ボディ・レンタル


  • 佐藤亜有子

どことなく悲しみに包まれていて、それでいて恐ろしいほど誠実に生きようとしている様な印象を主人公に抱いた。

ただその表現には、俗悪的な様相をまとわりつけて、あたかもどっぷりと底まで漬かってみせているかの様でもあった。繊細なフィルターを何枚も重ねながら語っている。そんな息苦しささえ感じてしまう。レンタルという言葉のもつ軽い響き以上に、身体と精神を軽やかに引き剥がそうとしているのか。それは言葉のもつ巧みさ故に表現可能で、身体の不自由さとは無縁のものではないだろうか。

僕らは結局この身体から離れられない。精神がどれほど自由であろうと、またそうであるからこそ、いっそうこの身体のどうにもならない存在感は増すのだ。どこまでも逃避していく精神の渇きへ、その身体を釣り合わせようなんてできっこない。けれど、只慎ましやかに日常を暮らすひたむきさも持てない。あらゆる分裂を引き起こす身体へ、僕らは一体どんな妄想でそれらを繋ぎ止めるのか。この小説ではその妄想と実践の狭間で、ひたすらにスタディーが繰り返される。はたしてその不毛とも言える修練へ、またしても意味を見出そうとするのか?2001.03.02k.m

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最終更新:2008年04月11日 08:09