冬木市大災害跡地

火の原だ――。
 赤い火が乾燥した空気の助けを借りて、燃え広がっている。
 草原は火の絨毯に。木は火の松明に。空気は溶鉱炉の如く。
 同時リタイヤしたサーヴァントの残り火だ。
 そして火の原の中心に二人がいた。男と女だ。時代にそぐわない容姿をしていた。

 男は浅黒い肌で中肉中背の引き締まった体格で、くすんだ金色の亀甲鎧で胸、背中、腰部、脛を覆っていた。焦げた空気による不規則な気流は黒い長髪を乱れさせる。
 乱れた前髪から覗くのは爬虫類染みた眼。その黒い瞳はギラギラと鈍く輝いている。
 彼は普段は穏やかな眼をしている。それこそ水辺の亀のように。だが、今は鋭く、凶悪な眼をしていた。
 目の前にいる上背のある女は、穏やかな眼で視てて良い相手ではないからだ。
普段の彼なら赤面し目を覆う極めて裸に近い衣装を纏った女。娼婦でも遊女でもない。

悪性の化身――神汚しの存在――七大罪――獣――バビロン。

だから、人が扱うにはあまりにも大きすぎる弩の柄を血が出るほど握りしめ、相手に跪いてしまいそうな膝を爪で傷付け、心を亀のようにどっしりとしていなければならない。
 恐怖を感じているからではない。あの紅い眼に見られると心を鷲掴みにされ、虜にされてしまいそうだからだ。ランクBの対魔力を持つ彼でも屈してしまいそうな“呪い、魔術”に近い魅了。

 魅了以外に危険性もあった。彼の人生の転換ポイントでしか働かない、神託のお告げがさっきから受神(じゅしん)しっぱなしだった。
 お告げは語る。金亀神は告げる。“全力で行け。行けなければ逃げろ”と。
 彼は前者に『応』と応え、後者に『拒否する』と応えた。
 逃げる事などできない。これは最終ラウンドだ。自分と彼奴しか残っていない。他は全て消えた。槍兵も魔術師も剣士も暗殺者も狂戦士も全て雲霞となり聖杯へと帰っていった。
 自分と彼奴だけ。この場にいるのは自分と彼奴だけなのだ。マスターは別の場所にいる。彼奴のマスターと彼と同じように最終ラウンドにいそしんでいるだろう。
此処で逃げることなど戦士として、王として、男としてできるわけがない。

 男――安陽王(アン・ズォン・ウォン)は息を一つ静かに吐いた。そして問いを一つ投げかけた。
 目の前の女に、最後の御敵の女に。一度だけ戦った美女に。

その女の肌は絶妙に白い。全ての女性が理想とする白さで、男が女に望む白さである。
又、肢体は現実離れした凹凸であった。乳房は男を惑わす蠱惑のメロン、重力に逆らって上を向いている、腹は平らに絞られ、尻肉も柔らかく持ち上がっている。
そして豪奢だ。それも絶妙な加減の豪奢さであった。
耳朶には金で飾られた真珠のピアス。細い首には黄金鎖に繋がれた大粒の紅玉。手首足首に真珠と綺羅の腕輪と足輪の他、高級感溢れる手袋とフリルつきの足輪。頭部には緋と紫の綺羅のベールを被っている。
逆に性的劣情を男性に催す箇所、胴体の乳房、臍、くびれ、局部、太もも部分には一切何も身につけておらず、彼女もまたそんな姿に恥らう素振りを見せることなく、無防備に露出された白皙の肌を見事に堂々と外部に曝け出している。
いや、上半身にはベールと同じ緋と紫の綺羅の衣類を纏っているが、前こと胸の双丘部分は剥き出しの作りになっており、上腕、背中上部、首しか服は隠していない。
むしろ手足や頭に装飾が施される事で、何も身につけていない露出している胴体部分は強調され、一層彼女の淫靡さ、淫猥さ、淫奔さを醸し出していた。
ベールの下から見える黄金のようなブロンドの髪は艶やかであり太陽のような輝きがあった。髪も又、豪奢な飾りによって飾られていた。
足は驚いた事に裸足である。安陽王は靴底の厚い靴と脚絆を履いているから平気だろうが、ハーロットの色も形もものすごく綺麗で細長く華奢な足指に耐えられるとは思えない。
しかし、その足は何らかの守りの効果のお陰なのか、熱がる様子も大地の汚れにもまみれていない。その顔には――その魔性の美貌という概念すらも凌駕した貌には痛苦の色は浮かんでない。
只々、只管に、笑っている。金回り良い客を前にした高級娼婦のように。酌をする花魁のように。これから目の前の男がみっともなく跪き寵愛をこう姿を思い浮かべたかのように。


