できればいい」
 一方でソフィアリも迂闊にサーヴァントの手綱を放す気はないらしく聡くもその首に首輪を嵌めるよう命令する。
 キャスターは素直にわかりましたと頷いてソフィアリのかける感覚共有の魔術を成立させた。
 術の感触を確かめながらソフィアリは内心笑みを浮かべる。
 これで彼は共有した感覚を通して己のサーヴァントの現在地などを知覚することが可能となったのだ。
 喩えるなら互いの合意で発信機を取り付けたようなものだ。マスターのメリットは大きい。
「では陽が暮れる前に処理し切りたいのでもう出発しますが何かあったらボクを呼んで下さい。緊急時には令呪で強制召還を。
 一応工房およびその周辺の陣地には対外敵侵入用の結界を幾重にも張ってあります。
 仮にアサシンであっても気付かれずに此処まで潜り込むのは難しいと思いますが念のためご用心を」
「お前如きに言われずとも分かっている。小生意気な事を抜かしている暇があるならとっとと片付けてさっさと帰って来い愚図め」
「了解致しましたマスター。っと失礼」
 そう言ってキャスターはソフィアリの頭部に手を伸ばし。

 ─────プスッ。

「ん?オイなにをしている?」
「いえ、マスターの頭髪に塵が付着しておりましたので」
 キャスターはほら。と掌を広げて糸屑らしき塵を見せた。
「チッ、余計な事をしてないでさっさと行けノロマが!」
 マスターの罵倒を涼しい笑みで受け流してキャスターは部屋を後にした。

 そうして霊体の姿で陣地から外に出た段階でキャスターは声には出さずにくすりと口元に笑みを浮かべた。
 霊視のため視覚はマスターと共有状態にないが聴覚は生きている。下手な音を聞かせる訳にはいかない。
 首尾良くいった──。
 その鮮やかな手並みを以ってソフィアリにはまず気付かれてはいないと断言できる。
 後は共感魔術の方を何とかして、さっさと魔力源の正体を確認してしまおう。
 いくら現在のソフィアリが一流の魔術師であろうとも所詮はキャスターの譲渡刻印によってその力を倍増させた紛い物だ。
 キャスターのような中身までもが本物の術者に敵う道理などない。
 自身の内側に眼を向ける。ソフィアリが先ほどかけた感覚共有魔術の術式を走査─────解析はすぐに終了した。
 この程度の魔術なら宝具たる魔道書を使用するまでもない。自力で術式の解体を開始する。
 キャスターはまず工房から出発する前に適当に用意しておいた小鳥を一羽どこからともなく取り出した。
 当然ながらこの小鳥はただの野鳥ではなく、ローゼンクロイツの数いる使い魔の一匹である。
 それからキャスターがソフィアリと共有している感覚をこの小鳥の体に移し変える作業に入った。
 この作業だけは慎重かつ丁寧にやらねばならない。
 杜撰な仕事でマスターに異常を感付かれては折角の計画が水の泡となってしまう。
 そうして感覚共有の術式を僅かも破壊することなく小鳥の体に丸々移し変えると、どこか適当な場所へと飛ばしておく。
 無論マスター側からの連絡にはきちんと対応出来るよう小鳥との中継ラインを別に新たに繋いでおいた。
 こうすることでこちらの情報はマスター側には流れないが、マスター側の情報は鳥を通じて間接的に得ることが出来る。
 まるで盗聴の真似事だなと自嘲しつつもキャスターはこれで感覚の共有なんて免罪符を借りたマスターの監視から自由の身となった。
 今のは魔術師からしてみれば手術じみた大掛かりな技だが伝説にその名を残す魔道の雄ともなればこの程度の技巧は朝飯前である。

