「東京物語」


  • 監督:小津安二郎
  • 脚本:野田高梧 小津安二郎
  • 撮影:厚田雄春
  • 出演:笠智衆、東山千栄子、杉村春子、山村聡、香川京子、大坂志郎、原節子、三宅邦子、東野英治郎、中村伸郎、十朱久雄

どことなく懐かしさをともないながら、切なさが何度も襲ってくる。

どうして老夫婦はあんなにもゆっくりとしゃべるのだろう。そのペースへはじめ違和感を感じた。特におじいさん(笠智衆)の方などセリフを棒読みしているかのようでもある。しかしそれがまったく不快に感じられず、むしろいつまでも続いてほしいという「はかない」思いが込みあげてくる。

こんなにも、映画を観ていて「失いたくない」という思いを登場人物達へ感じることは滅多にない。これが「日本の家族というカタチ」への感情移入であるのか、「映画の空間」に感じているのかは定かではなかった。確かなのは小津安二郎の文体なのだろうか。

会話のつくりだすペースを大切に持続させていくように、何度も同じショットをつなぐ音楽とローアングルの固定したカメラによる映像が繰り返される。その度にまだ続くこの世界に居続けていることの安心感に包まれるのだった。 2002.03.03k.m


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最終更新:2009年02月05日 00:50