問いは炎の爆ぜる音に邪魔されることなく、女の耳の奥に吸い込まれていった。
「御前は何故此度の戦争に参加した?」
 戦争が始まった。そしてこの女は最初から不可解な行動をしていた。
 昼はレストランや住処で無防備に暴食に耽り、夜はマスターの家で怠惰に過ごしていた。いざ、戦いが始まれば一度もやる気を見せず、逃げ回り、魅了した他マスターを使って自害させたり、サーヴァント同士を暴走させたりしていた。
 戦略としてはおかしくない。自分をうつけと認識させて油断した敵を叩くのは五百年前からある策略だ。
 しかし、彼女の真名はマザー・ハーロット。基督教黙示録において、諸々の民族、国家群衆、国民、国語の上に立つ人々を惑わす悪徳の象徴の美女。
 バビロンの大淫婦。古代ローマの擬人化。
 その名も役割も安陽王は死後の知識で識っていた。だから解せなかった。
 彼女が誰も堕落させず、自分で悪徳を重ねるでもなく、只、怠惰に過ごしていた事にだ。弓兵の目で見て、正体を知ってからその行動はますます不可解になっていた。
 何故役割を行わない? マスターを魅了すれば猫のように自由になれるのにしないのだ。

その問いに一拍をおいて応えた。
「暇潰し」たった一言。姿に見合った官能的な声でも蠱惑的でもない無味乾燥な声だった。
「!」安陽王は眼を見開いた。そのあまりにも傲慢な一言に驚愕と怒りが湧いた。
 無味乾燥な声でも虜になりそうな心を苦痛で叱咤した。
「“座”は暇なのよ。我(わたし)は面倒くさいのは嫌いだけど、退屈はもっと嫌い。それにたかだか聖書程度に与えられた役割なんて、楽しくても従順に従いたくないわ。
呼び出したマスターは可愛い子だったし、御飯だって言わなくてもくれたし、しかも美味しいし、金さえあれば何だって買える時代に来て自堕落に過ごしたかったのよ」
 そして、一呼吸置き決定的な一言を言った。その一言は安陽王の亀のように落ち着いた心を怒りで震え上がらせた。
「戦いなんて観戦(み)てればいいわ。他のサーヴァントは馬鹿ばっかりね」
 毛根がちりちりと痛み、怒髪天を衝いた。『轟』の音を吼えながら自動装填される弩の引き金を三度弾いた。
 三本の矢は眉間、喉、心臓を狙って走る。それをハーロットは後ろに下がりながら、顕現した黄金杯――『溢れる邪淫(ルクスリア・チャリス)』から、ワインを大きく球状に出し、矢を滑らせた。
 ワインをしまう隙を突いて安陽王はバック走でハーロットから数秒で三十メートルほど距離を取った。
 ハーロットは悠然と立ったまま、それを眺めていた。血のような紅の瞳には好奇を持って。
安陽王は弩から手を離した。弩は傍目からは空中に浮かんでいるように見えた。手品ではない。種はすぐわれるからだ。
 弩は少しずつ姿を――透明から不透明に変っていく台座に固定されていた。
 安陽王は両腕を交差し、言い放った。
「刮目せよ。神託により創造されし、“堅”と“巨”の宝具を――――『神亀金城(コーロア)』!!!」
 観音開きの扉を開け放つように両腕を左右に広げ、天に咆吼した。その声によって周囲の火が揺らめいた。


台座ごと安陽王の体が天高く瞬間移動した。
 ハーロットの眼にはそう映った。さらに、要塞が台座を取り囲むように顕現した。その燻した金色の要塞は螺旋を描く九色の九層の城壁結界が張られていた。
 続いて、その要塞を乗せている巨大な生物が顕現した。くすんだ金色の甲羅を持つ陸亀だ。
 その大きさ全長五十メートル――既存の生物種のカテゴリーに当てはまらない規格外の巨大さ。重量は単純に陸亀を五十メートルにした場合一万トン。要塞部も含めれば二万トン届くかも知れない。

 ――移動要塞『神亀金城(コーロア)』――ランクAに該当する宝具の中で最大級の大きさと防御力を誇る。
 その防御力はヘクトルの『蒼天貫く護国の彗星(フォー・トロイ)』でも突破は不可能であり、九層の城壁結界は完全に主人を外界から守り通す。
 その要塞を乗せている亀はその巨大すぎる足で自分の自重を支えている。地面は地鳴りを上げて陥没した。
「……ふふふふふふふ。面白い。可愛いし欲しいなあ」その巨大さ故、視界には亀の顔が写るばかりで要塞までは見て取れない。圧倒的な圧力。
だが、その魔貌に焦りはなく、怠惰で、強欲に溢れた声色をしていた。
「コーロアーーー!!」
 弩台の前に立つ安陽王が命ずる。王の勅命である。
「喰いっちぎれええええええぇぇぇ!!!」
 神亀の瞳が一つ瞬きし、長い首を反らせて噛み付いてきた。

 その様はまるで、直下型爆弾。鼻先に触れただけで肉が四散してあまりある破壊力を秘めた質量が降ってきた。
 だが、ハーロットは官能的な笑みを浮かべ、朗々と歌い出した。
 その瞬間、空間が軋りをあげた――――――――!

