※時間的には原作のランサー襲撃後凛と話し合った後の場面ぐらいだと思ってくだちい

一息ついたところで、セドナはさらりと爆弾を投下した。
「そうね……ではせろー、おふろにいれてくださらない?」
「――――え゙?」
驚愕とも確認とも、或いは呻き声ともとれる言葉を出したのは、キャスターを除く三人の誰であったろうか。
キャスターの口にした事に、一瞬その場の空気が凍り付き――

「……な、何を言ってんのよキャスター。霊体化出来るサーヴァントにそもそも入浴なんて必要ないでしょうが、ええ」
誰よりも早く答えを返したのは遠坂凛であった。
少しどもりながら、しかして周囲(主に二人)を圧する気を放ちつつセドナの発言に釘と言うか杭を突き刺す。

しかしセドナは大層気持悪そうに赤黒い血糊の着いた髪に触れると、
「返り血が付いた髪を洗わないなんて、気持悪いと思わなくて? それに一度日本のお風呂ってどんなのか入ってみたいんだもの」
と、可憐な笑みを浮かべ言った。
はぁ、と凛は溜め息を一つ付き、心底呆れたような表情を浮かべる。
「だからね、私が言いたいのは――――何でわざわざ衛宮君を御指名したのかしら」
ぎろり、という擬音がよく似合う視線を士郎に振り向け、びくっ、と少年が一瞬震えた。
まさしくは猫に睨まれ窮する鼠と言ったところか。

「あら、自分のマスターと離れて行動するなんてサーヴァントにあるまじき仕儀。使い魔不覚悟も良いところ。
 それに私は見ての通り手が不自由だから、誰かに洗って貰う必要がありますの。
 でもね、同じ女だからといって、敵となる魔術師に御髪(おぐし)を預ける気はありませんわ」

そう言いセドナは包帯で巻かれた両の掌を凛に見せながら、士郎へと寄りかかるようにして、顔を見上げた。
ちょうど猫や犬が主人に甘えるそれのように、その顔を少年の胸に擦りつける。

「だからせろー、わたくしのすみずみまでを、あなたのてできれいにしていただきたいの」

ただし少女が顔に浮かべた甘えの笑み、そして猫なで声で口にした言葉はその外見にそぐわぬひどく妖艶なものだった。
その甘い言葉遣いに、士郎の頭は真っ白となる。まこと少年は蛇に睨まれた蛙の様相を呈していた。

「――――な、なにを」
「何言ってんのアンタは!」
顔を真っ赤にしながら、ダン、と凛はちゃぶ台を叩いて士郎の言葉を遮るように咆哮した。
「あら、せろー。なにかいのししがうなっておりますわよ」
「……猪って。それに遠坂は猪突猛進じゃなくて、どっちかと言うと悪知恵を働かせるタイプだと思うぞあべしっ!?」
最後まで言い切らないうちに、凛のガンドが二人に降り注ぐ。キャスターは何時の間にか士郎を盾にして、
それを完璧に防いでみせると、しくしくと泣き真似をしながら叫ぶ。
「まァ、非道いッ! 何て野蛮な魔女! せろー、しっかりなさってせろー!」
「盾にしたのはアンタでしょーが!!」

どうでもいいが早く助けてくれ、と少年は心底思ったのであった。


士郎→セドナ
凛→きみのすきなサーヴァント(さーばんと)をいれてね!

煩悩を抑えきれなかった結果がこれだよ!

あとセドナが士郎を呼ぶ時「せ」ろーなのはイヌイット発音だけど、しぇろーかも知れない。
ひらがななのは甘えの表現です。親に海に捨てられたセドナは、士郎の見てないとこで「さむい、さむいよ……せろー」といつも震えてるんです。多分。