 なにはともあれこれでマスターに悟られる事もなく裏で動くための準備が無事全て整った。

「さてと、とりあえずは他のマスターと接触せねばなりませんね」
 果たして誰と接触するか。それが一番肝心なポイントだった。
 マスターとして有力なのは言うまでもなく始まりの御三家の者達であろう。
 ゲームマスターという立場もさることながら聖杯戦争の事情に一番精通しているのは彼らだ。
 しかし正直なところキャスターは始まりの御三家にどこかきな臭い気配を感じているのもまた事実だった。
 どこがきな臭いのかまでは明確には出来ない。しかし、どこか利用されている……。そんな懸念が脳裏から離れない。
「誰と接触するのがよりよい結果となるか。その辺りも視野に入れて行動しなければ最終的に斃れるのはボクでしょうし…ふむ」
 キャスターは他のマスターと接触し運良く再契約しても最終的には他に契約を結んでいるサーヴァントを蹴落とす必要があるのだ。
 聖杯の恩恵に授かれるのは一人のマスターと一体のサーヴァントというのが原則だ。余分な席が無いのなら奪うより他にない。
「御し易そうなのは現セイバーのマスターやバーサーカーのマスター。ファイターのマスターは条件が悪い」
 マスター一人一人を想い返しながら成否の検討をする。
 雨生は与し易いだろうがバーサーカーの負担で正直余力は殆んど無いと見て良いだろう、組むべき相手ではない。
 御三家陣営の間桐とアーチャーは手強そうではあるがやりようではどうとでもなるだろう、保留。
 同じく御三家陣営の遠坂とファイターは……駄目だ下手に接触しない方が賢明。
 ライダーとそのマスターも厄介そうな難物である。何より腹黒さでは断トツだ、相応の準備がなければミイラ獲りがミイラになる。
 そして一番与し易そうな沙条だが相方がセイバーのサーヴァントというのが問題である。
 強者と結ぶ協力関係は最終的にはそのメリットがそのまま己のデメリットとして跳ね返る。
「現状で最有力のセイバーやファイターのマスターと手を結んだとしても最後にはその最有力のサーヴァントが敵に回る…」
 最終的な戦局を予測しながら己の戦力に思い馳せる。
 実際キャスターがセイバーやファイターを打倒するのはかなり厳しいものがあった。
 自分らの圧倒的優位に持ち込んでおきながら結局おめおめと逃がしてしまったという苦い結果になったセイバーとの工房戦。
 火力に今ひとつ欠けるクリスチャン・ローゼンクロイツではまともにやり合っては護りに回るのが限界である。
 最終局面で辿り着くであろうこの問題をクリアできない以上はキャスターの悲願は成就されない。
 高速で頭脳を回転させ考える。
 真っ向勝負では話にならないのであれば嵌めるしかないだろう。それも生半可ではない代物で。
 現在の自身の状態で実行可能な策は5つ。その中で最も成功確立が高いものを算出すると…。
 策略を使ってサーヴァント同士とマスター同士が戦っている隙に横合いから……否、足元から一気に掬い獲る戦略が望ましいと出た。
 成功させるにはマスター達が好んで戦場に選びそうな場所を調査し必殺の罠を配置するのがいいだろう。
 真意を隠したまま戦局を先導しつつ、必殺のタイミングで罠を発動させてサーヴァントを屠る。
 チェスのような戦いになるだろうがキャスターにはこれしか有効手がないのだから文句は言ってられない。
 邪魔なサーヴァントさえ消せば聖杯入手の為にもマスターは謀反を起こしたキャスターであっても否応なしに協力するしかないのだ。

 とにかくサーヴァントの寝首を掻くことに重点を置いた具体的な策略を練りながら接触すべきマスターを探していると。
 ──途中で妙なものを見つけた。

「ん……これは…魔力?」
 偶然の発見。昨日突如出現した魔力源とは明らかに別の反応だった。
 実体化はせず魔力の気配がする辺りに降り立ち周囲の様子を探る。
 特にこれと言って目ぼしい物がないその場所からは魔力遮断用の結界を置いている反応が感じ取れた。
「おやおやこれはこれは。もしかして幸運な拾い物───でしょうかね?」
 こんな所に結界などが張ってあるということはこの中には何か大事なものがあると如実に語っているようなものだ。
 しかも結界はほんの僅かに綻びが生じ始めている。
 結界の魔力を抑え込む力よりも中のものが外に漏れ出そうとする力の方が上であるせいだろう。
 だがそのおかげで彼は丁度ここの上空付近に差し掛かった辺りで結界から僅かに漏れ出す魔力の波を目敏くも察知出来たのだ。
 偶然舞い込んで来た幸運は歓迎して然るべきだ。
「結界の解除──いや透過にしますか」
 誰が置いたのかは分からないがとにかく中を確認させて貰おうと結界の外縁に手を触れ呪文を唱える。
 するとたちまち結界の効果を一時的に無力化させた。
「なんとまあ呆気無い。サーヴァントではなくマスターが張った結界でしょうかね?」
 思ったよりも容易く結界が無力化した事にやや手応えのなさを感じながらキャスターは悠々と結界内に侵入する。
 そして、
「ああ、なるほど。この結界を張ったのは貴方だった訳ですかライダー」
 天高く聳え立つ太陽の王像の雄々しい姿を眼にして呆れたように呟いた。