「私は又、一匹の獣が海の中から上ってくるのを見た。これには十本の角と七つの頭があった、それらの角には十の王冠があり、体には神を冒涜する様々の名が記されていた。
私が見たこの獣は、豹に似ており、足は熊のようで、口は獅子の口のようであった。
竜はこの獣に、自分の王座と大きな権威を与えた。この獣の頭の一つが傷付けられて、死んだと思われたが、この致命的な傷も治ってしまった」
――きぃいいいいいああああああ!!――「■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」
 眼前に女陰の如き空間の断裂。そこから女の絶叫と発音不可能な産声があがった。
産声を上げて産まれてきた熊の足にも似た前足。そして、角が二本生え、それぞれに王冠が被せられた獣と竜の合成獸の頭部とキリンのような頸部。大きさはコーロアに劣るが、長さでは勝る。
 その緋色の右前足によりがっちりとコーロアの首が捕らえられ持ち上げられた。亀の皺だらけの肉に爪を突き立てた。肉厚の首から血がしたたり落ちる。
獣の口から、生誕を祝う軋り声。
牙持てコーロアの右目に食らいつこうとしたが、逆に爪を振り解いたコーロアが逆に食らいついた。


「■■■■■■■■■■■■!!」「………ぐべぇぇぇぇえええ!」
 悲鳴は二つ。獣と『神亀金城(コーロア)』のもの。
 顔の半分以上が食い千切られた獣とヘドロ染みた血肉を吐き出す『神亀金城(コーロア)』。この獣の肉を喰らうなど愚行としか言いようがない。この獣自体毒よりも酷い呪詛の塊なのだから。そして、顔の欠損は瞬く間に再生した。

「そこで、全地は驚いてこの獣に服従した。竜が自分の権威をこの獣に与えたので、人々は竜を拝んだ。人々は又、この獣をも拝んでこういった。『誰が、この獣と肩を並べることができようか。誰が、この獣と戦うことができようか』。
この獣は又、大言と冒涜の言葉を吐く口が与えられ、四十二ヶ月の間、活動する権威が与えられた。そこで、獣は口を開いて神を冒涜し、神の名と神の幕屋、天に住む者達を冒涜した。獣は聖なる者達と戦い、これに勝つことが許され、
又、あらゆる種族、民族、言葉の違う民、国民を支配する権威が与えられた」
 空間の女陰から女の絶叫が流され続ける。壊れたラジオのように音程も音質も滅茶苦茶な声だ。
 今度は二本の首が狭い産道と女陰から押し出された。どちらも二本の角に王冠が被せられている。
「■■■■■■■■■■■■!!」獣はそれぞれに吠え、『神亀金城(コーロア)』の首に一つが食らいつき、もう二つは片方の首を食い千切り、城壁結界に向けて首を振って投げつけた。
「■■■■■■■■■!!」「■■■■■■■■■!!」「くうむっ!?」
 要塞に直下型地震並の衝撃が走った。しかし、堅牢な要塞は崩れず、結界にも罅は入っていない。獣の首が呪詛の蒸気を上げる血肉のスープとなり、城壁結界と亀の甲と地面に振りまかれ、汚染した。
「そのような児戯では傷もつかぬ!!」
 安陽王は吼え、弩台から矢を発射する。矢は結界に中る寸前で空間の穴に入り、結界の外に出て、ハーロットに向かっていった。
周囲確認モニタを見るその眼に二つの事象が写った。
 一つは矢をワインの盾で防ぐ、いつの間にか獣の首の付け根に立っていたハーロット。もう一つは時間を巻き戻すかのように首が再生した獣。数百キロの肉の塊は、数秒で元通りになった。
 大地から大源(マナ)を奪うことによる呪詛構成体の急速再生。

「地上に住む者で、天地創造の時から、屠られた子羊の命の書にその名が記されていない者達は皆、この獣を拝むだろう。
 耳あるものは聞け。
 捕らわれるべき者は、捕らわれていく。
剣で殺されるべき者は、剣で殺される。
ここに、聖なる者達の忍耐と信仰が必要である」

血飛沫を浴びて、なおも朗々と歌い上げる血濡れの歌姫。その体に施された血化粧は淫靡に乳房と陰部を飾り立てる。
歌の題目は“ヨハネの黙示録第十三章 二匹の獣”。あの獣の記述である。

「チィ! 再生能力持ちか。ならば――コーロア!」
 安陽王の呼びかけに応じ、首を振りたくって応戦していた『神亀金城(コーロア)』は突然首を甲羅の中に収納した。そしてそのまま力強く後ろ足に力を込め、突進してきた。
「■■■■■■■■■!?」
 元より、超至近距離での戦闘であったため牛歩の『神亀金城(コーロア)』はすぐに甲羅を獣に激突させられた。


さらに、女陰から産み落とされた首――さらにやや小さい二つ――角は一本ずつで王冠が被せられ得ている。が、又、左前足も女陰を大きく歪めて出て来た。
――きいぃぃぃぃぃあああああああああ!!――「■■■■■■■■■!!」
 女の絶叫。獣の雄叫び。そして歌い上げる歌姫(ハーロット)。

「私は又、もう一匹の獣が地中から上ってくるのを見た。この獣は、子羊に似た二本の角があって、竜のようにものを言っていた。
この獣は。先の獣が持っていた全ての権力をその獣の前で振るい、血とそこに住む人々に、致命的な傷が治ったあの先の獣を拝ませた」

 『神亀金城(コーロア)』と押し相撲する獣の背で、自分だけの世界に入ったかのように踊りながら歌い上げる。

「そして大きな印を行って、人々の前で天から地上へ火を降らせた。
更に、先の獣の前で行うことを許された印によって、地上に住む人々を惑わせ、又、剣で傷を負ったがなお生きている先の獣の像を造るように、地上に住む人々に命じた」

