どことなく懐かしさをともないながら、切なさが何度も襲ってくる。
どうして老夫婦はあんなにもゆっくりとしゃべるのだろう。そのペースへはじめ違和感を感じた。特におじいさん(笠智衆)の方などセリフを棒読みしているかのようでもある。しかしそれがまったく不快に感じられず、むしろいつまでも続いてほしいという「はかない」思いが込みあげてくる。
こんなにも、映画を観ていて「失いたくない」という思いを登場人物達へ感じることは滅多にない。これが「日本の家族というカタチ」への感情移入であるのか、「映画の空間」に感じているのかは定かではなかった。確かなのは小津安二郎の文体なのだろうか。
会話のつくりだすペースを大切に持続させていくように、何度も同じショットをつなぐ音楽とローアングルの固定したカメラによる映像が繰り返される。その度にまだ続くこの世界に居続けていることの安心感に包まれるのだった。 2002.03.03k.m
カテゴリー
関連リンク