──────V&F Side──────

V「えーーーーい!!クソ忌々しい暑さだ!これだからニホンは大嫌いなんだ!
  ニホンの良い所などゲームくらいしかないんだ!ニホンなんかナットウでも食ってりゃ良いんだコンチクショウー!」
F「…………先生テンション高いですね…俺なんて暑くてもうダメです…」
V「とか言いながらその両手に見せびらかすように握り締めた物体はなんだ?」
F「え?!せ、せ、先生!いくらなんでもソフトクリームを知らないなんてド田舎通り越して未開人ですよ……?」
V「そぉぉゆう意味じゃないッッ!!
  よくもまあ暑さに苦しむ師を目の前にして一人だけ美味そうな物をしかも二つも!食べられるなと皮肉ってるんだろうが!」
F「先生も夏はアイスクリームがウマイと思いますよね!冬に食べるアイスもまた違った美味さがあると思いますよね?」
V「ああ心底同意してやる。だからそれを渡しなさい」
F「ヤです。だってこれ俺が買ったアイスなんですよ!?」
V「ええい!いいから少し寄越せーー!」
F「ちょ、ちょ!!せせ先生止めて下さい!泥棒ですよ強盗ですよ窃盗ですよ!?」
V「違う!!こそこそと盗めばそれは盗賊の所業だが、凱歌と共に立ち去ればそれは征服王の一味の蹂躙だーー!!」
F「え、えええーーーー!?ってああああああああああ!!!?俺のアイスがぁあああ!!!??」
V「AAAALALALALALAI────ッ!!!!」
F「うわーん!先生の鬼畜英人ーー!!」
V「はーはっはっはっはー!!戦利品(アイス二個)獲得!戦争経済でウハウハとヒトラーもダブルライダーズも言っていたぞ!」


V「さて、改めて言っておかねばならないことがある」
F「更新に間が空きまくったことですか?」
V「いやそれは色々と吝かではない事情が立て続けにあってだな……」
F「そんなもんありましたっけ?」
V「あった。我が家のPCのデータが危うく飛びかけるわ、児ポ法改正で二次元表現も面倒なことになりそうだったりするわ、
  HDD壊滅という恐怖に駆られた愚者が怒涛の勢いでHDD整理とバックアップ作業を開始するわ、
  皆鯖スレでおじゃる麻呂製作にさり気なく参加しつつTYPE-MOONの新作マダー?するわ、
  地球温暖化がどうとか言う以前に既に夏は暑いわで大変だった……ああニホンは恐ろしいトコだ!
  流石は暑さに耐性があるラメセス二世にアヅーイ俺様を蒸し殺す気か!?と憤死させただけのことはある」
F「ええホントですね!教え子のアイスを強奪する師なんて!しかも二つとも!あぁ恐ろしいジャパン!」
V「時間かかってすまーん!暑いと想像以上に筆の進みが悪いと知った…。
  クーラーの効いた図書館なんかで勉強する時計塔の学生たちの気持ちがわかった………」