 シャラン――シャラン――。手足及び首の装飾品の宝石の鈴音。歌姫はさらに激しく踊り出す。
「第二の獣は、獣の雑煮息を吹き込む事を許されて、獣の象がものを言うことさえ出来るようにし、獣の像を拝もうとしない者があれば、皆殺しにさせた」
 火に照らされた肌が、赤く火照り、激しく揺れ動く乳房が男を魅了する。
 安陽王は額を打ち付け誘惑に耐える。
「又、小さな者にも大きな者にも、止める者にも貧しい者にも、自由な身分の者にも奴隷にも、全ての者にその右手か額に刻印を押させた」
 汗が流れる。媚薬じみた香りが呪詛の臭いと混ざり合う。
 そして最後の首が二つ産み落とされ、さらに女陰から絶叫が響く。
 ――きいいいいいいいぎいぎぎいいいいいいいああああああああ!!!――
「この刻印のあるものでなければ、物を買うことも、売ることもできないようになった。この刻印とはあの獣の名、あるいはその名の数字である」
 緋色の鱗と体毛の生えた胴体が半ば以上産み落とされる。ハーロットの歌は佳境に入る。
「ここに知恵が必要である。賢者は、獣の数字にどのような意味があるか考えるがよい」
 胴体が完全に産み落とされ、『神亀金城(コーロア)』を渾身の踏ん張りで押し返していく。
「数字は人間を指している」ハーロットは天を仰いだ。闇暗の天を。自分のような天を瞳に写し、艶然とした。
「その数字は666――――『黙示録の獣(アポカリプティック・ビースト)』!!」

 ――きぃぃぃああああああああああああ■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!――。

 絶叫は可聴域を超えた音波となり獣は――『黙示録の獣(アポカリプティック・ビースト)』は世界に姿を完全に顕現した。


『黙示録の獣(アポカリプティック・ビースト)』ランクEX。大軍宝具。
 熊の如き前足。豹の如き胴。七つの竜と獣の合成獸の如き頭部。キリンの如き頸部。竜の如き尾。十の角。十の王冠。体表は緋の鱗と体毛が混ざり合っている。さらに全面に書かれた“神を汚す名”。
 獣は完全な生誕を祝う産声を上げた。その産声は六百六十六キロメートル先まで響き渡った。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」

「性なるかな、精なるかな、凄なるかな、
 七大罪。十王冠。神汚し。反基督、
 昔おらず、今おらず、後おらず、
 だが、此処に在り」

 歌い上げたハーロット。体は上気し、媚の香りが上る。そして、『溢れる邪淫(ルクスリア・チャリス)』のワインを豪快に飲み干した。
 口の端から零れるワインが、肌がむき出しの胴体を流れる。一時豊かな双丘の谷間に溜まり、すぐに腹の臍を流れて、股間の膣を伝い、まるで尿のように破瓜の血のようにしたたり落ちた。
 その様子に安陽王は火のように顔を赤くし、ハーロットは秘部を見せつけるかのように拭った。
 それを合図とするかのように「■■■■■■■■■■■■!!」咆吼が響き、『神亀金城(コーロア)』に匹敵する巨体の筋肉を隆起させた。後ろ足は地面を噛んで、前足の爪は甲羅に爪を立て、割らんとする。
 押し合いでは分が悪いと安陽王は判断した。何故なら、『黙示録の獣(アポカリプティック・ビースト)』から発する呪詛が『神亀金城(コーロア)』を苦しめているからだ。
 甲羅に隠れていて視認できないが、『神亀金城(コーロア)』は苦悶の表情をしている。また、先に魔力切れるのはこちらだという確信があった。
そして、安陽王は感じていた。大源が薄くなっていることに。眼前の敵が奪っているのだ。だから彼は、指示を飛ばした。
「コーロア!!」
 引っ込んでいた首がいきよいよく頭突きをかました。『神亀金城(コーロア)』の石頭は『黙示録の獣(アポカリプティック・ビースト)』の真ん中の首の鼻っ面を潰した。
 「■■!?」首の一つは仰け反ったが、まだ六つある。それぞれが自らの意志で亀の頭に食らいつこうとするが、一瞬速く引っ込んだ為、空を切った。
 その隙を逃さず、安陽王は己の宝具の真名開放を行う。
「くらえ『一矢千殺(キム=クイ)』!!」弩から放たれた矢が千倍に分裂した。細胞分裂の如く完全同一の矢が千。
 雨である。死をもたらす凶の雨。千殺しの一矢。

 ハーロットは杯を上につい、と動かした。『黙示録の獣(アポカリプティック・ビースト)』は主人を背に乗せたまま仰角八十度で跳躍した。
 大質量が移動した事による猛烈な気流。赤い線を残して、木を小枝のように薙ぎ倒す。
 建築物じみた生物が跳躍するという異常現象。その現象に安陽王は眼を見開いた。
 矢は大半が獣の下半身に刺さり、残りが地面を耕した。矢は一本がAの千分の一の威力しかない。超高範囲攻撃宝具だから威力は分散してしまう。
二百本近くが刺さったが、すぐさま傷は治ってしまった。それに、元々『一矢千殺(キム=クイ)』はハーロットを狙った物で、耐久力の高い方ではない彼女なら二,三本で致命傷になると予測したからだ。
 安陽王は自分の宝具ほどもある生物が跳ぶなどとは夢にも思わなかった。油断ではなく、ドジでもなく、
『神亀金城(コーロア)』という生体宝具を持っている者として、性能を自分の宝具と照らし合わせてしまった故であった。
 だが、このまま惚けている男ではない。走馬燈のようにゆっくりと降ってくるあれを視界に入れると、神託が受神された。