V「さて、再度改めて言っておかねばならないことがある。
F「まだあるんですか?」
V「いやむしろこっちが本命なんだがね。……マスターにはちゃんと名前をつけて置けば良かったと今更後悔した……」
F「……誰ですか?!マスターの扱いは適当でいいプ~とか言ってたのは!」
V「喧しい!当初の予定じゃマスターの活躍機会なんか想定してなかったんだ!
  しかし書き始めてよくよく考えるとサーヴァントだけの戦いだけじゃ聖杯戦争は無理だと気付いた。中盤辺りから」
F「気付くの遅すぎるでしょういくらなんでも!もう中盤過ぎてるんですよ中盤を!」
V「シャラップ!よって一旦ここで各マスターのフルネームを記載しておくことにする。
  遠坂刻士(とおさかこくし)。間桐燕二(まとうえんじ)。雨生虎之介(うりゅうとらのすけ)。沙条綾香(さじょうあやか)。
  ルゼリウフ・フォン・アインツベルン。ラウネス・ソフィアリ。
  ゲドゥ(コードネーム。孤児院出身の代行者上がりなんで本名も名字もない)」
F「ところでなんか基準ってあるんですかこの名前?」
V「実は全員それぞれの家系に関わるキャラの名前や名の共通性などに沿って名付けてある」
V「ゲドゥはキャラマテに記載してあった外道牧師という単語から、ラウネスはケイネスとソラウの掛け合わせ、
  虎之介は子孫が龍なら先祖は虎のが繋がりがいいだろう、燕二は雁や鶴と同様に一文字の鳥の名前に慎二を足した、
  刻士は時臣、永人と同じく時間と人を意味する漢字の組み合わせで古風な響きの名前を考えたらこうなった。
  そして一番よくわからんルゼリウフは実は一文字ずつずらすとリズライヒになる」
F「………暇ですね先生」
V「我ながらそう思う……」

V「なんか久しぶりだから勝手を忘れた。なんか質問はあるか?」
F「はぁーい!セイセー!戦車自慢してる時にラメセスさんが明らかにイスカンダルさんに対して喧嘩売ってますよね!?」
V「ラメセス二世がイスカンダルが神威の車輪に搭乗する姿を見たら絶対に哂うだろうな。
  やつの理屈から言えば聖獣だろうと神獣だろうと獣は獣と言うだろう………チッ(調子コキやがってファラ公が)」
F「今舌打ちしましたよね?!確かにしましたよねっ!!?」
V「さあ?知らんなぁ?わたしはあくまで中立の立場の人間だ」
V「まああの男の変態ぶりを見てきた諸君なら言うまでもなく判っているだろうが、他の王との仲は最悪だ」
F「なんかもう予想通りの解答すぎて笑いが止まりません!」
V「王のタイプで言えばあの三人の中ではイスカンダルとギルガメッシュの中間に来るタイプの王だな」
F「あれ?ギルガメッシュさんと同タイプの王様じゃないんですかこの人?」
V「いや少し違う。同じく王様こそ絶対と思っている傲岸な王ではあるが、同時に民は王が率先して導くものという理念も持っている」
F「ああそれでですか。ギルガメッシュさんはどっちかって言うと王について来れんような弱民はいらん!ってタイプですもんね」
V「しかし厳密に言えばイスカンダルとギルガメッシュの中間にくる王というのもまた少し違う。
  それはラメセスにはアーサー、ギルガメッシュ、イスカンダルたちの王道に無い理が存在するからだ。
  それが神の名の下にある秩序、だ」
F「ナンスカソレ?」
V「手っ取り早く言えば神様最高やっほーい!な王のこと」
F「それはいくらなんでも手っ取り早すぎませんか?というか説明が適当過ぎませんか?」
V「えらく注文が多くなったなフラット。夏か?夏の暑さのせいなのか?忌々しい夏めおまえなんか大っ嫌いだ!
  とにかく!系統で言えば神の名の下に戦い人々を統治したシャルルマーニュなどがこの王のタイプに属する。
  イスカンダルやギルガメッシュそれにアルトリアは神の法ではなく己の法や自分たちのルールを秩序としている。
  それに対しラメセスやシャルルマーニュは神の代行人として地上および人間を統治するのが秩序と考える。
  その辺がこの三王連中と決定的に違うラメセスの王道だな。
  元より相成れない秩序同士なのだからどうやっても上手くいくはずがない。
  ちなみに同じく王の格を持つベーオウルフはアルトリアと全く同じタイプの王だ。
  民を守り義や忠道を秩序に滅私奉公で人を救う王道。この二人だけは例外だ、同じ穴に放り込めば熱い友情が生まれる。
  逆にギルガメッシュやイスカンダルやラメセスなどと同じ穴に放り込めば拳で語る王道が始まるだろう」
F「つまり……」
V「混ぜるな危険!だな。では今日は解散また次回だ!私は文明の利器クーラーが存在する場所を彷徨い求める使命があるんでな」
F「先生!アイスたんまり買ってきました!」
V「お前にしては良い仕事だでかしたフラット。さあゆくぞ私たちのエルドラドヘ」
F「オー」