“獣より上から攻撃”――――返答は「応」である。
 安陽王の罵声染みた声が、『神亀金城(コーロア)』に届く。
「完全防御姿勢――!」手足を引っ込めてうずくまれ、と。
 素早く手足を引っ込めたことにより、一瞬甲羅の体が中に浮き、地面に激突した。
 安陽王は瞳に燃え上がる覚悟を宿していた。
「覚悟を決めろコーロア!! 絶対にあの阿婆擦れを我らの宝具で貫く覚悟を!!」

その言葉通り消滅すら恐れぬ覚悟の行動をする。
驚異のランクA宝具四連続真名開放。四千の矢の逆しまの豪雨。
「『一矢千殺(キム=クイ)』! 『一矢千殺(キム=クイ)』!! 『一矢千殺(キム=クイ)』!!! 『一矢千殺(キィィィィム=クゥゥゥゥイィィ)』!!!!」
 最後の引き金を弾いた瞬間足が半透明になり、崩れ落ちた。全身に粘る汗をかき、呼吸が熱病のように荒くなる。
 それでもなお吼え続ける。戦争のコンセプトを体現するため。

――汝、最強を、証明せよ――!

三千の矢は『黙示録の獣(アポカリプティック・ビースト)』に向かい、残りの千はすぐ横を素通りした。
 『黙示録の獣(アポカリプティック・ビースト)』は逆しまの体勢で、七つの首をそれぞれドリルのように絡め、十の角を削岩機のように突き出している。
 その様はまさにある神話に謡われる神の矢。ソドムとゴモラの硫黄の炎。
 『黙示録の獣(アポカリプティック・ビースト)』は神を汚す名を叫ぶ。
「■■■▲■■■■▲■■■◆■■■■■■■■◆■■▲■■■■!!!」

 三千矢は鱗と体毛を削り取り、肉を挽肉に変えた。しかし、背の女に致命の傷を負わすことはできず、爪に弾かれ、肉に埋まり、天に消えていった。
 そして城壁結界と十の角が激突した――!

 破砕音は肉で硝子を割る音。九層の城壁結界の勝ち星は首を六つ道連れにしたこと。
 要塞は負け星。金色の柱と壁は衝撃により薙ぎ倒され、一矢を報いることなく瓦礫と変った。
 安陽王は甲羅の上を転がりながら、半ば砕けた『黙示録の獣(アポカリプティック・ビースト)』の背にしがみついている全身血濡れの女を睨み続ける。
 血濡れだった。全身余すことなく血肉に濡れ、髪すらも赤い。その血濡れの女は上を見上げた。
 神託の攻撃だ。
 逆しまではなく正しい方向に降る雨。矢の豪雨。外れた矢の洗礼。黒い天を光る切っ先で照らす。
 上を見上げた血濡れの女の眼がそれを捉える。片方だけ残った潰れかけの前足と辛うじてついている首を傘にする。
しかし今だ落下途中だ。矢に気付き、指示をしたのは数瞬の時間での事。

潰れた胴部が『神亀金城(コーロア)』の甲羅に激突した。金色の甲羅に無惨な罅が走り、地面の陥没が、いよいよクレーター染みた。
罅は亀裂と変わり、『神亀金城(コーロア)』は甲羅の中で悲鳴を上げ、遂に圧死した。
亀裂は崩壊し、亀の肉に届き、獣の肉と混ざり合いながら地面に降り注ぐ。
その時――矢の洗礼は全てを覆い尽くした。
安陽王は転がり落ち『神亀金城(コーロア)』の甲羅の陰に隠れた。衝撃波で傷つき、魔力不足の体を鞭打ち、しっかりと甲羅の下部にしがみつく。


ヘドロに釘を打つ音――そう安陽王は感じた。響くより、染み渡る音。ぐちゃぐちゃと肉を寸断する音。ばりばりと固い者を削る音。
ごうごうと唸りをあげる暴風の音。断末魔は聞こえなかった。
涙が一筋流れた。哀悼の涙だった。

――音はほぼ同時に止んだ。後は、火の爆ぜる音だけ。
ふらふらと這い出て、クレーターの中心を見る。『神亀金城(コーロア)』は死んでいた。
首の周りの甲羅が砕けて完全に潰されていた。クレーターはすり鉢状に窪み、そこに血肉のプールができていた。
『黙示録の獣(アポカリプティック・ビースト)』は後ろ足と尾、しか残っていなかった。再生にはかなりの時間を有するだろう。
そして、そこに御敵はいた。プールに浮かぶ矢と装飾品。あの蠱惑的な肉体は火の原を蹂躙した豪雨に耐えられず、半液体になってしまっていた。
「ふふふ…あははははははは……はぁはははっはっははっははっははは!!」
 安陽王の笑い声が響く。その笑い声は酷く乾いていた。勝利の喜びよりも相棒を失った悲しみが大きかったのだ。
 そして、その笑い声は途中で止まる。
「何がそんなに嬉しいのかしら、亀遣いくん?」背後から穏やかな女の声。そして、両肘を穿たれた。
「か!? ああああ!?」穿った物は牙であった。獅子の如き牙が二本。虫ピンのように腕を穿った。
 安陽王は背後を振り返る、そこにいたのは、死んだはずの女だった。
 マザー・ハーロットは黄金杯片手に艶然と悠然と全裸で立っていた。
「かぁあ! 何故御前が此処にいる!?」
「そんな窮地の悪役みたいな台詞を言うんじゃないわよ」
 さらりと流し、ワインを一口呷る。


「きくぅあああ! 御前は死んだはずだ。あの血肉の海と混ざり合っている筈だ! 何故生きている!」
 ハーロットは一つ溜息を吐き、こう言った。
「死んだのって……これの事?」
 『溢れる邪淫(ルクスリア・チャリス)』から出ていた赤いワインの線を巻き取る。その先には、ハーロットと寸分違わず、造形されたワイン人形がついていた。
「はぁなあああ!?」あまりのことに傷の痛みも忘れて、驚愕の声を上げた。ハーロットは自分の人形に抱きつき、局部をまさぐる。
「ワインの物真似。これも又、宝具の使い方の一つよ」レズビアンな行為をしながら説明する。
 『溢れる邪淫(ルクスリア・チャリス)』はワインによる精神攻撃無効の無効化である。
ワインは対象に一定確率で魅了に対する抵抗にペナルティを与える。そして離れた敵には液体は気体に変わり同じ機能をなす。そして、使ったワインは又元に戻る。
操作はハーロットの意志により行われるのである。
そう――ワイン操作による身代わりの作成。影武者!

「い、いつの間に隠…れた!」安陽王は息も絶え絶えに問う。呪詛が回り始めたのだ。
「ん~、跳ぶ直前。仰け反ったときに身代わりを置いて、体を通って後ろに出たのよ」
 ハーロットは『神亀金城(コーロア)』に頭突きをかまされて、仰け反ったとき、身代わりを作り、衣と装飾品を着せ、獣の背中を切り開いて体の中を通り、校門から脱出したのだ。
 安陽王はそれに気付かなかった。モニタは血肉で汚れ、魅了に耐えるため直視できず、『神亀金城(コーロア)』は神汚しの呪詛で青息吐息であった。
 そして、神託の通り全力で向かった。上からの攻撃に専念した。『黙示録の獣(アポカリプティック・ビースト)』に全力を注いだ。
 だから、こそこそと亀の陰に隠れていたハーロットに気付けなかった。血濡れだったのは獣の血肉を被ったから、と思いこんでいた。

「くぅあああ…かあっ!」使い物にならなくなった腕の代りに、回し蹴りを放った。しかし、その足には何の力も籠もっていなかった。限界である。
 あっさりとワインで弾き、安陽王の胸板を蹴り飛ばした。安陽王は呻き声を上げ、地面に転がった。
 仰向けで転がる安陽王の喉を踏みつける。そして、底冷えするような声で言う。
「戦いなんて観戦(み)てればいいわ。面倒は嫌い。退屈は嫌い。そして、我(わたし)の獣と傀儡と戯れる貴方はとても滑稽でとても面白かったわ」
 淫猥な笑みを形作る。じわりと艶気と色気が増した。
安陽王は自害はできなかった。腕は動かず、舌を噛み千切ることも、サーヴァントの身では意味がない。それに、心が折れていた。
一度も戦わなかった。傲慢で怠惰で強欲で淫欲で暴食な女に屈していた。
安陽王は心が折れる直前に一言呟いた。それは小学生の挑発にすら劣る。
「この売女め…」
――にたり。「有り難う。褒め言葉よ♪」


ハーロットはのし掛かり、しなやかな首筋に噛み付いた。そして、血と肉を啜りだした。

 淫猥な音が響き渡る。精の放たれる音。愛液の滴る音。弾んだ乳房が互いを打つ音。女陰がかき回される音。男根がかき回す音。そして、血肉を女の唇が喰らう音。

 安陽王は絶頂と絶望の間を味わいながら、消滅した。最後の顔は悦楽と苦痛に濡れていた。

 ハーロットは静かに立ち上がった。すでに、三分の二が壊れた獣は再生し終わり、又、底知れぬ場所に戻っていった。
 ちらり、と柳桐寺の方向を見るもうすぐ決着はつくだろう。彼女の可愛いマスターと安陽王のマスターとの因縁の決着が。
 もう一つチラリと見る。この場はもう草木は生えないだろう。汚染されきっている。だが、その事を考えるのはツインテールの仕事だとハーロットは考えた。
 こきこきと首をならし、全裸のまま可愛いマスターの下へ気怠げに歩いていった。

     ◆

 黄金の夜明け。全てが金色に照らされている、黒い汚濁の聖杯も金色に染まっていた。
 そして、石畳に疲労の限界に達した彼女のマスターが倒れていた。息はある。傷も致命のものはない。
 彼の五メートル先には聴診の神父が倒れていた。息はない。心臓は串刺しになっていた。

 そして、彼女のマスターの側に彼女はやってきた。
 彼は音の方を向く。吹き出した。顔の体液を。
 全裸で彼の視線の正面にしゃがんでいた。健全な男子であったら色々吹き出す光景である。慌てて起き上がる少年。しかし、力が入らずすぐに崩れ落ちた。
 それを受け止めた。全身で。そして言う。
「そんなに慌てなくても全ては終ったでしょう」背後から抱きしめたまま言う。
少年は「まだ、イリヤを助けていない。速くやらないと!」
 そう言い、痛む体を引き摺って白い少女と黒い聖杯の下へ行こうとする。それを止めた。
「あ~はいはい。面倒だけど我がやるわよ」しかし、ここで停まるような少年ではないことは分かっていた。例え勝ち目がなくても、拳を振るうのが彼女のマスターだ。
 だから、彼女は少年に肩を貸し、一緒に行くことにした。

 そして、聖杯にふれるぎりぎりの位置で立ち止まった。彼女はすぐに怠惰に走ろうとする脳みそを押さえつけ、思考を巡らす。
 あれに触れるのは流石の自分でもやばいと理解できた。あれは“六十億の悪意”。悪意に馴染み深い彼女でも、飲み干すのは無理だろう。
 全基督教徒ぐらいの数の悪意だったら大丈夫だと思うのだが。
 うんうん唸りながら、彼女が選択した行為は単純であった。
「『黙示録の獣(アポカリプティック・ビースト)!!』」イリヤを首で真上に跳ね上げて、巨体で叩き潰すというものだった。
 無駄に威厳を込めて真名開放を行った。
「なにやってるんさー!!?!」少年は跳ねとばされたイリヤをキャッチした。最初から近くに落下するように計算して跳ね飛ばしたのだが、少年は大あわてであった。
「結果オーライよ」「過程を大事にしろー! 警察官も言っていたぞー!」
 スライディングしながらツッコミを入れる少年。最後まで彼女とはこの調子だった。


 聖杯は消えた。戦争は勝者を出さず、終了した。黄金の夜明けが二人を照らす。
 彼女――ハーロットの裸体は透け始めていた。現世との繋がりが消え始めていた。
 少年――衛宮士郎は真っ直ぐハーロットを見つめた。最初の頃とは違う。

 彼女が召喚されてから様々なことがあった。死を幾つ越えたことか。理不尽な竹刀の洗礼を幾つ受けたことか。血を何リットル流したことか。全裸を幾つ注意したことか。傷を幾つ受けたことか。
娼婦の在り方を何度話されたことか。食費が何倍も跳ね上がったことか。金が何億も転がり込んできたことか。召喚した日真っ先に貞操を奪われたとか。それからの彼女との爛れた情欲の日々とか。瀕死の彼女に告白したこととか――。

 ハーロットは口を開いた。「男の子が泣くもんじゃあないわ」そう言い、士郎の頬を摘んで無理矢理笑みに変えた。
「泣いてねぇよ……」貧弱な嘘をついて誤魔化す。涙を拭う。
 にやりと淫靡に笑ったかと思ったら、今まで一度も浮かべたことのない笑みを浮かべた。
「今まで楽しかったわよ。シロウ。良い正義の味方になりなさいな」
 呼吸を一つ。吸う度に胸が切なく揺れる。心が寂しくなる。
「さようなら…」
 そう言い残し、虚空へ雲霞にと消えていった。
 太陽の瞬きは少年の涙を乾かした。少年は口を開けた。
「さようなら、ハーロット。面倒臭がり屋の女よ。悪を教えてくれた*よ……」
 少年は天を仰ぎ、彼女の顔を思い浮かべる。

 ――娼婦の笑みではなく、無垢な少女のような、息子を愛する母のような――――――――純粋な笑顔だった。

 少年は歩く。歩いて荒野を目指す。悪徳を知り尽くした正義の味方として――

 と、ここで終わったら物語はお涙頂戴だったのかもしれない。

「さようなら、ハーロット。面倒臭がり屋の女よ。悪を教えてくれた*よ……」
 この言葉を放ち天を仰いだ少年は、その視線を元の位置に戻した時、
「なんでさ」
 さっきまでのシリアスはどこに行ったのかという表情でこう呟いた。
 何故なら目の前で先程消えたはずの己のパートナーが、バツが悪そうな顔して頭をポリポリとかいている姿があったからだ。



「つまり、黙示録の獣で聖杯を叩き潰した時、宝具とのラインを通じて膨大な魔力が流れ込んできてて、今になって受肉してしまったと?」
「ま、そんなところかしら。我はこの世全ての悪に近い存在だから呪いに対する耐性もあるし、黙示録の獣も悪意に対してのフィルターになってくれたんだと思うわ。こうして受肉してるのがその証拠よ」
「そうか。ところで……それよりも大事な事があるんだが」
「何?」
「なんか着てくれ」
「無理」

 眠っているイリヤから少し離れた場所で話し合っている傷だらけの士郎と全裸のハーロット。話の結果ハーロット受肉の原因はほぼ判明したが、それより重大な問題が発生していた。
 帰ろうにも服がないのだ。
 ハーロットは大災害跡地に向かう時に着ていたこの時代の衣類を受肉した影響で失ってしまい全裸状態、霊体にも当然なれない。イリヤも言峰に聖杯として捧げられた際に全裸にされている。全裸の女性二人を連れて街中を歩いていたらたちまち警察に捕まるのは間違いない。

「これならすぐに装着できるけど」 
 どうするべきかと思考に没頭している士郎にハーロットの声がかかる。俯いていた視線を彼女の方に向けた彼は、またも口から体液を吹き出した。
「何言ってんだ!? そんな格好裸と変わりないだろう!!」
 士郎が怒鳴った先にはこれまで敵と、最終決戦相手の安陽王と戦う時にも彼女がいつも身に着けていた、肝心な部分を隠していないほぼ裸な露出衣装を身に纏ったハーロットの姿があった。
「じゃあ凛が迎えに来るまで待つしかないわね。でもただ待っているのも退屈よね」
 面倒臭そうに呟いたハーロットは、次の瞬間士郎を押し倒していた。
「ラ、ライダー!? 何を!?」
「もう……受肉したんだからクラス名じゃなくて、さっきみたいにハーロットって呼んで♪」
 そう言いながら淫猥な笑みを浮かべて士郎を見つめる。一方押し倒された士郎も顔を赤くしながら必死に反論する。
「イリヤがいるんだぞ! 起きたらどうするんだ!? それに遠坂だって来るのに……」
「これまで青姦もしてきたけど、誰かに見られるプレイはシロウには始めてだろうし、ここで体験するのも悪くないわよ。まあ、その時は凛もイリヤも仲間に入れればいいし。折角の二度目の人生、楽しまないと損だからね♪」
「なんでさーー!! って、ムグゥ……」
 それても無駄な抵抗をしようとする士郎の口は彼女の口で防がれ、それはすぐディープキスへと変わっていった。

 それから柳洞寺の空へ男女の喘ぎ声が響いたのは言うまでもない。
 その後すぐ赤い悪魔の怒り声が響いた後、再び男女の、しかも複数の喘ぎ声が響いた事も付け加えておく。

 少年は歩く。歩いて荒野を目指す。悪徳を知り尽くした正義の味方として。
 だが、あの赤い弓兵になることはないだろう。何故なら少年の隣にはあの大淫婦がいるのだから―――。

「ハーロット」
「なにかしら? 可愛い旦那様」
「頼むからなんか着てくれ」
「イヤ♪」

   受肉してHAPPYEND




あとがき
以上で終わりです。
わかり難いかもしれませんがところどころに官能的な台詞を追加してエロ度を上げときました。


こちらのハーロットは
ttp://members2.jcom.home.ne.jp/dokutorumu/megaten/mother.htm
この絵がビジュアルイメージとなっているので金髪のレッドアイとなっています。

その女の肌は絶妙に白い。全ての女性が理想とする白さで、男が女に望む白さである。
又、肢体は現実離れした凹凸であった。乳房は男を惑わす蠱惑のメロン、重力に逆らって上を向いている、腹は平らに絞られ、尻肉も柔らかく持ち上がっている。
そして豪奢だ。それも絶妙な加減の豪奢さであった。
耳朶には金で飾られた真珠のピアス。細い首には黄金鎖に繋がれた大粒の紅玉。手首足首に真珠と綺羅の腕輪と足輪の他、高級感溢れる手袋とフリルつきの足輪。頭部には緋と紫の綺羅のベールを被っている。
逆に性的劣情を男性に催す箇所、胴体の乳房、臍、くびれ、局部、太もも部分には一切何も身につけておらず、彼女もまたそんな姿に恥らう素振りを見せることなく、無防備に露出された白皙の肌を見事に堂々と外部に曝け出している。
いや、上半身にはベールと同じ緋と紫の綺羅の衣類を纏っているが、前こと胸の双丘部分は剥き出しの作りになっており、上腕、背中上部、首しか服は隠していない。
むしろ手足や頭に装飾が施される事で、何も身につけていない露出している胴体部分は強調され、一層彼女の淫靡さ、淫猥さ、淫奔さを醸し出していた。
ベールの下から見える黄金のようなブロンドの髪は艶やかであり太陽のような輝きがあった。髪も又、豪奢な飾りによって飾られていた。
足は驚いた事に裸足である。安陽王は靴底の厚い靴と脚絆を履いているから平気だろうが、ハーロットの色も形もものすごく綺麗で細長く華奢な足指に耐えられるとは思えない。
しかし、その足は何らかの守りの効果のお陰なのか、熱がる様子も大地の汚れにもまみれていない。その顔には――その魔性の美貌という概念すらも凌駕した貌には痛苦の色は浮かんでない。

この文からあの絵のイメージ通りの姿が伝わってくれたなら幸いです。


こちらのハーロットは怠惰25%。傲慢10%。暴食18%。強欲4%。嫉妬2%。憤怒1%。色欲40%で構成されておりエッチィです。
それは露出度が更にアップしたあの戦闘衣装が証明しています。
士郎は召喚したその日に貞操を奪われました。
その後も士郎がへっぽこなマスターなのもあり、魔力補給の名目でギシギシアンアンする日々が聖杯戦争中の終わりまで休むことなく続きました。
ハーロットが受肉したことによってそんな日々はこれからも続くでしょう。
最終決戦が終わった直後に早速一戦やらかしてますからね。
こちらの士郎は正義の味方じゃなくて性戯の味方になる可能性が高いかもしれませんね。

最後にAとHの最終決戦の作者様、寛大な采配真にありがとうございました!